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ガンホー森下一喜氏、ゲーム作りは「常に破壊と創造」

基調講演第2部に登場。森下氏が語る「パズドラ」成功の秘密、ゲーム業界の未来とは?

9月19日~22日 開催(一般開催日:21日~22日)

会場:幕張メッセ1ホール~9ホール

入場料:
1,000円(中学生以上・前売)
1,200円(中学生以上・当日)
入場無料(小学生以下)

 東京ゲームショウ2013のビジネスデイ初日にあたる9月19日、基調講演第2部にガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏が登壇した。

 基調講演とは名前が付いているものの、森下氏は「講演が苦手」ということで、司会の質問に答えていくような対談形式での開催となった。司会を務めたのは、日経BPヒット総合研究所研究員の品田英雄氏。

 お題は大きくわけて「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のヒットの秘密、ガンホーという会社について、森下氏の人となり、そしてゲーム業界の将来についての4つとなった。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏
日経BPヒット総合研究所研究員の品田英雄氏

「パズドラ」をぶちこわなさいと、超えるものが出てこない

 品田氏から「パズドラ」のヒットの理由は? と早速質問がぶつけられると、森下氏は「特にヒットの理由は分析していない。成功よりも、失敗の分析の方が大切だと思っている」と回答。またヒットと巡り会えたとしても、「それは運が良かった」と思うようにしとり、奢らないようにしていると話した。

 しかし唯一「パズドラ」のターニングポイントとなったのは、企画段階で画面を横向きから縦向きに変えた瞬間だという。そうすることで片手で持った時の親指の可動範囲内での操作が可能となり、上にダンジョン画面を置いて全体を有効に使える。そこで森下氏は「いける」と思ったそうだ。またドロップの動きには森下氏がかなりこだわり、ドロップを移動させる感触を小気味よくするために4、5回作りなおしをスタッフに指示したという。

 なおニンテンドー3DS版となる「パズドラZ」を出すことについては、「パズル&ドラゴンズ」を企画している段階で3DS版を出すと決めていたのだという。これは「パズドラ」が3DSの操作にマッチするということからで、子供から大人まで楽しめる本作のコンセプトの延長にある。

 元々森下氏はスマホ版でも主人公やストーリーを入れ込もうと考えていたのだが、容量の関係で断念したのだという。3DS版ではそれらが入るため、「ようやく実現に向かう」と嬉しそうに話した。

 今年のCEDECの基調講演で森下氏が、ヒット作の方程式は「やっぱ、ない」と語った真意については、「ないのではなく、“やっぱ”ない。常に考えているし、求めてしまうのは人間の癖だが、時代時代によって状況は変わるし、消費者も進化している。1つの方程式があったとして、その方程式のままでいたらヒットするわけがない。時代の流れは今まで以上に早い」と改めて説明した。

 それゆえに、「常に革新的なチャレンジをやり続けていかないといけない」とも話した。ガンホーで言えば、「ラグナロクオンライン」を成功させたが、その成功に囚われて「ラグナロクオンライン」を超えるゲームを登場させられないという経験を持っている。ヒット作に縛られず、常に破壊と創造をする。「『パズドラ』のフォーマットをぶちこさないと、『パズドラ』を超えるものは出てこない」という考えを明らかにした。

コンシューマータイトルには心に残る「ゲームの原体験」を期待

森下氏自らが撮影した社内風景を公開。森下氏が気軽に社員に声をかけていくというスタイルだった

 続いての話のテーマはガンホーという会社について。会場では森下氏自ら撮影した会社内のビデオが公開され、割りと社員からタメ口で話されていること、「社長」とはあまり呼ばれず、「森下さん」か「カズキング」と呼ばれ、風通しのいい社内状況を垣間見ることができた。

 そして品田氏が森下氏自身のことについて「お笑いを目指していたのは本当か」と聞くと、「高校の先生に漫才師かサラリーマンになれ」と言われ、一時漫才師を目指していたことがあるという。

 本人的には自身があったが、相方が親に内緒でやっているのがバレて解散、しばらくは内装工事の仕事に就いていたという。しかし、その後20歳前後の同年代がスーツを着ているのを見て、「これはモテるのでは」と思い、スーツの着られるソフトウェアの開発会社に入ることとなる。そしてここで数人の仲間と出会い、ガンホーを立ち上げることとなった。

 話は最後に、「ゲーム業界の将来」に移った。スマートフォンタイトルとコンシューマータイトルが競い合っている状況については「僕の場合、純粋にユーザーの気持ちとして楽しむのは、コンシューマータイトルだけ。本当にたくさんタイトルを遊ぶので、個人的にはコンシューマータイトルは大きく発展してもらいたい」と述べた。

 「ただ、スマホの登場によって今までゲームに触れていない人たちがゲームをプレイしてもらえたことは大きいし、ゲームの存在が競争して大きくなっていくと、ゲームそのものは映画のような形でゲームの“原体験”として心に残っていくのではないか」と将来を見据えた。また森下氏は「PS4での基調講演でも話されていたが、スマホとのライフサイクルにおける連携は、非常に興味深い」と話した。

 また会場に集まったゲームファン、ゲーム業界関係者に対して激励を求められると「上段から構える話ではないが」としながら、「ゲーム業界のみなさんに支えてもらって、色々なことを教えてもらって創業できた。今後は少しでも業界の発展に貢献し、また10年以上前の創業時のように新しい会社が生まれていけるようにしたい。ゲームを作っていくの僕にとっては最高に幸せ。業界の発展にチャレンジし、切磋琢磨して良いゲームを作り、またどんどん協業していければ」と語った。

女性社員から誕生日ケーキ代わりのたい焼きをもらう森下氏
チームの一体感を保つため参加するという浅草サンバカーニバルの様子

(安田俊亮)