マイクロソフトブースレポート
「Project Natal」がついに日本上陸。「塊魂」、「バーンアウト」、「スペースインベーダー」などを“体感”プレイ!

9月24日~27日 開催(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 Xbox 360を展開するマイクロソフトは、今年も大規模なブースを出展し、サードパーティーを含む、20以上のホリデーシーズン向けラインナップを披露した。近年、プラットフォーマーは、東京ゲームショウ向けのサプライズを準備するようになってきているが、今年のマイクロソフトのサプライズは、意外にも「Project Natal」だった。

今年も大勢のコンパニオンが出迎えてくれる

 “意外にも”と書いたのは、東京ゲームショウは年末商戦をターゲットにしたコンシューマーショウであり、今年のE3で発表されたばかりのまだコードネームで呼称される新規ハードウェアを発表する場としてはふさわしいとは思われないからだ。しかし、今回マイクロソフトは、披露対象をTVを中心とした映像メディアに絞り、新感覚インターフェイスのインパクトをとりあえず原寸大で伝えてしまうという戦略に出たようだ。

 9月24日に発信されたマイクロソフトのプレスリリースのタイトルにも「Project Natal」の文字が躍る。内容は、国内大手メーカーを含むワールドワイドの大手ゲームパブリッシャーの多くが、「Project Natal」を“支持する”というもの。支持のニュアンスは曖昧だが、基本的には今後「Project Natal」への“対応を行なっていく”という意思表明と言って良いだろう。発売時期や価格、対応タイトル等の具体的な情報については一切進展はなかったものの、プロジェクトとしては確実に前進しつつある。

 今回は残念ながら一般公開はしておらず、TVメディアを中心としたごく一部のメディアのみに公開するに留まったが、短時間ながらも「Project Natal」のインパクトを間近で確認することができたのは大きな収穫だった。マイクロソフトブースレポートは、本邦初公開となった「Project Natal」のインプレッションを中心にお届けしたい。

 なお、マイクロソフトの今年一押しタイトルとして扱われていた「Halo 3:ODST」「Forza Motorsport 3」と、「Halo」の世界観をモチーフにしたアニメーション作品「Halo Legends」の3タイトルについては詳しい試遊レポートを掲載しているのでそちらを参照頂きたい。


【マイクロソフトブース】
ファーストパーティータイトルは最小限にして、プラットフォーマーとしてサードパーティータイトルを前面に押し出したブースデザイン。Z指定コーナーは、「Left 4 Dead 2」(Valve)と、「アサシンクリード2」(Ubisoft)の2タイトル



■ ゲームマシンからコントローラーを無くすXbox 360フランチャイズ最大のプロジェクト「Project Natal」

マイクロソフトブースの裏側にひっそりと存在する「Project Natal」コーナー。グリーンの部分からちょっとだけのぞき見できる
E3での「Project Natal」のデモシーン。プレイしているゲームは「Ricochet(リコシェ)」と名付けられた、全身でプレイするスカッシュのようなゲームだ
取材に協力頂いたマイクロソフト 執行役ホーム&エンターテイメント事業本部長の泉水敬氏。出展できたことに大きな手応えを感じているようだった

 細かい話に入る前に「Project Natal」の概要について簡単にまとめておくと、「Project Natal」は今年のE3で発表されたまったく新しいゲームデバイスである。カテゴリとしては、体の動きを検知してそれをインゲームでの動きに変える体感型のインターフェイスだが、任天堂のWiiリモコンや、SCEのモーションコントローラーと決定的に異なるのは、デバイスを体に装着する必要がないところだ。

 それを実現するためのハードウェアが「Project Natal」センサーと呼ばれるもので、RGBカメラ、深度センサー、マルチアレイマイクで構成される。RGBカメラによって基本的な動きを検知したり、顔認識を行ない、深度センサーで3次元の動きを検知する。マルチアレイマイクは、周囲のノイズを除去しながら音声認識を行なってくれる高機能マイク。ボイスチャット時に使用するヘッドセットのマイクの替わりも果たしてくれるため、「Project Natal」があれば、ゲームコントローラーのみならず、ヘッドセットからも解放されることになる。

 「Project Natal」は、これらのハードウェアを駆使して手や足、身の動きや音声等を使った直感的な操作を実現することにより、ゲーム業界に対してまったく新しいゲームを創出する機会を提供すると同時に、ゲームコントローラーそのものをハードルと感じる非ゲーマー層の開拓を目指していく。現在進行形のXbox 360フランチャイズ最大のプロジェクトだ。

 マイクロソフトブースを視察していたマイクロソフト 執行役ホーム&エンターテイメント事業本部長の泉水敬氏に「Project Natal」参考出展の理由について訪ねると「E3で出展した際に、あれは実際は操作してないのではないかと言われたりもしたので、実際にやっていただく機会を設けたかったというのが理由のひとつ。もうひとつはNatal SDK(Software Development Kit)の配布もスタートしたので、日本のパブリッシャーの皆さんにももっと興味を持って頂きたいということです」とコメントしてくれた。日本のメーカーから期待される「Project Natal」コンテンツの“形”については「それは私にもわかりません。何が出てくるか私も楽しみです(笑)」と、すでにそれなりの手応えを感じている様子だった。

 ちなみに、現時点で支持表明を出した日本のメーカーは、カプコン、コーエー、コナミデジタルエンタテインメント、スクウェア・エニックス、セガ、テクモ、ハドソン、バンダイナムコゲームス、フロム・ソフトウェアの9社。このうちスクウェア・エニックスを除く8社が、今後、何らかの形で「Project Natal」へのタイトル供給を明言している。




