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Microsoft、オムニバスアニメーション「Halo Legends」インタビュー
日本のアニメクリエイターが多彩な個性で描く7つの「Halo」

9月17日収録

会場:マイクロソフト本社

「Halo Legends」
発売日・価格:未定


 米Microsoftは、「Halo」シリーズのエピソードをを複数のオリジナルアニメーショートフィルムで提供する新プロジェクト「Halo Legends(ヘイロー レジェンズ)」を発表した。同アニメーションは日本でも発売を予定しているが、現時点では発売時期、価格共に未定となっている。

 「Halo Legends」はボンズ、カシオエンターテイメント、Production I.G、STUDIO4℃、東映アニメーションの各社が「Halo」の様々な時代や種族を題材に7本のアニメーションを作成するというプロジェクトだ。下のプロモーションビデオではわずかなシーンしか見ることができないが、、硬派なSFテイスト、不思議なタッチの作品、悲劇を予感させる男女のキャラクター、軽快なアクションなど、クリエイターによって様々なアプローチを行なって作品を作っていることがわかる。

 これらの作品はマイクロソフトのパートナーである Warner Home Video が販売元となる。発売に関する詳細は後日発表予定で、一部のエピソードは、「Xbox LIVE」内に新たに設けられる「Halo Waypoint」という情報発信サイトで初プレビューが実施される。初プレビューは、今秋より展開予定となっているという。

 今回、マイクロソフト代田橋オフィスで作品公開に先がけてインタビューが行なわれた。米Microsoft「Halo」のフランチャイズチームフランチャイズ開発ディレクターのフランク・オコーナー氏をはじめ、本作のプロデューサーを務めるJ-Spec Picturesのジョセフ・チョウ氏、そしてクリエイティブディレクターを務める荒牧伸志氏、さらにSTUDIO4℃、東映アニメーションの制作スタッフから作品の思いを聞くことができた。


【「Halo Legends」プロモーションムービー】


■ シリアス、ギャグテイスト、メカにドラマ……積み重ねられたアニメ技法で描かれる新しい「Halo」

米Microsoft「Halo」のフランチャイズチームフランチャイズ開発ディレクターのフランク・オコーナー氏
本作のプロデューサーを務めるJ-Spec Pictures代表取締役のジョセフ・チョウ氏
クリエイティブディレクターを務め、カシオエンターテイメント制作の「The Package」を担当した荒牧伸志氏
東映アニメーション制作の「OddOneOut」を手がけた西尾大介氏

 「Halo Legends」のプロモーションフィルムを見て最初に驚かされるのはアニメーションのバリエーションの豊かさである。各作品のテイストは見事にバラバラなのだ。アーティスティックな絵画風、ミサイルが乱れ飛ぶSF風、キャラクターが情感たっぷりに語り合う場面を描いたり、さらにはドタバタのギャグテイストと、日本のアニメクリエイター達が作り上げたアニメーションの手法を用い、「Halo」という素材を表現しているのがわかる。これは「Halo」のフランチャイズチーム、発注側の注文なのだろうか?

 米Microsoft「Halo」のフランチャイズチームフランチャイズ開発ディレクターのフランク・オコーナー氏は、「『Halo』はフィギュアや小説、アメコミなど様々なメディアでフランチャイズを行なってきましたが、“クリエイター達の才能を発揮してもらう”という部分に特に注力しています。アメコミ作家など様々なクリエイター達によって、それぞれのスタイルで表現して欲しい。『「Halo Legends』もぜひそうしたいと思っていました」と語る。

 制作を依頼するにあたり、オコーナー氏は今回アニメ作品とするためのストーリーの核となる部分を提示した上で、実際にどういったストーリーにしていくかは各監督と細かく相談していったという。「このうちあわせは長く、濃密なものになった」とオコーナー氏は語る。そこでオコーナー氏が大事にしたかったのは、各クリエイターの個性を十分に発揮してもらうこと。話の核を提示するだけでなく、日本側から世界観や細部の設定などの質問に答えていき世界観の理解を深めていった。作品としてのストーリー、展開などは日本側で決め、それに対して話し合っていくという形を取った。

