NVIDIA、パナソニック「3D VIERA」での大画面3D立体視環境をデモ
「NVIDIA 3DTV Play」で、PCが汎用3Dコンテンツ再生機に早変わり!

4月25日 開催

会場:リナックスカフェ秋葉原店



カフェソラーレリナックスカフェ秋葉原店

 NVIDIAは4月25日、東京・秋葉原のカフェソラーレリナックスカフェ秋葉原店にて、最新のGPUテクノロジーを紹介するイベント「NVIDIA GeForce GTX 480 / 470 Debut」を開催した。

 本イベントでは、PCパーツベンダー各社より4月上旬から相次いで発売されている「Geforce GTX 480 / 470」搭載ビデオカードを紹介するとともに、4月23日に発売されたばかりのパナソニックのプラズマテレビ「3D VIERA」とNVIDIA GPU搭載PCにて3D立体視環境が可能になることを紹介することが主な狙いだ。

 近年、NVIDIAが独自技術を用いてプッシュしているPCにおける3D立体視ソリューションだが、同社が発売しているシャッターグラスシステム「NVIDIA 3D Vision」のみならず、家電業界各社から発売される見込みの3D対応TVでも、同社のテクノロジーが生かされるという。PCは現時点で3D対応コンテンツが最も豊富なプラットフォームであるだけに、家電TVとの連携は強力なセールスポイントになりそうだ。

【会場の様子】
NVIDIAの一般向けイベント会場としておなじみとなった感もあるカフェソラーレ秋葉原店。手狭な会場内には、今回も多数のデモ環境が並べられたほか、「3D VIERA」を用いた大画面立体視環境も見ることができた



■ 新コンテンツ続々。NVIDIA GPU搭載PCを大画面テレビで楽しむソリューションも登場

NVIDIA GPUが立体視の技術基盤となり、PCによる3Dコンテンツのエコシステムを構成しているという考え方
「3D VIERA」を用いたデモ環境。シャッターグラスはテレビ付属のものを利用する

 会場では、NVIDIAのスタッフほか複数のゲストが登壇し、NVIDIAの最新GPUにまつわる様々なトピックを解説した。その中で、「NVIDIA 3D Vision アップデート」という題目のセッションが行なわれ、3D立体視をとりまく現状について幅広い紹介が行なわれた。

 このセッションの冒頭では、NVIDIAのシャッターグラスシステムである「NVIDIA 3D Vision」の概要に触れながら、現状で最も手軽で高品質な立体視システムとして、米国の一般向けメディアなどからも幅広い注目を集めていることが紹介紹介された。

 また、ハリウッド映画をはじめとした3Dムービー、3Dフォト、3Dウェブアプリケーションなど、続々と登場しつつある様々な3D対応コンテンツが全てNVIDIA GPUテクノロジーで楽しめるという現状を解説。120Hz表示に対応したPC用モニターのみならず、3D対応の大画面TV、3Dプロジェクター、あるいは往年の赤青メガネといったデバイスが利用できる。

 その中で今回の注目トピックとして扱われたのが、NVIDIAが3月15日に発表した「NVIDIA 3DTV Play」というソリューションだ。これはNVIDIA GPU搭載PCで利用するためのソフトウェアで、これを利用することによりHDMI 1.4端子対応の3D対応TVで立体視映像を楽しむことができる。家電TVは、それぞれ独自の立体視デバイス(メガネや偏光グラスタイプのパネルなど)を搭載するため、その際「NVIDIA 3D Vision」は必要ない。

 従来の「NVIDIA 3D Vision」が前提としていた環境では、PCと120Hz対応のPCモニターをデュアルリンクDVIで接続するという方法が取られるが、家電TVへの接続はHDMI1.4を用いることが技術的なポイントとなる。

 デュアルリンクDVIでは、通常のDVI接続に対して純粋に倍の映像信号帯域を確保しているため、フルHDのプログレッシブ映像を120Hzで伝えることができる。しかし、HDMI1.4では、フルHDのプログレッシブ映像を従来の倍の速度で送信するだけの帯域を持たないため、PC用モニターと違って、対応する解像度/フレームレートに違いが生ずる。

 具体的には、1080pの場合24フレーム毎秒となり、映画鑑賞向けの設定となる。他方、ゲームを60fpsで楽しむためには、720p解像度を使用することが必要だ。このため、ゲーム利用における立体映像の解像感についてはPC用モニターのほうに1日の長があるが、40インチ、50インチといった大画面で3D立体視を楽しめる点では、家電TVに軍配があがる。リビングでの利用は大画面TVで、個室ではPC用モニターでそれぞれ立体視環境を楽しむといったスタイルが標準になるだろう。

 こういった環境を可能にする「NVIDIA 3DTV Play」は、北米では今夏に40ドル程度で発売予定。日本国内での発売日や価格についての発表は行なわれなかった。ひとまず、国内家電メーカーの3D対応テレビがどのように普及していくかといった市場同行にも注目していきたい。

