LG、偏光方式の3D立体視モニターを発表。予価は29,800円
幅広い3D形式をサポート。これ1台でPCもゲーム機も立体視を実現


【D2342P-PN】

4月下旬 発売予定

価格:29,800円前後


 LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社は、偏光方式パネルを採用するフルHDの3Dモニター「CINEMA 3D MONITOR D2342P-PN」を発表した。都内にて4月20日に行なわれた記者発表会では本製品のデモ機が披露され、発売時期は4月下旬、予定価格は29,800円前後になることが明らかにされた。

 本製品は、これまで主にPC向けの3D立体視対応モニターで主流であったシャッターグラス方式(垂直同期周波数120Hz、フレームシーケンシャル)ではなく、偏光方式の3D立体視を実現することが最大の特徴。メガネ側に複雑な機構が不要で、明るく、チラツキのない立体視映像を得ることができる。

 また本製品はライン・バイ・ライン(インターレース)の3D映像形式をネイティブでサポートしており、サイド・バイ・サイドやトップ・アンド・ボトムといったその他の形式もモニタ側で変換機能を内蔵することでサポートする。その上で、一般的なPCモニターと変わらない価格帯で販売されることもあって、今後のLGエレクトロニクスの製品戦略を決定づける非常に重要な製品といえそうだ。


会場で展示されていたデモ機。メガネはサングラスタイプとクリップオンタイプを同梱


■ 偏光方式を採用する3Dデスクトップモニターとは?

偏光方式について解説するLG DisplayのMoonhyun Nam氏
製品紹介をするLGエレクトロニクス・ジャパン、道山涼司氏

 都内で開かれた記者発表会では、韓国LG Electronicsのモニター製品マーケティングを統括するMichael Jung氏が登壇し、本製品について、LGグループを挙げて偏光方式パネルの開発・生産に取り組んできたことの成果であり、これまでの3D立体視モニターに見られた問題点を一挙に解決する革新的な製品であるとして、日本市場への展開に強い期待をにじませた。

 続いて登壇したLG DisplayのITプロモーションチーム、Moonhyun Nam氏と、LGエレクトロニクス・ジャパンのコンシューマーエレクトロニクス セールスグループマネージャーの道山涼司氏は、偏光方式の3D立体視について、また本製品の詳しいスペックについて語った。

 まず基本スペックからご紹介しよう。「D2342P-PN」は23インチ、最大解像度は1,920×1,080ドット。LEDバックライトを採用し、輝度は250cd/m2、コントラストはダイナミック拡張時で5,000,000対1、ネイティブ1,000対1。応答速度はGtGで5ms。垂直周波数は56~75Hzで、入力端子はアナログRGB/DVI-D/HDMI 1.4をそれぞれ1系統装備。またHDMI音声を出力するためのヘッドフォン端子を1系統備える。

 本製品で採用されている偏光方式とは、モニターの液晶パネル表面に特殊な偏光フィルムを貼り付けることで、パネル上に映しだされる各画素の光学特性を変え、対応する偏光フィルムを持つメガネを通してこれを見ることで光学的に左右2枚の視差映像を取り出し、立体感を得る方式だ。

 本製品「D2342P-PN」では円偏光方式で、偶数ラインと奇数ラインをそれぞれ左右の視差映像に割り当てるライン・バイ・ライン方式を採用しており、付属する重量16g(クリップオンタイプは8g)のメガネを使うことで、正面12°の視野角で最適な視差映像が得られるようになっている。

 このように、僅かな重量のメガネで立体視が可能なことが偏光方式のメリットのひとつだが、Nam氏と道山氏はさらに複数のメリットを列挙している。特にゲームユーザーにとってのポイントは「疲れにくいこと」だ。

 その理由は、シャッターグラス方式で避けられないフリッカー(点滅感)が、この偏光方式では原理的に皆無であること。またクロストーク(逆の目用の映像がわずかに透過して見えてしまう現象)が無視できるほどに低いことも、映像の見やすさに貢献する。LGエレクトロニクスでは本製品でのクロストークを1.8%としている。

