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【CEDEC2013】ゲームを多方面から強化するPS4の開発環境を紹介
PCライクな作りやすさと次世代機ならではの贅沢なフィーチャーで開発を加速する!
(2013/8/21 22:19)
8月21日より開催されたゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2013」では、プレイステーション 4関連の講演も行なわれ、次世代ゲーム機ならではの数々の機能が開発者向けの視点で紹介されている。
その中の1セッション「新時代到来:諸兄、ゲーム作ろうぜ!~PlayStation 4のビジョン、気持よく作れる制作環境~」と題されたセッションでは、SCE Japan Asiaの秋山賢成氏が登壇し、プレイステーション 4向けゲーム開発においてポイントとなる種々の要素が幅広く披露された。
そこでは特に「作りやすさ」が強調されており、現行機プレイステーション 3で(特にローンチ時期に)得られた教訓が徹底的に生かされている印象だ。また、単にゲームが作りやすいだけでなく、ゲームの体験を簡単に、幅広く共有するための多彩な仕組みが標準搭載されることなど、すでにE3での発表等で明らかになっている要素等も、開発者サイドの視点から改めて見てみることでその魅力が増すようで面白い。
開発者に使いやすいアーキテクチャ+充実のソフトウェア資産
本講演で秋山氏は、まずプレイステーション 4のアーキテクチャから話を起こしている。x86ベースの8コアCPU、RadeonベースのDirectX 11水準のGPU、そして何よりも8GBという大容量の高速GDDR5メモリ。各所から言われている通り、実にPC的なアーキテクチャにまとまっており、実際、PS4はPS3よりゲームが作りやすいという。
一例として、6月のE3 2013で好評を博したPS4向けインディーズゲーム「OCTDAD」を開発したチームのコメントが紹介されている。それによれば、“コンソール向けの経験者がいなかったにも関わらず、非常勤のプログラマーひとりで、3~4週間という短い期間でPC版からPS4上で安定動作させることに成功した”、という。そうしてE3 2013でのデモでは1度のトラブルもなく展示できたというわけだ。
この「作りやすさ」を支えるためにプレイステーション 4では、ローンチ前の現時点ですでに各種ミドルウェアのサポートを充実させている。例えば、サードパーティ向けに無償提供されるSCE内製のゲームエンジン「PhyreEngine」ではPS4、PS3、PS Vitaの3機種でのクロスプラットフォーム開発をサポート。現時点で3Dゲーム、2Dゲームのフレームワークが利用できるが、現在新たに、3D表示ながらゲーム内容は2Dという最近はやりの“2.5D”スタイルのフレームワークも準備中であるという。
そのほか、クロスプラットフォーム開発を可能にするミドルウェアとして、インディーズ界で圧倒的人気を誇る Unity もPS4を含むプレイステーション プラットフォームに対応する。そのサポートはAndroidベースのプレイステーション Mobileにもまたがっており、SCEとしてはUnityの大規模な開発者コミュニティがつくるエコシステムをプレイステーションファミリに取り込むことに多いに力を入れているようだ。
そのほかEpic Gamesの「Unreal Engine 4」、マッチロックの「Bishamon」といったエンジン/グラフィックス関連ミドルウェアを始め、多種多様なミドルウェアパートナーがPS4向けにサポートを提供しているとのことで、ソフトウェア資産がほぼゼロからスタートしたPS3のローンチ時期とは全く様相が異なる。開発者にとっては、PC上で開発し、のちにPS4に移植するというスタイルが難しくなくなるため、幅広いデベロッパーがPS4向けのゲーム供給に取り組むことが可能になりそうだ。
その裏付けとして秋山氏は、PS4が持つ高い性能について改めて言及し、「現行世代で実現したかったことが、苦労せずに実現できる、プロトタイプを作るのが早い」ことを強調した。高性能なCPU/GPUのおかげで贅沢なレンダリングができ、大容量のメモリのおかげで、特に最適化しなくても出したい3Dモデルが出せるというわけである。PC界隈と共通のx86アーキテクチャ、DX11世代の技術がそのまま利用できることも大きい。