ノートPCも「3D対応」を果たしたということもあり、ますます身近なものになってきた立体視環境。NVIDIA GPU搭載のPCがあれば、「NVIDIA 3DTV Play」を導入することでTVでも立体視利用できるようになる。PCにブルーレイドライブを取り付ければ、とても安価な3D映画再生機の完成だ

【PC用最新3D対応モニター「W2363D」】
近日中にも店頭販売が開始される予定の120Hz/3D対応PCモニター「W2363D」について紹介するLGエレクトロニクス・ジャパンの宇佐美夕佳氏。その内容は弊誌でご紹介した記事、「LG、3Dゲーミングモニター「W2363D」の高画質回路の秘密を公開」での技術解説をおさらいするもので、3D立体視を楽しむために不可欠な「高輝度とクロストークの低さ」をアピールしていた。ちなみに今回のイベントで展示されたPC用モニターは全て「W2363D」だった



■ 西川善司氏、NVIDIA GPUと3Dテクノロジーを語る

弊誌連載「3Dグラフィックス講座」でもおなじみのテクニカルジャーナリスト西川善司氏
NVIDIAのスティーブン・ザン氏に鋭い質問をビシバシぶつけて困らせる

 「GeForce GTX 480/470」によるグラフィックステクノロジーを解説するセッションも行なわれた。解説役として登場したのは、弊誌でもおなじみの西川善司氏。「DirectX 11とは」、「GPUとは」といった基本の話題から、DirectX 11で実装されたテッセレーション機能、それによって可能になる映像表現などについて幅広く紹介した。

 その後取られたQ&Aセッションでは、その西川氏とNVIDIAのテクニカルマーケティングエンジニアであるスティーブン・ザン氏の掛け合いが披露された。「もう何を聞かれるかビクビクしてると思うんですけど」という西川氏に、苦笑しながら「お手柔らかにお願いします」と応答するザン氏という構図。

 ひとつめの質問は、「NVIDIAの資料にあるGPUコアの図で数えるとコアが512個あるんですが、GTX 480は480個ですよね。そうすると、消えた32コアはどこに行っちゃったんですか?」というもの。ザン氏はこれについて、「GPU上には存在します。アーキテクチャーとして512コアをサポートしているんですが、SMをひとつ削ることによって歩止まりを向上させています」とのこと。

 次の質問をぶつける西川氏。「GTX 480とかGTX 470というは比較的ハイエンド版だと思うんですが、例えばGTX 460とか450みたいに、性能はちょっと下がるけどお求めやすい、みたいな製品はもう準備されているんですか?」。これに答えてザン氏は「実は……コメントできません」と苦笑。とは言いつつ、無言でウン、ウンと頷いて「具体的なことは言えませんが、年内には」と応答していた。

 3D立体視についての質問も飛び出した。「外に展示してあった『VIERA』ですけど、立体視環境を構築するためには何が必要なんですか?」という西川氏に対して、ノーコメントを続けていたザン氏もようやく落ち着いて「それは、良い質問ですね」と会場の笑いを誘った。「メガネの部分はテレビ側で制御しますので、実は『3DTV Ready』をインストールしたPCをHDMIで接続するだけでいいんです」。続けて「これから他のメーカーが出してくるTVにも対応できるんでしょうか?」と西川氏。答えて「原理的には大丈夫ですが、実際の製品で確認する必要はありますね」とザン氏。

 また、HDMI接続にともなうフレームレートの制限についても質問が出された。これについては本稿、上記で解説した通りだが、1080p/24fpsの映像を現状の60Hz出力型のTVやPCモニターに出力しても立体視できるのではないか?という質問についてはNOの答え。最新の立体視ソリューションでは、120Hzで左右の映像を切り替えることによって、見やすい立体映像を実現している。これは映像ソースのフレームレートに依存しない話であって、たとえ24fpsの映像でも、立体視では120Hzでの出力が必要というわけである。これを24Hzの倍、例えば48Hzで表示しようものなら、激しい点滅感が起こって目が疲れてしまうようだ。

 120Hz の出力が可能な液晶モニターが市場に登場してきたことで、高品質の立体視を楽しめるようになったPCゲームの世界。これが家電TVの世界にも広がり、ゲーム以外のコンテンツも充実していけば、より身近なソリューションになっていきそうだ。NVIDIAのGPUは、PCプラットフォームにおいてその技術基盤を提供するという重要な役割を担っている。


【サイバーリンク「PowerDVD 10」のデモ】
サイバーリンクが発売するPC用映像再生ソフト「PowerDVD 10」では、本格的な3D立体視対応がウリとなっている。3Dブルーレイコンテンツの再生機能はもちろん、従来のDVDなど2Dのコンテンツを3D化するという技術も搭載している。方式としては、映像を解析して推測的に視差を与えるというもので、実際に見てみたところ確かに立体に見える。奥行きや飛び出し感における正確性はまだまだといった感じではあったが、溜め込んだ映像ソフトを気分を変えて視聴しなおすという楽しみ方は大いにアリと言えそう


(2010年 4月 26日)

[Reported by 佐藤カフジ ]