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平均年齢67歳のプロチーム「マタギスナイパーズ」が東京ゲームショウに参戦! シニアeスポーツの可能性を提示【TGS2026】

【東京ゲームショウ2026】
開催期間:9月17日~9月21日
ビジネスデイ 9月17日・18日 10時~17時
一般公開日 9月19日・20日 9時30分~17時/9月21日 9時30分~16時
会場:幕張メッセ/TKP東京ベイ幕張ホール

 東京ゲームショウ2026のG TUNE/NEXTGEARブースではビジネスデイ初日の9月17日、「マタギスナイパーズ シニア世代が語るeスポーツの未来」と題したトークイベントが開催された。

 マタギスナイパーズとは、秋田県を拠点とするシニアプロeスポーツチームで、メンバーは全員60歳以上、平均年齢67歳である。トークイベントには、マタギスナイパーズの中心メンバー2名と運営責任者、秋田県eスポーツ連合事務局長らが参加し、チーム誕生の背景から日々の練習、シニア世代ならではの課題、地域でeスポーツを定着させるために必要なこと、さらにはPCメーカーができる支援まで、さまざまな角度からシニアeスポーツの現在と未来が語られた。その内容をレポートしたい。

地元IT企業エスツーが運営するシニアプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」

 トークイベントに登壇したのは、マウスコンピューター 取締役 法人営業本部 本部長の金子覚氏、シニアプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」の運営責任者を務める株式会社エスツーの土門悠氏、同チーム所属選手のmark25氏とNAGI氏、一般社団法人秋田県eスポーツ連合の緒方無双氏。ゲームキャスターの海老江邦敬氏がMCを務めた。

 マタギスナイパーズは、2021年に発足した地元IT企業のエスツーが運営するシニアプロeスポーツチームで、メンバーはすべて60歳以上、最高齢は75歳で、平均年齢は67歳である。現在のメンバーは16名で、平日13時~17時まで集まって合同練習を行なっている。プレイしているタイトルは「VALORANT」であり、2025年5月に、マレーシアのシニアチームとの国際交流試合を行ない2勝1敗で勝利したという。

【トークイベントの参加者】
G TUNE/NEXTGEARブースの外観
トークイベントの案内。タイトルは「【マタギスナイパーズ】シニア世代が語るeスポーツの未来」である
MCを務めたゲームキャスターの海老江邦敬氏がMCを務めた。
株式会社マウスコンピューター 取締役 法人営業本部 本部長の金子覚氏
マタギスナイパーズの運営責任者を務める株式会社エスツーの土門悠氏
マタギスナイパーズ所属選手のmark25氏
マタギスナイパーズ所属選手のNAGI氏
一般社団法人秋田県eスポーツ連合の緒方無双氏
マタギスナイパーズは、日本初のシニアプロeスポーツチームであり、2021年に発足した。現在のメンバーは16名で、最高齢は75歳、女性も4名いる

高齢化を「弱み」ではなく「強み」に変える

 マタギスナイパーズを運営するエスツーは、サーバー管理などを手掛ける秋田県のIT企業だ。もともとeスポーツへの関心があったことに加え、チーム立ち上げの背景には、秋田県の少子高齢化という地域課題があったという。秋田県は高齢化率日本1位であり、その対策は急務であった。

 若者が県外へ流出し、高齢者の割合が高まることは、一般には地域のネガティブな要素として捉えられがちだ。しかし、マタギスナイパーズはその発想を逆転させた。

 運営責任者の土門氏は、「高齢者が多いことを逆手に取って、高齢者が生き生きとすれば、地域も盛り上がるんじゃないか」と、チーム設立時の考えを振り返る。

 さらに、高齢者が若い世代にもなじみ深いeスポーツに挑戦し、秋田に根付くマタギ文化とシューティングゲームを組み合わせることで、「マタギスナイパーズ」というユニークなチームが誕生した。

 現在は平日5日間、オンラインを中心に練習を行っている。トップチームは13時から17時、アカデミーは19時から22時と、本格的な競技チームとしての活動内容だ。他県の高校生や秋田県内の大学生などから対戦の申し込みを受けることもあり、世代を超えた交流も生まれている。

