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凄すぎるVRゲーム体験!ナムコVR施設「VR ZONE」レポート

家庭では絶対にマネできない、ハイクオリティVR体験に驚愕!

体感型VR筐体がズラリと並ぶ店内
様々なVRゲームが所狭しと配置

 バンダイナムコエンターテインメントとナムコが4月15日に正式オープンする“VRエンターテインメント研究施設”「VR ZONE Project i Can」が凄すぎる! 正式オープンに先立つ4月11日に開催されたプレス向け体験会で、本施設で展開する6つのコンテンツを体験することができたので早速ご報告しよう。

 「VR ZONE Project i Can(以下、『VR ZONE』)」は、ゲームセンターやテーマパーク運営事業を展開するナムコが、4月15日から約半年間の期間限定でオープンするVRエンターテインメント施設。コンテンツの開発は、いちはやくVRゲームの研究開発を手がけてきたバンダイナムコエンターテインメントが担当。施設のオープンにあたっては一挙5つのVRコンテンツを展開し、そのクオリティの高さ、インパクトの強さで来訪した記者陣を驚かせた。

 「VR ZONE」のコンセプトは明確。お金や時間の制限、身体的危険などの理由で「大人が本当はやりたいけどできないこと」を、最新VRシステム(現時点では全体験にHTC Viveを採用)の力を使って実現することだ。“VRエンターテインメント研究施設”と名乗っている通り、体験した来場者のフィードバックを受け、VRコンテンツの改善に活かし、ゆくゆくはより高品質なVR体験を幅広いアミューズメント施設に展開していく……という、アンテナショップ的な役割も担う。

 本稿では今回体験した中で特に強い印象を受けた3つのコンテンツ「高所恐怖SHOW」、「アーガイルシフト」、「脱出病棟Ω」を中心に、詳しくレポートしていこう。

期待を大幅に超える高クオリティVR体験空間。コンテンツもハイレベル!

全コンテンツが体感型筐体もしくは拡張型ルームスケールVRで提供
最新設備で整えられた店内

 まず施設の設営については、さすがゲームセンター運営の老舗であるナムコというほかない。各コンテンツは全て体感型の筐体で提供されており、それぞれが全て各コンテンツ向けの専用設計。HTC ViveとPCのシステム一式が筐体内にビルトインされているだけでなく、VR内での映像と、プレーヤーの実際の姿勢が完全に一致するよう周到にデザインされている。

 各コンテンツはバンダイナムコのプリペイドポイント「バナコイン」を使って利用できるようになっており、各体験の入り口にあるタッチ装置でのスムーズな精算が可能なようだ(記者体験会では使用しなかったけれども)。全てが最適の装置で固められた、最新型のゲームセンターという感じだ。

 それではコンテンツのほうはどうだろう。公式サイトで披露されているムービでは体験者が悲鳴を上げたり、恐怖のあまり立ちすくむ、思わず倒れそうになってしまうなど、一見オーバーなリアクションを見ることができる。これを見ても、「まさか! 大げさにやっているだけだろう」と思う人がほとんどではないだろうか。

 筆者もそう思っていた。そう思っていた筆者が、あまりもの体験に腰を抜かしそうになった。どのコンテツも極めてハイクオリティ、かつVRならではの面白さ、凄さを凝縮したつくりで、バンダイナムコエンターテインメント開発陣のスーパーな実力、そして最新VRシステムのパワーを思い知る。これは完全に期待を超えている。VRを初めて体験する人なら、言わずもがな、壮絶なショックを受けること間違いなしである。

それぞれのVRコンテンツに合わせた最適な筐体とスペースの設計がされている

VRだとわかっていても立ちすくむ!「高所恐怖SHOW」

眼下に広がるビル街の奈落を前に呆然となる筆者
VRHMDにはこんな風景が広がっている
あまりもの恐怖に、スリ足で微速前進するのがやっと。この足場が微妙にグラつくように調整されているのが恐怖心をさらに煽る

 「高所恐怖」という人間の基本的な心理をフルに引き出すのが本コンテンツ。内容としては「ビルの高層階から突き出た細い板の足場になぜか取り残されている子猫を救う」というというだけのものだ。従来の平らなスクリーンでプレイしても何も面白くない。しかし、プレーヤーの全周囲をリアルな風景で覆い、実際に自分自身が歩いてプレイするVRでは……。

