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NVIDIAがプラットフォーマーに!「SHIELD」プレスカンファレンス詳報

スマートTV、ゲームコンソール、クラウドゲーム端末の顔を持つ高性能マシン

3月2日~6日開催



会場:San Francisco Moscone Convention Center

大型劇場で盛大に開催されたプレスカンファレンス
「SHIELD」を紹介するジェンスン・ファン氏

 現地時間3月3日、NVIDIAはGDCの開催されているサンフランシスコ市内で大規模なプレスカンファレンスを開催し、Tegra X1を搭載するAndroidゲームコンソール「SHIELD」を正式に発表した。既報の通り、NVIDIAでは本製品のローンチに合わせて独自のクラウドゲーミングサービス「NVIDIA GRID GAME-STREAMING SERVICE」もスタートさせる。

 大型の劇場で開催されたプレスカンファレンスには数百名のゲームデベロッパーやプレス関係者が招待され、NVIDIAのCEO・ジェンスン・ファン氏によるプレゼンテーションで「SHIELD」の登場が高らかに宣言された。

 E3などの展示会系イベントとは異なり、ゲーム開発者向けのイベントであるGDCでは、これほどの規模で新製品のプレスカンファレンスが行なわれることは希だ。それだけにNVIDIAとしては、新しいゲームプラットフォームとしての「SHIELD」および「GRID GAME-STRIEAMING SERVICE」をゲーム開発者に向けて強く印象付け、参入デベロッパーを増やしたいという強い意図があるとみられる。それを反映して、翌4日からのGDC通常セッションでは「NVIDIA GRID」がらみのテクニカルセッションが多数予定さている。

 ステージに登壇したファン氏は、この日の発表内容を「Revolutionaly TV(革新的なTV)」、「Game Console」、「Supercomputer」の3つに分けられるとしたうえで、「SHIELD」および「GRID GAME-STREAMING SERVICE」の中身を紹介していった。以下、動画を交えつつご紹介していこう。

【SHIELD - Made To Game】

「SHIELD」
「SHIELD」と付属コントローラー
専用リモコン「SHIELD Remote」

4K対応・AndroidスマートTVとしての「SHIELD」

リビングルーム端末戦争に満を持して参戦する意気込み
各種のオンラインビデオにアクセス。4K動画もスムーズに再生する
別売の「SHIELD Remote」リモコン。音声入力向けにデザインされている
モバイルカテゴリでは比較にならないほど高いパフォーマンス

 「SHIELD」のお披露目にあたって、ファン氏がまず強調したのは、本製品が画期的なリビングルーム機器であるということだ。その一側面として「SHIELD」には、高性能なスマートTV端末としての機能が盛り込まれている。

 まず大きな特徴となるのは、4K/60fpsデコードへの完全対応。ピクセルフォーマットはハイダイナミックレンジのRGB各10ビット階調に対応し、内蔵のH.265デコーダーにより4K解像度の動画を60fpsでなめらかに再生できる。

 Tegra X1を搭載していることで、モバイルOSベースのスマートTVとしては破格のマシンパワーを持つことも特徴だ。会場で紹介されたグラフによれば、パフォーマンスはApple TVの35倍におよび、本製品と同じくゲーム端末としても設計されたNexus Playerと比較しても4倍ほどにもなる。

 このパワーで実現していると見られるのが、自然言語や映像認識による高度なナビゲーションやコンテンツ検索の機能だ。会場では映画のワンシーンに登場した俳優が映像認識され、その関連人物を即座に表示される模様が披露された。そこから新たに関連人物の出演作品を検索するといったナビゲーションも可能だ。また、アーティスト名を音声入力することで関連アルバムを素早く検索、再生するといった模様も紹介されていた。

 本製品でアクセスするマルチメディアのコンテンツサービスは国によって異なるようになるはずで、スマートTV端末としての日本国内での展開についての詳細は今のところ不明。これについては続報が入り次第お知らせしていきたい。

【SHIELD - スマートTV機能デモ】

【SHIELDの外観】

高性能Anrdoidゲームコンソールとしての「SHIELD」

Xbox 360比では演算力で倍以上、メインメモリは6倍、消費電力は5分の1以下という性能
SHIELD Controllerが付属。対応タイトルもローンチ時に50タイトル以上を用意するという
「Borderlands: Pre-Sequel」。PC版などと全く同じ画質で動く
「Crysis 3」も。オンラインマルチプレイの様子がデモされた

 「SHIELD」のもう1つの側面は、もちろんゲームマシンとしての性能だ。8コアのARMプロセッサ、MaxwellアーキテクチャによるDirectX 12世代のグラフィックス機能により、前世代の据え置きゲームマシンを遥かに超える性能を実現している。

 これに加え、本製品には「SHIELD Controller」が標準で付属する。これは次世代機水準のゲームコントローラーで、音声入力やタッチ入力にも対応するという多機能性と、独自の無線方式による低遅延なレスポンスが売りだ。

 ファン氏によれば、この性能を生かすため、「SHIELD」のローンチ時点で50以上の対応タイトルを用意するという。そのラインナップはゲーミングPCやコンソールに並ぶ本格的なものばかりだ。

 中でも目玉となる対応タイトルについては、各デベロッパーの代表者が登壇し、「SHIELD」のゲームマシンとしての魅力をアピール。GearBoxによる「Borderland: Pre-Sequel」やCroteamによる「The TALOS Principle」、id Softwareによる「DOOM3 BFG Edition」、そしてCrytekによる「Crysis 3」など、錚々たるラインナップとなっている。

