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カプコン、「ストリートファイターV」プロデューサーインタビュー
意外にも初めての正式展開。中国でも動画世代の若いユーザーが増加中
(2015/7/30 00:00)
ChinaJoy 2015の開催に合わせてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプレスカンファレンスが上海市内のホテルで行なわれた。プレゼンテーションでは、サプライズとしてカプコンがPS4とWindows用に開発している対戦格闘「ストリートファイターV」のPS4簡体字版が発表された。30日から開催されるChinaJoyでは、SCEブースのステージイベントとして「ウルトラストリートファイターIV」の大会が行なわれる予定だ。「ストリートファイター」シリーズは中国でも根強いファンを中心に人気を博しているが、意外なことに正式に展開するのはこれが初めてとなる。
この記事では、プレゼンテーション後に行なわれた、「ストリートファイターV」プロデューサーの小野義徳氏の合同インタビューの内容をお伝えしたい。中国での「ストリートファイター」事情など、なかなか聞けない裏話が満載のインタビューとなったのでぜひご一読いただきたい。
今はコミュニティを大切にする時という思いで簡体字フルサポートを決断
――PS4版「ストリートファイターV」が発表された瞬間、ものすごい歓声が上がっていましたね。
小野氏: そうですね。ほぼほぼ見た映像じゃないのかなと思うのですが(笑)。非常に嬉しいことに待っていてくれたと。中国の政府の許可次第ですけれど、そこが下りればなるべく発売日と近いタイミングで入れたいということと、もう1つは完全に簡体字に完全対応してリリースするということで、もう開発を進めています。
万が一審査が下りなくても、色んな方法でなんとかなるかなと。そこの部分も今日、今回中国のファンに発表できたということと、1番大きいのは「ストリートファイターIV」を出してからずっと草の根の大会は中国中で行なわれていて、どこで手に入れたのかわからないのですが僕のメールアドレスに「来てください」というメールが来たりして。行こうかとも思ったのですが、許可を得ていないところにオフィシャルの人が行くと、いろいろと問題があるということがあって、なかなか木陰の側でしかみられなかったのが、今回こういった形でオファーできました。
「ウルトラストリートファイターIV」については、ChinaJoyを基軸にしてプロツアーを仕掛けることで、中国の関係政府からも問題ないだろうという判断をもらったので、こういったところから少しずつ溶かしていって、中国というところに対応していければと思っています。プロのゲーマーも中国からどんどん出てき始めていて、世界ランクトップ20の中に2人も中国オリジンの方が出始めているので、我々にとっても機は熟してきたという感じはしています。そういった意味でも今回こういう場に立たせていただいて、次の「STV」はやりますよと明言できたのは我々にとっても嬉しいことですし、待っていただいてずっとラブコールを送ってきてくれていた中国の「ストリートファイター」ファンの方に対しても、1つ何かを返せるタイミングができてきたのかなという気がしています。
――「ストリートファイター」シリーズが中国で正式に展開するのはいつ以来なのですか?
