Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート
SCEAプレスカンファレンス
「PlayStation Moveはモーションセンシング型コントローラの完成形である」と自信を見せる
ソニー・コンピュータ・エンターテインメント・アメリカ(SCEA)は、サンフランシスコ市内の展示会場にて、プレスカンファレンスを開催した。
会場となったThe Concourse Exhibition Center |
SCE World Wide Studio Presidentの吉田修平氏 |
今年のGDCは、任天堂、Sony Computer Entertainment(SCE)、Microsoftのいずれの1社もプラットフォームホルダーとして基調講演を行なわない珍しい開催となっているが、会期中、唯一、大きな動きを見せたのがSCEであった。
プレスカンファレンスのオープニングで登壇したSCE World Wide Studio Presidentの吉田修平氏は、前置きの挨拶を手短に済ませ、「PlayStation Move」を発表した。「PlayStation Move」とは、昨年、ロサンゼルスで開催されたE3 2009にて「プレイステーション・モーションコントローラ」(仮名)として発表されたプレイステーション 3専用の新ユーザーインターフェイスだ。
■ プレイステーション 3の飛躍が止まらない
続いて登壇したSCEA Senior Vice President兼Marketing and Playstation NetworkのPeter Dille氏は「PlayStation Move」についてではなく、プレイステーション 3全体の最新動向を振り返るスピーチを行ない、「2009年はSonyのプレイステーション 3が勢いづいた年だった」と振り返る。
Dille氏は、2009年は「KILLZONE2」と「UNCHARTED2」の2作品が大ヒットを記録し、共に欧米ゲームメディアのゲームオブザイヤーを総なめしたことを取り上げ、「この2作品は共にプレイステーション 3専用の作品であった」ことを強調。さらに2009年後期にプレイステーション 3は299ドルへの値下げを敢行し、ユーザー数を拡大。
Dille氏は「2009年は世界的な経済危機でゲーム業界もその影響を大きく受ける中、日本市場とヨーロッパ市場のプレイステーションプラットフォームは2008年度より50%も多くのソフトウェアセールスを記録した」と述べ、経済危機の中にあってもプレイステーション 3ファミリーはプラス成長したことを強調した。
SCEA Senior Vice President兼Marketing and Playstation NetworkのPeter Dille氏 |
「2010年もプレイステーション 3の飛躍は止まらない」とDille氏は熱弁する。
256人同時対戦が可能な「MAG(MASSIVE ACTION GAME)」、世界のゲーム誌の格付けのほとんどで5点満点を獲得した「HEAVY RAIN」、日本で大ヒットを記録した大作RPGの「ファイナルファンタジーXIII」と「白騎士物語」も北米で発売され、2010年初頭のPS3のゲームラインナップは加速する一方だとDille氏。野球ゲームとしては珍しいPS3専用の「MLB10 THE SHOW」はテレビ放送さながらの臨場感あふれるプレイを実現し、野球ゲームの決定版として人気を集めており、北米でも発売を直前に控えた「GOD OF WAR III」も「今やプレイステーション 3フォーマットの牽引者となった」とDille氏は表現し、PS3のソフトウェアラインナップ拡充の勢いに衰えがないことをアピールした。
2010年、近未来に発売されるラインナップとしてはユーザーが自在に車やキャラクターを創作できる新ジャンルのカーレースゲーム「Modnation Racers」、世界が発売を望んで止まないナンバーワンレーシングゲーム「グランツーリスモ5」、先頃発表されるやいなや一大センセーションを巻き起こした近代戦タクティカルアクション「SOCOM 4」などをDille氏は挙げ、「2010年も1年を通してプレイステーション 3は盛り上がるはずだ」と声を荒げた。
256人対戦「MAG」 | 和製RPG「白騎士物語」 | 野球ゲーム「MLB10 THE SHOW」 |
欧米のPS3アイコン「GOD OF WAR III」 | UGCレーシング「ModNation RACERS」 | 和製レーシング「Gran Turismo5」 |
近代戦TPS「SOCOM4」 |
■ 「PlayStation Move」はモーションセンシング型ゲーミングデバイスの完成形である
Dille氏は、一通り、PS3プラットフォームが勢い付いていることをアピールしたあとで、吉田氏が冒頭でアナウンスした「PlayStation Move」に話を戻した。
