コーエー、PS3/Xbox 360「北斗無双」を2010年に発売
一撃当千の爽快感をコンセプトに世紀末を戦い抜く!
発表会に武論尊氏、原哲夫氏、谷村奈南さんらゲストが出席


2010年 発売予定

価格:未定


「北斗無双」プロデューサーの鯉沼久史氏

 株式会社コーエーは、本日都内で開催した新作発表会において、プレイステーション 3/Xbox 360用アクション「北斗無双」を2010年に発売すると発表した。価格は未定。発表会には、出演声優陣のほか、原作者の武論尊氏、漫画家の原哲夫氏、主題歌を担当する谷村奈南さんがゲストとして出席した。

 原作「北斗の拳」は、1980年代に大ヒットを記録した人気コミック。一子相伝の暗殺拳“北斗神拳”の正統伝承者、主人公「ケンシロウ」の生き様を描いた作品。核戦争後、すべての文明と秩序が失われ“力が正義”となった世界で、暴徒と化しわが世の春を謳歌する悪党たち。放浪するケンシロウは、時には力なき人々の刃となり、あるいは因縁のライバルたちを相手に、孤独な戦いを強いられていく。魅力的なキャラクタやストーリーもさることながら、インパクトに満ち溢れた必殺技や奥義、残虐だがどこかユーモラスな「あべし!」、「ひでぶ!」などの耳目に残らざるをえない悪党たちの断末魔は、どれだけ月日が経とうとも色あせることはない。当時放映されたTVアニメも好評を博しており、今なお古今東西でファンを増やし続ける“永遠の名作”のひとつだ。

 発表会では、本作のプロデューサーを務める鯉沼久史氏からゲームの概要が説明された。ゲームコンセプトは“一撃当千”の爽快感。数々の奥義を駆使し、無数の悪党を必殺アクションで爽快になぎ倒す。物理エンジンにより、建物を壊したり、道に転がっているものをつかむ、振り回す、投げるといったことも可能。グラフィックスは「北斗の拳」の世界観を最新技術でリアルに再現することに尽力したという。キャラクターの衣装は、原作者監修のもとすべてを一新。会場では、ラオウとケンシロウの新コスチュームが披露された。


OPムービーの一部より。「北斗の拳」直撃世代のアラフォー筆者は、もう格好よすぎて言葉が出ない。鯉沼氏から細かく説明はなかったが、ジャギの登場、ケンシロウとレイが牙一族の前で闘うシーン、ラオウの登場から映画でもあったケンシロウが吹き飛ばされるシーンなど、ゲーム内でも登場するであろうシーンが映し出された。この他にも聖帝十字陵などのグラフィックスも見られたのでサウザー編なども描かれるのではないだろうか
ファンにとって何よりもうれしいのは、本作が“原作を最大限リスペクトして開発が進められていること”ではないだろうか


 ゲームモードは、原作をベースにストーリーが展開していく「伝説編」、“北斗無双”ならではのゲーム版オリジナルストーリーが楽しめる「幻闘編」のふたつがメイン。伝説編は、過去の無双シリーズと異なり“タクティカルアクション”というよりは“アクションアドベンチャー”ふうになるという。詳細はまだ不明だが、鯉沼氏によればミッションをクリアしてストーリーを進めて行く形になるという。

 会場では、実機から取り込んだプレイムービーが上映された。ひとつは「伝説編」の1面で、リンやバットたちが住む村にケンシロウがたどりつき、そこにジード軍が攻め込んでくるシチュエーションを再現。カットインで状況説明が行なわれたあと、乱暴狼藉の限りを尽くすジード軍の悪党たちをケンシロウが次々と駆逐していく。操作方法は、無双シリーズをベースに、投げ・投げ抜け、つかみ、ステップイン・アウトなど、本作ならではの厚みを持たせてあるという。

 気になる残虐表現だが「どこまでリアリティを高めるか。コーエーは今まであまり残虐表現をやってこなかったが、今作は“原作をリスペクトするうえで欠かせない”ということで、北斗神拳の内部破壊、南斗聖拳の斬る・突くなど、やりすぎない程度に表現している」という。まだ開発中の実機映像ではあるが、いわゆる洋ゲー的なグロさは微塵もなく、筆者の主観としては「十分な迫力があるし、この程度ならCERO:D(17歳以上対象)で収まるかな?」と思えるものだった。

 もうひとつ用意されていた映像は、1対1のボス戦。ザコを倒していくと、最後にはボスが出現。鯉沼氏は「ストーリーモードには欠かせない。今までの無双だと1対1の戦いはシリーズコンセプトから外れるためなかなかやりづらかったが、『北斗の拳』の世界を描くうえで、1対1のボス戦がないと原作をイメージできるようなゲームにならないだろう」と説明する。会場では、サザンクロスの居城でシンと対決するシーンが上映された。ボスは、一定量のダメージを与えると攻撃方法が変わる、パワーアップ、体力回復など、さまざまなフィーチャーが発動。鯉沼氏によれば「ステージ、敵の技、アルゴリズムの3すくみでボス戦を盛り上げていくと」いう。

