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「Sound BlasterX G5」、「Sound BlasterX H7」レビュー
サウンド周りの変化がプレイに及ぼす影響をタイトル別に検証
(2016/3/11 12:00)
サウンド周りの変化がプレイに及ぼす影響をタイトル別に検証
ここからは、幾つかのゲームタイトルにおいて使用した際のインプレッションをお送りする。
機材について、試遊の際には「Sound BlasterX G5」と「Sound BlasterX H5」の組み合わせを使用した場合と、筆者が普段使っているUSB DAC(LUXMAN「DA-100」)に「Sound BlasterX H5」を挿して使った場合の両方を比較した。
「BlasterX Acoustic Engine Pro」のプロファイルはジャンルに一致するものを使用し、専用のプロファイルが用意されているタイトルについては該当するプロファイルを使っている。Sound BlasterXの音響効果がゲームプレイに及ぼす具体的な変化について、全体の傾向としては、BGMが抑えられ、台詞や効果音が強調されることが多いと感じられた。
今回試遊したタイトルは「League of Legends」、「Call of Duty: Black Ops III」、「Counter-Strike Global Offensive」、「Overwatch」、「The Crew」、「ファイナルファンタジーXIV」、「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」の7タイトル。
League of Legends(「LoL」、MOVA)
「LoL」におけるサウンドはスキルやアイテムを使用した際のSE(例えば敵が視界を取るワードを置いた音や、Sionが猛スピードで突進してくるウルトなど)周囲の状況を把握し、行動を判断するための材料になる重要な要素である。
Sound BlasterXを用いた場合と用いていない場合との差は、やはり声や効果音の聞こえやすさに尽きる。コンマ1秒の操作の遅れや1度のミスが勝敗を分けることもあるシビアなゲーム性はMOBAの常だが、ここで重要なのはミスを誘発する要素を排除することだ。そのために必要な調整は自分に合ったマウスレートやキーボード選び、極論を言えば人間の方の体調を整えること(大事です)にまで及ぶが、「LoL」のサウンド設定の場合は、重要なSEを聞き逃さないような、やや偏りの強い設定が適切だろう。当然BGMはミュートする。
一例としては、例えばフィドル(Fiddlestick)のウルトは中距離のブリンクとともに自身の周囲に強力なAoEダメージを発生させ、敵の集団に向かって飛び込むスキルであるが、発動前に1.5秒立ち止まっての詠唱と、空気を吸い込むようなSEが発生する。視界外から飛び込んでくる場合は対策のしようもないが、もし視界の範囲内であれば音を聞くことができるので、1秒以下であるが危険を察知してわずかでも退くか、あるいはスタンなどのDisableをかけて発動を阻止することができる。瑣末な話に見えるかも知れないが、「LoL」における1秒は体感上途方もなく長い。たとえコンマ数秒であっても、敵から離れられる時間を確保するのは、後の展開を有利に進めるために大事なことだ。勝利のためには、そのような細かい状況判断を積み重ねる必要がある。
Sound BlasterXにデフォルトで用意されている「LoL」のプロファイルでは、SurroundやCrystalizerなどのエフェクトを不使用とし、高音域が強めに調整されており、結果としてBGMが抑えられて、サウンドエフェクトが聞き取りやすくなっている。インゲームのBGMは元々主張が強いものではないが、さらに抑えられている印象を受けた。SEが強調される設定は妥当な調整と言える。
「Call of Duty: Black Ops III」(CoD:BO3、FPS)
「CoD:BO3」では、主にストーリーミッションとインターミッションにそれぞれ映画的な演出の施されたイベントシーンが挿入される。キャンペーンモード(シングルプレイ)のプレイにおいては敵の位置を視覚的に把握する「強化ビジョン」と「タクティカルモード」が使用できるので、音で敵の位置を察知する必要性はほぼないことから、今回は必然的にストーリーのサウンド演出を楽しむ側面が強くなった。
プレイヤーが主人公を動かせるのは基本的に戦場とセーフハウス。このうちSound BlasterXの効果は、戦場で顕著に感じられた。嵐の市街地に吹きすさぶ雨風の音や銃声、破壊され崩れ落ちて散らばる瓦礫の音、兵士の足音や怒号が間近に聞こえ、非常に強い没入感と緊張感が楽しめる。Sound BlasterXなしで同じミッションをプレイした際は、各々の音がやや遠くに感じられ、Sound BlasterXを使った場合と比べて没入感や迫力に物足りなく感じた。今回試遊した中で、ゲームにおけるサウンド演出の大切さ、そして再生環境の影響を最も強く感じたのはこのタイトルだ。
