東京ゲームショウ 2011レポート

THQ、「TGSメディアイベント」レポートその1
板垣伴信氏が「セインツロウ ザ・サード」で大暴れ!?
闇に締め付けられる恐怖を描く「Metro: Last Light」


9月15日~18日 開催(15日、16日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


  THQジャパン株式会社は東京ゲームショウの期間中、千葉・幕張のホテルグリーンタワー幕張で「THQ TGSメディアイベント」を開催した。このイベントでは様々なタイトルのデモンストレーションと、開発担当者によるインタビューが行なわれた。

 本稿では「セインツロウ ザ・サード」と「Metro: Last Light」を取り上げたい。「セインツロウ ザ・サード」はPS3とXbox 360版が2011年11月17日に発売を予定しており価格は7,700円。CEROレーティングはZ(18歳以上のみ対象)。「Metro: Last Light」はPS3/Xbox 360/Wii U/Windows PC、発売時期は2012年を予定している。

 「セインツロウ ザ・サード」ではヴァルハラゲームスタジオCTOの板垣伴信氏も登壇し、本作への想いを語りさらに板垣氏そっくりのキャラクターが街中で大暴れするデモも行なわれた。また「Metro: Last Light」ではTHQ UK ヘッドグローバルコミュニケーションのヒュー・ベイノン氏が熱い想いを語った。

今後のTHQタイトルのデモとインタビューが行なわれた。「セインツロウ ザ・サード」の衣装のコンパニオンも



■ 板垣伴信氏絶賛の「セインツロウ ザ・サード」。走行中の車に飛び乗り大破壊

THQバイスプレジデントであり、グローバルブランドマネジメントを担当するケビン・クラフ氏
ヴァルハラゲームスタジオCTOの板垣伴信氏

 「セインツロウ ザ・サード」のデモンストレーションはTHQバイスプレジデントであり、グローバルブランドマネジメントを担当するケビン・クラフ氏によって行なわれた。グラフ氏は「私にとって本作はとても親密感を覚えるタイトルです。やりすぎなほどド派手な、罪悪を楽しむことができるゲームを紹介させていただきます」と挨拶した。

 今回グラフ氏が紹介したのはサイバー犯罪を行なうギャング「デッカーズ」と戦うミッション「デッカーズ ドット ダイ」だ。彼らはサイバー空間に拠点を持っているらしい。プレーヤーは仲間の協力で巨大なマシンを入手し、そのマシンを使って殴り込みをかける。サイバー空間は映画「トロン」に登場したような電気回路のパターンが描かれた床に、蛍光色に輝く建物があるクラッシックな電脳空間だ。デッカーズの手下はワイヤーフレームで描かれ電子音声でしゃべる。

 プレーヤーは最初洋式便器の姿でサイバー空間に現われる。仲間がいたずら心を持って設定したらしい。文句を言うと、そこからドットで描かれた裸の女になり、さらにワイヤーフレームで描かれた人間になる。侵入者である主人公はデッカーズと銃撃戦を交わすが、主人公の武器は右手がそのまま銃口になるという「ロックマン」のロックバスターにそっくりなのだ。

 さらに目の前に立ちふさがるエネルギーの壁に触れると突然画面が切り替わり2Dグラフィックスの戦車での戦いになり勝つと勝つと壁が壊れるなど、このミッションでは様々なパロディやオマージュが見られた。最後はデッカードのボスがガーゴイルか翼をはやした戦士のようにも見える姿で登場し、「僕はこの世界での神なのだ!」と叫んで主人公の前に立ちはだかって終わった。ギャングの構想を描く作品とは思えない、ぶっ飛んだミッションだった。

 この後、クラフ氏は「このTGSにきている人物の中で最もかっこいいワルを紹介します」と語り、ヴァルハラゲームスタジオCTOの板垣伴信氏を壇上に上げた。そしてゲーム内にキャラクターカスタマイズによって板垣氏そっくりのキャラクターを登場させた。

 板垣氏のキャラクターは街に出た瞬間、辺り構わず住人達を殴り、ドロップキックを浴びせ、さらに空中に浮き上がるホバーバイクで疾走した後、敵対ギャングを「オクトパスガン」で攻撃した。オクトパスガンはタコを発射し、撃たれた敵はタコに意識を乗っ取られうつろな顔でさまよった後、その後タコが爆発して敵を倒すというものだった。板垣氏のキャラクターの大暴れぶりに、会場で大きな拍手が上がった。

