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【特別企画】GDC Awardsノミネート記念、“尖った”インディーズゲームの数々を紹介

Steamで今すぐできる「Papers, Please」など4作品をピックアップ

 GDC 2014会期中の3月19日(現地時間)、「Game Developers Choice Awards」の表彰式が開催された。「Game Developers Choice Awards」はゲーム開発者がノミネート作品を選ぶ、数ある中でも名誉ある賞の1つだ。

 しかしほとんどの作品がインディーズタイトルのため、とりわけ日本ではそれらのゲームに触れる機会は少ない。今回はその中でもゲーム配信プラットフォーム「Steam」ですぐにプレイできるインディーズタイトルから「Papers, Please」、「Gone Home」、「Kerbal Space Program」、「The Stanley Parable」の4タイトルをピックアップした。

 どのタイトルもインディーズらしい尖った作品で、好みは分かれるだろうが高評価を得ているのも納得できる作品ばかりだった。それでは早速インプレッションをお届けしたい。

どうして入国審査官にこんなドラマが起きるのか「Papers, Please」

主人公は抽選で入国審査官に選ばれた。抽選という辺りも共産主義っぽい

 まずは「Game Developers Choice Awards」で発明賞、ダウンロード賞を、そして同時に開催された「2014 The Independent Games Festival Awards(IGF Awards)」ではグランプリ、デザイン賞、ナラティブ賞を受賞し、GDC参加者の話題をかっさらっていった作品「Papers, Please」から紹介する。

 「Papers, Please」はLucas Pope氏が個人で開発したゲーム。共産主義国家「アルストツカ」の入国審査官に任命された主人公が、国境の検問所で長蛇の列を作る入国希望者を捌いていくゲームだ。

 検問所には毎日多くの入国希望者が訪れる。主人公はパスポートや入国許可証、入国希望者の発言などの情報を元に、国境を通過させるかさせないかを判断していく。

 なぜかこの検問所には問題がある入国希望者が多い。必要な書類が足りないといったありがちな問題から、パスポートや各種書類の期限切れなどの不備、武器を密輸入しようとする人、見た目とパスポートの性別が違う人(!)などが訪れる。

 ひどいものになるとパスポートすら持っていない入国希望者もいて、何をどうやったら入国できると考えたのかと思わず突っ込みたくなる。

 プレーヤーはこれらの書類をチェックし、必要であれば尋問を行ない、入国可否の判断を下していく。

 ゲーム序盤はパスポートの期限が切れていないか程度だが、ゲームが進むにつれ確認が必要な項目が増えていったり、必要な書類が増えて、手続きが煩雑になっていく。しかもこの国境はほぼ毎日ルールが変わり、昨日まで使えた許可証が今日は使えないといった事もザラに起こる。

 こうなってくると当然チェックに時間がかかるのだが、悲しいことに主人公の給料は歩合制、処理した入国希望者の数にあわせた給料が支払われる。主人公は家族を養う身、収入が足りなければ食費や暖房費が削られる。そうすると家族は空腹になるし、病気にもかかる。もし病気にかかってしまったら薬代までかかる。

 その為手早く処理していきたいところだが、間違いすぎると罰金を取られてしまうので、早く正確に処理していくことが求められる。

 ここまでの説明では、単なる「間違い探しゲーム」に過ぎない。確かに基本的なゲームシステムは間違い探しだが、本作がなぜここまで好評価を得たのか。筆者はゲーム性のはもちろんだが、本作のストーリー性、物語性にあると考える。

 本作は最高でも31日間の物語なのだが、この31日間に様々なストーリーが起きる。例えば長い間息子と離れ離れだった母親が入国を希望したり、他国から逃げてきた夫婦などが訪れる。

 こういった背景を持つ入国希望者に限って書類に不備があるのだ。当然入国審査官としては入国を拒否しなければいけない。だが1人の人間としてはどうだろうか? バラバラになっていた親子を会わせてあげたい、夫婦揃って「アルストツカ」に逃がしてあげたいというのが人情だ。この葛藤が書類チェックという単調な日々に刺激を与えていく。

 他にも賄賂を渡してくる入国希望者、ユニークなところではピンクチラシを渡して「ワタシを指名してね」なんていう女性もいる。単発の出来事もあるが、反体制派の組織から何日かに渡ってミッションを依頼されたりもする。ちなみに、このミッションを達成するか否かでエンディングが変化したりもする。

 間違い探しだけでも面白いが、入国審査官を取り巻く悲喜こもごものドラマ、それが本作の魅力である。予期せぬ事故などでゲームが途中で終わることもあるが、通しで31日間プレイしても数時間ほどのプレイ時間とプレイボリューム的にはコンパクトだ。だがその短いプレイ時間中に起きる、入国審査官を通して描かれる様々な人間ドラマを楽しんで欲しい。

 そして日本のプレーヤーにとって非常にありがたいのが、デフォルトで日本語に対応しているという点だ。オプションから言語設定で日本語を選択すればインターフェイスや会話など全てが日本語になる。値段は9.99ドル(約1,020円)で、お手頃な価格なのもありがたい。

【スクリーンショット】
ほぼ毎日変わるルールにあわせて入国希望者を捌いていく
自作のパスポートを持って堂々と入国しようとするおじさんや、ピンクチラシを持ってきて宣伝するおば……お姉さんもいる

(八橋亜機)