先行体験

庵野秀明氏が企画&プロデュース!「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」先行レポート

1,200点を超える圧巻の展示資料

【宇宙戦艦ヤマト 全記録展】
・開催期間:3月15日~3月31日
・開催場所:西武渋谷店A館7階・2階特設会場
・開催時間:10時~20時(最終入場19時半)
※3月19日は19時(最終入場18時半)までの営業となる。
・チケット料金
大人:前売り券 2,500円/当日券 2,700円
子供:前売り券 1,300円/当日券 1,500円(小学生以上、高校生以下)
プレミアグッズ付きチケット:5,000円

 今年で放送から50周年を迎える「宇宙戦艦ヤマト」を記念した展示会「庵野秀明 企画・プロデュース/放送50周年記念『宇宙戦艦ヤマト 全記録展』」が3月15日から渋谷西武にて開催される。その前日となる3月14日にはメディア向け内覧会が行なわれ、庵野氏などが参加するということで大勢の取材陣が詰めかけた。

 本展示会では、半世紀にわたり保存されていた原版やそれを高精細スキャンした設定画などが所狭しと展示されているほか、庵野氏によればこれまでは未公開で自身も存在を知らなかった背景画なども公開されるなど、従来までの「ヤマト」関連展示会とは一線を画す展示資料が集まっている。ここでは、会場での展示内容と風景、そしてQ&Aセッションの内容をお届けしよう。

庵野氏と東北新社・小坂氏、そして森雪役の麻上さんでテープカット!

 「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」は、今や日本のアニメ界を牽引する庵野秀明氏が企画・プロデュースした展示会だ。「宇宙戦艦ヤマト」放映から50年の時を経て初公開となる貴重な秘蔵資料を中心に、1,000点を超える圧巻の展示が用意されている。

 展示会のオープニングセレモニーで行なわれたテープカットには庵野秀明氏のほか、東北新社代表取締役の小坂恵一氏、そして「宇宙戦艦ヤマト」で森雪役を演じた声優で、講談師の一龍斎春水としても活躍している麻上洋子さんらが参加した。

左から東北新社代表取締役 小坂恵一氏、庵野秀明氏、麻上洋子さん

 テープカットに先駆けての挨拶で庵野氏は、「宇宙戦艦ヤマト」という作品に対して「自分と同世代で、リアルタイムで見ていた人にもの凄い衝撃を与えてくれたエポックメイキングなアニメーションでした。ヤマトはヤマトであってガンダムのようにはならなかったんですが、それはヤマトがそれだけ素晴らしい作品だったからだと思っています。今回は、この機会にいろいろと設定の原版などが発掘できたので、こういう形で皆様に見ていただく機会を設けました。ヤマトはあと半世紀以上語り継がれても良い作品だと思っていますので、50周年どころか100周年に向けて若い人が語り続けてくれるとありがたいです」と語った。

3人の手によりテープカットが行なわれ、2週間にわたる展示会の幕が開いた

庵野氏「多数の原版を展示しているので、そこに込められた魂を見てほしい」

 内覧会では庵野氏と小坂氏を交えてのQ&Aセッションが開かれた。

 最初に、「宇宙戦艦ヤマト」によって人生を変えられたという理由について問われた庵野氏は、それまでのアニメとはまったく違う印象があったと語り「テレビマンガと呼ばれていたものが、突然アニメーションという呼び方に変えてしまったほどヤマトは凄かった。宇宙船がそのまま形を保ったまま動く格好良さ、それまでの子供向けとは違うハードな人間ドラマなども含めて、何もかもが新しい感じで、そこに痺れました」とコメント。

 ヤマト放送当時に小坂氏が、捨てられそうになっていた原画を引き取って保管していたものが今回展示されたのだが、これについて小坂氏は「『ヤマト』が凄かったのは、構図が載っている設定資料を当時見たときに感じた、そのあまりの緻密さ。それに驚いたというのが、ものすごく大きかったです。また、当時のアニメ会社は作品が終わると解散していたので、こんな凄いものが散逸してしまうことに危機感を覚えました。

