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【ホビー特別企画】「クロスファイトビーダマン」アジア大会密着レポート

開発者インタビュー。メカニクスと、格好良さを追求できる玩具「ビーダマン」

開発者インタビュー。メカニクスと、格好良さを追求できる玩具「ビーダマン」

開発を担当するタカラトミーボーイズ事業部ボーイズグループオリジナルボーイズチームエキスパートの堀越研次氏(左)と、マーケティング担当のオリジナルボーイズチーム主任の吉原有也氏
シリーズの元祖となる「ビーダマン」
ヒットとなった「スーパービーダマン」と、主人公の「フェニックス」

 ビーダマンはかなり歴史のある玩具である。現代の「クロスファイトビーダマン」まで、タカラトミーはどのようにこのシリーズを発展させたのか、子供達に向けてどのようなアプローチで商品開発を取り組んでいるのか、どのような展開を見せている玩具なのか? 開発を担当するタカラトミーボーイズ事業部ボーイズグループオリジナルボーイズチームエキスパートの堀越研次氏と、マーケティング担当のオリジナルボーイズチーム主任の吉原有也氏に話を聞いた。

 堀越氏は「クロスファイトビーダマン」へと続いていく「ビーダマン」の歴史を語った。ビーダマンは「ボンバーマン」のキャラクターグッズとして1993年に生まれた。コンセプトは「ビー玉を指でつまんで、はじく」というビー玉遊びであり、フィギュアのお腹部分に穴が開き、そこにビー玉を押さえるホールドパーツと後ろから押し出すパーツからなる「発射機構」を内蔵している。この基本的な要素は現代まで変わっていない。

 ビーダマンは小学館の雑誌「コロコロコミック」。そしてその時々のアニメ番組と共に展開していった。大きなヒットとなったのが「スーパービーダマン」シリーズ。コロコロコミックスで1995年~2001年まで連載され、そのマンガの中で主人公が使うビーダマン「ファイティングフェニックス」はどんどん進化していった。

 2002年~2005年には「バトルビーダマン」という“対戦”にフォーカスしたシリーズを展開。直接向き合って撃ち合い、ビーダマン本体前面についているプレートに当たった方が負け、という遊びを提示した。続いて2006年には「クラッシュビーダマン」では銃の形のようなビーダマンで、相手のターゲットを破壊するという遊びを生み出した。(この2シリーズはともにアニメ展開あり)。

 しかし、この頃からより安全を求める声が高まってきていて、2007年にはビー玉ではなく金属の弾を発射する「メタルビーダマン」シリーズを発売するが、この後2007年から2010年まで一端シリーズは休止する。

 そして2010年からコロコロコミックスの「ペンギンの問題」をモチーフとして「クロスファイトビーダマン」を展開。シリーズ初期はフィギュアにアーマーパーツを着せるという形だった。アーマーパーツにコードを設定し、店頭で無料で遊べるアーケードゲーム「B-太1号」と連動させる形でシリーズは復活した。

 さらに2011年4月からオリジナルシリーズとしてロボット型のビーダマンが登場し、合わせてアニメ番組も連動してスタートした。コアを中心にビーダマン本体のパーツを組み替え、さらに様々な“チューンナップギア”でショットの正確性を強化したり、マガジンで連射を可能にしたりといったカスタマイズができる。競技性とフィギュアとしてのカスタム性の両方を追求したシリーズとして展開しており、今回の競技でもこのビーダマンが使用されている。

 堀越氏は次に、「クロスファイトビーダマン」に込められた技術を語った。玩具に対する状況の変化を受けながら、時代に合わせてビーダマンは変化していったという。「クロスファイトビーダマン」はこれまでの技術を受け継ぎ、ある技術は復活し、ある技術は進化を遂げている。特に「クロスファイトビーダマン」はビー玉を打ち出す「コア」の部分に機能を多く盛り込んでいる。例えば連射力を強化したコアは爪の部分がローラー状になっており、ビー玉を保持する力を持ちながら、ビー玉を送り出しやすい機構になっている。