 会場では各作品のダイジェスト映像を見ることができた。ゲームのようにリアル寄りではなく、アニメの手法で描かれたキャラクターが登場したり、ギャグテイストの作品があったり、作品によってはゲームの「Halo」と大きく異なる表現をしている。特に東映アニメーションが担当する「OddOneOut」はマスターチーフが原住民の子供が飼う恐竜に丸呑みにされて足をじたばたさせるなど、従来の世界観を崩壊させるようなギャグの入ったシーンが描かれていて、驚かされた。

 本作のプロデューサーを務めるJ-Spec Pictures代表取締役のジョセフ・チョウ氏は、「OddOneOut」を制作するにあたり、アニメ版「ドラゴンボール」シリーズなどを手がける西尾大介氏に依頼したことで、他の作品と比べても特別なテイストを持つ作品に仕上がったと語った。

 日本のアニメーション作品は海外でファンを獲得している一方で、「一部のマニアのものだ」という評価も根強い。チョウ氏はかつて「アニマトリックス」の制作に関わっていたという。「マトリックス」自体日本のアニメーションの影響を受けた作品であり、また「ドラゴンボール」などは広い層で受け入れられている。「海外ではアニメは“スタイル”のひとつという評価を受けがちなんですが、“メディア”なんだと思っています。日本のアニメは幅の広い表現力を持っていると思います。『Halo』は幅広く深い世界を持つ作品です。様々な手法で世界を描き出せる日本のアニメというメディアは最適なのではないかと思っています」と、チョウ氏は語った。

 「Halo Legends」は、「アニマトリックス」という成功例があったからこそスタートした企画なのだろうか? こう質問したところオコーナー氏は「そうではありません、ビジネスというよりも、“感情”が進めさせた企画でした。『Halo』は世界的なヒットを記録する作品となりましたが、アートの可能性として日本のアニメーションという手法で作品を表現してみたかったのです」と語った。

 今回のインタビューではクリエイティブディレクターを務める荒牧伸志氏の他、Studio04℃、東映アニメーションのスタッフも出席した。各クリエイター達に作品の思いを聞いた。荒牧氏は本作のクリエイティブディレクターとして「Halo Legends」の企画立ち上げ時に、スタジオの選定や紹介を行ない、エピソードとラフプロットを提出した上で、オコーナー氏と最終的なプロットを決めていったという。プロットを絞り込み、どのスタジオで担当して欲しいかという所まで担当した。

 その後荒牧氏はカシオエンターテイメント制作の「The Package」を担当し、全体的な進行に関しては、チョウ氏の相談を受けるという形で進めていったという。荒牧氏は、「僕のエピソードはアニメーションですが、フル3Dで作っています。かなりゲーム寄りな見た目になっていると思います」。

 「僕はもともと『Halo』シリーズのファンなので『Halo』が好きで参加しているところがあるんです。『Halo』のエピソードが作れると言うところでモチベーションを感じています。マスターチーフのエピソードをやらせてくれと要望を出しまして、“ストレートなファンムービー”になっていると思います」と語った。

 Studio04℃制作の「The Babysitter」を手がけた菅野利之氏は「とにかく、見やすい絵を心がけましたこの作品は『Halo 3:ODST』を扱ったものなのですが、ロードムービー的なアプローチで、カットなど見やすさを考えて、日本のアニメの手法で作っていきました。キャラクターデザインも最初は北米市場を意識していたのですが、自分たちのテイストを活かす、という方向にシフトしていきました。見ている人達が想いを込められる話になったと思います」と語った。

 Studio04℃で制作の作品のプロデューサーを務めるStudio04℃ CEOの田中栄子氏は「Halo 3:ODST」をプレイしているとき、「The Babysitter」のエピソードと重なり、さらに思い入れが深まったと語る。ちなみに、Studio04℃はもう1本「Origins」という作品を制作している。こちらはまた別な時代を扱っている。「Halo Legends」は各社が担当するエピソードや時代設定がわかれており、様々な時代、種族などが描かれるという。