 そこでいろいろお願いをして、設定資料はだいたいコピーをいただきました。今回の展示で昔そのまま使われているのは、当時集めた原画ですね。セル画も半分くらいは解散するときに引き取ったのを展示してありますし、今回の展示会に向けて呼びかけをしたところ、同じように長年保存していた人が特に大判と呼ばれる大きいフレームサイズのものを提供してくれたのでとても見応えがある展示会になっています」と解説してくれた。

 2人が特にお気に入りの作品、見てもらいたい作品を聞かれると、庵野氏は「これまで雑誌等にも発表されていなかったものに、背景があります。これはスタッフのご遺族の方から提供いただけたのですが、僕も見たことがなかったのが展示されています。また、表に出てない原版、直筆もの、松本零士先生の直筆絵もあります。それを直に見てもらいたいです」と発言。

 小坂氏は「見所としては、背景の色彩が本当に素晴らしいんです。もう一つは、原画と設定です。今まではコピーが多かったのですが、生の原版は筆圧や筆地の力の入り具合などに魂がこもっている感じがするので、それが伝わってくると思います。ほかにも、展示されているものの中には松本零士先生のもの、そして『機動戦士ガンダム』で有名な富野由悠季氏のものや安彦良和氏の絵コンテも展示されています。『ヤマト』と『ガンダム』は関係ないと思っている人も多いかもしれませんがそんなことはなく、『ヤマト』がブームになって『さらば宇宙戦艦ヤマト』で敵のプラモデルが出たことが、後の『ガンダム』プラモのルーツになっているんです。

 その歴史的な繋がりも、大きな魅力です。『さらば宇宙戦艦ヤマト』の時に、コレクションしやすいようにと『メカコレクション』という100円のコレクションしやすいプラモがもの凄いヒットして、次の作品はなんだろうということで『ガンダム』のプラモデルを出したのが歴史なんです。いきなりガンプラではなく、ガンプラの父は『ヤマト』なんです。どちらが善し悪しというのではなく、順番があったことを知って欲しいし、この展示会に来ればそれが学べます」と、原画だけでなくプラモの歴史が学べるのも注目のポイントだとした。

 今回、企画プロデュース製作にあたって一番力を入れたところを尋ねられた庵野氏は「どこも手は抜いていません、とにかく詰めてもらいました。可能な限り原版を並べたかったんですが、そうすると縮小できないんですよね。会場の広さを考えると点数が減ってしまうので、それなら原版から高解像度でスキャンしたものを縮小展示する方が数は増えるということで、今回はそうしてもらいました。

 もっと什器も置きたかったのですが、動線などを考えるとこれが限界で、その中で精一杯やりました。設定類に関しては、これまで雑誌やムック等で出ていたものより、はるかに精度の高いものが展示してありますので、従来見慣れた絵が実はこんなに奇麗だったんだ!というのを感じていただければと思います」と語った。

トークセッションで質問に答える庵野氏(手前)と小坂氏(奥)

 イベント会場が渋谷ということで、来場すると思われる若者や外国人に対してのコメントも問われたが、庵野氏は「見に来てください」と即答、取材陣の笑いを誘っていた。

 小坂氏は「海外の方は、配信で日本のアニメを楽しまれている方も多く来ていると思います。その中でも子供向けじゃ無い原点の作品、オリジンの源流が見られるので、足を運んでもらえればと思います」とコメントしてくれた。

 ファンに向けてのメッセージとしては「本来の『ヤマト』のファンの方々は、できるだけ多くの人に『ヤマト』の素晴らしさを伝えていってほしいです。特に若い人は、半世紀も前の作品なので古く感じるの仕方ないと思いますが、『ガンダム』なら『ジークアクス』という作品をきっかけにファーストガンダムの視聴に流れてくる若いファンも大勢いると聞いています。『ガンダム』が大丈夫なら『ヤマト』も大丈夫だと思いますので、26話しかありませんからぜひ見ていただければと思います。ちょっと絵が古くてダメだと思ったら、『宇宙戦艦ヤマト2199』から始まっているリメイクシリーズも面白いし『ヤマト』の魅力が詰まっているので、そちらを見てください。よろしくお願いします」と庵野氏がまとめ、Q&Aセッションは終了となった。