 「VRだから偽物。VRだから大丈夫」と念じながら体験に望んだ筆者ですら、足元に落差数百メートルはあろうかという風景が現われた瞬間、足がすくんだ。限りなく写実的に描かれた都心の風景が、その「高さ」を本物だと誤認させる。眼前にある頼りない1本の足場に足を踏み出すには、相当の勇気が必要だ。

 「VRだから落ることはない」と自分をごまかしながら1歩を踏み出して、後悔を覚えた。冗談じゃない、これは怖すぎる。「落ちたら死ぬ!」と、脳が危険信号を発しまくりだ。細い足場の上、眼下の風景に目をやると、平衡感覚があやふやになり、はるか遠くの地上に吸い込まれそうになる。バランスを崩さないようスリ足になり、10cm程度づつ進むのがやっとだ。並行を保つことに集中しすぎて、かえってよろけそうになってしまうのがまた怖い。

 この間数分。やっとの思いで2メートルほど進み、子猫に手を伸ばし、抱きかかえる(実際には位置トラッキング対応したぬいぐるみ)。次の瞬間、足場がミシミシっと音を立て、一部が崩れ始める。もう勘弁してください。「高所恐怖」がなければ5秒で終わるような、数メートル行って戻るだけの作業。それが、VRの力で、臨死体験にも似たエクストリーム体験へと変わってしまうのだ。

 本コンテンツは体験スペースが特に広いこともあり、1体験で約1,000円と高めに設定されているが、それでも「VR ZONE」の中では絶対にやっておくべきコンテンツだ。なお、筆者は子猫救出後にわざと足を踏み外してみたところ、落下死した。VRの中で。

ネコを救出。やはりスリ足で撤退。外から見ると冗談みたいだが、やっている本人は控えめに言っても必死
最後に思い切ってジャンプしてみた。思わずこけそうになっても、命綱+スタッフによる補助があるので大丈夫だ
手足には赤外線反射素材を装備した専用のアタッチメントを装着。これによりVR内で手足のトラッキングもでき、自分の手足がVR内に表示される。ただ、Lighthouseトラッキングを用いるHMDに比べて精度はあまりよくなかった印象

スーパー贅沢なコックピット体験「アーガイルシフト」

VR内のコックピットと全く同じ姿勢でプレイ。振動・傾斜により擬似的なGも感じられる
VR内の目前には、セクシーな衣装のヒューマノイド「アイネ」がいる
敵を見ればいいのか、キャラを見ればいいのか、贅沢な悩み

 PS VR向けVRデモ「サマーレッスン」のプロデュースで話題をさらった原田勝弘氏を含む「鉄拳」プロジェクトチームのエース開発者たちの肝いりで提供されるのがこの「アーガイルシフト」。スーパーロボットのコックピット体験だ。

 筐体は駆動式で、ロボットの動きに合わせて振動、傾斜し、プレーヤーに実際の加速度を味わわせる仕組み。コックピット外の風景はかなり派手に動くのだが、この「擬似G」があるおかげで酔わないし、迫力も満点。こればっかりは、どんなにがんばっても一般家庭では再現できないレベルのVR体験だ。

 だが、それだけで終わらないのがこのコンテンツ。3畳ほどの広さがあるコックピット内にはお供のAIヒューマノイド「アイネ」が同乗していて、この密室内でのキャラクターコミュニケーションが本コンテンツのもうひとつの軸となっている。

 アイネは、プレーヤーの眼前を動きまわり、「マスター、出撃準備はいいですか?」とプレーヤーにHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)を装着してくれる。パイロットスーツなのか何なのかわからないが、体のいろんなところが露出したり食い込んだりしているセクシーな衣装でいろいろしてくるものだから、非常に目のやり場に困る。この感覚は覚えがある。ああ、「サマーレッスン」だ。

 そんなキャラクターとのドキドキなやりとりと平行して、かっこいい出撃シーンや、敵勢ロボットとの戦闘(ヘッドトラッキングで照準して撃つ簡単インターフェイス)、様々なシネマチックなイベントが発生。襲い来る敵を見ればいいのか、横の複座で「トリガーを引いて射撃してください!」と声と視線を送ってくるアイネの方を見ればいいのか、燃えと萌えをここまでごった煮にした贅沢なVR体験に、筆者の脳は大混乱。

