YNK Japan、再開発中のオンラインFPS「STING」を招待ユーザーに披露
新「STING」はMOD機能を利用して大拡張、2月25日サービス開始に向けて特設サイトを近日オープン!


【STING】

OBTサービス開始日:2月25日

スペシャルサイト公開日:2月19日



 株式会社YNK JAPANは、サービスを休止していたWindows用オンラインFPS「CODE NAME STING」の最新情報を公開した。本作は昨年11月2日よりクオリティアップのための再開発の段階にあり、様々な仕様変更、機能拡張が行なわれている。タイトル名をシンプルに「STING」と改めたこともそのひとつだ。

 「STING」のサービス再開は2月25日を予定し、その形式は誰でも参加できるオープンベータテスト(OBT)。また、それに先立つ2月19日にはNHN Japanのオンラインゲームポータル「ハンゲーム」と、YNK JAPAN公式のスペシャルサイトをオープンする。それぞれのサイトにて、サービス再開までにユーザー登録を行なうと限定アイテムがもらえるというキャンペーンも遭わせて行なわれる。

 昨年、プロデューサーである康 詩温(Hac)氏へのインタビュー記事でお伝えしたとおり、本作は大幅なリニューアルを目指してサービス休止という珍しい事態になっているが、実際にゲームに変わるのかという疑問については、2月6日にYNKオフィス内で行なわれたクローズドベータテストにて多くの情報が明らかになったので、その模様を交えて詳しくお伝えする。

【クローズドベータテストの様子】
クローズドベータテストは、応募ユーザーをYNKオフィス内の会議室に招待して行なわれた。会場には十数台のPCが並べられ、開発中バージョンの新生「STING」を実際にプレイできた。およそ1時間のプログラムで4回に分けて行なわれたこのテスト兼デモンストレーションで、100名を超えるユーザーが実際にプレイを体験できた模様だ
体験プレイ用に用意されたPCは株式会社サードウェーブ(ドスパラ)が提供。このPCは近く「STING推奨モデル」として一般販売されるそうだ。また、マウスパッド、ヘッドセットにはマスタードシード提供のゲーミングモデルが設置されていた



■ 新ゲームモードはMODで実現? 「STING」はSourceエンジンの柔軟性を生かしたオンラインゲームに

「STING」プロデューサーのHac氏
「STING」推奨PCを紹介したドスパラの坂本義文氏
ユーザーインターフェイスは一新され、クリックしたプレーヤーの外観、戦績などがすぐにわかるようになった

 この一風変わった「クローズドベータテスト」は、募集に答えた100名を超えるユーザーとメディア関係者を対象にYNK JAPANオフィスの会議室にて行なわれた。その冒頭で説明を行なったHac氏は、その日提供されるバージョンについて「ユーザーインターフェイスやゲームモードなど、機能面の追加要素をご覧いただくためのものです」と内容を紹介した。完成版に予定されている新キャラクター等は含まれていないが、ユーザーインターフェイス周りのデザインがガラリと変更になったため、画面から受ける印象が大きく異なっている。

 目玉となるのは新マップ、新ゲームモード等を「MOD」の形で実現していることだ。MODというのは、MODification(改造)の略語で、PCゲームの世界では「ユーザーの手によりゲーム内容を変更すること、あるいはそのモジュール」という意味で使われている言葉だ。「STING」が採用しているゲームエンジン「Source」はその点において非常に柔軟性の高いエンジンであり、同エンジンを採用した「Half-Life 2」などのゲームでは無数のMODが登場している。Valveの「Counter-Strike」も元々はMODである。

 ゲーマーとして深い経験を持つHac氏は、このSouceエンジンの持つ柔軟性に注目したのだろう。これはメーカーが作ったものをそのままユーザーが遊ぶ、という従来的なオンラインゲームの形を変えるという試みであり興味深い。そこでまずHac氏は、国内の腕利きMOD制作者に新マップの制作を依頼したという。

 そうして制作されたマップが、今回のデモンストレーションで体験プレイに供された「YNKオフィスマップ」だ。このマップは、YNK JAPANが入居しているビルとフロアの様子を克明に再現したもので、リアルスケールのオフィス内で銃撃戦を行なうことができる。会議室、トイレ、非常階段、エレベーターなどまで再現されているので、一通り歩き回って見るだけでも面白い。

 もうひとつの新マップは、スキージャンプをテーマにしたものだ。マップ内には巨大なスキージャンプ台と、頂上に登るためのロープウェイからなっており、ジャンプ台周りの構造はかなりリアル。ジャンプ台を滑って加速すれば数十メートルの大ジャンプをすることができる。うまくジャンプできずK点を超えることができないと即死だ。Hac氏は「こういうお遊び的な要素もどしどし入れていきたい」と語る。

