E3 2011レポート
ハードコアなタイトル盛りだくさんのTHQブースレポート
天下無双のバカゲー「Saints Row: The Third」、圧倒的に美しいグラフィックスを実現した「Metro: Last Light」
米THQは、今年もE3にブースを出展し、人気シリーズの最新作を中心にハードコア向けのラインナップで、世界のバイヤーにアピールしていた。本稿では同社のフラッグシップタイトル「Saints Row」シリーズ最新作「Saints Row: The Third」と、ビジュアル表現が目を引いた「Metro」シリーズ最新作「Metro Last Light」の2本を中心にお届けしよう。
■ 突き抜けたバカゲーで世界を笑いの渦に! 「Saints Row: The Third」
「Saints Row: The Third」シアター |
セインツたちの戦いが再び幕をあける |
基本的にはバカゲー。笑って楽しむゲームだ |
「Saint Row」シリーズは、Rockstar Gamesの大ヒット作「Grand Theft Auto」スタイルのフリーローミングスタイルのギャングアクションゲームとして誕生したタイトルだが、作を経るごとに独自路線を歩み始め、「Saint Row 2」におけるバカゲー路線でほぼ競合しなくなり、今回発表された「Saint Row: The Third」で、完全に独自の世界観の構築に成功した。
「Grand Thef Auto」シリーズが、社会の底辺を切り取り、悪事を働かなければ生きていくことすら難しいはみ出しもの達の生き様を丹念に真面目に描いているのに対して、「Saint Row」シリーズは子供のギャング像をそのままゲーム化したような、格好良くて、間抜けで、チャラくて、お馬鹿な奇想天外な物語が展開される。悪事は必ず勝利するタイプのゲームだ。
ゲームから受けるインプレッションは、巨悪を小悪によって駆逐するカタルシスや、矛盾の中で決断を下さなければならない葛藤といったものではなく、ストレートな哄笑ややれやれといった感じのバカバカしさで、北米市場のゲームというエンターテインメントの技法そのものに対する底の厚さのようなものを体現したタイトルだ。
「Saint Row: The Third」は、成功者の象徴であるプライベートジェットを模したプライベートシアターでデモンストレーションを実施。今回プレイアブルは出展されなかったが北米では11月15日の発売が予定されており、完成度はかなり高かった。グラフィックスはややトゥーン寄りの仕上がりで、コメディっぽさが際立っている。
デモでは、街の人に殴りかかるデモからスタート。ドロップキックや連続技にトドメを加えたテイクダウン、鉄パイプでぶん殴ったり、放り投げたり、武器で相手の股間を強打したりなど、とにかく多彩な近接攻撃が用意されている。街の住人への攻撃は、ホーミングミサイル、戦車、VTOL(垂直離着陸機)と徐々にエスカレートし、かと思えば、人を吸い込んでぽかーんと空に向けて射出するナンセンス兵器も飛び出す。まるで悪い大人向けのサンドボックスだ。
デモの後半では、ストーリーミッションも見ることができた。敵対する組織に囚われた主人公を含むSaints一味は、仲間の機転で窮地を脱し、大型のプライベートジェットからの脱出を試みることになる。銃撃戦は比較的オーソドックスな内容だが、囲みを脱出し、パラシュートを使って降下した後が凄かった。なんと降下中に敵との銃撃戦が始まるではないか。その後、敵の掃討に成功した後は、パラシュート無しで降下するヒロインを空中でキャッチ。よくわからないがカッコイイシーンだ。
これにて一件落着と思いきや、敵のプライベートジェットがこちらに近づいてくることを知るやいなや、ヒロインを再び空中に放り投げ、ヒロインが罵詈雑言を浴びせる中、コックピットの窓から機内に突入。どういうリクツで機内に再侵入できたのかよくわからないが、機内の敵を掃討し、再び脱出。今度こそ一件落着となった。
「Saint Row: The Third」は北米ではPS3/Xbox 360/Windows PC向けに11月15日に発売予定。日本での発売は未定で、前作はTHQジャパンからリリースされたため、今作が日本で発売されるとすると、他のパブリッシャーからのリリースとなる。天下無双のバカゲーのローカライズにチャレンジするゲームメーカーは現われるのか。続報に注目したいところだ。