「PlayStation Move」は、「既存のあらゆるモーションセンシング対応のゲームインターフェイスよりも高速で正確である」とDille氏はいう。
「我々は、任天堂がモーションセンシングのゲームデバイスを広く普及させたことを高く評価する」としながら「モーションセンシングのゲームデバイスとしては我々は『EYE TOY』の時から研究してきており、満を持してモーションゲーミング体験をハイデフゲームの世界に持ち込むことになる」とDille氏は語り、「『PlayStation Move』がWiiの真似ではない」ということを間接的に主張した。
「PlayStation Move」が発表 | 「EYE TOY」がモーションセンシング型ゲーミングデバイスの元祖だと主張するSCE |
Dille氏は、さらにWiiリモコンとの違いを述べていく。
「これまでのモーションセンシングゲーミングデバイス(≒Wiiリモコン)は、コントローラーをポインティングバイスとしたり、そのコントローラーの動きだけを検知するモノであった。しかし、『PlayStation Move』はカメラデバイスとの連携により、ゲームコントローラーとプレーヤー自身の挙動をゲームへと入力させることができ、本当の意味でのゲーム世界とのインタラクションや、ゲーム世界への没入感を実現する」(Dille氏)。
「PlayStation Move」ではカメラデバイスにより、プレーヤーの動き、奥行き、そしてコントローラーの動きを総合して検知でき、さらにその認識精度も正確であるため、モーションセンシングそのものが物珍しく、モーションセンシングコントローラを扱うことそのものがゲーム体験に相当したWiiとは違い、SCEとしては「『PlayStation Move』は完成度の高い新しいゲームコントローラーである」ということを強調したいようだ。
老若男女からハードコアゲーマーにまで対応する「PlayStation Move」 |
Dille氏は「『PlayStation Move』は、老若男女向けのカジュアルゲーム、ソ-シャルゲームを提供する土台にもなるが、ハードコアゲーマーの新しいゲーミングデバイスとしても訴求していきたいし、そのポテンシャルがあると信じる」と述べる。
なにより、「PlayStation Move」は、カメラデバイスを使用するため、カメラで撮影したリアルタイム撮影映像とゲーム画面を連携させた「拡張現実的ゲームプレイの世界」を提供できることが、一般ユーザーにとっては1番わかりやすい特長となる。
ただ、ゲーム開発者に対しては、必ずしも「PlayStation Move」の全ポテンシャルを活用することは必須とはせず、ゲームによって、「PlayStation Move」の活用形態にはバリエーションが設けられるだろうとしている。具体的には、Wiiと全く同じように、モーションセンシング・コントローラーの動きだけを入力させるゲーム、かつての「EYE TOY」のようにカメラによる映像入力を主体としたゲーム、そして両方を連携して活用させる「PlayStation Move」のフルスペック的ゲームの“3”バリエーションだ。
■ 「PlayStation Move」スターターパッケージは100ドル未満で提供予定
「PlayStation Moveスターターパッケージ」は100ドル未満で提供予定 |
「PlayStation Move」の発売は2010年秋を予定。「PlayStation Move」のスターターパッケージとして、
・プレイステーション・アイ(PlayStation EYEカメラデバイス)
・ゲーム1タイトル
・「PlayStation Move」コントローラー
の3アイテムをワンパッケージにした製品を100ドル未満で発売することもアナウンスされた。
具体的な発売日は決定していないが、「PlayStation Move」と同時期に発売されるタイトルとしてスポーツゲームの「SPORTS CHAMPIONS TABLE TENNIS(仮)」、中世ファンタジーの世界感の武器格闘アクション「SPORTS CHAMPIONS GLADIATOR DUEL(仮)」、ファミリー向けミニゲームパック「Move Party!」、ストリートファイト系の格闘アクションゲーム「MOTION FIGTERS(仮)」などが紹介された。
中世ファンタジーの世界感の武器格闘アクション「SPORTS CHAMPIONS GALDIATOR DUEL(仮)」 | |
スポーツゲームの「SPORTS CHAMPIONS TABLE TENNIS(仮)」 | |
ファミリー向けミニゲームパック「Move Party!」 | |
ストリートファイト系の格闘アクションゲーム「MOTION FIGTERS(仮)」 |