これらのことを踏まえて総合的に評価するならば、PS4のローンチ、またその後に登場するゲームソフトのラインナップは、PS3世代のそれとは全く違った充実度になることが期待できそうだ。
次世代機ならではの贅沢なプラットフォーム機能でゲームの価値を向上
本講演はPS4の開発環境の紹介ということで、秋山氏はPS4が持つプラットフォーム機能についても網羅的に紹介している。モーションセンサーやタッチパッドもついた標準コントローラーDualShock 4、2眼式で奥行きも取れるPlayStation Camera(別売オプション)、体感型ゲームに最適なPlayStaion Move と入力装置だけでも充実しているPS4だが、プラットフォーム機能として組み込まれた贅沢なフィーチャーの数々にも注目したい。
まずPlayStaion Dynamic Menuと呼ばれる新バージョンのダッシュボードUIだ。メイン画面は従来のPS3に搭載されていたXMB(クロスメディアバー)や、PS Vitaに搭載されていたLiveArea UIよりも遥かにインテリジェンスなものとなっており、ユーザーが関心を持つコンテンツ中心に画面が構成される。
選択したゲームに関する最新情報(人気のビデオや、トロフィー情報など)も画面遷移なしに表示され、簡単にアクセスできるようになっているところがポイントだという。ソーシャル機能が強化されたプレイステーション Networkとの連携も高く、フレンドとの成績比較や、コメントの共有なども容易だ。
特にソーシャル面の機能は大いに強化されており、起動直後の画面ではプレーヤー自身のネットワークの中で起こっているすべてのダイジェストが網羅的に表示されるという。これはFacebookのタイムラインのような雰囲気で、フレンドからのオススメ、ゲーム成績の更新など、プレーヤーの体験を拡げるきっかけに満ちた楽しい物になっているようだ。
ソーシャル面ではフレンド機能も大きく変わっており、これまでオンラインIDで交流していたところに加えて、実名での識別も可能になる。実名での交流は、互いに許可し合ったフレンド同士で行なわれる仕組みで、ゲーム上だけの付き合いと、リアルも含めた付き合いの2レイヤーのフレンド機能がひとつのネットワークに乗る格好だ。
こういったソーシャル機能を活かすため、PS4の標準コントローラーであるDualShock 4には「Share」ボタンが付与されている。プレーヤーはこのボタンを押すことでスクリーンショットやプレイ動画を即座にネットワーク上で共有できるのだが、PS4本体が常にプレイ画面をハードウェアエンコードしているため、プレーヤー側には何の準備もいらない。ゲーム側ではAPI経由でチャプタマーカーを打つことができ、“ゲームプレイが一番盛り上がるシーン”だけを簡単に切り抜くような加工をユーザー側で簡単にできてしまうという仕組みもある。
さらにおもしろいのがゲーム観戦・配信機能だ。PS4の録画機能をリアルタイムに配信・観戦できるシステムがプラットフォーム機能に含まれているだけでなく、PC上などの配信・視聴機能とはちがって、視聴者側からコメント機能などを通じて、プレーヤーのゲームに反映することもできるというのが面白い。インフラとしてはUstreamを利用するようなので、PS4以外の端末からでも視聴できそうではある。しかしPS4上での視聴なら即座に参加したり、即座にそのゲームを購入するすることもできるようだ。
このほか、1台のPS4で複数ユーザーが同時にログインできるマルチユーザーサポートや、スマホやタブレット端末からプレイステーション Network機能にアクセスしたり、サブ画面化できる プレイステーション Appの存在も、オンライン使用前提の次世代機らしく興味深いところ。さらに、ゲームのDL販売につきもののストレスを解消するため、「全てのデータをダウンロードする前に即座にゲームを開始できる」という Play as you download 機能もサポート。SteamなどPC上のシステムでもまだ実現できていない最先端の機能だ。
これらの機能をワンパッケージで構成するPS4は、多くの人が手軽に上質な体験を共有できるゲームプラットフォームとして非常に高い完成度にまとまっている印象だ。個別の機能はPCでも実現可能だが、例えば動画の配信などは人それぞれに異なった方法、異なった形で実現せざるを得ない、一言で言えば「面倒くさい」フィーチャーだ。それらが共通化され、簡易に利用できる形でまとめられている点が大きい。このことは多くの開発者にとって自社コンテンツの価値を高める土台となるわけで、非常に魅力的に映るに違いない。