【トークイベント中の様子】
トークイベント中の様子。選手の二人もとても活き活きと話をしていた

記者会見から始まったチーム作り

 今でこそプロeスポーツチームとして活動するマタギスナイパーズだが、結成当初から全員がPCやゲーム、ましてやeスポーツに習熟していたわけではない。

 まず、最初に「65歳以上のeスポーツチームを作る」と記者会見で発表した。地元のテレビや新聞などで報道されたことで、それを見たシニア世代から応募が集まったという。

 それに対し、金子氏が「アイドルのプロジェクトみたいですね。先に発表して、そこからオーディションを始めるような」と表現したが、まさにその通りだと土門氏は相づちを打った。しかし、選手が集まってからが本当のスタートだった。中にはPCゲームをした経験がないだけでなく、そもそもPCそのものの扱いに慣れていない参加者もいた。

 土門氏によれば、最初に行ったのはゲームの練習ではなく「パソコン教室」だったという。

 「どうやってシャットダウンするのかというところから、一つずつ教えていきました」

 PCの基本操作を覚えた後に、ようやくゲームへ進む。それでも、キャラクターを動かせるだけでは対戦ゲームとして成立しない。操作方法、ルール、立ち回りなどを一つずつ学んでいった。若い世代なら直感的に覚えられる操作でも、PCに触れた経験の少ないシニア世代には時間が必要だ。土門氏は、時間がかかっても「丁寧にやっていった」ことが重要だったと振り返る。

「相手が人間だから面白い」70歳のmark25氏を動かす競争心

 では、週5日の練習を5年間も続けられる原動力は何なのだろうか。現在70歳のmark25氏は、もともとPC自体には親しんでいたものの、オンラインゲームに本格的に触れたのはマタギスナイパーズへの参加がきっかけだった。ネットワークを通じて他人とリアルタイムに対戦する体験を通じて、「こんなに技術が進歩しているんだな」と驚いたという。

 一方で、同世代の反応は必ずしも肯定的なものばかりではない。「eスポーツは楽しい」と勧めても、PCやゲームそのものに抵抗感を持ち、「俺にはできない」と最初から敬遠する人も少なくないという。

 それでも、かつての同僚や後輩から「ネットで見た」「テレビで見た」「頑張ってください」と声をかけられる機会は増えた。活動を続け、メディアで取り上げられることで、少しずつ周囲の認識も変わっている。

 そんなmark25氏がFPSを続ける最大の理由は、対戦相手がコンピューターではなく人間であることだ。

 「相手も人間。それが、とにかく面白い。常に違うんです」

 毎回異なる相手と戦い、「次こそ勝つ」「次こそいいプレーをする」と考える。しかし相手も考えて行動する以上、思い通りにはいかない。

 「どう立ち回るか、どう勝つか。これを常に考えている」

 年齢とは無関係な、純粋な競技者としてのmaki25氏の言葉が印象的だった。

 一方、66歳のNAGI氏は、チーム活動が生活そのものに変化をもたらしたと語る。マタギスナイパーズがSNSで大きな注目を集めたことで、ゲームを通じてそれまで接点のなかった多くの人々と知り合うようになった。

 「素晴らしいチームメイトに出会えたことや、外部の皆様とお知り合いになれる入り口になったことに、本当に感謝しています」

 週5日の練習は一見すると負担にも思えるが、NAGI氏にとっては逆だという。決まった時間にPCの前に座るため、家事を効率的に終わらせるようになり、日々の生活に張りが生まれた。また、デジタル機器で分からないことがあっても、チーム内で相談できる。詳しいメンバーがほかのメンバーを助け、オンライン上で話し合いながら問題を解決する。FPSに必要なチームプレーは、ゲームの中だけにとどまっていないのだ。

 シニアeスポーツの価値は、反射神経の維持やデジタル機器への習熟といった効果だけではない。決まった時間に仲間と集まり、共通の目標を持ち、新しい人間関係を築く。マタギスナイパーズの活動からは、ゲームがシニア世代の社会参加の新たな入り口になり得ることが見えてくる。

継続するために重要なのは「まずゲームが楽しいこと」

 地域でeスポーツを普及させる側から、現実的な課題を指摘したのが秋田県eスポーツ連合の緒方氏だ。

 自治体や地域団体がeスポーツを活用しようとする際、イベント開催そのものが目的になってしまうケースもある。しかし緒方氏は、「eスポーツはゲームをプレイするわけですから、『このゲームは楽しいですよ』というところは絶対に外せない」と強調する。