 戦闘を終えて「やりましたね! マスター!」と大喜びで目の前に被さってくるような姿勢を取るアイネ。眼前にはたわわな2つのふくらみが……さすが「鉄拳」プロジェクトチーム、わかってらっしゃる……。

 最終的に主人公機が大量の敵に囲まれ絶体絶命のピンチ、となったところで「To Be Continued」と字幕暗転。正直なところたった1度のプレイでは、VR空間内の様々な方向で同時多発的に起こる見所(敵機が襲いかかってきたり、アイネの胸が揺れたり)を捉えきることができなかったので、これ1本で繰り返しやりたいと思わせるパワーがある。しかも続きもあるとすれば、これはもうアニメシリーズのような長期的展開に期待せざるをえない。ロボットアニメが好きな御仁はドハマりすることまちがいなしだ。

コックピット内をちょこまかと動きまわるアイネ
わかってらっしゃる。個人的に「スーパーロボットレッスン」と命名

絶叫!途中で辞めたくなるほど怖い「脱出病棟Ω(オメガ)」

筐体内はこんな感じ。座席は車椅子を模した形状になっている
前後移動はスティックで。操作そのものは簡単だが、コンテンツは死ぬほど怖い
不気味な存在が潜む、荒廃した病棟

 本コンテンツは王道ホラー&体感筐体を用いたVR体験だ。「脱出病棟」の名のとおり、ロケーションは呪われた廃病院。薄暗く、古び、各所に血だまりや臓物や死体が散乱するグロテスクな病棟の中を、ハラハラドキドキしながら進んでいく。

 プレーヤーは車いすにのっているという設定で、筐体も座席型。左手にあるスティックで前後の移動を行なう仕組みだ。方向転換は自動で、いわゆるレール式。複雑な操作は必要ない。廃病院の中は極めて暗く、便りになるのは懐中電灯を模した右手のViveコントローラーのみである。

 これがもう「どうせ怖いんだろ?」とわかっていても、怖い。怖すぎる。VR耐性があるはずと自分では思っている筆者だが、それでも、目の前に宙吊りの死体が落ちてきたり、突然眼前が真っ暗になって次の瞬間、怖い顔したバケモノが現れたりなど、ホラーゲームで王道の演出があるたびに「ぶえええ」と情けない声を上げざるを得ない。

 なにしろ、VRならではのリアルスケールで、手を伸ばせば触れられるような存在感で、グロテスクな死体やバケモノが、油断した瞬間に現われるのだ。同時にプレイしている隣の筐体からは女性の「キャアア!」というフルパワーの悲鳴がこだましていた。いくら怖いといっても程度というものがある。途中で辞めたいと本気で思ったVR体験はこれが初めてだ。

 しかし、このコンテンツにはまだ大事な仕掛けがある。本コンテンツは4人が同時にプレイし、協力が求められるゲームシステムなのだ。その4人が最初は同じ部屋からスタートし、それぞれ別のルートを通ってゴールを目指すのだ。参加する全員が別の視点、別の体験を経ることになる。

 そして最終局面で、1人はバケモノが潜む迷路に、そして残りの3人は「処刑室」にとらわれる。処刑室に囚われた3人には、迷路に入り込んだプレーヤーの位置がマップ上で確認できるようになっている。そこで3人はボイスチャットを通じて方向を示し、迷路にいるプレーヤーをゴールに導いていくのだが、時間制限が迫るうち、大型のハサミを持った処刑人に、首を切断されそうになる……。

 初めての体験であったこともあり、筆者はわけもわからず迷路に突入。他の3人は完全にパニックで、迷路のアドバイスをひとつもくれないまま、全員が処刑された。ゴールを目前にして制限時間を迎えてしまった筆者も、仲良く処刑者の仲間入り。まず、筆者の隣にいた他のプレーヤーの首がゴロリと転がり、次に、差し渡し2メートルはありそうな巨大なハサミが筆者の首に添えられ……。

 筐体前に待機していたスタッフにいくらなんでもこれは怖すぎるんじゃないか、と質問をぶつけたところ、開発者としてはまだまだやりたいことがあり、これからももっと怖くなるようにブラッシュアップしていくとのこと。バンダイナムコエンターテインメント開発陣、容赦なし!