 ムービーでは、一定量のダメージを与えたところでシンの攻撃が変化。黄色いエフェクトが爆発するとともに、物凄い勢いで“手刀”で突っ込んでくる。バックステップなどで回避できるが、それだけでは反撃できない。ではどうするか? というと、ステージオブジェクトの“柱”を利用する。シンの突進を柱に誘導すれば、勢い余った手刀が柱に突き刺さり、しばらく抜けなくなる。あとは、この隙を狙って攻撃を叩き込めばいい、というわけだ。画面左上にある体力ゲージ下にある“必殺技ゲージ”がたまっていれば、必殺技が使用可能。会場では「北斗百裂拳」が披露されたが、製品版ではキャラクタの成長にともなって使える必殺技の種類が増えていく仕組みになるという。


鯉沼氏が説明したように、「伝説編」は無双シリーズのワラワラ系ではなく“アクションアドベンチャー”ふうだが、それでも結構な数の敵が登場するようだ。鯉沼氏は「こんなにジード軍がいるのかといったツッコミはあるかと思うが、そこは無双の爽快感を実現するためにそうなっている」とコメント

ボス戦は1対1のタイマン勝負。ステージや敵のAIから攻略ポイントを見つけていく。会場では、シン戦では手刀による突進を柱に誘導して攻略するパターンが紹介された
会場で公開された必殺技「北斗百裂拳」。鯉沼氏によれば、キャラクターの成長とともに使える必殺技が増えていくという。つい「原作に登場する全奥義が使えるといいなぁ」などと妄想してしまう

【ロゴ】


【オープニングムービー】

【スクリーンショット】





■ 豪華声優陣を起用! ~楽曲タイアップアーティストは谷村奈南さん~

 発表会では、主要キャラクターのキャストが発表された。ケンシロウ役は小西克幸さん。ラオウ役は立木文彦さん。リン役は伊藤かな恵さん。ユリア役は桑島法子さん。

 鯉沼氏は、起用した経緯について「原作は26年前。私は38歳で、当時12歳。毎週楽しみに読んでいた世代で、原作に思い入れがあるし、当然開発メンバーにも皆思い入れがある。じゃぁ、どの声優さんにお願いしようかと色々なアイデアを出しながら、当然先生にも『こういう方、どうですか?』という話をして。今回、特別に『サンプルの声をください』と。本当はやっちゃいけないことって聞いていたんですけれども。先生に実際に聞いていただいて。申し訳なかったんですけど……それで決定した」と説明してくれた。「プロデューサーのオーケーだけでは済まない問題」という鯉沼氏。文字どおり、誰もが納得の人選というわけだ。


ケンシロウ役:小西克幸さんラオウ役:立木文彦さんリン役:伊藤かな恵さんユリア役:桑島法子さん


谷村奈南さん

 ユリアとマミヤをそれぞれイメージした衣装で、それぞれテーマソング2曲を熱唱してくれた谷村奈南さん。今回の発表会が初披露ということで、舞台袖では相当緊張したという谷村さんだが「たとえば、マミヤをイメージした曲では、声に怒りの感情を足して歌った」といい、見事な歌唱を披露。

 鯉沼プロデューサーによれば「『北斗無双』を作るにあたり、マミヤのイメージは谷村さん。かなうのであればお願いしたいと思っていた。開発現場にも『テーマ曲を作るとしたら、誰がいい?』みたいな話も投げていて。あとは、ちょうどAvexさんから色々と話があったので『じゃぁ1度お話しましょうか』と。その3者が“いっせーの、せ!”って出したら(全員一致で)谷村さんがいたっていう奇跡的なことが起きて。じゃぁ、谷村さんでいけるなら是非お願いしたい、とご快諾いただいた。さらにもうひとつ奇跡が起きたのは、原先生とかもよくご存知だった。すんなり決まって本当に良かった」と経緯を説明。

 「原作でマミヤとユリアは瓜二つという設定があったため、ふたつの衣装を同じ人が着ても面白いんじゃないか」ということで、今回の発表会でそれぞれ衣装をまとい歌うことになったという谷村さん。自身も「北斗の拳」が好きで作詞にも熱心に関わっていったといい「世界観、スケールを大きくしたい。悲しみ、愛、ぬくもりをテーマにした」とコメント。ちなみに、1番好きなキャラクターはケンシロウで「強い男性、いいですよね! 最高です」という。


楽曲タイアップアーティストに選ばれた谷村さんは、ユリアとマミヤをそれぞれイメージした衣装で、テーマソング2曲を熱唱

【「ケンシロウ」新コスチュームフィギュア~】
「原作者が監修してくれたんだから、せっかくだから新コスチュームの等身大フィギュアを作ろう」と、鯉沼プロデューサーが海洋堂に制作を依頼したド迫力の等身大フィギュア。肩アーマーの裏側にある毛皮も本物だというから驚き。





■ 原作者の武論尊氏、漫画家の原哲夫氏が明かす「北斗の拳」秘話!

