Ubisoft/グリー「Assassin’s Creed Utopia」インタビュー

制作意図から見えてくる「アサクリ」ワールドの魅力を語る


9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1~8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料


 仏Ubisoft Entertainmentとグリー株式会社が共同で開発している「Assassin’s Creed Utopia」。「東京ゲームショウ 2012」で体験できるバージョンの印象はこちらの記事でも紹介したが、今回はユービーアイソフト株式会社セールス&マーケティング・ディレクターの辻良尚氏とグリーマーケティング事業部マネージャーのパトリック・チェン氏にインタビューを敢行できた。

 前述の記事で本作が17世紀のアメリカを舞台にし、「アサシン クリード III」の前日譚的な位置づけであることはお伝えしているとおり。本稿では、Ubisoftがグリーをパートナーとしてソーシャルゲーム制作に乗り出したきっかけから、「アサシン クリード III」との関係まで伺ってきたので、この模様をお伝えしたい。



■ 教団を育ててフォーメーションバトル。PvPをメインにデザイン

左から、ユービーアイソフト セールス&マーケティング・ディレクターの辻良尚氏とグリーマーケティング事業部マネージャーのパトリック・チェン氏
「Assassin’s Creed Utopia」のスクリーンショット。アサシン教団を育てながら、教団同士でバトルしていくシミュレーションRPGとなる

――試遊機も出ていましたが、改めて、こちらがどのようなゲームか教えていただけますか?

パトリック・チェン氏:本作は、ユニットと呼ばれるキャラクターを育てて、フォーメーションを組み、最終的にアサシン教団の総合力を高めていくというものです。ユニットは戦闘によって経験値が溜まってレベルアップするほか、ソーシャルゲームの文脈に則ってユニット同士を合成して強化する方法もあります。

――試遊機のバージョンでは武器は2種類だけでしたが、これは増えていくのですよね?

チェン氏:武器は兵種によって、持てる武器種が数種類になります。中には遠距離用の武器や、「アサシン クリード」でおなじみのアサシンブレードなども登場します。アサシンブレードは、近距離専用だけど威力の強い武器になります。ゲームを進めればできることが増えていくので、どこに誰を配置すればベストなのかを考えるゲームになります。

辻良尚氏:ソーシャルゲームの中でも、カードの能力や、引きの運に頼ったものではなく、プレーヤーに割かれた裁量が多いものになるのではと思います。

――ゲームの要素としては街づくりのシミュレーションもあるようですが、1番のウリはどこですか?

チェン氏:ゲームを始めて真っ先に目に飛び込んでくるのが街づくりなのでこちらがメインと思われるかもしれませんが、メインはあくまでバトルになります。広いユーザーに親しんでもらえるように、色々なゲーム要素は入れていて、街づくりもその1つです。

 またソーシャルゲームの文脈に従って、レイドボス戦のような協力戦も入れています。しかし最終的には、特にPvPのバトルに集約されていくようなデザインになっています。

――世界で展開するのでしょうか?

チェン氏:日本と、海外でも同時にリリースされる予定です。ただ、サーバーは地域ごとで別に立てようと考えています。現在もチーム内で検討していますが、技術的な問題や、イベントを開いても時差があるなどの問題があって、難しい状況です。

辻氏:ここは最初からやってもね、というところです。Ubisoftとしては期待しちゃいますけど(笑)。参加者が増えて、将来的に盛り上がるなら嬉しいですね。ソーシャルゲームが世界に広がっていく中で、本格的なオンラインゲームのニュアンスが出てくる、というのは夢があります。



■ シリーズの世界観とストーリーのフォーカス。「アサクリIII」世界の一端を担う

「Assassin’s Creed Utopia」制作のきっかけの1つに、発売の迫る「アサシン クリード III」(画像)の展開があった

――本作制作のきっかけは何でしょうか?