■ 「Ricochet(リコシェ)」から、「スペースインベーダー」まで、あらゆるタイトルが「Project Natal」に対応可能

取材に応じていただいた「Project Natal」Creative DirectorのKudo Tsunoda氏
画面は撮影禁止だったため、Tsunoda氏の写真で代用したい。写真は「Ricochet(リコシェ)」をプレイしているシーン。「Ricochet」の画面のみ公開されている
「バーンアウト」をプレイ中。右足を前に押し出すことでアクセルとなる
「塊魂」は大玉を転がす感覚でプレイする。どういう動きをインゲームの操作に変えるかの自由度が高いところが「Natal」の魅力と言えそうだ
「スペースインベーダー」は、自らがインベーダーっぽい動きで操作する

 さて、今回は短時間ながらプライベートブース内で「Project Natal」の取材を行なうことができた。デモを行なってくれたのは、E3でも「Project Natal」のデモを行なったCreative DirectorのKudo Tsunoda氏。Tsunoda氏の撮影は許可されたが、肝心のモニタの映像は残念ながら撮影禁止だった。理由はゲーム映像側の問題ではなく、「Project Natal」センサーの各パーツが剥き出しの状態で、明らかに開発途上と見られる状態であったためだ。

 最初のデモは、E3でも行なわれた「Ricochet(リコシェ)」(Microsoft Game Studios)。全身を使ってボールを打ち返し、奥のパネルに当てていくという、全身でプレイするスカッシュのようなゲームだ。全身を使って複数のボールを打ち返していくことになるが、特定のパネルを壊すとボーナスボールがたくさん出現して、両手両足を使っても足りない“てんてこ舞い状態”が遊び手にも、見た目にも楽しいパーティー向けのゲームだ。

 「Ricochet」はゲームとしては非常にシンプルだけに、「Project Natal」タイトルとしてのポイントは、体の動きをいかに正確にインゲームに伝えているかに尽きる。同社がリリースしている「Xbox LIVE ビジョン カメラ」とは比較にならないぐらい正確に動きを検知するが、見ていて感心させられたのは、“性別検知機能”だ。

 試遊者が替わると、「Project Natal」センサーが自動的にそれを認識し、シームレスに新しい遊び手に“操作権”が移るが、その際にRGBセンサーが性別まで読み取り、自動的に男性なら男性のアバター、女性のアバターに切り替わっていた。これは事前に登録しているわけではなく、RGBセンサーで顔認識等を行なうことにより自動的に判断しているという。性別を自動的に判別してくれるデバイスというわけだ。

 続いてのデモは、E3でも披露されていた「バーンアウトパラダイス」(エレクトロニック・アーツ)。手をハンドルを持つような形にして左右に回すことで車の移動を行ない、右足を前に移動させることでアクセル、後ろに移動させることでブレーキとなる。とりあえず「Natal」でレースゲームも遊べるというデモだが、ハンドル操作そのものは必要十分な検知速度に達しているという印象を持ったが、今時そんなにシンプルな操作で済むレースゲームは少ないし、アクセルワークにやや難があるように感じられた。レースゲーム等の操作の複雑なゲームへの対応は今後注目される部分だ。

 3つ目のデモは、「ビューティフル塊魂」(バンダイナムコゲームス)。運動会の大玉転がしの要領で、手で大玉を支えるようにして構え、前後左右に振って操作する。思わず笑ってしまうぐらい直感的な操作体系だが、Tsunoda氏は「塊魂は操作の難しいゲームだが、『Natal』なら誰でも簡単に操作できる」と、Natalへの対応のメリットを強調。確かに「Natal」によって「塊魂」は文字通り誰でも楽しめるゲームに昇華したという印象を持った。「ビューティフル塊魂」のような、シンプルなゲーム性を持つゲームは「Natal」に向いていると言えそうだ。

 最後のデモはXbox LIVE版「スペースインベーダー エクストリーム」(タイトー)。横にカニ歩きをして自機を操作し、インベーダーへの攻撃は、両手を真上に突き上げるポーズ。検知するアクションをユニークな体勢にして、パーティーゲーム的な性格を強めるような対応も可能というデモだ。

 4つのデモで印象的だったのは、「Project Natal」は作り手側にとっても遊び手側にとっても非常に自由度の高いインターフェイスであるところだ。たとえば、Wiiリモコンの操作に特化したタイトルを開発しようと思えば、それは必然的にWii専用タイトルとなってしまうケースが多い。しかし、「Project Natal」は、その対応が必ずしもXbox 360専用タイトルになることを意味しない。

 なぜなら、従来のマルチプラットフォーム戦略に基づいて全プラットフォームへの展開を果たしながら、Xbox 360版のみ、ゲームコントローラーへの操作に加えて、「Natal」への操作にも対応させることが可能だからだ。それは他プラットフォームへの展開を阻害せず、メーカーのデメリットはない。逆にマイクロソフトとしては、他プラットフォームへの決定的な差別化という意味で大きなアドバンテージを持つことになる。発売時期、価格、対応タイトル、新しいゲーム。「Project Natal」に関しては気になることは山ほど残されているが、首を長くして新しい発表を待ちたいところだ。


【スヌーピーフライングエース】
今回唯一の初出タイトルは、Xbox LIVEアーケードタイトルの「スヌーピーフライングエース」。スヌーピーを主人公にしたフライトシューティングゲーム。スヌーピーと言うことでカジュアルなゲーム性を想像してしまうが、実際はかなりハードボイルドなゲーム。最大16人までのオンライン対戦に対応。発売時期、価格は未定


(C)2009 Microsoft Corporation. All Rights Reserved

(2009年 9月 24日)

[Reported by 中村聖司 ]