 会場には「北斗の拳」原作者の武論尊氏と漫画家の原哲夫氏さんが登場。当然、会場からも盛大な拍手が贈られる。実は筆者、「北斗の拳」直撃世代にも関わらず、両先生をナマで拝見するのは初めてで、思わず言葉にならない感動で全身が硬直してしまい、最初のうちは思わずシャッターを押すのを忘れてしまったほどだ。

 オープニング映像を見た武論尊氏は「凄いな、と。久しぶりに。この歳になると興奮することはないんだけど、ちょっと興奮しましたね。まだ俺、頑張れる!」とコメント。原哲夫氏は「今まで、長い間、色々映像とかアニメとか作ってもらったんですけれど、僕の描いたものを上回ってくるようなことって、あまりなかったんですね。今回初めて“足し算”して作ってもらった感じがあって。凄く嬉しかったですね。演出が多くて」と納得の表情に、鯉沼プロデューサーは恐縮することしきり。

 今なお生き続ける長寿作品になったことについて「長く続くっていうことは、僕らのなかで1番の財産。それを描けたというのは、凄く嬉しいし。一言でいえば、作者冥利に尽きる。こういう作品と1回でも出会えたことが、僕の作家人生のなかであったということは、それだけで胸を張って生きていける」という武論尊氏。かたや原哲夫氏は「そうですねぇ。生き続けてもらわないと困るんで。生活かかってるし(笑)」とジョークで答える

 司会者から数々の必殺技や奥義の由来についてきかれると、武論尊氏は「辞書から。辞書からそれらしい字を引っ張りだしてつなげただけです。そんなもんなんです」とサラリと一言。それを絵にしてきた原哲夫氏は「基本的に、原作の先生はストーリー中心。アクションは僕担当だったんです」と説明。北斗百裂拳は最初から原哲夫氏が持っていたアイデアだといい、それ以外は「とりあえず何か面白いものをやろうとすると、辞書から引っ張りだしてつなげる。それを渡すと、原先生がちゃんとそれを面白い拳法にしてくれる(武論尊氏)」、「キャッチボールなんですよね。お互いに書いたものを見ながら、次を進めていくっていう感じなんで(原哲夫氏)」とコメント。

 有名な「あべし!」、「ひでぶ!」などの断末魔についても、以前武論尊氏が「誤植だ!」と言っていたと突っ込む原哲夫氏。考案者である原哲夫氏は「最初から“ひでぶ!”って書きました。最初の頃は編集の方も『これ、字を間違えるんだな?』と直しちゃうんですよね。俺、一生懸命考えて書いてたのに……」とレアなエピソードを披露。「それからは、もう少し喜ばそうと思ってこっちも一生懸命考えるんですけど、意外とシビアに却下するんですよ!(武論尊氏)」、「先生、俺そんなことしましたっけ?(原哲夫氏)」とトークでも見事なコンビネーション。

 長年のコンビという以上に、会話の端々から特別なケミストリーを感じさせてくれる両先生。「キャッチボールといってましたけどね、僕は、たとえば“ラオウ”といったら、強烈な大きさだって書くだけ。でも、あの顔は原先生が決めて書いてるんですよ。僕は何も指定できませんから。結局、ケンシロウでも、ラオウでも、完成したら、ああいう形にしてくるわけ。そうすると、こっちが引っ張られるんですよ。うわー、こんな強烈なの書いちゃったら(こっちも)もっと強烈なものを書かなきゃいけない。だから、ラブレターの交換であり、腹のなかでどつきあったりとか、そういう関係ですよ(武論尊氏)」、「戦いですよね(原哲夫氏)」とそれぞれコメント。お互いを認め合い、そして高めあう。聞いているだけでなぜか頬が緩んできてしまう、素敵な関係といえる。

  ……が。そんな素敵な秘話が飛び出した直後「(先生同士は)年1回、パーティで会うだけ。間に堀江君という編集がいる。僕らは彼に、いいように“操り人形”みたいに操られている(武論尊氏)」、「その人が、黒幕なんですよね。僕らは使われているだけなんで。毎週毎週徹夜で書いて……(原哲夫氏)」、「バカ、ボケっていわれたから。いう奴がいるんですよ。あ、呼ばないほうがいいです。この場にはそぐわないから(笑:武論尊氏)」、「何回机を蹴っ飛ばされたかわからないですよ(原哲夫氏)」、「で、原先生を残して、俺とその担当者はいつも酒を飲みにいっていたんですよ(笑:武論尊氏)」、「僕はもう、本当に徹夜で毎日毎日書いてました。先生たちは、銀座、六本木に飲みに(原哲夫氏)」、「ありがとうございました(笑:武論尊氏)」と(恐らく今だから)笑えるマル秘エピソードが飛び出すから驚き。貴重な話がきけたのは嬉しいが、大人になった今、両先生方の当時の状況を想像すると、はたして笑っていいのやら悪いのやら。いずれにしても、やはり両先生は色々な意味で“特別”であり、なおかつ“パワフル”なのだなぁと思い知らされたミニトークショウだった。


武論尊氏原哲夫氏





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※画面は開発中のものです。

(2009年 10月 14日)

[Reported by 豊臣和孝]