 東映アニルーション制作の「OddOneOut」を手がける西尾大介氏は「とても難しかったですよ、社内のスタッフとはいつまでも僕らはあか抜けないね、といいながら作っていました。他が新劇で僕らが大衆演劇みたいな(笑)」と語った。「『Halo』の根本となるストーリー設定は凄く緻密なものです。そこに僕たちの手法を盛り込もうとすると自己崩壊する可能性がある。11分の中でそのバランスを保ちながらどこまで表現できるかに挑みました」。

 また「北米のスタッフもよく相談に乗ってくれて、応援してもらいました。一見大きく『Halo』から外れているように見えても、壊してはいけない世界観にはタッチしないように作っています。作品の世界にはいるほど、理解や解釈の部分でゲームのファンと変わってしまう危険性がある。そうならないように気をつけました」と語った。

 チョウ氏は「僕たちも西尾さんにお話しするとき、ギャグに振っていただいていいです、とシンプルに考えていた部分があるのですが、西尾さんは『あくまで世界観を守った中でやりたい』とおっしゃったのが印象に残っていますね、『Halo』として見たことのないテイストの作品にはなりましたが、きちんと世界を守っている、パロディじゃないんです」と語ると、「“ちゃんと『Halo』か?”というところを大事にしました(笑)」と西尾氏は応えた。


Studio04℃制作の「The Babysitter」を手がけた菅野利之氏 Studio04℃が担当する2作品のプロデューサーを務めるCEOの田中栄子氏 東映アニメーション企画営業部映像企画部映像企画室プロデューサーの池澤良幸氏


■ ゲームとアニメーション、日本と欧米、「Halo」が繋ぐ新しいコンテンツへのアプローチ

荒牧氏の「The Package」。宇宙空間をハイスピードで動き、ミサイルが美しい軌跡を描きながら乱舞する。宇宙の戦いと、肉弾戦の2つの戦いが描かれるという
西尾氏の「OddOneOut」。がに股でジャンプしたり、土煙を上げて走り回ったりといった動きの面白さだけでなく、原始人のような住民との交流というギャグテイストも盛り込まれる
インタビューではクリエイター達の作品への思いを聞くことができた

 「Halo」の熱烈なファンという荒牧氏に、今作における取り組みをさらに踏み込んで聞いてみた。荒牧氏はバイクが装甲服に変形する「機甲創世記モスピーダ」や、大型バイクがロボットになる「メガゾーン23」といった作品のメカデザイナーとしても知られており、特に“パワードスーツ”にこだわりを持つクリエイターという印象が強い。「僕はこのシリーズのファンですが、やはり『Halo』でもパワードスーツを扱っているところにグッと来るところがありました。そしてもう1つ、“顔が見えないキャラクター”が主人公をやっているというのも凄いと思いましたね」。

 「もちろん『Halo』はゲームとしても良くできているんです。非常に間口が広く、特に『3』が1番広い。僕は対戦は弱いけど、何度やっても楽しい。グラフィックスも広がりが気に入っています。遠くでは別の戦闘が行なわれていたり、目の前は過酷な戦場なのに遠くは凄くきれいな景色だったり。そういった広がりを映像にしていきたいと思いましたね」。

 「もう1つ、マスターチーフが主人公なのですが、『顔は絶対に出さないでくれ』というのが注文だったんです。ならば面白いことをしようと思って、振り返って顔が見えそうなところで場面を変えるなど、そういったこともまめにやっています。細かい部分もチェックしていただければと。顔が見えそうで見えないという演出はゲームでもそうなので、ゲームファンには特に面白いと感じてもらえると思います」と荒巻氏は語った。

 荒巻氏が手がけた「The Package」のキャラクターの動きはモーションキャプチャーによるものだ。モーションキャプチャーをベースに、走るシーン、戦うシーンの細部にもこだわりを持たせた絵作りを行なった。カメラワークを駆使し、3Dグラフィックスならではの面白さを模索していったという。

