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GDC Indie Game Summit、インディーゲームはプロシージャルで作る!
日本アニメリスペクトな2Dシューター「GALAK-Z」のステージ制作テクニック
(2015/3/3 19:10)
GDCの会期1~2日目は例年通りチュートリアルデイとなっており、各ジャンルの連続セッションが開催されている。その中でも近年熱気を増しつつあるのが、インディーゲーム開発者の集まるIndie Game Summitだ。
インディーゲームというのはまさに玉石混交、実際にプレイしてみるまでは何が出てくるかわからない。カオスな世界で発売前から注目を集める作品は、レアケースと言えるだろう。そのレアケースのひとつにあたるのが、Indie Game Summitで講演が行なわれたタイトルのひとつ、「GALAK-Z」だ。
「GALAK-Z」はシアトルと京都に居を置くインディースタジオ、「17-BIT」によるローグライク・2Dシューティングゲームだ。1980年代のロボットアニメの影響をバリバリに受けたアートスタイルによる引きのよさや、ゲーム内容のユニークさもあいまって、本作はPC(Steam)のほかPS4、PS Vitaでの展開も既に予定されている。
リリース前から大風呂敷を広げても、コンテンツ制作をマンパワーに頼るわけにはいかないのが小所帯インディーズの辛いところ。そこで17-BitではステージデザインやBGM制作にプロシージャル(手続き的)なテクニックを上手く利用し、制作の効率化を図っているのだ。
セル・オートマトン+αで無限のスペースダンジョンを自動生成!
「Galak-Z, Forever: Building Space-Dungeons Organically」と題するセッションで、本作のステージデータ生成のテクニックが披露された。講演者は17-BITのリードエンジニアを務めるZach Aikman氏。
「GALAK-Z」は小惑星帯のように岩石に溢れる“宇宙のダンジョン”を探索しながら戦うという、いわば宇宙版の全方位型2Dシューティングハック&スラッシュ。ダンジョンの自動生成システムを搭載し、ローグライクの一期一会感も取り込んだユニークなタイトルだ。
ローグライク系ゲームは小粒なシステムでも繰り返し遊べるところが最大の特徴。この特性はインディーゲームにはうってつけで、この界隈では様々な手法でダンジョンの自動生成が試みられてきている。その中で、宇宙を舞台とする本作は少々特殊なアプローチをとっているようだ。
「GALAK-Z」における宇宙のダンジョンは、岩に囲まれた空間がくねくねとした通路や部屋を構成しつつ、スタートとゴールの地点を持ちながら直線的ではない構造となっているのが特徴だ。開発チームでは各空間の形状や通路のつながりに幅広いランダム性やファジー感を持たせるため、ユニークなセル・オートマトンのアルゴリズムをベースにシステムを構築している。
セル・オートマトンは、一定のルール(例えば隣り合うセルがいくつONになっているか、など)でマトリックスを動かし、様々なセルのパターンを生み出していく手法の総称だ。標準的なアルゴリズムとしてはいわゆる“ライフ・ゲーム”が有名だが、本作ではランダムなセルから適度な太さの通路や部屋の構造を生み出すという独自のアルゴリズムを実装し、ステージの基本パーツとしている。
こうして生まれたパーツだけではランダム性が高すぎるため、うまくつなぎあわせてステージ全体を作っていく必要がある。そこで本作のステージ構造を幾何学的に見ると、スタートからゴールまでのルートが2次元の平面を充填するようにつながった構造をしている。これを数学的に正しく生成するため、ステージ全体の構造についてはフラクタル図形のひとつとして知られるヒルベルト曲線を利用しているという。
ただしヒルベルト曲線そのままではなく、一定のルールで切り詰め、オフセットを行なった上で、半端な部分に行き止まりのルートを追加することで多様な形状を実現。これによりスタートからゴールまでの間に決して循環する部分を作ることなく、幾何学的にとりうるあらゆる組み合わせを生成できるようになっているようだ。
上記をレイアウトデータとして、セル・オートマトンで生成した各パーツを適切につなげていくことでステージ全体の詳細な形状が完成する。そこにさらに、障害物や敵といった配置物のデータをレイヤー的に重ねていくことで、グラフィックスやゲーム性的にも面白いステージが完成するという仕組みだ。
このシステムは本作の様々な形状のダンジョンに応用できるようカスタム化されており、コンテンツ制作の手間を抑えつつ、多彩なステージを生成できるというローグライクジャンルの旨味を十二分に発揮できているようだ。
ゲーム内容もユニークであれば、その制作手法もまたユニーク。そういった発見のある、いろいろなゲームが見つかるのがインディーズの面白さ。お気に入りのゲームがどういうふうに工夫されて作られているか、そこに注目しながら各作品を遊んでみるのもまた一興だ。