 新マップのほか、ゲームモードのMOD要素も紹介された。こちらは「ウィンターモード」というMODで、既存のマップを冬景色に変えてしまうというものだ。このゲームモードでプレーヤーは武器として「雪玉」を使い、雪合戦のような形で対戦を行なう。雪玉は着弾時に爆発し、半径数メートルの敵プレーヤーを吹っ飛ばしてしまう威力だ。銃の精密なエイミングが苦手なプレーヤーでも、これなら楽しめそうだ。

 このような形で、新しい開発体制による成果の一部が公開された。Hac氏は国内の腕利きMOD制作者に対して、継続的にマップの制作を依頼していくようだ。これにより、従来の開発体制では不可能なペースで、一般ユーザーからの要望に答えられるコンテンツを提供していく、というのがHac氏が狙う真のメリットであると言えるだろう。


【新マップウォークスルー】
動画では、ビルの正面から中に入り、エレベーターを上がってYNKのオフィスへ。給湯室の冷蔵庫まで再現されている


YNKのオフィスを模した新マップ。一部テクスチャーが未完成だが、YNKが入居しているオフィスビルの構造がかなり忠実に再現されており面白い。机に並べられたPCが手榴弾の爆発で吹っ飛んでしまったり、スイッチを操作すると建物内の照明が落ちてしまったりと、設定を演出面にも生かしている
体験プレイできたもうひとつの新マップはスキージャンプをテーマにしたもの。ジャンプ台とロープウェイのゴンドラが再現され、K点越えの大ジャンプをしなければ即死というギミックが組み込まれている。お遊びマップとしてそれなりに楽しい
新たに実装されるという「ウィンターモード」。既存マップを冬の景観にしてしまい、武器として「雪玉」が使えるようになる。雪玉は手榴弾を派生させて作ったもののようで、着弾すると大爆発。着弾点の側に居る敵をまとめて吹き飛ばしてしまえる威力



■ 「一般ユーザーもMODを作れるのか?」という疑問
 当面は腕利きMOD制作者との協業という形でコンテンツを提供

体験プレイにいそしむメディア関係者
Hac氏より、マスタードシードの最新マウスパッド「SWIFT」も紹介された

 今回実際に体験プレイが可能だった新マップ「YNKオフィス」と新ゲームモード「ウィンターモード」は、Hac氏が目指す新しい「STING」の開発体制におけるごく一部の成果だということができる。Hac氏は今後の展開について、MOD制作のスタイルでマップやゲームモードを拡張していくことにより、より多くのコンテンツをユーザーに届けていきたい、という趣旨の説明を行なっていた。

 そこで気になるのが、一般プレーヤーもMODを制作して、それを「STING」上で遊ぶことができるようになるのか? ということになるだろう。現時点でHac氏がMODの制作を依頼しているのは、既に実績のある在野のMOD制作者であり、YNK JAPANと半公式的な協業体制を築いている。したがって、現状としてはメーカ側が一方的に提供するものをユーザーが遊ぶという構図から脱していない。

 これを「Half-Life 2」のようなパッケージゲームにおけるMODと同じレベルに持っていくとするならば、一般ユーザーの制作参加が必要不可欠だ。Hac氏はこれについて、「いずれユーザーの方にも制作ツールを提供して、YNK JAPANに送ってもらい、我々が組み込むような形」を考えているという。パッケージゲームのMODとは違い、あらかじめクライアントデータにMODデータを仕込み、それを従来のパッチと同じ形で配信するという仕組みになるようだ。

 その際ユーザーが使えるツールは、Souceエンジン向けのMOD制作ツールである「Source SDK」、「HammerEditor」とその周辺ツールが基本となる。しかし実際に本格的なMODを制作したり、テストするためには、ユーザー側で「STING」で使われているアセットやスクリプトも利用できるようになる必要があるのだが、そのあたりの質問に対してHac氏は「今後整備していく」と返答している。

 また、ユーザー制作のMODが多数制作された場合、YNKがゲーム側に組み込むものを絞り込む必要があるが、そのあたりの基準等についても、今後検討していくということだ。厳しく言えば、ユーザーがMODを制作して、それを「STING」上で配信して遊ぶ、という将来像があることに対して、具体的なプランはまだひとつも提示されていない。しかし、その実現がオンラインゲームでは非常に困難であることもまた現実なので、ともかくその目標を示しただけでも、「STING」は非常に興味深い方向を向いていると言えるだろう。

 現時点の開発状況を総合すると、新生「STING」がHac氏の目指す形になるのは、少なくとも2月末に予定されている正式サービスの再開時点ではなく、その当分後ということになりそうだ。ひとまず2月末のサービス再開時点で用意される具体的なコンテンツの情報も気になるところだが、そのあたりは開始日が近づくにつれて順次公開していくとのこと。まずは2月19日に予定されている、「ハンゲーム」とYNK JAPAN公式スペシャルサイトのオープンを待ちたい。


(2010年 2月 12日)

[Reported by 佐藤カフジ ]