 さらに、原理的に目に届く立体視映像の輝度はモニター表面のものから半分ほどにしか低下しないため、大きな輝度低下を引き起こすシャッターグラス方式に比べて圧倒的に明るい立体視映像を見ることができる。Nam氏によれば、シャッターグラス方式・400cd/m2のモニターで得られる立体視映像がおよそ44cd/m2であるのに対し、本製品では250cd/m2と基本輝度が低いにも関わらず、立体視映像の輝度は100cd/m2程度になるという。もちろん、メガネが薄く軽いことも疲れにくさの理由だ。

シャッターグラス方式(SG)と偏光方式(FPR)について。偏光方式では大きなメガネを必要とせず、チラツキやクロストークが皆無、また得られる立体視映像の明るさも高いなどメリットが多い

LGエレクトロニクス・ジャパンでは2009年5月にシャッターグラス方式対応のネイティブ120Hz 3Dモニター「W2363D」を発売したが、今年からは偏光方式に大きく舵を取る


■ 低コストで幅広い3Dコンテンツを楽しむ。3D化ソフト同梱でPCもゲーム機もこの1台で

様々なデバイスで3D立体視が可能というのは、多くのゲーマーにとってメリットとなる
NVIDIA、AMDどちらのGPUでも立体視が利用可能。この点も道山氏が強みとして強調していた
「TriDef」を使い、「VOCALOMARK」を3D立体視でデモンストレーション

 コスト面でも偏光方式に軍配が上がる。まずPCゲームの場合、シャッターグラス方式を採用する「NVIDIA 3D VISION」を前提とした3D立体視のシステムは、NVIDIA製ビデオカードと、1万円から2万円程度の3Dメガネ、ネイティブ120Hzモニターがワンセットで必要となるが、本製品ではグラフィックスカードを選ばず、モニター(と同梱の3Dメガネ)だけあれば3D立体視を楽しめる。

 さらに本製品ではHDMI 1.4の3D映像入力をサポートしているため、プレイステーション 3やXbox 360の3D立体視対応タイトルやブルーレイ3Dといった様々な3Dコンテンツも立体視で楽しむことが可能だ。ライン・バイ・ライン等のフレームパックドな3D映像形式をサポートするコンテンツでは、DVI-DやアナログRGB端子経由でも、ネイティブで3D立体視が可能である(例えばエレクトロニック・アーツの「クライシス 2」など)。

 その上で本製品では、さらに幅広い3Dコンテンツを楽しめるようにするため、DDD Group plcのPC用3D表示ソフト「TriDef」を同梱する。「TriDef」を導入すると、DirectX 9/10/11で動作する数多の3Dゲームをライン・バイ・ライン方式の立体視表示にできるほか、既存の2D DVDコンテンツを3D化して表示したり、3D形式のムービー、3D写真などを同梱プレーヤーで再生可能となる。

 偏光方式の弱点は、左右のそれぞれの目に届く映像の有効画素数が原理的に半分(本製品では縦ラインが半々づつになる)となり、解像感がやや失われることにある。この点では一切の解像度損失のないシャッターグラス方式にアドバンテージがあるものの、安価さや対応フォーマットの幅広さを考えれば、LGエレクトロニクスがトータルで「偏光方式に大きなメリットがある」と評価するのも納得できる。

 LGエレクトロニクス・ジャパンの道山氏によれば、偏光方式の3D対応液晶パネルにおける大きな問題は製造時の歩留まりの悪さ。これが従来の偏光方式3Dモニター/テレビの高価さの原因だと考えられるが、LGエレクトロニクスでは巨額を投資し、LGケミカルを始めグループを挙げて量産体制を整えたとのこと。それにより本製品のような安価な3Dモニターが実現したということのようだ。

 価格やわかりづらさからなにかと敷居が高いと考えられてきた3D立体視の世界に、わずか3万円前後で購入可能で尚且つPC、ゲーム機、AV機器と幅広い3Dコンテンツを楽しめるモニターが登場したことは、この市場に大きな一石を投じることになりそうだ。LGエレクトロニクスでは本製品を皮切りに、偏光方式の3Dモニター製品ラインナップを拡充していく見込みだ。




(2011年 4月 20日)

[Reported by 佐藤カフジ]