辻氏:きっかけは去年の「東京ゲームショウ」でした。そこでグリーさんと話す機会ができて、お互いに世界で展開する会社としての付き合いが始まっていきました。

 日本でグリーが成功しており、世界的な展開を目指しているといのは欧米でも認知されていましたし、携帯端末を使ったゲームでのコミュニケーションを世界に先駆けて進行させている、という認識も私たちにはありました。

 そこで、これからUbisoftがソーシャルゲームに進出する際に、そういった挑戦をしているグリーをパートナーとして迎え、ゲームを制作するのがいいという結論に至りました。

 また題材に「アサシン クリード」を選んだのは、Ubisoftの中でも最も大きなフランチャイズの1つだからです。欧米ではシリーズは大きなヒットを飛ばしていますし、日本においては、Ubisoftという名前はイマイチでも、「アサシン クリード」なら認知は進んでいました。

 加えて、年末に「アサシン クリード III」が発売される予定で、これが3年ぶりのナンバリングタイトルなります。舞台設定や、そのほか様々なものが大きく転換したタイミングというのがあったので、「アサシン クリード III」世界の一翼を担うようにしました。

 「アサシン クリード」シリーズのファンである人が、ナンバリングとは違う部分に触れられるというのはもちろんのこと、「Assassin’s Creed Utopia」をきっかけにして「アサクリ」の名前を知ってもらえればと思います。

――ゲームシステムをシミュレーションRPGにしたのにはどのような理由があったのでしょうか?

辻氏:1番の理由は、ハードの特性にあります。実際、スマートフォンやタブレットでフルサイズのアクションを楽しもうと思っている人はそれほど多くないと思います。それを無理に持ってきてしまって、不自由なアクションになってもいけません。だとしたら、違う考えもあっていいかということです。

 それと、日本の「アサシン クリード」ファンに好きな理由を聞くと、もちろん自由度の高いアクションがいいという人もいますが、それと同じくらいに作品の世界観や、ストーリーに惹かれている人が多いのです。

 「アサシン クリード」は、コアなゲームファンに言わせれば簡単なゲームに分類されるほど、ゲームとしては決して難しくはありません。それでもこれだけ人気になったのは、単なるアクション以外の部分に価値を見出してくれているのだと思います。

 そういった世界観やストーリーの部分を「Assassin’s Creed Utopia」ではベースにしており、それをさらに楽しんでもらうための仕掛けとしてシミュレーションRPGを作成しました。なので、決して作品の本質を変えているということではありません。

――対応端末でシリーズの本質を楽しむためにはこれが最適ということですね。

辻氏:もちろん、ソーシャルゲームとして楽しんでほしいですし、ここを入口として過去に4本出ているコンソールタイトルに手を伸ばしてほしいとも思います。またリリースは「アサシン クリード III」発売の後になりそうですが、全ての流れをわかった上で楽しむというのも、大事なポイントでしょうね。

――本作は共同開発という形ですが、Ubisoftはどの程度関わっているのですか?

辻氏:モントリオールの「アサシン クリード」チームが、本作のディレクションと監修をしています。先ほどお話した世界観の位置づけや設定は弊社とグリーさんが話し合って作っています。背景のデザインやキャラクターの造形に関してもそうですね。

――確かに、ダークな雰囲気がよく出ていました。

チェン氏:モントリオールとは時差もあってやり取りが大変でしたが、素材の提供だけでなく、世界観の確認などは密なコミュニケーションができました。



■ ヨーロッパ人類史としても楽しめる「アサシン クリード」の魅力

「東京ゲームショウ 2012」では船を操る海戦シーンをプレイアブル出展。ただしこれはごく一部のシーン
「アサシン クリード III レディリバティ」も「アサシン クリード III」ワールドの一翼。同じ時代だが、場所が違う物語となる

――先ほどから所々話題に上がっている「アサシン クリード III」ですが、進捗はいかがですか?

