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ウメハラゴールドが6タテを食う波乱! SFL2020、ネモオーロラが2年越しの悲願達成
ときどフレイムとの大接戦の末に昨年までの雪辱を果たす。新シーズン始動も予告!
2021年1月31日 10:46
- 1月30日開催
「ストリートファイターリーグ」(以下SFL)は、2018年から毎年開催されている『ストリートファイターV』(以下ストV)の国内リーグだ。個人戦のカプコンプロツアーとは違い、「SFL」はプロプレーヤーたちがチームを組んで戦う団体戦の形式を採用しており、今年度開催された「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2020」では名だたるプロ選手が率いる全6チームが参戦した。その中で、9月から10週にかけて行なわれていた本戦を勝ち抜き、賞金を懸けたグランドファイナルに進出したのが「ときどフレイム」、「ネモオーロラ」、「ウメハラゴールド」の3チームだ。本戦は概ねオフラインで開催されていたが、グランドファイナルは世情を鑑みてオンラインでの開催となった。
ゲームが上手いだけでは勝てないのが「SFL」の特徴だが、「SFL 2020」は前回大会にも増してチームとしての戦略性が重要になるルールになっている。相手チームの持ちキャラクターを禁止できるBANシステムは続投となり、さらに今まで3人だったチーム人数が4人に増えたことで戦略の幅が広がっている。どこで誰を起用し、どのキャラクターをBANするのか、という駆け引きが勝敗を大いに左右するというわけだ。そんな「SFL」ならではの駆け引きを制し、優勝賞金700万円と国内最強チームの称号を手にするのはどのチームとなったのだろうか。
ウメハラ選手率いるウメハラゴールドがまさかのストレート負け
「SFL」はルールがいささか複雑なので改めて説明するが、本大会は3on3のチーム戦で、勝ち点7ポイントを上げたチームが試合の勝者となる。試合はそれぞれ先鋒戦・中堅戦・大将戦の3つに分かれており、先鋒・中堅戦の勝者には勝ち点1ポイント、大将戦の勝者には2ポイントが与えられる(なおチームは4人構成なので余った1人はサポートに回る)。3戦全てに勝利できたとしても一度に獲得できる勝ち点は4ポイントが最大で、決着がつくまでこの3on3を繰り返す(各選手の出場回数に制限はない)。加えて、3on3開始前に各チームはBANキャラクターを1体選択することができ、また一度BANしたキャラクターは次の周回からはBANすることができなくなる。
大会が始まり、まずセミファイナルで相まみえたのは本戦2位通過の「ウメハラゴールド」と3位通過の「ネモオーロラ」だ。両チームともに本戦を安定した強さで通過した強豪チームだが、ファンの注目はやはり「ウメハラゴールド」だろう。
ウメハラ選手は国内eスポーツシーンの先駆者として有名なベテラン選手だが、ここ最近は特に大会成績が良く、日本からは2枠しかなかった「カプコンカップ 2020」(2021年2月20日開催予定)への出場権も獲得している。また「ウメハラゴールド」は本戦2位通過だったため、アドバンテージとして最初から勝ち点1ポイントを有しており、これをうまく活用すれば試合を有利に進められるはずだ。反対に「ネモオーロラ」にとっては、ウメハラ選手のガイルを誰が倒すのかが大きな課題になってくるだろう。
1巡目、先鋒戦はカワノ選手VSガチくん選手のカードとなった。「ウメハラゴールド」はガチくん選手のメインキャラクターであるラシードをBANしているため、BANを無駄にしないためにもカワノ選手は勝ってチームに貢献したいところだったが、相手はカプコンカップ優勝経験のあるガチくん選手、そう簡単には勝たせてくれない。サブキャラクターでありながら、ガチくん選手のカリンは圧倒的な地上戦の強さを見せ、カワノコーリンをストレートで下す。
続く中堅戦はまちゃぼー選手VSネモ選手。「ネモオーロラ」は事前にまちゃぼー選手のメインキャラクターであるネカリをBANしているため、まちゃぼー選手にとっては辛い一戦だ。試合が始まるとネモ選手がスピード感のある攻めを展開し、まちゃぼー豪鬼を追い詰める。まちゃぼー選手も奮闘したのだが、やはりサブキャラクターということもあってか中々攻めの機会を持てず、最後にはネモ選手のエイジスリフレクターを絡めたセットプレイが見事に決まって勝利した。
そして1巡目最終試合、勝った方がポイント有利で折り返すことになる非常に重要な一戦だが、ここでぶつかったのがウメハラ選手とSako選手。古くから格闘ゲームシーンをけん引してきたベテランプレーヤー同士の対決に、チャット欄は大いに盛り上がった。キャラクターはウメハラ選手がガイル、Sako選手がメナトという選択で、「ネモオーロラ」はガイルをBANしていないことからも、Sako選手でウメハラガイルを食い止める作戦なのだろう。
