Take-Two、「Mafia II」PC版プレイアブルデモ試遊レポート
PC版はNVIDIA Apexを採用。PhysX物理エンジンがビジュアルをさらに強化!

【Mafia II】
開発元:2K Czech
発売元:2K Games
発売日:8月24日(北米版)


 北米で8月24日に発売予定となっている米Take-Two Interactiveのクライムアクションゲーム「Mafia II」のプレイアブルデモが現地時間の8月10日に公開された。本作は2002年に発売され、PCゲームの傑作として高い評価を得た「MAFIA」の続編となる作品だ。今回の対応プラットフォームはプレイステーション 3 / Xbox 360 / Windows PCとなっているが、元々PCで生まれた作品ということもあって、「Mafia II」のPC版は特に力が入れられたバージョンとなっている。

 PC版ならではのポイントは、大きくわけて2つ挙げられる。1つは、NVIDIAの物理エンジンであるPhysXに本格対応していることだ。本作ではPhysXの開発者向け製作支援システムである「APEX」を活用して、衣服の布表現や、各所で使われる破壊表現にこだわりのある映像表現を実現している。もうひとつのポイントは、最近注目されている3画面環境に完全対応していることだ。こちらはNVIDIA GeForce、ATI Radeonシリーズでサポートされている両方の多画面ゲーム環境に対応する。

 本稿ではPC版独自の技術的ポイントについて、ゲームのプレイフィールについての感想も交えながらお伝えしよう。なお、気になる日本での取り扱いについては今のところ未定となっている。



■ ミッションは1つと短いが、意外と幅広い遊び方ができるプレイアブルデモ

NVIDIAの協力を得て、3画面環境で本作を体験。高視野角で発生しがちな「歪み」はほとんど見られず、自然なサラウンド映像を楽しむことができた
ゲームの舞台は1950年代のアメリカ。当時の様々なアメリカ車を乗り回すのも楽しみのひとつ
マフィアの抗争というだけあって銃撃戦は独特の環境で展開する

 「Mafia II」は、ゲームジャンルとしては「GTA」シリーズライクなフリーローミングスタイル(箱庭環境を自由に行き来しながら進められる方式)のアクションゲームだ。ゲームの舞台となるのは1950年代のアメリカ。ニューヨークやサンフランシスコ、デトロイトなどアメリカの特徴的な大都市をモデルとする「エンパイアシティ」が、広大なゲームフィールドとして生き生きと描写されている。

 プレイアブルデモでプレイできるのは1つのミッション。イタリアから来たという黒服の男と出会い、酒蔵を根城にしているマフィアの一派に襲撃をかけるという内容だ。ゲームは主人公の自宅から始まり、数マイルほどを車で移動して現場に向かい、派手な銃撃戦を展開……という流れ。単にミッションをこなすだけならものの十数分で終わってしまう内容なのだが、それ以外の遊び方も結構できてしまうところが面白い。

 プレイアブルデモに収録されているマップはゲーム全体のごく一部に相当する面積だが、それでも高級住宅街から商店街、スラム街まで、かなり変化に富んだ都市環境が含まれている。中には紳士服店や車のチューニングショップ、ファーストフード店など各種のお店もあり、トレンチコートに扮装したり、車をスポーツ仕様にしたりといった遊びができる。「Mafia II」のAIは期待以上に賢く、融通が効くため、街中で乱暴狼藉を働いて警官の反応を見るのも楽しい。ミッションそっちのけでぶらぶらと散歩しつつ、ゲーム内で可能な行動をひとしきり確かめてみるだけでも結構なボリュームがあるのだ。

 と、ここまではゲーム的な話だが、PC版ならではの要素としてビデオオプションの項目にも注目してみたい。本作では解像度やテクスチャ・シェーダー関連のレベル調整のほかに、「APEX PhysX」という項目がある。これはNVIDIA GeForce系のGPUでアクセラレーションされるPhysX物理エンジンの利用程度を調整するオプションだ。

 「APEX」というのは、NVIDIAがゲーム開発者向けに提供している開発支援のためのシステムで、PhysXを用いた各種の物理処理表現を効率よくゲームに実装するために用いられる技術。「APEX」では物理表現をいくつかのカテゴリーに分類しており、代表的なものとしては破壊表現のための「Destruction」、布表現のための「Cloth」、気体表現のための「Turbulence」を挙げることができる。この「APEX」については弊誌連載記事「PCゲーミング道場 第17回」にて詳しくお伝えしているので、興味のある方はそちらも参照していただければ幸いだ。

