G-Star 2010レポート

【G-Star 2010】SCEK、PS3版「Kingdom Under Fire II」を正式発表
初の韓国産PS3タイトルはオンラインゲーム! PS3版独自要素も


11月18日~21日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン)
学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)


 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの韓国法人Sony Computer Entertainment Koreaは11月18日、G-Star会場内のカンファレンスルームにおいて、韓国のデベロッパーBLUESIDEと共同で記者発表会を開催し、同社が現在開発しているPC向けのオンラインアクションゲーム「Kingdom Under Fire II」をプレイステーション 3向けに発売することを明らかにした。発売時期は2012年第1四半期を予定し、価格は未定。ビジネスモデルは、パッケージ販売と基本プレイ無料のアイテム課金制を予定。

【Kingdom Under Fire II】
従来のシリーズからアクション性と戦略性を増し、正当進化を果たしている「Kingdom Under Fire II」。PCオンラインゲームとしても注目に値する大型タイトルのひとつだ



■ 「Kingdom Under Fire」シリーズ最新作がPS3に登場!

SCEKプレジデントの川内史郎氏
BLUESIDE代表取締役CEO キム・セジョン氏
開発が先行するPC版は、NHNブースで「TERA」に並ぶ目玉タイトルのひとつとして出展されている

 「Kingdom Under Fire II」は、韓国BLUESIDEのオンラインアクションRTS「Kingdom Under Fire」シリーズの最新作。「Kingdom Under Fire(KUF)」シリーズといえば「Kingdom Under Fire: The Crusaders」、「Kingdom Under Fire: Heroes」、「Kingdom Under Fire: The Circle of Doom」というXboxフランチャイズ向けのタイトルとして有名だが、元々は2000年にリリースされたPCオンラインゲーム「Kingdom Under Fire: War of Heroes」が出発点となっている。

 「Kingdom Under Fire II」は、待望のナンバリングタイトルとして2008年1月に発表。PCプラットフォームに特化したハイクオリティのグラフィックス表現や、韓国が得意とするオンラインゲームとして発表以来、韓国国内外で高い注目を集めている。時代背景は「Kingdom Under Fire: The Crusaders」を受け継ぎながら、「Kingdom Under Fire: War of Heroes」の正当な続編として現在開発が進められている。PC版の韓国でのパブリッシャーはNHNで、G-Starに先駆けて行なわれた発表会で公開されたほか、G-StarのNHNブースでもプレイアブル出展されている。韓国でのサービス開始時期は2011年末を予定している。

 さて、こうした背景事情を踏まえると、今回のPS3版の発表は驚きに値する。ひとつはこれまでXboxフランチャイズ向けとしてリリースされてきたタイトルの最新作が、PS3でリリースされること。もうひとつは韓国発の最新PCオンラインゲームがPS3で発売されること。3点目はPC向けに特化して開発されてきたハイクオリティのグラフィックスを、PS3でも楽しめること。いち早く韓国市場に参入し、現地独自の展開を模索してきたSCEKならではの成果と言える。

 発表会の冒頭で登壇したSCEKプレジデントの川内史郎氏は、「本日はPS3フォーマットの新たな展開をご紹介する大事な1日となる」と宣言し、これまでSCEKがPS3フォーマットを通じて最高水準のゲームエンターテインメントを提供することに心血を注いできたこと、そして直近の具体的な成果として「グランツーリスモ5」を世界最速となる11月24日に発売することを報告。ちなみに「グランツーリスモ5」の世界最速発売は、純粋にアジア市場特有の問題である並行品対策のためで、SCEKを統括するSCEグループのアジア部門SCE Asiaの方針によるものだ。9月に発売されたPS3やPSP、PlayStation Move、大型タイトルなどはすべて世界最速発売を行なっている。