 また発射口の部分にラバーを張ったコアはボールを発射するときに縦回転を加える。これによりよりまっすぐ転がりやすくなり、正確なショットをすることができる。この他にもてこの原理を使って、上から押し込む力で強力なショットを撃つコアもある。このてこを使った機構は以前は本体より大きな仕掛けだったが、設計を突き詰めることでずっと小さなサイズで同じくらいの強さを得ることができるようになったという。

 ビーダマン本体のパーツは、発射時に握りやすくなるハンドル状のパーツや、ビー玉を押さえる爪の部分をバネで強めて発射の威力を高めるといったビー玉発射の性能を高めるものも用意されている。足にローラーをつけ、左右の移動をしやすくするといったパーツもある。

 コア、パーツ、フィギュア部分やカスタムパーツを含め、「クロスファイトビーダマン」は80以上のアイテムを展開している。開発と共にマーケティングチームはどういったパーツを選ぶとどんな性能を発揮するか。どういった遊び方ができるかなどはホームページや、アニメ番組でも取り上げている。

 どうすれば子供達に楽しんでもらえるかを考え、様々な媒体を使って「クロスファイトビーダマン」の魅力をアピールしていると吉原氏は語った。マーケティング部分でも昔からの経験を活かしながら、新しいアイディアを積極的に盛り込むように心がけているという。

【ビーダマンの歴史】
クロスファイトビーダマンの前までのシリーズの変遷。よりデコレーション性を強くしたり、対戦方法を提示したりと様々な遊びを提示している

初のアジア大会を実施。「クロスファイトビーダマン」は今後もさらに発展を

堀越氏は担当する前から社内で「ビーダマン」のファンだったという
吉原氏はイベントでは裏方として様々なフォローを行なっていた

 堀越氏は2002年からビーダマンに関わっているが、それ以前からビーダマンのファンだったという。「ビーダマンの魅力はロボットフィギュアとしてのキャラクター性と、ビー玉を打ち出すという遊びとしての面白さが合わさっているところだと思うんです。ギミックの面白さ、競技の面白さ、様々な魅力が詰まっている。様々な要素が融合し形になっているところが気に入っています」と堀越氏は語った。

 今回のような全国大会は、休止期間以外は規模の大小はあったものの開催されていた。「クロスファイトビーダマン」では、今回の大会でも使われた「メテオボンバー」や「DXブレイクボンバー7」といった商品として販売されているものを活用し店頭で大会を行なうが、イベント専用の大型フィールドを用意する場合もある。

 ただし、アジア規模での大会ははじめてだ。タカラトミーでは以前「ベイブレード」で世界大会も開催したがビーダマンでは今回が初となる。「ビーダマン」の海外展開はこれまでは規模が小さかったが、「クロスファイトビーダマン」のアニメ番組は香港、台湾、韓国で展開しセールスも好調であり、「ベイブレード」で得たノウハウを活かしてアジアチャンピオンシップが開催された。今後も東南アジアでも商品展開し、2013年秋からは北米やヨーロッパでもアニメ番組放映と同じタイミングで商品展開を行なっていくという。

 今回、日本では35人の選手が日本代表戦に参加したが、それまでの予選は延べ約2,000人が参加した。台湾や香港でも同じくらいの規模の参加者がいて、かなり人気が高かったとのことだ。

 今回、アジアチャンピオンシップは他国でも商品展開をしている「DXブレイクボンバー7」を使ったが、日本代表決定戦では4つの競技を用意した。特にスーパーロングブリッジは「次世代ワールドホビーフェア」でも人気だった。4つの競技は「クロスファイトビーダマン」の腕をきちんと発揮できるようなものをチョイスした。日本はビーダマンの歴史が長いため日本のプレーヤーがテクニックに秀でている傾向があり、「ベイブレード」でも同様だった。ただし、今回のアジアチャンピオンシップでも実力が拮抗していたように、それでも最終的な実力は子供達の“腕”にかかっている。

 「競技に合わせて最適なパーツチョイスを行なっても、それだけでは勝てない。ここは他の競技ホビーなどとはちがうところだと思います。まっすぐ飛ぶようなカスタマイズを施しても、撃つときの姿勢が変わると大きく異なってしまう。相手との駆け引きなど選手達のテクニックも大きく勝敗に関係してくる。大会に出てくる子達はかなり練習しています」と吉原氏は語った。

