英Playfish、年内に日本参入。Vice President Segerstrale氏にインタビュー
「日本産のゲームだと思われるようなサービスを提供したい」


9月10日 開催

ザ・プリンスパークタワー東京


 株式会社ミクシィは9月10日、自社の戦略を発表する「mixi meetup 2010 -Social Leaders Conference-」を開催した。

 カンファレンスのメインセッションでは、ソーシャルゲームデベロッパー最大手の1つである英Playfish(米Electronic Arts傘下)のVice President and General ManagerのKristian Segerstrale氏が「グローバルSAPの日本参入戦略」と題した講演を行なった。さらにその後のインタビューで、Playfishが年内に日本市場に参入するという情報を入手した。

 この記事では、講演の概要とその後に行なったSegerstrale氏とのインタビューから、Playfishの日本への参入戦略について紹介したい。




■ 2年後の勝者はわからない。エキサイティングなソーシャルゲーム市場の現状

PlayfishのVice President and General ManagerのKristian Segerstrale氏
会場は満員。立ち見でも入り切れなかった参加者のためにサテライト会場が用意された

 Playfishは英国に本社を持つソーシャルゲームの大手デべロッパーだ。創業は2007年で、2009年に米大手のElectronic Arts傘下となった。全世界に5,000万人のユーザーを持ち、「Restaurant City」や「Pet Society」などのソーシャルゲームをFacebookを始め、世界の8つのプラットフォームに提供している。

 Segerstrale氏は「日本をコンピューターゲームの精神的故郷だと思っている」と述べ、ソーシャルゲームに関してもアジアでのけん引役になっていると言う。

 現在のコンピューターゲーム市場は、世界全体では5兆円。だがその内容は強い銃を持って敵と戦うようなジャンルに偏っている。だがこの5年ほどの間に、再びゲームを原点に回帰する動きが強くなっている。かつてゲームは家族や友達と一緒に遊ぶものだったが、今回の進化はそこから物理的な制約を取り払ったデジタルの世界で進行している。

 ゲームは、フィジカルの世界からデジタルへ。コンソールやDVDなどの製品から、サービスへ。スタンドアローンからソーシャルへ。そして最初にお金を払わせるのではなく、まずは無料で提供してそこから時間をかけて、マイクロトランザクション(小額決済)や広告などによって少しずつ回収していく方式へと変わりつつある。「これまでゲームはずっと進化を続けてきましたが、今ほどエキサイティングな時はありません」とSegerstrale氏は語る。

 今までゲーム業界を語る時に、コンソール機の販売台数のグラフが指針となっていた。だがこれからは、どのプラットフォームに何人の顧客がいるかが重要になっていく。顧客の数は、プラットフォームの参入障壁の度合いに反比例する。北米/欧州のゲーム市場では最も参入障壁が高いのはPS3で、逆に最も低いのが基本無料のオンラインゲームやソーシャルゲームだ。

 インターネットユーザーは15年で1,600万人から18億人になり、YouTubeの登場でオンライン上で動画を観る人の数は3年で0から1億5,000万人になった。Facebookのアナウンスによると、ソーシャルゲームのユーザーは2年で0から2億人に増えた。世界中のSNSでのサービスを合わせると、5億人に達する。Segerstrale氏は「ソーシャルゲーム産業はこのようにインパクトのある業界で、現在も爆発的に成長しています。FacebookはオンラインゲームのYouTubeのような存在になりました。mixiは日本でそれを成し遂げているプレーヤーの1つだと思う」と述べた。

 そんな進化の早い業界で生き残っていくのに重要なのは、なるべく長い時間ゲームで遊んでもらう、つまりゲームのライフタイム・バリューを伸ばすことだ。勝者となる企業は、多様な価値観を持つユーザーをどれだけ理解できるかにかかっている。そして成功のためには「製品のクオリティ」、「フランチャイズ」、「プレーヤーとプレーヤーが所属しているコミュニティへの理解」、が必要となる。

 ソーシャルにつながったコミュニティの中では、いい評判も悪い評判も急速に広がっていく。そのために広告やメーカーからのメッセージだけでは、ユーザーの評価を操れない。ユーザーは様々なプラットフォームからゲームに接続してくるので、ルートを展開していく可能性を見せなければならない。そしてユーザーがどんな志向を持っているのかを理解して、彼らの志向に合ったサービスを提供していかなくてはならない。

 フランチャイズについてSegerstrale氏は、iPhoneのアプリが2008年までは独自性のある個人が作ったものが人気だったが、2009年になって上位8つのうち7つを巨大フランチャイズ作品が占めた事例を紹介して、ブランド確立の重要さを強調した。