「Call of Duty Series」のプロファイルは、SurroundやSmart Volumeを有効にしており、位置音響と場面に応じた音量の調整がなされている。傾向としては、登場人物の音声や効果音、環境音が強調され、ドラマチックさの演出に一役買っている。特に戦場を舞台にした重厚なストーリーテリングを担う登場人物の台詞がよく聞こえるという点で、ゲームの雰囲気によく馴染んだ設定となっている。
Overwatch(FPS)
現在、アジアサーバーにおいてCBTを実施中の「Overwatch」は、6対6のチームに分かれて拠点攻略(防衛)やペイロードといったルールで対戦するFPSタイトル。「Overwatch」におけるサウンドの重要性は、ゲームプレイに直結する部分とキャラクター性の表現に大別される。
プレイ部分への影響は、周囲で何が起きているかを把握しやすくなることだ。例えばDefenceロールに属するキャラクターの1人、ロボットのBastionは、ゲージが貯まると変形して強力な砲撃を行なえるウルティメイト・アビリティを持っているが、変形時には口笛のような特徴的な高音を発する。Bastionが敵にいる時にこの音が聞こえた際は警戒する必要があるし、味方にいる場合は一気に敵陣へ攻めこむチャンスとなりうる。台詞やSEが他と混じらずにしっかりと聞こえることは、そのような戦況判断を下す材料の1つを取り入れやすくなるということだ。
キャラクター性の表現について。サウンド面における21人のキャラクターそれぞれの個性は、彼らの声や台詞、用いる武器や道具が発するSEに特徴が現れる。これが聞き取りやすくなると、キャラクターが物理的にすぐ側にいるような一体感が強くなり、一人称視点というのも相まって、俄然テンションが上がる。ゲーマーのテンションは、アスリートでいうところのいわゆる“ゾーン”にも似て意外とバカにできないものだ。
使用したプロファイルは「ファーストパーソン・シューティング(FPS)」。SurroundとSmart Volumeを高めに設定し、高音域と低音域を高めに、中音域を抑えて、銃声や特徴的なSEを捉えやすくしている。
Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO、FPS)
「Counter-Strike」シリーズは、伝統的に発砲音や敵の足音を聞いて、彼我の位置関係を把握することが基本テクニックの1つとなっている。インゲームでは四方八方から様々な音が聞こえるが、マップによって大体接敵するポイントは決まっているので、接敵ポイントの付近に近づいたら、聞こえる音に気をつけるようにする。重要なのは、曲がり角の先で音がするかどうかを聞き逃さないこと。音がしたらそれは敵がいることを意味するので、今度はエイミングに集中する流れだ。ちなみに環境音はほぼないので別の何かと聞き間違えることはほぼないと言っていい。
Sound BlasterXの有無で実感できた差は、足音や銃声の聞こえる方向の掴みやすさ。Sound BlasterXを使っていると、使わない場合に比べてSEがよりクリアに聞こえるので、確信をもってその方向に気を配ることができるようになる。音だけが索敵に必要な要素ではないが、味方の足音と敵の足音の区別は確実につくようになった。
使用したプロファイルは、専用の「Counter-Strike: Global Offensive」。CoD:BO3と共通する設定も多いが、「CoD:BO3」よりもSurroundのかかりが弱く、イコライザーも高、中、低のそれぞれで高く設定されている音域がある。これは足音、銃声、設置した爆弾のビープ音などに対応したものと考えられる。
The Crew(ドライビングシミュレーション)
「The Crew」は、オープンワールドのマップを採用するレーシングゲームであり、マルチプレイを前提としたデザインとなっている。約400kmに及ぶ広大なオープンワールドをお気に入りのクルマに乗って、時にはレースをし、時にはパトカーに追いかけられながら、気ままに流せる自由度の高さが魅力である。サウンド面ではレース中に自車へ迫る後続車の駆動音や、BGMに収録されているロックやポップスを楽しむのがメインだろうか。ある意味シミュレーター的な要素もあるため、ビジュアルの比重が大きいように思う。
Sound BlasterXの有無で感じた主な差異は、特にレース中の臨場感である。エンジンの駆動音や、雨天時に聞こえる車外の雨音、追いすがるパトカーのサイレンなど、Sound BlasterXを使うと、車外で起きている状況に対する距離感の近さを実感できる。「Sound BlasterX G5」のサラウンドは擬似音響ではあるが、走行する車内を表現するリアリティの再現に一役買っており、一人称視点で公道をぶっ飛ばすスリル感もあって(インゲームでは不思議な物理法則が働いて横転などはしないのだが)、レースゲームとサラウンドの相性の良さを再確認できる体験となった。
使用したプロファイルは「ドライビングシミュレーション」。SurroundとCrystalizerがかなり弱めにかかっているがイコライザーは低音を強く出す方向性になっており、低く唸るエンジンの駆動音を強調する方向性の調整だと推察できる。
ファイナルファンタジーXIV(FFXIV、MMORPG)