 板垣氏は「私はE3で、このゲームを見たんです。その後ずっとこのゲームで遊んでいました。トレーラームービーの演出とキャラクターが気に入っちゃって、15回は繰り返し見ました。自分のタイトルより見てました。その中のフランスなまりの英語で話すフィリップというキャラクターが気に入ってしまって、どうしても声優をやらせてくれと頼んだんです。しかしそれは難しいと言われて落ち込んでいたんですが、変わりにこうしてキャラクターとして作ってくれました。僕のセンスでは作れないクレージーなゲームですが、触ってるだけで楽しくて、発売が待ち遠しいです。発売されたら一緒に楽しみましょう」と語った。


「デッカーズ ドット ダイ」。クラシカルな雰囲気のサイバー空間で戦う。オマージュやパロディも満載だ
板垣氏そっくりのキャラクターが大暴れ。最後はかめはめ波そっくりのポーズも

開発元のVolitionで本作のリードデザイナーを務めるスコット・フィリップス氏
新アクションの1つ。走ってる車に飛び乗る
リモコンガンでヘリの操作を乗っ取る

 デモンストレーションの後、開発元のVolitionで本作のリードデザイナーを務めるスコット・フィリップス氏にインタビューを行なった。「セインツロウ ザ・サード」は前作「セインツロウ2」の開発終了後すぐに制作に取りかかったが、4カ月ほど開発を進めたストーリー部分を全てリセットした。

 リセットする前のストーリーは主人公が前作とは全く違い、FBIなどの政府のエージェントが潜入捜査官としてセインツに入るというもので、主人公は政府側でいくか、完全にセインツの仲間になるか悩むというものだった、しかしリセットすることを決断し、「セインツロウ2」から続くストーリーにさらに厚みを持たせる方向にシフトした。結果としてその決断は良かったとフィリップス氏は語った。

 デモムービーでも「セインツロウ ザ・サード」一般人に気まぐれで攻撃するは、町中で大爆発を起こすはやりたい放題だ。会場の試遊台でも、皆が町中で辺り構わず大暴れし、「これこそが『セインツロウ』だ」と大喜びでプレイしている。フィリップス氏は「私達はその大暴れを強制しているわけではありません」と言う。しかし多くの人がそういう遊び方を自分でやってる。そういったクレージーさが本シリーズの味であり、そういう遊び方もできる作品だという。

 「セインツロウ ザ・サード」の大きなセールスポイントは「カスタマイズ」だとフィリップス氏は語った。キャラクターのカスタマイズは、より美しいキャラクターが作れる様になり、ユニークなコスチュームもたくさん用意されている。また乗り物のカスタマイズ、アップグレード、さらには街そのものも資金を投入することで手を入れられる。この自由度の広く、多彩なカスタマイズが本作のウリだという。またミッションの内容の充実、そして記憶に残るインパクトの強さも狙った部分だ。

 フィリップス氏個人のお気に入りは「走行中の車に飛び乗れる要素」だ。「セインツロウ ザ・サード」では疾走している車に向かって乗車ボタンを押すとキャラクターが飛び上がり、フロントガラスを蹴り破って運転していた人を蹴り飛ばし自分が運転席に収まれル。実装してみると「もうこのギミックなしの頃に戻れない」とスタッフ全員が思うほどになった。また打ち込むことで意のままに乗り物が操れる「リモコンガン」もお気に入りとのこと。警察のヘリの操縦を奪い、他の警察車両を襲わせることも可能だ。

 前回好評だった「マルチプレイ」によるコープは今作でさらにパワーアップしている。自然な流れで友人がプレイに参加し、そして去っていけるように工夫したと言うことだ。開発中でもちょっと難しいところなどを友人に助けてもらうという形で重宝したとのこと。今回デモはできなかったが、ぜひ体験して欲しいとフィリップス氏は語った。

 会場の試遊台で本作に触れることができたが、プレイしているだけで、辺り構わず大爆発になり、大騒ぎになり、ド派手な市街戦になる。このむちゃくちゃな感じこそが「セインツロウ」であり、正当な進化系として「セインツロウ ザ・サード」を作った開発者の方向性はまさにファンの望んだ物だと感じた。協力プレイも是非友人と体験したい。


試遊台での撮影。女性キャラクターの胸揺れはあり得ないほど激しかった。前作から受け継ぐ過激アクティビティも
スクリーンショット。激しく楽しい雰囲気が楽しめる



■ ゲームから離れてもずっと囚われるような恐怖を「Metro: Last Light」

THQ UK ヘッドグローバルコミュニケーションのヒュー・ベイノン氏
ロシア国粋主義者の台頭。人は争うことをやめない
前作でもあった移動する列車での戦いもパワーアップ

 「Metro: Last Light」は「Metro 2033」の続編で、核戦争の後地上にはミュータントがはびこる世界になってしまった未来のモスクワを描く。人々は地下鉄を街にして細々と生き、地上はガスマスクがないと出られない。それでも物資を求めてミュータントにおびえながら出なくてはならない。

