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【GDC 2013】「ZombiU」NARRATIVE SUMMITレポート
ヒーロー不在の絶対孤独状況と“イギリス式ゾンビ”が織り成す新たな語り口
(2013/3/28 12:51)
GDC 2013の初日と2日目にあたる3月25日、26日では、1つのテーマについて1日を通して語られるサミットが開催された。ゲームの物語に着目したGAME NARRATIVE SUMMITでは、具体的なタイトルについての講演も行なわれた。
この記事では、Wii Uのローンチタイトルの中でもWii U GamePadの特徴を活かしたゲームシステムで目立っていた「ZombiU」のセッションをご紹介する。このセッションでは、Ubisoft MontpellierのGabrielle Shrager氏と作家のAntony Johnston氏から、「ZombiU」の成り立ちについて語られていった。
主人公はプレーヤー自身。孤独と絶望の中を戦い抜く物語「ZombiU」
「ZombiU」は、イギリスのロンドンを舞台にしたサバイバルアクション。ゾンビの動きはゆったりとしていて鈍いが、1度攻撃を受けたら死亡というシビアな難易度や、プレーヤーが死ぬ度に新たなプレーヤーキャラクターが生成されるというシステム、Wii U GamePadがそのまま道具箱のように扱えたり、鍵をピッキングする道具そのものになったりと、ゾンビがはびこる荒廃世界により没入させるような仕掛けが用いられている。
本作はもともと、恐竜のような宇宙人との戦いを描く「Killer Freaks from Outer Space」として構想されていたという。この時点では、ユーモアを交えたシューターアクションといった趣きが強く、侵略者の支配する荒廃世界というコンセプトは共通ながら、コミカル色も強いものだった。
しかしその後コンセプトはより恐怖、孤独さ、希望のなさを突き詰めた方向へとシフトする。「ZombiU」ではアドバイスをくれる人物はいるものの、はっきりと頼れるような味方はおらず、終始孤独な状況のままゾンビの恐怖と戦わなくてはならない。
また「1度噛まれたら死んでしまう」というゲームシステムは一見シビアすぎるが、この難易度設定がリアルさを増幅させ、恐怖心を高めることに成功している。加えて、再スタート時に生成されるプレーヤーキャラクターは性別から年格好までランダムとなっている。
これらの設定によって、プレーヤーが操作するキャラクターに尊さが生まれ、倒された場合にそれぞれがどのような死を遂げたかが印象に残るようになる。あるプレーヤーからは、長く付き添ったキャラクターに愛着が湧き、そのキャラクターがやられてしまった時は感謝の気持ちさえ起こったと言及があったという。
「ZombiU」では、ゾンビとの戦い、マルチプレイでのプレーヤー同士での戦い、そして絶望的な状況における自分との戦いの3つの戦いが描かれている。ストーリー上のヒーローが存在しない代わりに、プレーヤー自身が主役となり、絶望的な状況だからこそ希望を求めながら、恐怖と戦ってゲームを進めていく。
ストーリーラインは、イギリスの土地柄を存分に活かしたものとなっている。ロケーションは実在の場所をアレンジしているほか、イギリスにかつて存在した錬金術師ジョン・ディーを重要な人物として位置づけ、彼にまつわるとある「儀式」がゾンビ誕生の秘密になっているなど、「イギリスにおけるゾンビ」をオリジナルで表現しようとした試行錯誤が伺える。
世界観、そして強烈なゲームプレイングの印象は、マーケティングの面でも影響を与えていく。その一例として、ゲームのシビアな面とゾンビの恐怖を端的に表したコピー「How Long Will You Survive?(あなたはどれだけ長く生きられるか?)」の文字がゾンビとの戦闘を描いた強烈なイメージの上に踊り、印象深いポスターが制作された。
一通りのプロジェクトを終えた結論として、「ZombiU」からは、「深く興味深いストーリー」、「小説的な構造」、「説得力のある舞台」、「立体的なゲームシステム」などが得られ、強力なIPを手に入れるに至ったという。「長いキャンペーンの中で、とてもいい経験ができた」とShrager氏は述べた。