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和紙が醸し出す美麗な飛び出す絵本風アドベンチャーはどのように生まれたのか!?
「TENGAMI: The Art of a Folding World」
(2015/3/5 15:01)
日本のカルチャーに強い影響を受けて生まれたインディーゲーム「TENGAMI」。一昨年のiOS/Android向けのモバイル版のリリースに加えて、昨年はWii U版やPC版もリリースされ、世界中で高い評価を集めている。
その「TENGAMI」の最大のウリとなっているのが、「Pop-Up Book」、日本では「飛び出す絵本」と呼ばれる、本に折りたたまれた折り紙が本を広げることで立体化する、あの演出を大胆にゲームに取り入れているところだ。
インディデベロッパーが集うセッション「Independent Games Summit」では「TENGAMI」を題材にした30分セッション「TENGAMI: The Art of a Folding World」が行なわれ、あの世界観はどのようにして生まれたのか解説されたので紹介したい。
セッションスピーカーを務めたのは「TENGAMI」の開発元Nyamyamでプログラマー兼ゲームデザイナーを務めるJennifer Schneidereit氏。Schneidereit氏は、ゲーム業界でのキャリアの日本のデベロッパーAcquireでスタートさせており、「侍道3」や「忍道 焔」を担当し、その後英国のRareで「Kinect Sports Rivals」を手がけるという異色なキャリアの持ち主だ。
「TENGAMI」は、日本の伝統文化である和紙をテクスチャーに、飛び出す絵本の世界観をインタラクティブエンターテインメントに昇華させたアドベンチャーゲーム。ゲームそのものは比較的シンプルな謎解きパズルで、めくる、たたむ、ずらす、押し込むなど、絵本ならではの仕掛けをフル活用しながら、和風世界に隠された謎と秘密を解き明かしていく。
「TENGAMI」の開発のきっかけは日本の「Pop-Up Book」に触れたことで、これをゲームとして使うことを思い付く。Nyamyamでは、この開発をわずか3人でスタートさせ、時間を掛けて仕上げていった。ゲームを作りに当たり、Pop-up Bookの元となっているペーパークラフトや、Pop-Up Bookの谷折り、平行折りなどを学びながら、ゲームに取り入れていったという。
開発中の画面を見て最初に驚いたのは、「Pop-Up Book」そのままの作り方をしているところだ。2つ折りされた真っ白な紙を半折りにして配置し、手前半分を地面、奥半分を背景とし、その付け根部分に、いくつもの層を重ね、山の段々や階段、森に至るまであらゆるものを紙の層で描いている。森を描く場合は奥行きを出すためにあえて複数層で構成されており、各層に少しずつずらして木々の1本1本が描かれている。テクスチャーには先述したように和紙が使われ、和紙独特の荒々しさ、柔らかさが、そのままゲームの雰囲気に良い印象をもたらしている。
この“ペーパークラフト的開発”を迅速に行なうために、あらかじめ開発環境に「Paper Kit」と呼ばれる頻繁に使われる折り紙のパターンをいくつも用意し、簡単に配置するだけで簡単にPop-Upなステージができるようになっている。
ちなみに「TENGAMI」では、ステージが変わる度に、必ず折りたたまれる。ゲームとしては別になくても支障の無い演出だが、この演出がPop-Up Bookゲームとしての深みに繋がっている。
Schneidereit氏の話は、この折りたたみの演出をどのように行なっているか、具体的には中折りの紙に対して、どのように折り紙を配置させていけば、綺麗な飛び出すペーパークラフトが作れるのかという流れになり、ゲームといえども一切のフェイクを使っておらず、ひとつひとつ丁寧に作っていることも驚きのひとつだった。