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「THE PLAYROOM」チームによるファミリー向けVRゲームのアプローチ
プロトタイプ量産で遊びを模索。Project Morpheusコンテンツの開発事例集
(2015/8/29 00:00)
プレイステーション 4に標準インストールされているソフト「THE PLAYROOM」は、PS4、DUALSHOCK 4、そしてPlayStation Cameraを使っていくつかのデモゲームが遊べるという実験的なタイトルで、プレイがそのまま各商品の機能と可能性を紹介するものとなっているのが特徴だ。
またかわいらしいロボット「ASOBI」がアイコン的な存在となっており、「ASOBI」の姿を目にしたことがあるというゲームファンも多いだろう。
この「THE PLAYROOM」についてはPS4発売後、無料DLCを何本か配信しているが、ソニー・コンピュータエンタテインメント ジャパンスタジオ内にある開発チーム「ASOBI! Team」は現在、Project Morpheus用のコンテンツ「THE PLAYROOM VR」を開発中だ。
「THE PLAYROOM VR」はタイトルが示す通り、「THE PLAYROOM」のVR版となっている。チームではProject Morpheusを用いて様々なプロトタイプを作っている最中で、その成果がGDC 2015やE3 2015の中で徐々に公開されている。
「ASOBI! Team」が示すタイトルはどこか実験的でありながら、ファミリー向けとしても通用するほのぼのとした印象がある。最近ではProject Morpheusでのマルチプレイの遊びも提示しており、独自のVRゲームのあり方を模索していると言える。
CEDEC 2015で開催された「Prototyping games for PLAYROOM VR on PlayStation 4」という講演は、「ASOBI! Team」が制作してきたVRゲームの具体例を挙げることで、Project MorpheusでのVRゲーム制作におけるポイントを紹介するものとなっていた。
VRの「遊び」を徹底研究! 事例とポイントを紹介
登壇したのは、SCE WWS Japan Studio Internal Development Game Directorのドゥセ・ニコラ氏。まず講演はチームでのプロトタイプ制作の過程から話されていった。
制作は最初に柱となるコンセプトを決め、そこからブレインストーミングでアイディアを出す。出されたアイディアは付箋で壁に貼られていき、その中から採用されたものを簡単な企画書に書き起こす。
プロトタイプの開発はプログラマー1人が2週間で1つのデモというスピード感で実施され、その際はゲームプレイならゲームプレイ、ビジュアルならビジュアルと、重要なコンセプト以外は最低限の作りで制作される。
こうして様々なプロトタイプが制作されていったそうだが、ニコラ氏はこの過程で生み出された「革新」として、DUALSHOCK 4をVR画面上に登場すること、そしてVRにおけるマルチプレイゲームだ。
DUALSHOCK 4は「素晴らしいコントローラー」と絶賛するほどニコラ氏のお気に入りで、内蔵されたライトバー、タッチパッド、モーションセンサー、デュアルモーターの4つの機能によってかなり様々なことができるという。
VR画面上にDUALSHOCK 4を登場させることで没入感を増すことができるほか、実際に見えないコントローラーのボタンの位置などを教えることもできる。またVR上のDUALSHOCK 4は1つのキャラクターとしても機能し、タッチパッドをサッとなでることでフリスビーや手裏剣を発射させたり、VR上の機械に“装着”してクレーンゲームやバイクのコントローラーにするなど、単なる表示以上の機能を持たせられる。
これらのプロトタイプの1つの結果が、GDC 2015で登場した「Magic Controller」だ。会場でのプレイレポートも参考にしていただきたいが、「Magic Controller」は画面上のDUALSHOCK 4からAsobiが大量に飛び出し、音楽スピーカーになり、フラッシュライトになるというデモとなっている。
コントローラーにDUALSHOCK 4を使用する場合、手を登場させるよりもDUALSHOCK 4をそのまま出すことで面白い機能を持たせることができる。ただし注意点として、ライトバーがPS Cameraから見えなくなるとトラッキングできなくなるので、ライトバーが見えたままになるようなデザインが大事だとした。
そしてマルチプレイのパーティーゲームとして提示されたのが、E3 2015で登場した「Monster Escape」だ。「Monster Escape」はProject Morpheusを装着したプレーヤーが恐竜役、ほかのプレーヤー(最大4人)はAsobiとなって、お互い対戦するというもの。
この作品の特徴は、映像がVR視点とTVモニター視点で異なっている点で、お互いの立場からゲームをプレイすることとなる。恐竜は頭部分が弱点なので、Asobi側は足元のオブジェクトを拾って投げつけていく。恐竜側は頭を振ることで向かってくる物質を避けていく。
孤独になりがちなVRのパーティーゲームは画期的だが、ポイントはいくつかある。まず、VRプレーヤーはゲームキャラクターとして動くことになるため、キャラクター側が伸縮性のある身体デザインになっていると良いという。
またVRプレーヤーは自分の姿が見えないので、ゲーム内にTVモニターを登場させてその姿を写すなどすることで、より感情移入しやすくなるという。メニュー画面など双方に共有したい画面もゲーム内TVモニターを使えば違和感なく表示できる。ゲーム内TVモニターはなかなか便利な存在、だそうだ。
VR視点とTVモニター視点の2画面を使う遊びは他にも様々な可能性を秘めているが、制作の際の注意事項もあって、VRとTVモニターではスピード感や距離感が異なること、アートディレクションのバランスが難しいこと、高いパフォーマンスのためにシンプルにすることなどが挙げられた。講演はここまでとなったが、「ASOBI! Team」ではまだまだ実験作を考案中なようなので、今後のVRゲーム制作に期待しておきたい。