 なにより重要なのは、本作「Mafia II」で「APEX」を採用したことにより、PC版独自の表現を実現していることだ。有り余るGPUパワーを有効に活用するための使い道として、物理処理というのは映像表現を高め、ゲームの雰囲気をさらに際立たせるという意味で非常に効果的。続いてその例をご紹介しよう。


グラフィックスの表現は非常に秀逸。技術的にはDirectX 9をベースにしているものの、強力なビデオカードを持つPC向けのチューニングがきちんと行なわれている。「APEX」への対応はその中で特に先鋭的なトピックのひとつとなっている



■ 破壊表現の強化により独特の「空気感」が強化。3画面+3D立体視という組み合わせにも期待

「APEX PhysX」オプションは「OFF」、「MEDIUM」、「HIGH」のいずれかを選択できる
銃撃戦では大量の破片が飛び散る
布表現。キャラクターの動きに合わせてコートの裾がひるがえる

 「APEX PhysX」のオプションを有効にすることで、ビジュアル面の効果が最も現われるのは、ミッションの佳境にあたる銃撃戦のシーンだ。ここでは「APEX」の「Dextruction」が活用されて、銃弾が命中した壁や柱、様々な素材の表面から派手に大量の破片が飛び散る映像をみることができる。

 特にゲームの雰囲気を強化してくれるのは、飛び散る破片が大量であるだけでなく、破片が飛び散ったまま床に残ることだ。床に残った破片は、その上をキャラクターが歩けばさらに飛散してリアルな散らかり感を演出してくれる。「APEX」を利用しない場合は破片がすぐに消えてしまうので、かなりビジュアルの雰囲気が変わってくるわけだ。

 特に本作では、コンクリート製の柱、木製の板などが銃撃によって破壊され、身を守るための障害物が次第に削られていくというゲーム性があるため、破壊表現の強化はプレイそのものを盛り上げるという点でも効果的。コンクリート、木、ガラス、その他の素材の違いが破壊表現の違いにも現われてくる点も見所のひとつと言えそうだ。

 「APEX」のもうひとつの効果としては、布表現が挙げられる。本来、キャラクターの衣服はボーンアニメーションの延長で決まった動きしかしないのだが、「APEX」を有効にすることで、あらゆる衣服がキャラクターの動きに合わせてヒラヒラとリアルな挙動を見せるようになる。特にトレンチコートのような長裾の服は、一挙一動が大きく反映されるため、映像の雰囲気がぐっと引き締まってくる。

 ただ、NPCも含めたほとんど全てのキャラクターの衣服に布の物理表現が使われるようになるためか、通行人の多い大通りが近い場所などでは、かなりフレームレートの低下が見られるのが利用上のトレードオフといったところ。NVIDIAの協力でプレイした環境ではGeForce GTX 480を2枚、SLI接続したモンスターPCでのプレイではあったが、「APEX」+3画面というリッチな環境の負荷は高く、通行人が多い場所ではフレームレートが30fpsに届かないこともしばしばだった。

 とはいえ物理表現によってゲームのビジュアルが大幅に強化されるというのは捨てがたいメリットなので、GeForce系のビデオカードをもう1枚PCに追加し、PhysX処理専用に割り当てててみるというのも面白い選択肢かもしれない。NVIDIAによれば、レンダリングに使うビデオカードとは違って、物理専用に使うビデオカードはややグレードの低いものでも効果があるようだ。

 このほか本作では、NVIDIAの3D立体視ソリューションである「NVIDIA 3D Vision」にも最適化されており、3画面+3D立体視という組み合わせでプレイすることも開発時から想定しているとのこと。最新のPCゲームとして楽しみな1本であることは間違いない。もちろん、3画面対応についてはATI Radeon系の「Eyefinity」にも対応しているのでRadeonユーザーの皆さんはご心配なく。

【APEX有無の比較】
左がAPEXなし、右はAPEXあり。なしの場合は、多少の破片は発生するがすぐに消え、床は綺麗なままだ。一方APEXありの場合は破片が大量になり、飛び散りながら地形と干渉する。さらに破片は持続的に床の上に残り、その上をキャラクターが歩けばさらに飛散するという形でビジュアル表現が強化される



(2010年 8月 18日)

[Reported by 佐藤カフジ ]