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【GDC 2014】洗練系数字パズルゲームiOS/Android「Threes」のデザイン

PCゲームだったはずが、モバイル転向で進化。チュートリアル作成法も公開

3月17日~3月21日 開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

「Threes」デザイナーのAsher Vollmer氏

 iOS/Androidで配信中の「Threes」は、小粒ながら洗練されたパズルゲームだ。本作は1月の終わりには配信されていたが、2月に入ってからアプリストアのランキングに急に顔を出すと直後にはトップに立ち、一躍有名アプリの仲間入りを果たした。

 GDC 2014の「Indie Game Summit」では、そんな「Threes」をデザインしたAsher Vollmer氏が登場。「Threes」のデザイン法が講演された。

条件を立てて重なる位置を探る。「Threes」のゲーム&チュートリアルの作り方

「Threes」の画面。16マスの中ですべてが完結する
最初は矢印キーを使うPCゲームとしてスタートした
条件に合致するものを詰めていったら、「Threes」が完成したという。垢抜けたとも言える

 「Threes」は、数字の3の倍数に注目したパズルゲームとなっている。画面上には4×4のマスがあり、1や2と書かれた数字はフリック操作によって移動できる。ただし移動は個別ではなく、全体を動かせるのみ。マスの外枠以上に数字は移動できず、合計16マスの中ですべてをやり繰りしていく。

 基本となっている数字は1と2。1と2は数字の移動時に重ねることで、3へと変化させられる。3は他の数字と合わせられないが、3同士を重ねると6にできる。以降は6と6で12、12と12で24といったように、同じ数字を合わせて大きな数字を作れる。移動の度に新しい数字がマスの中に登場していき、マスが埋まってそれ以上動かせなくなったらゲーム終了。終了時にはマスの中の数字に応じて、合計得点が計算される。

 ゲームそのものは16マスという非常に小さなスペースのみでの展開となるが、数字と数字を重ねることでスペースが確保されていくため、いかに数字を効率よく整理していくかが本作のポイントとなっている。

 ゲームをプレイしていると、スマートフォン上で動くタイトルとしてかなり洗練されている印象だが、元々はキーボードの矢印キーを使って動かす内容だったという。当初はフラッシュゲームとして配信しようと考えたのだが、ゲーム内容の割にデザインするスペースが大きく、アクションやアドベンチャーなどの他タイトルと同じ画面サイズで動かすには不利と考え、モバイルとして開発することにしたという。

 またVollmer氏は小さい作品が好きであること、さらに何度も繰り返し遊べることも重要と考え、これらの制作条件すべてを満たす作品が「Threes」になったという。スライドには矢印キー版の開発画面もあったが、それに比べるとずいぶん違う作品に見えて、モバイルで開発してよかったなと思えるのも面白い。

 Vollmer氏によれば、「Threes」ではチュートリアルの形も熟考したのだという。「完璧なチュートリアルのレシピは存在しない」としながらも、チュートリアルの要素には「教育」、「快適」、「尊敬」、「興奮」の4つがあり、これらすべての要素が重なるものが良いチュートリアルだとした。

 Vollmer氏はチュートリアル例として「プレーヤーに何をするか教える」、「プレーヤーの行動に関わらない」といったもの挙げたが、「プレーヤーに何をするか教える」のは「尊敬」と「興奮」の要素が足りず、逆に「プレーヤーの行動に関わらない」のは「教育」と「快適」の要素に欠けてしまうという。

 これでは最適解とは言えないが、そこでVollmer氏が考えたのが、「パズルの中でのゴールを作る」というもの。パズルにおける文脈と筋道を示すことで、「教育」しつつ「快適」であり、プレーヤーに「尊敬」を持ってパズルを解く「興奮」を示せる。Vollmer氏の目指す4つの要素を満たせるというわけで、これを「Threes」では採用した。

 実際「Threes」のチュートリアルでは説明は最小限に留まり、何回か操作するごとに説明が追加されて自然とゲームを理解し、そのままゲームに突入できるようになっている。「良くできたチュートリアル」というのも、本作がブレイクしたきっかけの1つだろう。元も子もないが、Vollmer氏は「後は何度もプレイテストすること」とも述べていた。本作は現在配信中で、価格は200円。モバイルという媒体の大きさと、ゲームシステムの規模や操作の気持ちよさなどが上手くハマった好例と言えるだろう。

チュートリアルの作成法もデザイン解説と同様のベン図で説明。パズルの解法をわかりやすく説明するという道を選んだ

(安田俊亮)