【「Saints Row: The Third」E3 2011 Teaser】 |
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【Saints Row: The Third】 | ||
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まるで漫画のようなギャングストーリーが楽しめる「Saint Row」もついに3作目。今回もやはり全裸(ぼかしあり)でストリーキングができるようだ |
■ 荒廃した未来のモスクワを描いた異色作「Metro 2033」の続編「Metro Last Light」
「Metro Last Light」シアター。こちらも「Saint Row: The Third」と同様に長い行列ができていた |
この地下の空気感の表現が素晴らしい。2012年期待のタイトルだ |
今回のE3で個人的に5本の指に入るほど強いインプレッションを受けたタイトルが「Metro Last Light」だ。核戦争後の未来のモスクワの地下世界を舞台にしたサバイバルシューター「Metro 2033」の続編に相当する作品で、時代設定は前作の1年後の2034年となっている。開発元は前作と同じ4A Gamesで、発売プラットフォームはPS3/Xbox 360/Wii U/Windows PC、発売時期は2012年を予定。
前作「Metro 2033」との大きな違いは、グラフィックスエンジンが大幅に進化したことと、新たにマルチプレイモードを搭載するところだ。マルチプレイについてはまだプレスリリースレベルで詳細については不明だが、グラフィックスについては実機によるデモでしっかり確認することができた。
とりわけ「Metro Last Light」のグラフィックスの美しさと、物理演算を駆使したノンリニア破壊の表現は衝撃的で、闇はずしりと深く、光はまぶしく、地下世界の特殊性が前作とは比べものにならないほど強化されている。地下世界という閉鎖空間ゆえに可能となった、際だった光と闇の表現。そして布地のはためきによるスピードの表現、木箱を破壊した際の木くずが散乱する表現、あるいは爆風、もや、にじみといったエフェクトの表現、さらには映画のような丁寧な被写界深度の演出などは、数あるFPSの中でも史上最高クラスだと思われる。
デモでは、主人公が地下のひとつに潜入するシーンと、前作にも登場した政治結社の集会に参加し、そこから脱出を図るシーンの2つを見ることができた。ゲームの基本は、「アサシンクリード」風のスニークアクション。主人公はライトを銃撃で破壊したり、手の届く位置にあるライトバルブをこっそり外したり、物陰に隠れたりしながら、闇を巧く利用して少しずつ目的地に向けて進んでいく。
フィールドのオブジェクトの多くは銃撃によって粉々に破壊することができるほか、武器のリロードひとつとっても非常に細かく、中でもガトリングガンを打ち出すための精巧なギミックは非常に素晴らしい。デモのラストシーンは、主人公との間を隔てる壁をぶちこわして突進してくる巨大ミュータントが登場。今回も人間以外のミュータント達との戦いが熾烈を極めそうだ。
まるで前作とは別のゲームとまでいうつもりはないが、ゲームの哲学が前作とはまるで異なる。前作は良い意味でも悪い意味でもウクライナ産の荒っぽさが散見されたが、前作のイメージは改めた方がいいかもしれない。ともあれTHQの強力なフランチャイズが誕生したことは間違いなさそうだ。
【「Metro Last Light」E3 2011 Teaser】 |
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【Metro Last Light】 | ||
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Bethesda Softworksの「Fallout 3」の影響も感じられる世界観。ナチスドイツをイメージした政治結社は前作にも登場したが、今回はどうやら直接対峙する模様。ストーリー的にも楽しみな作品だ |
□Electronic Entertainment Expo(E3)のホームページ(英語)
http://www.e3expo.com/
□THQのホームページ(英語)
http://www.thq.com/
(2011年 6月 11日)