 「3D酔いをするという方も多いですが、僕はFPSが好きなのは、『FPSが表現方法として1番自然だ』と思うからなんです。サードパーソンでは自分の立ち位置でカメラが変わる。あれが不自然に感じてイヤなんです。人を操作してるっぽい感じで、自分で動いている感じがしないんです」荒牧氏はゲームに関しての深い知識とこだわりを語った。

 Studio04℃は「アニマトリックス」、バットマンのアニメオムニバス「バットマン ゴッサムナイト」にも参加している。田中氏は海外の監督、制作者が日本のアニメーションに関してリスペクトしてくれているのをとても感謝しているという。自社のコンテンツを全世界に告知できる状況を作ってもらえて、プロジェクトに参加できていることがありがたいと語る。日本で作っているだけではこういった広がりは難しい。

 一方で東映アニメーションは世界に作品を配信しているが、こういったプロジェクトに作品単位で参加することはあまりないという。東映アニメーション企画営業部映像企画部映像企画室プロデューサーの池澤良幸氏は「海外と仕事をするときは縛りがきつい場合もあるが、今回は好きなようにやってくれといわれて、西尾も含めスタッフは本当に頑張りました」と語った。

 今回は、海外への翻訳や打ち合わせの部分ではチョウ氏のスタッフを介して行なわれた。Studio04℃の作品に関しては日本語でシナリオを作り、尺を合わせた後北米で翻訳を行なうという形で制作されている。一方、カシオエンターテイメントの「The Package」は日本で脚本を作ったものを英訳し、収録を行なった上でそれに合わせて映像を作った。このため日本語版に関しては英語版のタイミングに合わせるために脚本が作り直された。チョウ氏は両国の文化の違いを考えながら仕事を進めていった。チョウ氏の今後の課題は監督が考える意図をもっとうまく伝える方法はどうするかということだという。

 最後に、出席者から読者へのメッセージを語ってもらった。オコーナー氏は、「私達はこのプロジェクトをとても楽しんで進めてきました。見てくださる方にも楽しんで欲しいと思ってます」。チョウ氏は「日本のアニメは難しい時期でもありますが、今回のコラボレーションのように、日本のアニメはまだまだ可能性を秘めていると思っています。今後も世界に向けて紹介していきたいと思います。期待してください」。

 荒牧氏は「今回はホントに楽しんで進められました。自分でも楽しんで何度も見てしまうような作品になりました、皆さんも何度も見ていただければと思います。もちろん『Halo』を知らない人も一気に見てもらえると思います」。菅野氏は「短く感じていただけるような内容の詰まった作品です。何度でも見ていただければと思います」。田中氏は「この作品が出ることで『Halo』をプレイしたことのない人達がゲームに参加するかもしれません。オンライン対戦ではその方型に優しくしていただければと思います」。

 西尾氏は「色んなタイプの作品があると思います。どんなに明るいものも、シリアスに見えるものも、みんな想いを込めて作っています。表面ばかばかしく見えても、結構込めてますよ、なんちゃって(笑)」とちょっと照れたようにコメントした。池澤氏は「『OddOneOut』はアクションも入っているんですが、最後に心の温かさを感じてもらって欲しいなと思います」と語った。

 今回インタビューしてみて、「Halo Legends」は日本の経験豊かなアニメーションクリエイターならではの思いのこもったオムニバスになっていると感じた。発売日や価格、配信方法など今後の発表に期待していきたい。


「The Package」の地上戦の画像。宇宙とまったく雰囲気が異なる 菅野氏が手がける「The Babysitter」。「Halo 3:ODST」と深く関わりを持つエピソードだ Studio04℃が担当するもう1本のエピソード「Origins」。謎の種族が関わってくるようだ
Production I.Gの「Homecoming」。悲劇を予感させるイメージである こちらもProduction I.G「The Due」。非常に特徴的な画風だ ボンズの「Prototype」。ロボットのような重装備のパワードスーツが登場するようだ

(2009年 9月 24日)

[Reported by 勝田哲也]