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SCE WWS、吉田修平氏 共同インタビュー

PS4のローンチタイトルからPS Vitaとのリモートプレイまでいろいろ聞いてみた

9月19日~22日 開催(一般開催日:21日~22日)

会場:幕張メッセ1ホール~9ホール

入場料:1,000円(中学生以上・前売)

1,200円(中学生以上・当日)
入場無料(小学生以下)

 東京ゲームショウ2013の開催に合わせ、様々なインタビューが実施された。ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアの河野弘プレジデントのインタビューに続き、ワールドワイドスタジオの吉田修平プレジデントの共同インタビューをお届けする。

今回発表されたハード群。これだけ新製品が並ぶのも珍しい

――プレイステーション 4の発売日も決定し、一般の方の反応などいかがでしょうか?

吉田修平氏: 我々にはプレコミュというPlayStation Networkの会員の方のコミュニティサイトがありまして、そこからは非常に強いご意見をいただいています。やっぱりE3で欧米では11月に発売すると発表して、それで日本も同じ時期、遅れても年内と期待していたユーザーさんが、やはり2月まで待たねばならないと言うことで、激しい怒りの声ですとかお叱りとかいただいているところではあります。一方で日本に向けたタイトルを充実させて、追加のタイトルも欠かせないように、発売の時期から日本でのタイトルを獲得したいというところに対してご理解を示していただいているユーザーさんもたくさんいらっしゃいます。

――SCEさんとしてはローンチのタイミングでソフトラインナップの充実は不可欠と言うことでしょうか?

吉田修平氏: ローンチのタイトルで言えば、海外のパブリッシャーさんはすでにものすごくたくさんあります。今年ではなく去年のE3の段階で、欧米でマルチプラットフォームで展開されているパブリッシャーさんはPCを中心にエンジンを作られているので、PCのパフォーマンスがどんどん上がっていって、去年のデモはPS3などの現行機では出せないグラフィックスのパフォーマンスのタイトルが出展されていました。

 つまり、パブリッシャーさんのほうもいつ次世代機がきても大丈夫ですよと、去年の年末に次世代機が発売されていても(ソフトを)発売できる準備が整っていましたし、ユーザーさんの方もそういった新作の発表を見ながら、よりよいハードウェアでゲームを楽しみたいという意見が多かったんですね。大手のパブリッシャーさんからもせっつかれているような状況でした。(パブリッシャーもユーザーからも切望されている)そういった状況で今年の年末に発売する十分な準備をしている市場が欧米と言うことですね。ですから欧米で作られたタイトルはたくさんあります。

 でも日本のユーザーさんは、日本人の好きな……あるいは日本のメーカーさんの作ったゲームを好まれる方が多い。そんな中で海外のゲームだけでローンチを迎えるのはどうなのかというのを強く意識しましたね。日本の市場はポータブル機が非常に強く、日本のパブリッシャーさんの多くは、ポータブル用にタイトルを作っておいでで、PS3の普及もそういった理由から欧米よりゆっくりだったんですね。今年PS3のタイトルが充実していて、家庭用ゲーム機の7割がPS3のタイトルであるとか、パブリッシャーさんもPS3でいいタイトルが作れるし、市場の販売もいいですし、欧米の市場と比べると次のハードがほしいという声がそれほど無かったんですね。

 2月にPS4を発表しまして、その反響がいろいろ出てきて、日本のパブリッシャーさんからもPS4をやりますよと言っていただいて、ユーザーさんの方からも期待が高まってきて、今はPS4に関心を持っていただいていますが、欧米のパブリッシャーさんに比べてスタート時期の違いも明らかで、それほど日本で焦ることはよくないというのが我々の判断です。

 年末に向けて「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」ですとか「グランツーリスモ6」ですとかがせっかく出ますし、PS Vitaも新しいハードやPS Vita TVも出ますし、マーケティングからのメッセージとしましてもPS4まで出してしまうと、ちょっと詰め込みすぎかなと言う判断もありました。



――日本のメーカーさんのPS4に関する反応はいかがですか?

吉田修平氏: 私はサードパーティさんと直接お話しして次世代機を導入する立場にないのですが、各地域の窓口の話を聞いていると、各メーカーさんともにPS4になって何をしたいのですかと、ちょっとピンとこないようでしいた。しかし2月のプレゼンですとかでPS4で用意しているサービスですとかをお話しするに従ってですね、「なるほどPS4はただ単にパフォーマンスがよくてグラフィックスが進化しただけではないんですね」と。ただネットワークで遊ぶだけではなく、様々なネットワークサービスを通じていろんなデバイスが繋がり、どこにいてもゲームに触れることができ、より自然に繋がるというところで、そう言う世界観というか、ゲームの楽しみ方を提案するのがPS4だというのを理解していただいてます。