辻氏:もうマスターに限りなく近い状態になっています。

――船のシーンが印象的ですよね。

辻氏:あれはごくごく一部のシーンを切り出しています。別に船ゲーではないので(笑)。今回プレイできるのも船の場面ですね。あれは新しいゲームエンジンがパワフルなんだということを見せたいのもあります。ただ、心配しなくてもそこは「アサシン クリード」ですから。とてもハイクオリティに仕上がっていますよ。

――PlayStation Vita用の「アサシン クリード III レディリバティ」(レディリバティ)も期待しています。

辻氏:「レディリバティ」は数少ないPS Vitaネイティブのタイトルなんです。ネイティブであることに加えて、これも「アサシン クリード III」世界の一端を担っています。どれが中心というわけでもなく、それぞれの作品が何らかの形で関わりがあるのが今回の3作品になります。

 「レディリバティ」は南部のルイジアナを舞台としていて、「アサシン クリード III」と同じ世界ですが、違うアメリカが見られます。私自身は行ったことがないのですが、ルイジアナ、ニューオリンズというのはアメリカの中でも異色と見られているようで、文化や、街の風景も特殊なものになっています。

 ルイジアナはアメリカのヴードゥー教の中心地になっていたりもしていて、ヴードゥー教もともとはカリブが発祥らしいのですが、それが位置的にもルイジアナに流れてきて、さらに同じ時期に黒人奴隷も入ってきて……という経緯があるようです。ここは、実は「レディリバティ」にも少し反映されているところです。

 それとルイジアナはフランス領だったので、その影響が多く残っています。ルイジアナのルイは、ルイ王朝のルイなんですよ。知ってました?

――初めて知りました!

辻氏:飲み屋で当分使えますよ(笑)。ルイジアナはそれから一旦スペイン領になって、またフランス領に戻る、といった複雑な歴史を歩んでもいます。私もアメリカの歴史はよく知らなかったのですが、今回シリーズに携わることになって、アメリカの歴史を学んで、面白く感じています。アメリカってそういう風にできていたんだと思って、発見でした。

――歴史モノとしても「アサシン クリード III」世界の3作品は面白いということですね。

辻氏:アメリカに、そもそもどうして人が来たんだろうということがわかります。それに、元を辿っていけば、ちゃんと「アサシン クリード」第1作から話が繋がっているんですよ。

 ヨーロッパが外を求めてイスラムに侵攻して、そこから文化戻ってきてルネッサンスが起こります。ルネッサンスによって宗教と政治が分かれて、今度は王政が強くなって君主制になる中で、宗教が弾圧されていきました。そしてフランスの王にテンプル騎士団が潰されたり、清教徒はイギリスの国教会に迫害されてアメリカに逃げていきます。フランスを追われたテンプル騎士団が、実はイギリスに逃げていて……という話は、「ダ・ヴィンチ・コード」にも書かれていますね。

 こういった辺りの話から、アメリカには1ドル札の謎など、色々言われているところがありますよね。そういった話が「アサシン クリード III」にも色々と登場します。歴史を勉強しておくと、さらに面白いですよ。

――今回で舞台をすっかり変えたと思いきや、過去からずーっと繋がっている話ということですね。

辻氏:もうどっぷりとヨーロッパの歴史です。

――これは楽しみになってきました。それでは最後に、読者にメッセージをお願いします。

辻氏:「Assassin’s Creed Utopia」は、今年新しくはじまる「アサシン クリード III」の世界の一部でもあります。「アサシン クリード III」ワールドを全て楽しんでほしいと思うので、ぜひ「Assassin’s Creed Utopia」にもトライしてみてください。

チェン氏:「アサシン クリード III」の共通の世界に「Assassin’s Creed Utopia」を加えてもらえるべく、鋭意開発中です。「アサシン クリード」の魅力を、ソーシャルゲームとして新たに引き出したいと思います。従来からのシリーズファンの方や、名前は知っているけどどんなゲームか知らない、という人まで、様々に対応してくれる作品になると思います。

――ありがとうございました。


「アサシン クリード III」/「アサシン クリード III レディリバティ」:
(C)2012 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Assassin’s Creed, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.

「Assassin’s Creed Utopia」:
(C) 2012 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Assassin's Creed, Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Developed by GREE Inc. under license from Ubisoft Entertainment.

(2012年 9月 23日)

[Reported by 安田俊亮]