 続けて川内氏は「PSフォーマットにとって非常に喜ばしい大きな発表をさせて頂きたい。ようやく韓国国内で開発されたPS3用のタイトルの登場です」と切り出し、「Kingdom Under Fire II」のPS3での発売が決定したことを明らかにした。川内氏は、「『KUF2』のリリースにより、オンラインゲームが盛んな韓国において、よりPS3をお楽しみいただけるきっかけになると確信している。PS3の機能とBLUESIDEの開発力が合わさったことで、PC版と同等かそれ以上のクオリティで皆様にお届けしたい」と抱負を述べた。ちなみにBLUESIDEとの交渉そのものは、実はPS3が発売される前から行なっており、これまでに何度も綿密な打ち合わせをしてきたという。



■ PS3版独自要素はSCEキャラクターの登場と、PS3独占コンテンツ

「Kingdom Under Fire II」プロデューサーのイ・サンユン氏
質疑応答では韓国メディアから、PS3に最適化することの難しさを懸念する質問が出されたが、イ氏は「すでに慣れた」と回答

 発表会の後半では「Kingdom Under Fire II」プロデューサーのイ・サンユン氏が登壇し、PC版とPS3版の違いについてプレゼンテーションを行なった。

 イ氏によればPS3版の開発はPC版同様にBLUESIDE本体で全部行なっており、PS3版でもPCと同等の写実的なグラフィックスが楽しめるように現在開発を進めているという。クライアントのサイズは20GB前後を想定しているが、ダウンロードだと膨大になることからPS3のウリのひとつであるBru-rayディスクの形で提供を行なう。プレイスタイルは、HDDにフルインストールを行ない、HDDから起動する形を想定しているという。もちろん発売後も、PlayStation Networkを通じてアップデートを行ない、PC版と同じバージョンが提供される。

 ここまではPC版とほぼ同等の仕様をPS3でも実現するという話。PS3版独自要素については、SCEKとの間でかなり具体的な部分まで詰めているというが、「まだ話せない」とした上で、アイデアの一端としてSCEの有力タイトルのキャラクターをゲーム内に登場させたり、PS3版独自のエクスクルーシブコンテンツを導入することなどを明らかにした。

 「KUF」ファンにとって気になるのは「Kingdom Under Fire II」はPS3エクスクルーシブタイトルなのかどうか、つまりXbox 360ではリリースされないのかという点だろう。この点についてSCEKプレジデントの川内氏とBLUESIDE代表取締役CEO キム・セジョン氏に同じ質問をしてみたところ、川内氏は「PS3独占という契約にはなっていない。今回はあくまでPS3版を出すという発表」との回答で、キム氏からは「Xbox 360の発売は諦めていないが、オンラインポリシーの問題があり、いつ出せるかは見えてない」と一歩踏み込んだ回答をしてくれた。

 このキム氏の言う“オンラインポリシーの問題”とは、Xbox LIVE上でアイテム課金ビジネスや、外部サーバーに接続しての有料アイテムの売買を認めないポリシーのことだ。Xbox 360上で、基本プレイ無料のアイテム課金がリリースされないのは、すべてこのオンラインポリシーが障壁になっており、多くのオンラインゲームパブリッシャーがサービスを断念してきた経緯がある。BLUESIDEは正式コメントは出していないが、そもそもこれまでXboxフランチャイズでリリースされてきた「Kingdom Under Fire II」が突然PC向けとして発表されたのも、ビジネスモデルを従来のパッケージ売り切り型から、基本プレイ無料のアイテム課金制に替えたため、Xbox 360で出せなくなったためだと予想される。

 なお、気になる日本市場への展開については、「まだお話しできる段階ではない」(川内氏)、「欧米と並んで重要な市場だと位置づけているが、まずはPC版を韓国市場で成功させることを考えている」(キム氏)と、これまで欧米市場を重視してきた「KUF」シリーズとしては久々に韓国市場を重視するという見解を述べてくれた。韓国初のPS3タイトルとして今後の展開に注目したいところだ。

(2010年 11月 20日)

[Reported by 中村聖司]