 たとえば「deep dawn」とか、ネットワークに特化しながら様々なデバイスを含めてゲームを楽しめるような、PS4ならではの新しいタイトルを作りますよと言っていただいたメーカーさんも出てきました。「ファイナルファンタジーXIV」もPS3で好評ですけど、ユーザーさんをそのままPS4でサポートしますよと言っていただいてます。このほかにも「こういったことはできないか?」といったサービス面でのフィーチャーなど提案もいただいています。そういった意味では前向きになっています。

――PS4の発売日も決まり、発売まで半年を切りました。PS3の時は10万台しか出荷されず品切れになったのですが、今回はそのようなことはないのでしょうか。

吉田修平氏: そうですね。欧米では非常に多くの予約をいただいていますので、どこまで途切れずにハードを出荷できるかは予断を許さないのですが、生産も非常に順調に進んでいますし、日本での発売まで少しお時間をいただきましたし、日本のユーザーさんにはモノがなくならないように提供するような準備はしています。SCEJAの河野からのメッセージとして、今年中に予約いただいたお客さんには皆さんに発売日にお届けするということを約束させていただきました。

――ローンチタイトルにはPS4でできることの想いが凝縮されているんだと思うのですが、改めてその想いを語ってもらえますか?

吉田修平氏: まず、日本のユーザーさんすべてにダウンロード版を提供する「KNACK」ですけれども、PS3からPS4へとハードが高度になることでゲームが複雑化する傾向にあったと思うんです。コアゲームのユーザーさんはそういったゲームを求めていらっしゃるし、それはそれですばらしいことなんですが、PS4になってもう1度PS Oneの頃のような誰でも楽しめるタイトルを出したいという想いを持つマーク・サーニーさんと「サルゲッチュ」などを作ったチームと一緒に、ゲームを好きな人も初心者でも楽しめるゲームを作りたいと。ボタンは2個とか3個しか使わずに、説明書もいらないゲームを作りたいという申し出から作っています。

 特に海外のFPSやアドベンチャーなど非常に複雑なゲームが多い中、あえて非常にシンプルで、コントローラーを握ったらすぐにプレイできて最後まで遊べるゲームをラインナップに入れたいというのが制作意図ですね。そんな中で、PS4はパフォーマンスがでかいので、KNACKがパーティクルですとか小さな破片が集まって大きくなるですとか、そういったところはPS4らしさを入れていこうと。そしてPS4で用意しているソーシャルの機能ですね、1人で遊んでいるけど、アイテムを取ったら友達の取ったアイテムと交換できたり、スマートフォン用の「KNACK」のパズルゲームを作っているのですが、外ではパズルゲームをプレイして、アイテムを取ったらサーバー経由で、家に帰ったらそのアイテムが使えるといったことができるようになっています。

 「KILL ZONE Shadow Fall」ですが、「KILL ZONE」といえばこれまで比較的ダークなシリーズだったのですが、ここは1つ全く新しい「KILL ZONE」を作ろうということで、明るい景色であったり、遠くまで見渡せる広いところで遊べるですとか、コンパニオンを使って高いところから低いところに飛び移りながら降りていくですとか、従来のPS2やPS3では狭いところでグラフィックスの密度を出していたところを、PS4では広いところで、1本道とではなく、様々なところから敵が出てくる中ルートを開拓して、それに敵が反応したりとか言ったゲームを提供したいというのが目的ですね。ですから「KILL ZONE」はローンチタイトルの中では1番グラフィックスに力を入れたタイトルですので、次世代感を感じていただく上では1番適しているタイトルかなと思います。また、ネットワークでは、非常に多くのオプションをユーザーさんに提供して、ユーザーがルールをミックスして楽しめるようになっています。ユーザーが作ったルールを公開して投票できるようにもなっています。

 「DriveClub」は、これまで「モーターストーム」シリーズを作っていたイギリスのevolution Studioの新作で、レースゲームを究極までソーシャルなところに近づけていったらどうなるかというゲームです。美しいグラフィックスでかっこいい車で楽しむのはこれまでのレースゲームと同じなのですが、常に自分はどこかのチームに属していて、クラブメンバーとともにどこかのチームと戦っていたりですとか、マルチプレイの1対1で戦うだけではなくて、レースを1つプレイしてもすべてのコーナーのスピードですとか、ドリフトの長さですとか、いろんなところで他の人と競い合えます。自分で作ったチャレンジを他の人に配ったり、アプリケーションで他の人が遊んでいるオンライン上のレースを見られたりですとか、いろいろなデバイスを使ったソーシャルなレースゲームというのを提案するようなタイトルになっています。ちなみに、すべてのフィーチャーが含まれますが、コースや車種を絞ったバージョンをPS Plusエディションとして配信して、無料で遊んでいただこうと思っています。



――PS4になり、リモートプレイも本格的になってきましたが、対応タイトルも増えてくるのでしょうか?