【SHIELD - 「Borderlands: Pre-Sequel」デモ】

【SHIELD - 「DOOM3: BFG Edition」デモ】

【SHIELD - 「Crysis 3」デモ】

 特に「DOOM3 BFG Edition」はオリジナルのPC版よりもリッチな画質を実現している上に、常時60fpsの滑らかさで動作。「Crysis 3」については常時60fpsとはいかないまでも、安定して30fps以上のパフォーマンスを維持しているようで、「SHIELD」が本格ゲームマシンであるというアピールポイントに偽りはない。

 その他、国内デベロッパーからはカプコンの「Resident Evil 5」、KONAMIの「Metal Gear Rising: Revengeance」といったビッグタイトルが「SHIELD」対応を予定しているとのことで、「SHIELD」の新たなゲームプラットフォームとしての門出はなかなか派手なものになりそうだ。

これだけの性能を持つ端末が、コントローラー付属で199ドル。50本以上のローンチタイトルも用意される

より決定的な、クラウドゲーミング端末としての「SHIELD」

1080p/60fpsを保証する、NVIDIA肝いりのクラウドゲーミングサービスがスタート
世界中にサーバーを整備。「NVIDIA GRID」の技術でレスポンスを最小化する
サブスクリプション制で多数のタイトルがプレイできるようになる
「MGS V:GZ」もハイエンドPC相当の画質でプレイ可能
「The Witcher III: Wild Hunt」の例。ストリーミングにありがちな画質の劣化も見当たらず

 「SHIELD」が持つ第3の側面は、クラウドゲーミング端末としての機能だ。NVIDIAでは本製品のローンチに合わせて独自のクラウドゲーミングサービス「NVIDIA GRID GAME-STREAMING SERVICE」をスタートする。

 この部分、ファン氏による紹介はかなり熱を帯びたものになった。クラウドゲーミングをホストするサーバーは「NVIDIA GRID」によるシステムで、ファン氏はこれを「NVIDIA GRID Supercomputers」と表現。これによるデータセンターをAmazonとの提携により各地に配置し、過去数カ月間、世界中で厳しいテストを行なってきたという。

 既存のクラウドゲーミングサービスと比較して際立つのが、画質とフレームレートへのこだわりだ。解像度は1080p、フレームレートは60fpsを確約。「NVIDIA GRID」サーバーの能力により、ハイエンドゲーミングPCに匹敵するリッチなゲームプレイをクラウド越しに実現する。

 クラウドゲーミングで問題となる遅延については、“1ミリ秒も見逃さない”ほどのこだわりを持って環境を整備したというファン氏。「NVIDIA GRID」の持つバッファリング無しのエンコード機能、SHIELDの持つ高速なデコード機能などにより、入力→表示の遅延は150ms以下、ファン氏の表現では“まばたきの半分”に抑えられるという。

 プレゼンテーションで提示された映像によればデータセンターは東京にも設置される模様で、国土の広い北米などに比べれば国内ユーザーはさらに理想的な環境でプレイできることになりそうだ。

 「SHIELD」ネイティブの最適化タイトルと同じく、このクラウドゲーミングサービスでもローンチ時に50タイトル以上を用意するというが、そのラインナップは高性能ゲーミングPC向けあるいは次世代機水準のAAAタイトルが中心となる。

 例えば目玉のひとつとなるタイトルはKONAMIの「Metal Gear Solid V: Ground Zeroes」。つい昨年末にPC版がリリースされたばかりの次世代水準の作品だが、これがクラウドを通じて1080p/60fpsでなめらかに動作。画質についても、スタート地点からの長めを確認する限り、ライティングが非常に遠くまできちんと描写されており、PC版におけるUltra設定に匹敵するようだ。

【GRID - 「Metal Gear Solid V: Ground Zeroes」デモ】

 このほか日本のデベロッパーからはからはカプコン「Resident Evil 2: Revelations」も本システムで配信されることが会場で明かされている。これを皮切りにたくさんのAAAタイトルがプレイできるようになることを願いたい。

 また、「NVIDIA GRID」のサーバーシステムは非常に強力で、「Unreal Engine 4」の超ヘビーなテックデモである「Infantry」も1080p/60fpsで動作する。2年前ならハイエンドゲーミングPCでも30fps動作となっていたほどのシェーダーヘビーな映像だ。いかなるゲームマシンでもこのパフォーマンスを出せないことは間違いない。

【GRID - Unreal Engine 4デモ】
「スーパーコンピューターの支援で次世代ゲーム機をも超える性能を得られる」とファン氏

 言ってみれば、199ドルで買える「SHILED」があれば、軽く20万円はする高性能ゲーミングPCと同じ品質で最新ゲームがプレイできてしまうわけである。しかもクラウドゲーミングのメリットとして、インストールや設定の調整など面倒な手続きは全くなし。1クリックで購入、即座にプレイを開始することができるのだ。

 「NVIDIA GRID」システムに支えられたこの新しいクラウドゲーミングサービスは、ゲームハードとしての「SHIELD」自体よりもある意味で決定的なゲームプラットフォームになる可能性がある。

 3月4日以降のGDC通常セッションで予定されている「NVIDIA GRID」関連技術セッションの模様も含め、「SHIELD」および「GRID GAME-STREAMING SERVICE」について、今後さらに続報をお届けしていきたい。

【GRID - 「Resident Evil 2: Revelations」デモ】

【GRID - 「The Witcher III: Wild Hunt」デモ】

(佐藤カフジ)