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【G-STAR 2013】韓国スマートフォンアプリ市場がカンブリア大爆発!
大手から中小、そして海外メーカーまで、韓国のゲームトレンドはネイティブアプリに
(2013/11/18 00:00)
大手から中小、そして海外メーカーまで、韓国のゲームトレンドはネイティブアプリに
ここまではオンラインゲーム市場を中心にみてきたが、現在の韓国ゲーム市場はスマートフォンのネイティブアプリを抜きには語れない。2012年には、無料通話KaKaoTalkと、そこで遊べるゲーム「Anypang!」が国民的に大ヒットしたことを受けて、市場の規模は2011年の4,236億ウォンから、8,090億ウォンに倍増。ゲーム市場のシェアは8.2%になっている。
そして、もう1つの要因が、急激に成長しているスマートフォン市場だ。オンラインゲーム市場に陰気な話題が多いのに比べると、こちらは今まさにカンブリア大爆発の様相を呈している。Googleが発表した世界のスマートフォン利用に関する大規模調査「Our Mobile Planet」によれば、韓国のスマートフォン普及率は驚きの73%(日本は25%)と圧倒的だ。実際、ホテルと会場の移動で地下鉄に乗っていても、そもそもフィーチャーフォンを見かけない。老いも若きもとにかく全員がスマホを持っているのではないかと思われるほどだ。
だが、市場の成長はたった1本の大ヒット作が支えているわけではなく、明日の「Anypang!」、明日の「ポコパン!」を目指して、スマホ市場に参戦している無数の弱小スタジオも、その勢いに一役買っている。BtoBブースには、デベロッパーだけではなく、参入の機会を伺う中国やアメリカの大手パブリッシャー、アプリを売り込むためのマーケティングやサービスを提供する会社などが多く軒を連ねていた。数年前までは、オンラインゲーム一色だったことを考えれば、大きな変化だ。
もちろん大手も対応に乗り出している。比較的モバイルへの切り替えが早かったWeMadeのBtoBブースはモバイル一色だったし、NHN Entertainmentはスマートフォン向けの新ブランド「Toast」を立ち上げ、LINEゲームを中心にディストリビューションを行なっている。Neowizは自社の強いブランドを使った「Special Force First Mission」のようなフランチャイズをモバイルで展開している。
日本国内ではフィーチャーフォンのソーシャルブームが一段落した後、日本では家庭用携帯ゲーム機に人気があり、スマートフォンの普及率がそれほど高くないなどの要因があるのだろうが、ネイティブアプリのブームはいまだ始まっていない。韓国では、スマートフォンは外出した時のゲームデバイスとして社会に完全に認知されている。ゲーム会場で行列待ちをしているときにも、周りの人たちはスマホで遊びまくっている。ほとんどがAndroid機で、バッテリーは複数持ち歩くのが常識のようで、取り替えている姿も見かけた。
遊んでいるゲームは「ポコパン!」、「Candy Crush Saga」、「パズル&ドラゴンズ」などのメジャーなタイトルから、見たこともないようなインディーズっぽいアクションゲームまで多彩だった。昨年は本当に誰の手元をみても「Anypang!」で遊んでいたので、市場が多様化していることを感じた。
11月7日にDAUMとの協力関係を清算したDeNAは今年は姿を見せなかったが、日本からはセガ、グリー、gumi、モブキャスト、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、GMOアプリクラウド、ANDAMUL、ADWAYSなどがアプリを出展していた。日本のコンテンツビジネスはガラパゴスと言われがちだが、すぐ真横にあり、文化的な親和性も高い韓国へゲームだけが上手く進出できていないのは考えてみれば意外だ。韓国のオモチャ屋を覗くと、BANDAIのおもちゃがずらりと並んでいるし、書店には日本の新刊漫画がきっちりそろっている。今後グローバル化を目指す日本のアプリメーカーがどんどん進出していく可能性はありそうだ。
逆に、存在感ゼロだったのが、家庭用ゲーム機だ。任天堂コリアが3DS用の「モンスターハンター4」を出展していたが、ソニーはSCEではなく、ソニーコリアがヘッドマウントディスプレイとスマートフォンを展示し申し訳程度にPS3用の「グランツーリスモ6」を並べているだけだった。マイクロソフトは会場外にブースを設けていたがXbox Oneではなく、Windows 8とSurfaceを展示していた。
韓国のコンシューマー市場は2011年が前年比-37.1%、2012年が-40.1%ともともとのパイが小さいにも関わらず、さらに急速なマイナス成長が続いており、コンシューマーゲームがゲーム市場占有率は1.6%しかない。数字から見ても、韓国でのコンシューマー事業が非常に厳しいことが伺え、次世代機が影も形もなかったことも、そんな事情あってのことだろう。
ところが不思議なことに、ゲーム白書では2014年以降のゲーム市場の成長について、モバイルはブームが終わり51.4%が8.2%に落ち込むとし、コンシューマに関しては-5.6%から35.4%に伸び、さらにその翌年には41.3%へと成長していくだろうと予測している。これは、次世代機になってコンシューマ向けのオンラインゲームが数多くサービスされるようになるため、韓国のゲームファンはこれを遊ぶのではないかと予測しているようだ。韓国では、まだ家にPCがなく、PC房で遊んでいる人が多いため、ストリーミング配信などが本格化していくと家庭用が切り込む余地が多いにあるということだろう。
スマホアプリの流行が開発者の裾野拡大に貢献
大手のブースがない分、今回のBtoCコーナーには、韓国コンテンツ振興院(Kocca)やプサン市、ソウル市などの公的な機関が大きなブースを出していた。また、日本でもおなじみの光景だが、学校関係のブースも目立った。ここで驚かされたのが、大学生たちが作るゲームのレベルの高さだ。
韓国では複数の大学にマルチメディアを教える学科があり、グラフィックス、プログラム、ゲームデザインについて専門教育を行なっている。そのためか、特にプログラムの高度さに驚かされた。Unityのような3Dエンジンを使うのはPCでもモバイルでも当たり前で、さらにKinectやOculus Riftなどのデバイスを使ったゲームもあった。
話を聞いてみると、スタッフの中で1番人数が多いのがゲームデザイナーという、どこでも聞くような状況もあるが、それでも大学で受ける専門教育が質の高い人材を送り出していることは、うらやましく思えた。以前は、特殊なデバイスはコンシューマの得意分野だった。しかし今はPCやスマホにもインターフェイスの選択肢が増え、さらに安価にゲームを作れる環境が整っている。学生の作品は、既存のゲームに似たものも多かったが、中には荒削りだがやりたいことが突き抜けているようなゲームもあり、オリジナリティを発揮する素地が出来上がっていると感じた。
ゲーム白書を見る限り、韓国ゲーム業界は現在の状況を一過性のものだと判断しているようだ。だが、蓄積されたノウハウは、どんなジャンルのゲーム作りにでも活かされていくだろう。日本はとかくコンテンツ分野の振興というと、海外への売り込みの話題ばかりになるが、海外にも通用するような人材育成の分野をもっと見直す必要があるのではないかと思う。