小野氏: 正式に展開するのはほぼ初めてです。過去に、時効を含めていうとアモイとか深センあたりから基板が入っていくというのはよくあって、上海にも少し前くらいにはゲームセンターが残っていてあまり表に出られないような形で流通していたというのが実態で、一部PC版は取れていたことがあったのですが、コンソール機はほぼ皆無だったのが現状です。
――初めての中国展開なのに、いきなり簡体字で出す。これは結構チャレンジングだと思いますが。
小野氏: 僕自身もう1つ別のタイトルを持っていまして、中国に何度も来る中で、ここでのゲームを競う風土をものすごく感じていたのですね。人と競うことが苦ではない、どちらかというと好戦的にそれをやりたい人たちが多いと。誰かよりも強くなりたい、誰かよりも上になりたいという気持ちは日本人よりも強いかもしれないと思っていて、先ほど言ったこちら側のコミュニティでやっている大会を拝見させていただいていても、手作りから企業っぽいところまで非常に集まるのですね。
今回は上海のソニーショップで明後日から予選をして土曜日に決勝をするのですが、街中でやっても早くも100人弱くらいエントリーが入っている状態です。そういった部分をみていると、これはもう思い切って行ったほうがいいなと。さらに「ストリートファイターIV」で年齢が下の人口が大きく増えたのですね。これは統計でわかったのですが、30歳代、40歳代のゲーマーではなくて、純粋に「IV」から対戦格闘って面白いと入ってきてくれた人で、その人たちがどこから入ってきたのかというと、まずは触ってみましたとか、Youtubeで見た試合が楽しいと思いましたとか、もっというと本当は上がってはいけないのですが、「ストリートファイターIV」につけた特典のアニメーションが面白かったという3つに三分されていて。
じゃあこれをきちっとローカライズしていけば、もしかするとこういう物語やバックボーンがあるならやってみようかなといか、こういうお話が見たいからやってみようかなという人が少なからずいるのであれば、フルローカライズをして、若い子たちにプレイをしてもらえば、第2第3のウメハラが生まれてくるかもしれない。今はもう次の世代で、こちらの選手もみんな20歳代なので、若返りが一気に図れるチャンスがあるのかなと思って、今回一気に簡体字にフル対応していこうという決断に至った次第です。
――今回「IV」ではなく、いきなり「V」なのですか?
小野氏: 「IV」でも行きたい気持ちはまだ残っているのです。ちょうど「ウルトラストリートファイターIV」のPS4版も出まして、日本でももう少ししたらいつ出しますというアナウンスをする予定ですが、そこもチャンスあらばというところはあります。一方、「ストリートファイター」には面白い文化があるのです。各ナンバリングごとにコミュニティができ上がっているのです。普通ナンバリングが変わったら、そちらへ第引っ越ししていくのですが、「ストリートファイター」のこの30年はすごく面白くて、「II」なら「II」、「II」でもこのバージョン、とか。それぞれにコミュニティが出来上がっているので、いくら「V」ができてもここまでビッグになった「IV」のコミュニティって消えることがないと思うのですね。そういう意味ではなおさら機会があれば「IV」のシリーズも出していきたいなと。
――「V」の後に「IV」が出る可能性がある?
小野氏: あります。これはまったくおべんちゃらではなく、待っている人もいると思いますし。よく我々がリバイバルで「III」のHD版とか「II」のHD版とかを出すのですが、実はほかのすごいIPのリバイバル版よりも数字が良かったりするのです。これは、「俺は『IV』は嫌だけど『III』のこれを待っていた」とかそういうちょっと特殊なナンバリングごとのコミュニティが文化として育っているので、我々も各ナンバリングごとにずっとケアをしていきたいとは思っています。
――中国でも大会をやりたいですか?
小野氏: やりたいですね。競うことが好きな人たちにe-sportsにどんどん参加してもらいたいと思っています。今e-sportsでは「League of Legends」を代表にMOBAと言われているものがありますが、やはり中国は強いですね。十分世界チャンピオンになれるような人がどんどん出てきたり。お国柄、外に出られない人もいるかもしれないですが、この中で決勝大会を開かれているものでは必ず上位に食い込んでいるので。格闘ゲームはe-sportsにだいぶ近いジャンルなので、それであればここの人たちになるべくやってもらいたいなと。人口も多いので、それだけスタープレーヤーが生まれてくる可能性があるなというのは感じているので、ここはがっつりやっていきたいという気持ちはありますね。
――明日行なわれる大会は「IV」の大会なのですね。「IV」のセンサーシップはどうなっているのですか?
小野氏: 「IV」のセンサーシップは通っていません。ChinaJoyに出展するためなのでいいだろうというお達しを各関係機関からいただいたのです。結構グレーに近いホワイトです(笑)。
プロゲーマーやプロになりたい人を間接的にサポートしていく
――小野さんの微博(ウェイボー)のフォロワーが50万人というのはびっくりしました。いつからですか?
小野氏: 「モンスターハンター」の中国版をやっている時にぐっと集まって、こいつ何者だとなった時に、テンセントさんのステージイベントで、僕がアドリブで「『ストリートファイター』もよろしくね」と言ったら、「こいつ『ストリートファイター』もやってるのか」というのでドドドドと集まりました。ただ今日本でやっているTwitterと同じようにほぼ99%男性なので、あまり楽しみはないですが(笑)。
――中国語でつぶやいているのですか?