吉田修平氏: 私の知る限りではUbi softさんの「Just Dance」以外はすべて遊べるのではないでしょうか。基本的にはすべてのタイトルでリモートプレイできるというのが、PS3のリモートプレイとの1番大きな違いと言えるでしょうね。PS3ではリモートプレイできrタイトルが少なかったので、ユーザーさんからなぜなんだと言われてきましたが、それはゲームメーカーがリモートプレイの機能をインプリメンテーションしなければならなかったんです。そのためにはメモリであったりCPUであったりのパワーをリモートプレイ実現のために割かなければならなかったんです。それがデベロッパーにとって非常時重荷になっていたんですね。

 でもPS4では、リモートプレイで必要なリソースをすべてシステムの方で用意しました。ゲームデベロッパーはなにもしなくてもリモートプレイできます。ただしPS Vitaは、ボタンの数が違いますし、タッチパネルなどDualShockにはないものがありますので、コントローラーのマッピングだけはゲームに応じてお願いしますとお願いしています。もちろんPS Vitaにはカメラが繋がりませんので、カメラの入力を必要とするタイトルですとかはリモートプレイではできないのですが、そういったタイトル以外は基本的にすべてリモートプレイで遊べるようになっています。

――こんな遊び方が出てきたらいいなというアイディアはありますか?

吉田修平氏: そうですね、私はPS Vitaが好きなんです。テレビの前でじっくりゲームをやるというのは気持ちの上で大変なんです。「さぁ、やるぞ!」みたいな。それに比べるとPS Vitaはすぐ立ち上げてすぐ遊んでと、忙しくてもほかのことをしながらでもちょこちょこ遊べますので、持ち歩きもできますし。そんな中でオプションとしてPS4につないで遊ぶ選択肢が出てくるんです。寝る前にちょっとPS4につないで遊ぶかとか非常に楽しみです。特にPS Vitaのスクリーンは大きくてPS3のゲームを映しても非常にきれいなんです。さらにPS4のゲームも表示させられるとなると、すごいゲーム機になるなと。こんな最上の体験はないなと、我々は自身で試して知ってますから、PS Vitaをお持ちの方には是非とも知ってほしいし、ユーザーさんはPS Vitaの価値が上がることになるんじゃないかなと思います。

――PS Vitaの電池の持ちは変わらないのですか?

吉田修平氏: リモートプレイはネットワークをがんがんに使いますので、ネットワークゲームを遊ぶくらいはなくなりますね。計っていませんが、PS Vitaの2000番ですと4時間から6時間でしょうか。

――新型PS Vita(2000番)の導入はシュリンクして薄くできるようになったのと、リモートプレイのためですか?

吉田修平氏: リモートプレイは1000番も2000番も変わりません。1番やりたかったのは
やはり薄く軽くですね。いろいろなところに手を加えた結果、手に持ったときの馴染みですね。非常にいいモデルになったんじゃないかと思います。

 ちょっとした薄さの違いで、持った感じはすごく変わるんです。我々としては非常に満足しています。でも不思議なもので、欧米の人は今のまま(1000番)でいいと言うんです。薄くなったら壊れやすく感じるといった反応がある。最初のモデルはがっしりしていていいとか。

 我々は薄くなって軽くなると、そう言うの好きで「おぉ!」ってなるじゃないですか。持ってる感じがしないとか。PSPが軽くなった時も、欧米では同じ反応だったんですよね。そこは不思議ですね。



PS Vita TVはこんなに小さい

――PS Vita TVは大きさもそうですが、価格も最初から想定されていたのでしょうか?

吉田修平氏: 非常におもしろいプロジェクトでして、PS Vitaの開発途中でアーキテクチャですとかOSとかいろいろなデバイスで使えるんじゃないかと考えまして、いろいろな試作プロジェクトを進めていたんです。そんな中で値段も含めて最初に商品として成り立つんじゃないだろうか? と形になったのがこれなんです。たとえばエントリー機としてPS Vitaでかかるいろいろなコンテンツやサービスを手軽に楽しんでいただけるとか、リモートプレイですとか、プレイステーションのユーザーさんに対しても、プレイステーションのユーザーさんではない新しいユーザーさんに対しても、1つのおもしろい魅力的な商品になるのではないだろうかと思ったんです。

 でも全く新しい家庭用機を出すという意気込みで作ったわけではないですから、PS Vita TV専用のコンテンツがあるわけでもないですから、できれば価格は下げてカジュアルな方が手に取りやすい、また、プレイステーションユーザーの人が追加で買いやすい価格にしたいというのは途中で持ちましたね。

――映像を楽しんでくださいというスタイルは、はじめからあったのですか?

吉田修平氏: そうですね。商品としてまとめる上で欧米ではビデオサービスが人気なんですね。日本はそこまでビデオサービスが普及していませんので、それをすごくお手軽な形でPS Vitaの使いやすい非常にさくさくとした動作感で導入するのに向いたデバイスになるんじゃないかと。PS Vitaにもビデオ系のサービスは入っていましたが、PS Vita TVによってもっとビデオサービスを誘致しようということでTSUTAYAさんですとかにお声がけさせていただき、いろんなサービスを利用できるようにしました。

 もちろん、PS Vita TVに導入されたことはPS Vitaでもできますから、PS Vitaでも利用できるようにしていきます。

(船津稔)