 そんな生活の中でも国粋主義者がファシスト的な勢力を作り、他の人々を攻撃している。前作は主にミュータントとの戦いが描かれたが、今作では人間同士の醜い戦いも描かれるという。この絶望的な世界で、前作からたくましく成長した主人公アルチョムはどんな希望を見いだしていくのだろうか。

 今回の「THQ TGSメディアイベント」では「Metro: Last Light」はTHQ UK ヘッドグローバルコミュニケーションのヒュー・ベイノン氏によるデモンストレーションとインタビューによって説明が行なわれた。デモの内容はE3と同じものだったので、詳細はこちらを参照してもらい、本稿ではインタビューにフォーカスしたい。

 「Metro: Last Light」は前作に比べ、スニークアクションやノンリニアの破壊オブジェクト、光と影の美しい演出など戦闘での臨場感が大きくパワーアップしている。しかし本作の本来の魅力は「サバイバルホラー」であり、生き残るための探索や、より幅広い世界での冒険を行なっていく。デモでは戦闘部分をアピールしたが本作の本来のテーマは「黙示録の後の世界を描く」という作品だ。ベイノン氏は世界の描写こそが前作の人気の理由であり、「Metro: Last Light」もその良さは受け継がれてると語った。

 前作はチェックポイントにあたる街中では多少動き回れたが、全体的には一本道のFPSに近いゲームデザインだった。「Metro: Last Light」もユーザーの行動を制限する場面もあるが、より広い場所での探索要素を持たせたという。ただし、本作では複数の勢力が戦ってるものの、プレーヤーはどの勢力を選べる、といった自由度はなく、ストーリーの分岐要素はないとのこと。今回ピックアップされるのがロシアの国粋主義者によるファシストだ。彼らは過激な勢力であり、主人公の大きな障害となる。ミュータントだけでなく、同じ人間同士の戦いも描かれる。絶滅を前にした状況でも争う人間の業と今作では直面する。

 前作「Metro 2033」は原作小説が存在したが、「Metro: Last Light」は小説とは全く違う、独立した物語が展開する。これは原作小説が現実世界からかけ離れた世界で、ストーリーも文学的要素が大きくなってくるため、ゲームとしては違った流れにしようということになった。その際、原作者の協力を得て設定し直し、改めて独立したストーリーを設定することになった。

 「Metro: Last Light」はシリーズの“完結編”をうたっている。小説とは全く違うストーリー展開を選択した上で、開発者がユーザーに訴えかけたいものは、何なのだろうか。ベイノン氏は「心に残る体験をして欲しい」と答えた。ユーザーが本作をプレイし、実際のこの場所に訪れたかのような体験、ゲームから離れた後もユーザーの心に本作のゲーム世界が、現実のどこかにあるかのように感じ、「今はあの世界はどうなっているんだろう」と想像をはせる世界を作り出したいと語った。

 ベイノン氏は個人的には新しいステーションシティがお気に入りだという。その世界で生きている人々と、彼らの息吹はクリエーターの想像力で生み出され、そしてリアリティ位のあるもとなっている。また、何よりもプレーヤーに届けたいと思っているのは、「恐怖におののく感覚とのことだ。その恐怖こそが本シリーズで最も大切なものだ。

 「Metro: Last Light」で描かれる恐怖は大きな怪物がプレーヤーに向かって牙をむき出しにする単純なものでなく、プレーヤーを闇に閉じこめてしまいそうな、圧迫感のあるじわりとした恐怖だ。ガスマスクをしなくては行けない廃墟の地上で、周りには怪しげな物音がする。ガスマスクのせいで視界は悪く、前を照らすライトは電池残量が少なく光は弱く、手持ちの弾薬はあとわずか、それでも生き残るためには前に踏み出さなければならない。その恐怖感こそが本シリーズの核となる要素だとベイノン氏は語った。

 最後にユーザーへのメッセージとしてベイノン氏は『「Metro: Last Light』を楽しみにしてください。今はまだ語れませんが、マルチプレイなどの要素もあります。今回のデモなどで激しい戦闘シーンやがピックアップされていますし、マルチプレイの追加などで、旧来のファンからは『変わってしまうのではないか』と心配する声もありますが、大丈夫です。お待ちください」と語った。

 今回はマルチプレイや、WiiUならではの要素などは聞くことができなかった。しかし、ベイノン氏の言葉から、「本当にこの人はこのシリーズが大好きなんだな」と感じた。異世界を作る楽しさ、恐怖を描く喜びを強く感じた。こういったスタッフの思いが詰まった作品は楽しみだ。是非プレイしてみたい。


スクリーンショット荒廃した極限の世界だが、美しさが感じられる

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(2011年 9月 15日)

[Reported by 勝田哲也]