 さらに今後の予測として、マルチプラットフォーム化するフランチャイズが登場する。小さな企業が合併、買収によって統合していく動きが今後も続く。将来的には「ソーシャルゲーム」というジャンルがなくなり、すべてのゲームはソーシャル化していくだろうと語った。

 「似たようなゲームが発表されているが、2年後にも農場系ゲームが最新のゲームである可能性は低い。色々なプラットフォームでゲームをしてもらい、ゲーム内でほかのプレーヤーと対話をするような環境はさまざまなイノベーションを可能にする」とSegerstrale氏。今まで経験したような急成長を今後も望むなら、同じようなゲームを作っていてはいけない。日本でも「市場にいる皆さんに革新的なもの、新しい体験を提供して欲しい。ゲームをクリエイトしていくものが、環境を築いていくのです」と呼びかけた。


ソーシャルゲーム業界最大手の1つPlayfishの講演だけに注目度は非常に高い
現在のHDゲーム市場では、FPSゲームが主流を占め、購買層が限定されてきている「愛」や「友情」、「一緒に遊ぶ」といったゲームの原点へと回帰が起こっているPlayfishのソーシャルゲームラインナップ。8つのプラットフォームで5,000万人のユーザーを抱える
Playfishは、2009年にEAの傘下に入りグループ企業となったゲームの進化を、恐竜から人間への世代交代になぞらえて説明したこれまでゲーム業界を語る時、コンソールの普及台数が指針となっていた
別の面から見ると、プラットフォームの差は参入障壁の差であることがわかるソーシャルゲームは、コンソールのゲームに比べ進化が格段に早い似たようなゲームでも、それをコピーと怒るよりも、そこから独自のイノベーションを生み出すことが重要
ライフタイムバリューが作品の評価となる時代が来るライフタイムを伸ばすには、ユーザーをよく理解することが重要ハイクオリティな商品で、ブランドを確立していくのが成功の道筋となる
2008年のiPhoneアプリで最も人気があった「Koi Pond」2009年には状況が一変。上位には巨大フランチャイズが並んだ今後業界では、さらなる統合とグローバル化が進んでいくだろうと予想



■ 日本で独自のチームを結成。やはりモバイルは欠かせない要素

日本の恋愛シミュレーションゲームには驚いた、とSegerstrale氏

――今回、どうしてmixiのカンファレンスに参加したのですか?

Kristian Segerstrale氏: 日本市場に非常に興味を持っているからです。今もチャンスがありますし、今後も成長が見込めます。ですから日本の市場や消費者、企業を学びたいと思っています。特に日本は世界的にもモバイルのソーシャルゲームが進んでいますので、その点を学びたいと考えています。

――mixiからローンチが決まっているなど、具体的な話はあるのですか?

Segerstrale氏: 年内には日本市場に参入します。ただ、どのプラットフォームにどの作品を出すかはまだ発表していません。

――mixiではない可能性もあるのですか?

Segerstrale氏: ミクシィとは良い関係にありますが、ほかのプラットフォームも同様です。どういった展開であれ、皆さんと協力的な関係を続けていきたいと思います。

――PlayfishはもともとPC向けのソーシャルゲームデベロッパーですが、日本では携帯市場への参入になるのですか?

Segerstrale氏: おっしゃる通り、当社はPCのソーシャルゲームの企業です。ですからPCのゲームをやりたいという気持ちはありますが、やはり日本ではモバイルのゲームがメインなので、それは欠かせない要素だと思います。オンラインと同時にモバイルでもという可能性はあるかと思います。

――現在の既存タイトルを携帯向けに開発するということですか?

Segerstrale氏: それも近い将来、公式に発表させていただきます。日本は非常に独自性のある市場だと思っています。我々が日本でローンチするのであれば、見かけも感覚的にも日本の商品だと思えるようなものを提供したいと思っています。

――日本のユニークな部分はどういうところですか?

Segerstrale氏: 「スーパーマリオ」のように世界中で受け入れられるものもありますが、例えばスポーツやテレビのようにその国独自のものがあります。ソーシャルゲームはマスマーケットで、一般の人が遊ぶゲームなので、文化に関連性が強いことが重要だと思います。

――Zyngaが日本のウノウと提携して日本市場に参入しますが、Playfishは単独での参入になるのですか?

Segerstrale氏: 我々はここでチームを作り始めています。そう言った意味では自分たちでローカルなプロデューサーやデザイナーを配置していきたいと思っていますが、その一方で市場でのパートナーシップは模索していきます。我々の目標にハイクオリティなゲームを作っていくこと、イノベーションをしていくことがありますので、そういった部分に理解があるパートナー企業を求めています。

PlayfishがFacebookでサービスをしている人気ゲーム「Restaurant City」

――例えばFacebookの「Restaurant City」は世界中の人が英語で遊んでいます。日本向けにローカライズしなくてもそのまま遊べるのではありませんか?

