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【特別企画】650万DL突破アプリの秘密に迫る

ケース・スタディ~にゃんこ大戦争の場合

ケース・スタディ:にゃんこ大戦争の場合
iOS版:19%、Android版17%がTapjoyからの広告収入

ポノス側からTapjoyに、「にゃんこ大戦争」のアプリ収益化の1つの手段として問い合わせがあった

 「にゃんこ大戦争」をパブリッシングしたポノスからTapjoyに連絡があったのは、Tapjoyが日本法人を立ち上げてから間もない、2012年の8月頃だったそうだ。

 ポノスは「アプリの収益化を図り、課金に消極的なユーザーからの収益化を図りたい」との考えがあったとのことで、Tapjoyのリワードオファーウォールを組み込み、ユーザーが他アプリのインストールやビデオ視聴などの指定されたアクションを実施することで無料でアプリ内課金アイテム「ネコカン」を獲得できるようにしたという。

 ユーザーがネコカンを獲得する度にポノスはTapjoyから広告収入を得ることができる。つまり、通常のアプリ内課金からの収益に加え、広告収入という別の収益を獲得したことになる。そして、リワードにより「ネコカン」を獲得したユーザーがネコカンを利用するメリットを体感し、課金ユーザーになればいいことづくめというわけだ。

 ここまで読んで「あれ?」と思われた読者もいるのではないだろうか。「ユーザーがネコカンを獲得する度にポノスはTapjoyから広告収入を得ることができる」と書いたが、これはなぜか? 「リワード広告」と言う場合には2つの意味があり、1つめはアクションを行なったユーザーが報酬(リワード)を獲得できること。もう1つは、アクション対象となる他社のアプリが掲載される場所、つまり「媒体」としての「リワード広告」である。

 今回のケースでいうと「にゃんこ大戦争」というアプリは、「ネコカン」をもらうためのオファーウォールを表示している媒体である。例えばオファーウォールに表示されているAというアプリをダウンロードすることで、あるユーザーが「ネコカン」をもらったとする。Aは「にゃんこ大戦争」経由で1ダウンロード獲得したことになる。Tapjoyはアクションにつながった場所を提供してもらったことに対する謝礼を広告収入費としてポノスに支払うのだ。出版社が著者に印税を払うのと似ていると言えばわかりやすいだろうか。

 オファーウォールを見ると、「にゃんこ大戦争」は他のアプリを媒体として、ビデオ広告を出稿していることになる。『にゃんこ大戦争」のビデオが1回視聴されるごとに、ポノスはTapjoyに広告出稿費を支払うことになる。「にゃんこ大戦争」の場合、収益全体に対して、Tapjoyからの収入は、iOSで19%、Androidでは17%を占めている。

 「にゃんこ大戦争」はログインボーナスなどでもネコカンをユーザーに配布するなど、良心的な作りをしているアプリであるからこの比率であるが、ユーザーへリワードを獲得させるための導線をうまく張っているアプリだと、もっと比率が高いという。「課金アイテムを使いたいなというシーンでオファーウォールへの導線を貼ったり、アプリ起動時に全面広告を出したりというふうに、収益の最大化を図っているようなアプリの場合ですと50%位のアプリもあります(只隈氏)」。

 Tapjoyからパブリッシャーに支払われる広告費は2010年から2012年の期間で総額2億ドル(約200億円)を突破したという。「Tapjoyの広告収益TOP50社のアプリの中にはアジアが9社。その中には日本の会社も入っています(村上氏)」。日本発のアプリでも、これならば収益を充分望めるだろう。

【にゃんこ大戦争】

三方よし! ユーザー、広告主、媒体主の循環作用

 Tapjoyのリワード広告により、ユーザーが得られる恩恵=リワードについては理解して頂けたと思う。と同時に、パブリッシャーは自社アプリを「媒体」としてTapjoyに提供することにより、対価として広告収入を得られる。では、出稿主が得をするポイントはどこにあるのだろうか。

 タップジョイの特徴の1つは、広告主が出稿した広告が掲載される媒体アプリにある。現在、Tapjoyの媒体の90%以上はゲームアプリであるため、もともとゲームに対しての興味が高いユーザーに訴求することが可能だ。また、最近のネットワーク広告の流行として、配信するユーザーへのセグメントやターゲティングをいかにうまくするかというところにある。例えばFacebookADのように配信ターゲットを細かく設定できる方が親和性の高いユーザーにリーチしやすいが、端末やアプリ経由で個人情報を取っていない以上、そこが難しい。

 だがTapjoyの仕組みでは、たとえば特定のOSや端末機種のみへの配信や、端末の言語設定などからもターゲティングが可能だ。たとえば、「アメリカに住んでいてスマホの言語設定をスペイン語にしている人」だけに配信するといったことができるという。