「誕生」、「発進」、「試練」、「激闘」、「回天」5つのエリアを巡る展示

 最後に、展示会会場の内容をお伝えしよう。7階では、「宇宙戦艦ヤマト」誕生時のエピソードに始まり、テレビ版の1話から26話までを「誕生」、「発進」、「試練」、「激闘」、「回天」と5つの区画に分けて展示している。それぞれに貴重な原版や高精細にスキャンした原画を縮小した設定画が、ほぼ隙間なくびっしりと並べられている様はまさに圧巻。

 確かに、これまで雑誌などで見てきたレベルとはまったく違う、非常に細かい部分までしっかりと確認できるのが嬉しかったし非常にありがたかった。原版に至っては、保存されていた時の折り目や塗りの具合まで目視できるので、自分を含めたファンにとってこれほどのお宝は無いと思ったほどだ。

 展示コーナーは2階にも設けられており、こちらは「宇宙戦艦ヤマト」のプラモデルや歴史年表、そしてリメイクシリーズの紹介、そして物販スペースが用意されている。ここも見所がたくさんあるので、忘れずに立ち寄りたい。

【展示会の模様】
「誕生」コーナーでは、宇宙戦艦ヤマトが放映される前の姿が見られる。当初のキャラクターは劇画調だったことや、ヤマトもまったく異なっていたことには驚かされた。当時作られた、約10分ほどのパイロットフィルムも流されているので、本放送時のヤマトの姿と見比べてみるのも良い
「発進」コーナーからは、設定画や絵コンテなどと共にアニメ1話目からを順を追いながら見ていくことができる。額装されているのは原版で、これを見ると筆の力強さなどが伝わってくる。原画の上部には、各話カットとナレーションや名ゼリフが並ぶ、粋な演出も。「そうそう、そのセリフやシーンは覚えているよ」と、頷きながら巡ってしまった。ここには、富野氏が手がけた資料も展示(3枚目の写真ヤマトの下)されているので、ぜひジックリと見てほしい
「試練」コーナーで目立つのは、約3メートルほどある宇宙戦艦ヤマトの模型。さらに、ヤマトを散々苦しめることとなる反射衛星砲の原画の原版、当時の出版物に掲載されたヤマトの原画なども見ることができる。展示されている原画には迫力があり、実際前に立って見ていると思わず感嘆のため息が出てしまうほどだった
ヤマトの波動砲を封じたドリルミサイル、それを搭載した重爆撃機の原版を見られるのが、この「激闘」コーナー。ほかにも、ここでは「宇宙戦艦ヤマト」の音と題して、波動砲発射までの効果音など10種類を効くことができる。ファンならば、この音を聞くだけで自然とシーンが想像できるだろう。映像が無くても、音楽だけで思い浮かべられるのもヤマトならでは
最後は「回天」コーナーで、ヤマトが惑星ガミラスで激しい戦いを繰り広げるシーンの設定画などを堪能することができる。上部のカットとセリフの部分は、誰もが知る沖田艦長の最後の言葉と、青く染まっていく地球で締められている。何度見ても、心の中で涙が流れてしまう場面だ
展示コーナーを出たところには、沖田艦長と古代、森雪のパネルが並ぶ撮影スポットになっている
2階には、当時発売されたヤマト関連のプラモデルや年表、1/100スケールのヤマトの模型などが展示されている。一角には、沖田艦長の名ゼリフのみを集めたメッセージスペースも用意されているので、どのセリフがどの場面なのかを思い出しながら見るのも一興だ
物販スペースでは、数多くのグッズが販売されている。個人的に気に入ったのは、ヤマトを見た人ならば誰もが知る“あの”名ゼリフが缶バッジになっている、名言缶バッジ。これはオススメ