Segerstrale氏: 確かに英語が第1言語ではない人たちも、英語でゲームを遊んでいます。ただ英語でずっとプレいしたいと思っている方はハードコアなゲーマーなのです。文化的な社会現象になれるようなゲームにするには、やはりその土地に合わせたローカライゼーションが必要になると思います。言語のローカライズも重要ですが、文化的な背景があると思うのです。ある絵をみて、なんとなくこれは自分の国でできた絵ではないとわかるのです。そういった見た目やインタラクションの面でも、日本人が見て、日本人が作ったと思えるようなものを作るのが大切だと思っています。

――昨年までの、米国や欧州でソーシャルゲームが爆発的にヒットして急成長していた状況から、現在は少し落ち着きが出た感がありますが、現在の市場に変化を感じますか?

Segerstrale氏: 確かに数字で見ると最近はそれほど大きな振り幅は見られないかもしれませんが、ユーザーがもっと時間やお金をかけてゲームを遊んでくれるというポテンシャルは高いと思っています。まだ我々も、ユーザーも、プラットフォームも、学びの段階です。ゲームをすること自体をどのように模索していくかという段階だと思います。我々企業側には新しくて革新的なゲームを提供する義務がありますし、そういったものを提供していくことによってマーケットが広がっていくと思います。

――Playfishのゲームの中には、「Restaurant City」のように日本のアイテムを扱っているゲームもありますが、あれは日本人のユーザーを意識しているのですか?

Segerstrale氏: 「Restaurant City」を作ったそもそものスタートは、おそらくはすべての人はいつかレストランのオーナーになりたいという夢を持っているのではないかという所です。自分のレストランのメニューやスタッフは自分で決めていきたいだろうと考えました。そこで大切なのが本物感です。イタリアンでもフレンチでも日本食でも、本物感に欠けているとゲームそのもののアイデアが崩れてしまうので、それぞれの文化や食事の独自性を十分に研究したのです。ですからいろいろな文化背景を持っている方に届くように制作されています。

――Facebookのソーシャルゲームは更新スピードが非常に早いですが、日本に参入する時にもあの早さを維持するのですか?

Segerstrale氏: そのようにしたいと考えています。どこでローンチするにしても、このゲームに戻ってきてまたゲームを遊びたいという気持ちにさせることが重要ですし、そのためのフックを与えてあげることが大切だと考えています。日本のソーシャルゲームの更新がそれほど早くないのは、おそらくコンテンツプロバイダーが中小企業で、スタッフの数が限られており、頻繁に更新することが現実的に難しいということなのではないでしょうか。ですが、プレゼンテーションでもお話ししたように、企業がどんどん統合してグローバルになっていくと、新たなサービスを提供できる頻度もどんどん上がっていくと思います。

――日本市場に参入するための武器は何ですか?

Segerstrale氏: Playfishは過去に様々な国に参入してきました。そこでの経験やデータ、システム、消費者のやる気を起こさせる手法などは役に立つと思います。でも1番重要なカギとなるのは、ローカルな市場に対する理解の深さです。すぐには理解できないかもしれませんが、時間をかけて徹底的に理解してマーケットにあったサービスを展開したいと思っています。これこそが決定的な要因となって、消費者に我々の商品を選んでいただけることになるのではないかと思います。

――日本市場の中にPlayfishというブランドを認知させるために、どういった方法をとりますか?

Segerstrale氏: 消費者の方が思わず笑みをこぼしてしまうような商品を作ることです。それに付け足して、商品がきちんとたくさんの方に届くように、提供の仕方にも気をつかっていきたいと思います。

――日本での目標を教えてください。

Segerstrale氏: まずは年内に製品をローンチする。長期的なゴールは市場でリーダーになることです。それは外資系企業だから欧米流で通すというのではなく、きちんとその地域の特徴を理解したうえで、その中でポジションを確保していくということです。

――日本のソーシャルゲームはプレイされましたか?

Segerstrale氏: 恋愛体験ゲームが非常に斬新で新しく、面白いと思いました。我々では決して思いつかない内容だったので、これは非常に日本の市場背景を表わしていると思います。

 

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

Segerstrale氏: 我々のゲームをプレイしていただきありがとうございます。日本のユーザーはかなり意見をくれるのです。そこから学ぶことも非常に多かったので、そういった今までのやりとりにも感謝しています。我々も皆様にいいものを提供していきたいと思っています。日本でローンチした暁には、引き続き皆さんの声を聞きたいと思っておりますので、ぜひ忌憚ないご意見を聞かせていただきたいと思います。

――ありがとうございました。


(c) 2010 Electronic Arts Inc. All rights reserved.

(2010年 9月 10日)

[Reported by 石井聡]