小野氏: なるべく中国語でつぶやいています。中国のスタッフが対応できない時には、Google翻訳か、後は僕が中国語教室に通い始めているので、先生に聞いて。今回ももういくつか上げていますが、なるべくコミュニケーションをとっていきたいなと。こちらの方はTwitterやFacebookが見られないので。
――これまでのカプコンさんの伝統的なプロモーションの仕方、売り方とかなり違ってきている感じですね。
小野氏: おっしゃる通りです。「ストリートファイターIV」は先日7年目を迎えて、8年目に突入しているのですが、この7、8年でファンの動向が大きく変わってきたと思うのです。1番大きいのはもう当たり前になりかけている動画勢です。ユーチューバーなんて去年かおととし出てきた言葉ですが、そういう時代になるとメーカーが人を作るのではなくてコミュニティが人を作るようになります。
コミュニティの中心にいるのは、メーカーの人ではなくエヴァンジェリストのような人がなっている。であれば、そこを中心にビジネスライクにいうとマーケティングやコマーシャルをやっていきましょうと。もう空から降らせる電波に頼る時代ではなくなったよねというのは、非常に感じています。もちろん電波の力を借りるようなタイトルもあると思いますが、こと格闘ゲームに関してはパイが多く存在するところにスポットで届けてあげない限りは、多分その人たちは動いてくれないなと。
それが今回ソニーさんと組んだ理由でもあるのですが、ソニーさんが持っている世界中のソニーショップであったり、販売拠点であったり、SCEというところにとどまらず動ける場所を多く持っています。それを我々は今回マーケティングの主軸に置いて、動いていきましょうと。その代りカプコンのスタッフでメッセンジャーに慣れる人は可能な限り1泊2日でも香港に行ってくださいと(笑)。そういったことをやりながらメッセージを伝えて発売日を迎えていけるような体制で進みたいと思っています。
――例えばカプコンとしてプロゲーマーをスポンサードして、そのスポンサードしたプロゲーマーと一緒に盛り上げていくという戦略は考えられますか?
小野氏: カプコンが1個人をスポンサードすることは、僕が生きている間はやりません。それをやるとその人が勝つための状態になるので、もうe-sportsではなくなると思うのです。
代わりに、我々はプロゲーマーが活躍できる場を積極的に用意しようと思っています。カプコンプロツアーもしかりだと思うのです。あれはこういうレギュレーションで、こういうポイントで行きますと。このポイントをタイの山奥でやるあなた方の大会に付与しますと。あなた方の努力でこのポイントを使ってうまく人を集めてくださいと。そうすると世界中からプロプレーヤーが集まるわけです。そうなると、オーガナイザーは今まで自力で借りていた会場費がペイされるわけですね。で、そんなに集まってそんなに視聴率がいいならスポンサーにつきますよという方が出てくるわけです。
タイではソニーさんがついてくれたのですが。じゃあ「SONY」と出すからやってくれと。そうするとそれが今度は彼らの儲けに変わるわけです。で、そこにカプコンから賞金だけは送金しておくので、1位になった人にこの賞金をあげてくださいと。これで間接的なサポートができあがると思うのですね。ただ直接のスポンサードは僕のポリシーとして、それをやってしまうと変わっちゃうかなと。プロモーションの公認プレーヤーは用意してもいいかなと思いますが、あくまでもそれは公認するだけであって、そこから金銭的にカプコンって入っているからということは「ストリートファイター」に関してはやらないでおこうと思っています。
だた周りの状況やシチュエーションなどカプコンの力で作れるものはどんどん作ってあげて、そこに登場する若いプロゲーマーだったりをどんどん呼んであげて。一流プレーヤーだけではなくて、プロになりかけの人もどんどんステージにあげてあげることで、10万、20万ギャラがもらえれば十分その月は暮らしていける人がいると思うので、そういう部分を積極的に僕らの力でできればいいかなと思います。
――ありがとうございました!