本コンテンツは最大4人でプレイし、互いの協力によって脱出を目指すゲームとなっている。座席位置によって体験の内容・視点が異なる。繰り返しプレイして攻略したいが、怖すぎるのでもうプレイしたくないという二律背反に苦しむことになりそう

家庭では絶対に味わえないVR体験。幅広いAM施設への展開を期待!

 上記でご紹介した3つのコンテンツが筆者にとって特に強いインパクトを与えてくれたのは確かだが、本施設「VR ZONE」ではほかにも、スピード感たっぷりの滑走を体感筐体で味わえる「スキーロデオ」、山手線の電車運転手をリアルにVR体験できる「トレインマスター」、大型半球ディスプレイを用いてリアルスケールの車中視点を再現する「リアルドライブ」といったコンテンツを含め、全6種類のVR体験が同時展開している。そのどれもが、ゲームセンターでの体感筐体で鳴らしてきたナムコ及びバンダイナムコエンターテイメントならではの高品質な体験ができるものなので、ぜひみなさんにも試してほしい。

 全体をふりかえって思うのは、「これは家庭では絶対に再現できない」と思えるレベルの体験が、しっかりと全コンテンツで提供されていたことだ。

 通常よりも広めのルームスケールVRに加えて手足の赤外線トラッキングを用いた「高所恐怖SHOW」では、微妙にぐらつく板を足場にすることで数段上の高所恐怖体験を実現していたし、駆動型チェアを用いた「アイガールシフト」、「トレインマイスター」、「リアルドライブ」では実際にコックピット内のGを(実際よりは弱いにしても)体感することができた。

 また、「スキーロデオ」では、ゲームセンター等でロングセラーとなっている「アルペンスキー」シリーズでおなじみのスキー板型体感筐体を改造使用しているだけでなく、プレーヤーの前方に送風装置を設置し、滑走のスピードに応じて「風」を感じられる仕組みが付けられているなど、臨場感や没入感を盛り上げる工夫がとにかくすごい。

スキーロデオ
「アルペンレーサー」の筐体をカスタムした専用筐体。「風」を感じさせる送風機も装備し、本当にすごいスピード感と臨場感を味わえた

トレインマスター
実車同様の装置を使って電車を運転。専用の可動チェアのおかで、加速や減速時のGも感じられる

リアルドライブ
唯一、VRHMDを用いず半球スクリーンで提供されていたカーレースゲーム。実車サイズのコックピット良い臨場感を得られたが、やはりVRでもプレイしてみたかった
本施設「VR ZONE」全体を監督する“コヤ所長”

 筆者の自宅にはもうすぐHTC Viveが届くが、今日「VR ZONE」で味わったレベルのVR体験を、自宅で再現することは不可能だ。まず10畳以上のVR専用部屋。無理。油圧式シリンダーを搭載した駆動型チェアー。海外では売っているが、集合住宅に置く訳にはいかない。4人同時にVR体験できる設備。これも無理。

 そんな、VRエンスージアストにとっても「本当はやりたいけどできないこと」を、徹底して実現するのが「VR ZONE」である。これこそ、ゲームセンターやテーマパークなど、各種アミューズメント専門施設で展開すべき、特別なVR体験だ。

 会場にいた「VR ZONE」総監督の“コヤ所長”氏によれば、ナムコおよびバンダイナムコエンターテイメントではさらに数種類のVRコンテンツを開発中で、「VR ZONE」オープン期間中のいずれかの段階で一部のコンテンツを入れ替えつつ、新鮮なVR体験を多くの人に届けていくとのこと。

 今後の展開も含め、非常に楽しみな「VR ZONE」。筆者もこの施設には足繁く通ってみたいと思う。ちなみに、4月15日からのオープン後の体験予約は公式サイト上で可能だ。お台場という立地もあり、週末は混雑が予想されるので、平日も含めて体験計画を立てることを皆様にはおすすめしたい。

(佐藤カフジ)