 単発イベントを開催して終わりというのではなく、参加者が「またやりたい」と思い、継続的に楽しめる環境を作ることが重要だ。秋田県eスポーツ連合では、活動開始時にPCを5台設置した「eスポーツトレーニングセンター」を用意した。まずは小さな拠点を作り、地域コミュニティに自由に使ってもらう。そこで生まれたコミュニティがイベントを開き、やがてより大きなイベントへ参加していくという形で裾野を広げてきた。

 また、意外な相談も寄せられるという。オンラインゲームを遊ぶ子どもを持つ保護者から、「子どもがどこの誰とゲームをしているのか分からず不安だ。信頼できる人を紹介してほしい」と相談されることがあるというのだ。オンラインゲームだからこそ、リアルな地域コミュニティが必要になる。ゲームを通じて安心して付き合える友人や仲間を作れる環境も、地域のeスポーツ団体が担うべき役割の一つといえる。

eスポーツをはじめるのに「とりあえずゲーミングPCを買う」必要はない

 eスポーツを始める際に大きな障壁になるのが機材のコストだ。マタギスナイパーズの場合は、運営母体であるエスツーの社員がチーム運営を担当し、同社が入居している建物の別フロアを練習場所として利用することで、人件費や場所代を抑えた。また、PCやデバイスについても企業から提供を受けることで、数百万円規模になり得る初期投資を抑え、ミニマムでスタートできたという。

 金子氏も、地域でeスポーツを始めるからといって、最初から大量のゲーミングPCを購入する必要はないと説明する。PCメーカーや業界団体への相談、レンタルサービスなどを活用すれば、小規模な実証から始める方法もあるという。

 「何かチャレンジの足かせになっていることがあれば、我々もパートナーを通じて支援していきたい」

 用途によって必要なPCも異なる。競技eスポーツを目的とするのか、クリエイター育成も行うのか、公民館などに数台設置して地域交流に使うのか。目的と予算を整理した上で機材を選ぶことが重要になる。

 さらに、施設で継続的にPCを運用する場合は、故障時のサポート体制も無視できない。マウスコンピューターでは3年間の無償保証や24時間365日の電話サポートなどに加え、法人向けの拡張サービスや導入支援を用意している。大会やイベントを控えた施設ではPCの故障によるダウンタイムが大きな問題になるため、こうした運用面も導入時に検討すべきポイントとなる。

【G TUNE/NEXTGEARの製品ラインアップ】
G TUNE/NEXTGEARは、eスポーツから教育・地域活性化まで支える幅広い製品ラインアップを誇る

シニア同士が本気で戦う未来へ

 トークイベントの終盤、mark25氏からはシニアプレイヤーならではの切実な課題も飛び出した。老眼によって長時間モニターを見ていると画面がぼやけ、エイムを合わせにくくなるというのだ。「これを何とかハードウェア的に解決できないか」と問いかけると、金子氏は、会場にはマウスコンピューターの開発担当者も来ているとして、技術的にカバーできることは検討していきたいと応じた。

 eスポーツがシニア層にも広がれば、PCやディスプレイ、入力デバイスにも若年層向け製品とは異なる工夫が求められる可能性がある。マタギスナイパーズの活動は、シニアeスポーツの可能性だけでなく、将来のゲーミングデバイスのあり方を考える上でも、新たな課題を投げかけている。

 土門氏が今後期待するのは、全国各地に同じようなシニアチームが誕生することだ。

 「全国に私たちと同じようなチームができることによって、お互いがライバルとなり、競い合いながら向上していく循環が絶対に生まれると思う」

 緒方氏も、シニア向けeスポーツを単に「高齢者向けの取り組み」として捉えるものではないと語った。これからの人生で新しいことに挑戦する。その選択肢の一つとしてゲームがある。そんな考え方が少しずつ広がり始めているという。

 平均年齢67歳のプロeスポーツチームが5年間活動を続けていること自体が、eスポーツが若者だけの文化ではないことを示している。

 現在はまだ珍しい存在であるマタギスナイパーズだが、全国各地に同世代のライバルチームが誕生し、「シニア同士のスクリム」が当たり前に行なわれるようになる日は、意外と遠くないのかもしれない。