 個人のデベロッパーもワールドワイドな展開を実施することも、最近では珍しいことではない。「グローバルな展開を目指すなら、Tapjoyが最良の選択肢だと思う。自国語に加え、“どうせなら英語くらいつけておこうかな”となる。英語対応していれば、配信対象国が確実に増える。ローカルごとに強いリワードアドネットワークというのはあるが、いちいちそれらのアドネットワークの提供するSDKを入れようということになるでしょうか? その点、TapjoyのSDKを入れておけば、グローバル展開はこれ1つで済むということになる(神田氏)」とアピールする。

開発側視点を持つ稀有なリワード広告会社

SDKを組み込みアカウントを作成すると見られる管理画面(ダッシュボード)。インストールやセッション数の確認や、1報酬あたりの単価設定もここから行なえる

 Tapjoyの仕組みを導入するにあたり、実際に作業に対応するのは開発現場である。開発とマーケティングや宣伝の部署との間には、深くて見えない溝があることが少なくない。この仕組みを導入するということは、TapjoyのSDKを自社アプリに組み込むということだが、ここで齟齬が起きることが少なくない。

 例えば、開発言語として人気のUnityだが、広告の効果測定をするSDKについては対応が遅れており、Unityで開発したアプリへの広告導入は非常に選択肢が少ない状態だった。広告に限らず、あるプラットホームに自社アプリを載せることになったものの、SDKの提供待ちで開発は足踏みという笑えない話もあったと聞く。

 Tapjoyの仕組みは大手パブリッシャーでも導入されてはいるが、スタートアップや個人デベロッパーもメインターゲットとしている。心強いのは、Tapjoyはリワード広告の会社でありながら、元々は自社でアプリを開発していた会社だということ。ここが通常の代理店と大きく異なるところだ。元々は自社のアプリ内でのクロスプロモーションのために考え出されたのが、現在の仕組みである。出自からして、開発視点を持っているため実装の際に負担になるようなことは極力ないようにしている。

 また、スタートアップや個人デベロッパーをターゲットとしていることもあり、広告出稿はTapjoyが提供する管理サイト(ダッシュボード)を使い、広告主が出稿単価などをいつでも自由にリアルタイムに変更できるようになっている。最低出稿単価も0.10ドル(ビデオ広告は0.02ドルから)からとなっており、良心的な価格設定だ。

 例えばUnityやAdobe Airのプラグインなどにも対応しているし、SDK自体がコンパクトなので実装は2~3時間で済む。多くの機能を積んでいる他社SDKとの干渉の心配がないというのは開発者には朗報だろう。

 「実装したデベロッパーさんから感想として頂いたことがあるのが、実装のしやすさ。TapjoyのSDKはナレッジセンターに実装方法が書いてあるのですが、“コピペして少し手直しすれば使えるくらいわかりやすく説明されている”との感想を頂きました。(只熊氏)」。このように開発の負担が極力少ないように配慮されている。

 また、Tapjoyの仕組みを取り入れることでゲームバランスについても幅が広がる。「ネコカンやジェムのような仮想通貨があった方が、よりゲームを深く楽しめると思います。Tapjoyの仕組みをうまく利用してもらうことによってポイントがないと先に進めなくてつまらない、という問題をクリアして遊び方に幅を持たせることが可能です(神田氏)」。
 Tapjoyの仕組みをうまく使うことにより、ユーザー、媒体(パブリッシャー)、出稿元(デベロッパー)ともハッピーな展開が見込めるというわけだ。

今後の展開について。SDKのVer.upを年内に予定

 8月21日から23日まで開催される開発者向けイベント「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)2013」。そこで実施されるセッション(8月23日)では、代表取締役 神田氏がセッションを実施予定だ。「面白いゲームを作れば、個人でも、世界で勝負できる時代が来ました! 是非、皆さんのお手伝いをさせていただきたいと思っています(神田氏)」と意気込む。

 今後の展開については「8月1週目にリリースされたSDK9.1では、ビデオ広告機能やリッチアド機能が強化されましたが、年内位にもう1度アップデートを予定しています。これまではSDKがバージョンアップすると、SDKを組み込みなおしてコンパイルする必要がありました。今後はアップデートの際でもクライアントはほとんどいじることなく、Tapjoyのサーバー側で対応できるような改善をしていきます。これ以外の追加機能も多くありますが、これについては近々発表致します(神田氏)」。どこまでもデベロッパー視点である。SDK未導入や、マネタイズに伸びが見られないデベロッパー・パブリッシャーの方々は一度導入の検討をされてはいかがだろうか。もちろんグローバル展開もご一緒に。

(ツキヨノアサミ)