これ以外に、既存の「リトルビッグプラネット」を「PlayStation Move」に対応させたデモも公開。こちらは拡張パックとして発売されるのか、「リトルビッグプラネット」を所有する「PlayStation Move」ユーザーに無償に提供されるのかは未定だ。こちらは通常のプレイキャラクターを操作するプレーヤーと、ゲーム世界そのものを「PlayStation Move」を使用してインタラクトするプレーヤーとの協力プレイを行なうようなゲームデザインとなっていた。
「PlayStation Move」に対応させた「リトルビッグプラネット」をデモ |
【「リトルビッグプラネット」デモムービー】 |
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2009年に発売を予定していた「PlayStation EYE」を使用したペット育成ゲーム「EYE PET」も、「PlayStation Move」への対応を行なうために2010年秋の発売へと延期が発表されている。
発売が延期されていたペット育成ゲーム「EYE PET」も「PlayStation Move」対応へ |
【「EYE PET」デモムービー】 |
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Dille氏が強調したハードコアゲーマー向けの「Playstation Move」対応タイトルとしては前出の「SOCOM 4」がラインナップされる。こちらも2010年内の発売を予定。
ハードコアゲーマー向けの「Playstation Move」対応タイトルとして期待される「SOCOM 4」 |
■ 「PlayStation Move」はCELLプロセッサのSPE 1基の負荷だけで動く!
筆者が取材したところによれば、「PlayStaion Move」のPS3におけるレイテンシーは1フレーム以内だとのことで、これはPS3標準のDualShockコントローラーとほぼ同等の速度ということになる。Dille氏が「ハードコアゲーマーも納得して使ってもらえる」ことを強調していた根拠はここにある。また、気になるCELLプロセッサにおける負荷率だが、これは1SPEをフル占有させることで現状事足りているという。
「PlayStation Move」のコントローラーは全部で4基までPS3へ登録可能で、同時認識が可能となっている。4基を認識させたときもSPEの占有は1基のままで変わらないという。つまり逆に言うと「PlayStation Move」対応タイトルはSPE 1基を明け渡すことさえ覚悟できれば、理論上は全てのゲームを「PlayStation Move」に対応させることは可能だと言うことだ。ただし、認識個数を増やせば増やすほど遅延は大きくなるとのことなので、リアルタイムゲームには2基同時使用までを奨励するようだ。パーティゲームのようなリアルタイム性を重視しないタイプのゲームは4基同時使用もアリだと思われる。
「PlayStation Move」コントローラーには3軸のジャイロセンサー、3軸の加速度センサー、地磁気センサーを搭載し、さらに振動ユニットも内蔵され、ゲーム表現によって振動するようになっている。「PlayStation EYE」の映像認識により、PlayStationコントローラーの遮蔽や奥行き情報も的確に捉えられるため、格闘ゲームでは裏拳のようなアクション、卓球ではラケットの向きの使い分けによる打球の方向打ち分けだけでなく、手首の回転を使ったバックスピンヒットなども行なえる。実際に使ってみると、Dille氏の言うようにレスポンスが速く、認識精度が高く、「Wiiとは違う」ということを強調したくなるのはよくわかる。
アナログスティックとボタンを実装した「PlayStation Move」サブコントローラーには、センサー類は入っておらず、実質的に「DUALSHOCK」コントローラーの形状変更簡略化版という位置づけで、こちらも4基までシステムに登録ができるとのこと。
技術的にも、精度的にも「Wiiとは違う」をアピールするSCEだが、一般ユーザーに「違う」ことをアピールするのにはなかなか難しそうであり、SCEのマーケッティング面での力量が試される。ちなみに、プレスカンファレンスで公開された全タイトルの現地担当者に「日本での発売はあるのか」を確認したところ「自分が聞いている限り知らない、聞いていない」という返答であった。つまり、筆者が取材した限りでは、日本のSCE側としては、この「PlayStation Move」の展開は決めかねているという印象を持った。PS2のときの「EYE TOY」も日本では成功を収めたとは言い難かったため、慎重になっているのだろう。
なお、実際の「PlayStation Move」対応タイトルのゲームインプレッションは、別レポートを参照して欲しい。
【「PlayStation Move」プロモーションムービー】 |
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(2010年 3月 11日)