 最後にメッセージとして吉原氏は「『クロスファイトビーダマン』は色々な要素が詰まっています。今回のシリーズは“バトル”という要素を強調しています。家で1人で遊ぶのはもちろん、親子や友達とコミュニケーションをとりながら楽しめるものになっています。こういった要素は今の時代に重要であると思っています。もちろんカスタマイズの要素、自分の腕を鍛えることで強い“ビーダー”になれるという所も魅力です。友達と、親子で楽しんで欲しいです」。

 堀越氏は「ビー玉を発射して的に当てる。これがビーダマンのコンセプトです。デジタルなゲームとは異なる、撃つときの姿勢が大事だったり、ビー玉を発射した感触だったり、連射するために弾をいっぱい入れたり、アナログな楽しさを持っています。ぶれないように上からビーダマンをしっかり押さえつけたりだとか、足の裏にゴムを張ったり、多くのビー玉を入れるために市販のパーツではなくペットボトルを使ったりとか、デジタルゲームにはない自分なりの工夫や、拡張性や攻略法がある。こういった魅力にも注目して欲しいです」と語った。

【クロスファイトビーダマン】
カットの声と共に合成セットに切り替わり、ドタバタ劇が展開する。軽い内容で楽しめるが、魔法のエフェクトなど、表現力のすごさ投入された技術には圧倒されるだろう

チャンピオンのビーダマン。カラーリングも凝っていて、こだわりを感じさせる。
数店舗を回り、パーツを集めてみた。入手できないパーツに関しては、店員にアドバイスを貰って代用パーツを用意した

 試合後、開発スタッフにチャンピオンのビーダマンの構成を教えて貰った。本体はメタルフォース=レオージャにダイレクトローダーマガジン、ワイドマガジン、ストレートバレル、パワーマント。安定性と正確性を重視した構成だ。

 これを再現しようとしたのだが……なかなか難しい。量販店や玩具店では、パーツの販売時期で入手が難しいものもあった。特に中心となる「メタルフォースコア」は店頭にはなく、ネット販売ではプレミアム価格で取引されていた。そこで代用としてスピン=レオージャに、フォース=ドラグレンの「フォースコア」を使用した。フォースコアはコントロール重視タイプで、メタルフォースコアはフォースコアに金属パーツを使用し、重量を増すことでさらなる安定性を獲得しているという。

 射撃の正確さを向上させるストレートバレル、安定したビー玉供給を可能とするダイレクトローダーマガジンは入手できたが、受け口を広げるワイドマガジンが入手できなかったので、ダイレクトローダーマガジンではなく、安定供給重視のシステムマガジンを使用してみた。スムーズな給弾ができるが、受け口が狭いので、焦ったときビー玉がこぼれそうだ。

 射撃姿勢を安定させるパワーマントはシリーズ初期のパーツなため販売が終了しており、同じような働きをするマガジンスタビライザーを使った。ビーダマンを握りやすく、射撃姿勢を安定できる。今回は数店舗を巡ったが、特にヨドバシカメラ新宿店の方にアドバイスを貰ってパーツを構成することができた。ちなみにパーツやボディなどは通販サイトの「タカラトミーモール」でも購入できる。実際の価格としては本体が1,000~800円。パーツが500~700円ほどで、今回は2体のボディや公式ビー玉も買ったので4,000円ちょっとの出費だった。

 実際組み立ててみると、素材は耐久性を重視しており、固定用のパーツでしっかりと組み合わさるようになっている。子供が使うことを考えていた設計がなされていると感じた。パーツの組み替えは、専用の接続パーツがあったり、“改造”している感じを強める。造形としては、モールドが細かく装飾過多気味のところが子供の“格好良さ”を刺激すると感じた。

【クロスファイトビーダマン】
色合いもばらばらだが、安定性と連射性を重視した構成にできた。組み立てることで耐久性の高さ、拡張のための設計など、ビーダマンに込められた技術が感じられた

(勝田哲也)