「FFXIV」は、基本的にほとんどの情報を視覚から得るデザインになっているので、ゲームプレイに関する部分について、有利にゲームを進められる要素はあまりないように思う。ではサウンドの作り込みはそこそこなのかといえばそんなことはなく、むしろかなり気合いの入った部類である。そういうわけで、Sound BlasterXを用いた際に得られる効用は、プレイ中の雰囲気を楽しむ方向性となる。
「FFXIV」は大自然に恵まれた世界観であり、スタート直後からその一端に触れることができる。試しにBGMをミュートしてみたところ、川のせせらぎや小鳥の鳴き声などがとても自然に聴こえて、気分よくゲームを進めることができた。今回試遊した中では1番癒やされたかもしれない。Sound BlasterXを使用しない場合は、BGMの主張がやや強くなり、環境音が抑えられ、全体的に遠くで鳴っているような印象になる。
ちなみに今回試用した機材とは直接関係ないが、「FFXIV」については過去にこちらの記事で対象機に対する最適なプロファイルのレシピを記載している。当時からはソフトウェア自体が更新されているのでそのまま適用することはできないが、共通の項目もあるので、傾向を掴んで調整を加えることはできるのではないだろうか。
使用したプロファイルは「アドベンチャー&アクション」。Surround、Crystalizer、Smart Volumeをそれぞれ弱めにかけており、イコライザーは低音を持ち上げる形になっている。
METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN(MGS:TPP、TPS)
「MGS:TPP」では様々なプレイスタイルを取ることができるが、基本的にはステルス要素の強いゲームである。潜入先では周囲からの物音や傍受した敵の通信内容などがミッションクリアの鍵となるので、周囲の音を聞き取ることは、視覚情報と併せて周囲の状況を把握するために必須である。
もちろん普通に遊ぶ分にはSound BlasterXなしでも支障ないのだが、Sound BlasterXを使ってプレイすると、それまで自分が聞き取れていなかった敵兵の立てる物音や、話し声までハッキリ聞き取れてしまうのには驚いた。もちろん、ある程度敵に接近す必要はあるのだが、より遠くからそれらの情報を聞き取れるように感じた。これはサウンドに対して適切なチューニングを行なえば、音声について違和感のないレベルでプレイ内容をより有利に進められるというSound BlasterXならではの体験だと思う。
またゲームプレイとは直接関係ない部分として、周囲で鳴っている環境音の豊富さにも気付かされる。風が吹き草木がそよぐ音や鳥のさえずりなどは、Sound BlasterX未使用時でも一応常に聞こえてはいるのだが、Sound BlasterXを使用すると、まるで窓を開けたかのようにクリアに聞こえてきて、これにも軽い衝撃を受けた。聞こえ方もきわめて自然であり、高台から敵の拠点をじっと偵察している際には、まるで自分が作品世界に立っているかのような感覚が味わえた。
「MGS:TPP」のプロファイルも用意されている。SurroundとCrystalizerが有効になっており、周囲の音響を強調するとともに、音声の補間効果を付与している。これは無線通信を聞き取りやすくする意図があるように感じられる。もっとも「MGS:TPP」では字幕が表示されるので、過度に気にする必要はないと思う。
ハイレゾ対応でノンゲームまでカバーした「G5+H5」、単体でリッチなゲームサウンドが楽しめる「H7」
今回3つの製品を試用し、共通して感じたのは、「コンパクトさ」、「高品質なゲーミングサウンド環境」、「実勢価格」のバランスが取れていることである。
Sound BlasterX G5+H5の組み合わせは、ゲームタイトルに合わせて調整できるカスタマイズ性の高さと、ハイレゾ音源への対応によってゲーミングと音楽鑑賞の両方を高いレベルで楽しめるセットだ。特に「G5」に搭載されている音声データを直接DACに流す「ダイレクトモード」は、できるだけ場所を取らずにPCオーディオを楽しみたいユーザーへの配慮が感じられ、個人的に気に入っている機能の1つだ。
一方、Sound BlasterX H7は、ヘッドセットとUSBオーディオの両方の機能がPCのUSBに挿すだけで使えるというお手軽さと、単体アンプに引けをとらない高音質が魅力的。ヘッドセットのみでもSound BlasterX G5と全く変わらない詳細設定ができるのもうれしいポイントだ。
クリエイティブメディアは特に謳っていないが、サウンドシステム全体をコンパクトにまとめたこのサイズ感はおそらく、ゲーミングノートPCと組み合わせての運用も視野に入れているように感じられる。
正直に言うと、筆者はゲームサウンドにエフェクトをかけることには否定的だった。元々はPCオーディオを体験してみたくてUSB DACを導入したこともあり、原音に音響効果を乗せるなんてとんでもない、と思っていたのだが、今回紹介した3機種を試用してみて、認識を改める結果になった。ことゲーミングに関しては、必要に応じて適切な音響効果を乗せれば、より楽しめることがわかった。
もし、現在、PCでオンボードのサウンドでゲームや音楽を楽しんでいるならば、今回紹介したサウンドシステムをプラスすることで手軽にサウンド環境の増強を図ることができる。ゲームファンには自信を持っておすすめできる一品である。