LG、3Dゲーミングモニター「W2363D」の高画質回路の秘密を公開
172Hzデータ処理などの回路技術でクリアな立体視体験を実現

4月8日 発表

 

会場の様子

 LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社は、同社初となる3D立体視表示に対応した120HzフルHD(1,920×1,080ドット)液晶モニター「W2363D」について、画質上のコアとなる技術仕様を記者説明会にて公開した。

 「W2363D」は2010年4月下旬に発売予定とされている23インチの16:9ゲーミングモニターで、昨年9月に発売された「W2363V」の後継となる機種。今回のモデルではネイティブリフレッシュレート120Hzに対応し、NVIDIAの3D立体視デバイス「NVIDIA 3D Vision」などによるシャッターグラス式立体視に対応することが主な違いとなっている。

 東京・赤坂のNVIDIAカンファレンスルームで行なわれた記者説明会では、LG、NVIDIAの共同で用意されたデモ機が展示され、高い3D表示能力を実際に確かめることができた。従来の3D対応PC用液晶モニターに比べ、「W2363D」ではさらに高輝度でクッキリとした立体視を楽しむことができる。予想価格4万円程度と安価な同製品は、3D対応コンテンツを楽しむために特化したパネルと回路技術が投入されているという。本稿ではそのあたりを詳しくお伝えする。

【「W2363D」のデモ機】
「W2363D」の実機は、NVIDIAの立体視デバイス「3D Vision」とセットで展示。ネットで3D放送されたゴルフのプレイシーンを立体視で楽しむことができたが、その画質はこれまでになくクリアで明るく、見やすい



■ 3D立体視を美しく際立たせる高輝度パネルと2つの回路技術

LGエレクトロニクス・ジャパンのブランドマネージャー、宇佐美夕佳氏が技術仕様を解説した
同クラスのPC用3D対応モニターとの違い。高輝度、172Hzデータプロセッシングといった違いが立体視映像の見やすさを引き上げている

 「W2363D」の機能説明を行なったのは、LGエレクトロニクス・ジャパンでブランドマネージャーを努める宇佐美夕佳氏。宇佐美氏は「W2363D」の特徴として、400cdの高輝度パネルを採用していることと、120Hzというリフレッシュレートをより際立たせるための回路技術について紹介した。

 「W2363D」の基本的なスペックとしては、輝度400cd、ダイナミックコントラスト70,000:1、応答速度3ms(GtG)というもの。比較として上げられた他社製の3機種の中では輝度が高く、さらに前機種「W2363V」から引き継いだ「Non-delay スルーモード」を搭載することにより、ゲームや動画用途に特化された機種とされている。

 120Hzの映像をシャッターグラスで60Hzの3D映像として見るシーンでは、輝度が高いことが大きなメリットとなる。これはシャッターグラスを通して映像を見る際、映像が遮光されてしまう悪影響を低減できるからだ。このため、輝度が300cdとなっていた他社製の従来機種よりも、「W2363D」ではより明るい3D映像を立体視できることが強みとなっている。

 そして、120Hzという高速なリフレッシュレートを持ちながら、映し出す映像はさらにクリアなものとなっている。それを支えているのが、宇佐美氏が紹介した2つの回路技術だ。

・172Hzデータプロセッシング

 液晶モニターでは、入力された映像信号をデジタル的に処理してからパネルに映し出すという仕組みを持っている。このとき映像信号を処理するスピードが早ければ早いほど、パネルに安定した映像を映し出すことができる。そこで「W2363D」では、従来比最高となる172Hzの映像処理速度を実現し、120Hzで映像を更新するよりも速く、信号を完結することを可能としたという。

 この効果は、ティアリングの低減だけでなく、フレーム間の光学的な相互作用の低減という形でも現われる。これにより「W2363D」では、1フレーム毎に右目、左目用の映像を交互に表示するシャッターグラス方式の3D立体視において、映像の混合(クロストークと呼ばれる)を競合製品の半分以下となる1.9%にまで低減することに成功したという。他機種に比べてクリアな立体視映像が得られるのはこのためである。

・デュアルゲートフィーディング

 クリアな映像を実現するもう1つの技術は、液晶そのものの回路に関するもの。通常の液晶モニターでは、映像を構成する各画素(セル)のマトリックスに対して、1揃いのドライバーICによって電圧をかけ、セルを開閉して色を制御する。そこが「W2363D」ではドライバーICが2揃いとなり、マトリックスの両側から電圧をかけることにより、さらに発色を安定化しているという。

 この技術もクリアな映像を得るために貢献しており、クロストーク1.9%という数値は上記の172Hzデータプロセッシングとの足し算で達成されている。3D映像がクリアに見えるということは、フレーム間の残像が少なく、各フレームがクッキリと表示されているということを示すため、「W2363D」は、3D以外の用途でも高い動画性能が得られることが期待される。

「W2363D」のクリアな立体視体験を支える2つの回路技術



■ LGエレクトロニクスとNVIDIAのイチオシはモニター3台で構築する「3Dサラウンド」

「NVIDIA 3D Vision」との併用で3D立体視が楽しめる

 本説明会では、マウスコンピューターからのプレゼンテーションも行なわれた。そこで説明されたのは、3D対応の家電TVよりも、PC用3D対応液晶モニターと対応デバイスを搭載したPCのセットのほうが遥かに安く上がるという現状と、マウスコンピューターからクリエイター向けに効率的な3Dコンテンツ製作環境を提供するという取り組み。3DTVがまだ43万程度掛かるのに対して、同社が提供するPC 3Dセットでは15万程度で3D環境が提供できるという。

 また、説明会の最後には会場に展示されたデモ機で実際に3D立体視を体験することができた。正直な感想として、「W2363D」は、満足できるレベルの立体視を提供してくれる初めての普及価格帯のPCモニター製品だと感じる。筆者がこれまで体験してきた機種にくらべ、シャッターグラスを通して見た際の残像感が圧倒的に少なく、しかも明るい。

 その上で、会場でひときわ異彩を放っていたデモ機がある。「W2363D」を3台ならべて実現した、3Dサラウンド(3D立体視のサラウンド)環境だ。3Dゲームでは事実上中央の画面に視線が集中することになるが、視野を覆う様に立体視空間が左右に広がることで、その没入感は驚くべきレベルに達する。「W2363D」単体の価格が4万円程度と予想されていることもあって、ヘビーユーザーならば現実的な投資でこのような環境が構築できる。

 3画面立体視環境を構築するには別途「Geforce 200/400」シリーズをSLI搭載したハイスペックPCが必要となるが、本説明会の会場を提供したNVIDIAとしても、今後ますます3D立体視ソリューションを広げていきたい意向で、このような形のデモ機が実現したのだろう。安価で実用的な3D対応モニターである「W2363D」は、この流れをさらに加速させていきそうだ。


3画面を用いて「立体視のサラウンド」を実現していたデモ環境。こういったシステムも、いまやエンドユーザーにとって現実的なソリューションになりつつある



(2010年 4月 8日)

[Reported by 佐藤カフジ ]