試合が始まると、ウメハラ選手は持ち前の「攻めガイル」作戦で果敢に跳びやダッシュを使って前に出る。いくらSako選手とはいえども近接戦に弱いメナトでは思うように反撃できず、1ゲーム目は勢いのままウメハラ選手に軍配が上がる。しかし続く2ゲーム目、Sako選手が徐々にウメハラ選手の攻めに対応し、対空・置き技が通るようになってくる。そして何といっても圧巻だったのがSako選手の「ジェフティの知恵」を絡めた攻めだ。「ジェフティの知恵」は高度な操作技術を要するメナトのVトリガーだが、Sako選手はこれをコンボのみならず、対空や起き攻めにまで巧みに使っていた。このVトリガーの活躍も助け、この1戦はSako選手が2-1で勝利した。
大将戦を落としてしまったため、「ウメハラゴールド」は合計で4点ビハインドと、後がない状態で2巡目を迎えることとなった。しかし「ネモオーロラ」は追撃の手を緩めず、まず先鋒戦にSako選手を投入し、カワノ選手相手に確実に勝ち点1ポイントを奪取。続く中堅戦は先ほどと同じまちゃぼー選手VSネモ選手のカードになり、こちらは激しい攻めの応酬になるもネモ選手が勝利した。この時点で「ネモオーロラ」は5連勝、ストレート勝利でのグランドファイナル進出に王手をかけた。
勝負の大将戦を託されたのはウメハラ選手とガチくん選手。キャラクターはお互いにメインキャラクターのガイルとラシードを選択している。ガイルは飛び道具が強力なキャラクターだが、ラシードはそれを躱す機動力に長けたキャラクターだ。実はこのカードは2020年大晦日の「TOPANGAコンセプトマッチ」からの再戦で、その際はウメハラ選手が10-6で勝利している。ウメハラ選手はチームのために負けれないが、ガチくん選手もリベンジのためにどうしても勝ちたい1戦だ。試合は一進一退の展開となり、ウメハラ選手がソニックブームでガチくん選手を追い詰める場面もあれば、ガチくん選手が華麗な弾抜けでそれに対応する場面も見られた。
実力伯仲の両者の勝負を決したのは、やはり画面端での攻防の差だろうか。ガチくん選手は相手を画面端に追い詰めた際の攻めが非常に上手く、ウメハラガイルを逃がすことなく確実にダメージを取っていた。対するウメハラ選手は、ラシードの機動力の高さもあってか、ガチくん選手を画面端から逃がしてしまう場面が多くみられた。しかしハイレベルな対戦では細かい場面でリターンを取れているか否かが勝敗に直結する。接戦の末、大将戦は2-1でガチくん選手が勝利し、チームをストレート勝利でグランドファイナルへと導いた。
勝者インタビューではガチくん選手は「先日負けてしまったウメハラ戦からの反省を活かし、勝つことができました。短期戦に向けての練習を多くして来ていたので、それが勝因となったと思います」と語った。
大接戦となった決勝戦、どちらのチームが優勝するのか
「ネモオーロラ」を決勝で待ち受けていたのは本戦1位通過の「ときどフレイム」。ときど選手といえば「ストV」時代を代表する格闘ゲームプレーヤーといって差し支えないが、実のところ「SFL」に限っていえば今まであまり良い結果を残せていない。これまでの「ときどフレイム」はチームの連携力が課題となっていて、今まで1度も決勝に進むことができていなかったのだ。しかし今シーズンの「ときどフレイム」は一味違う。第1回「SFL」で自チームを優勝へ導いた名将・板橋ザンギエフ選手が加わり、チームの雰囲気は良好だ。元々実力はあるメンバーに連携力が備わったおかげで、本戦は安定した強さで1位通過をしており、このまま優勝を手にしたいところだ。
しかし対する「ネモオーロラ」もグランドファイナルに懸ける想いは人一倍強い。というのも、「ネモオーロラ」は過去2回の「SFL」でどちらも準優勝に終わっているチームなのだ。それだけネモ選手がリーダーとして優秀であるということだが、やはり優勝を手前にして敗れ去る悔しさは計り知れない。昨年までの雪辱を果たすためにも、今年こそは優勝したいところだ。
1巡目の先鋒戦は、キチパ選手VS板橋ザンギエフ選手のカードとなった。キチパ選手は本戦での成績が振るわなかったこともあり先のセミファイナルでは出番をもらえなかったが、ここへ来て大事な開幕戦をネモリーダーに任されたことになる。キャラクターは両者アビゲイルを選択しており、試合は差し合いを中心としたじっくりとした展開になった。互いがしゃがみ中パンチで牽制し迂闊に攻め入れない状況のなか、キチパ選手が要所でEXナイトロチャージを通す。そして最後には前ダッシュから勝負のハンガビー・ローが見事に決まり、2-0でキチパ選手が勝利した。
この勝利に勢いづいた「ネモオーロラ」は、続く中堅戦もガチくん選手が勝利し、勝ち点2ポイントを持って1巡目の大将戦を迎えた。大将戦のカードはときど選手対Sako選手、ときど選手としては何としても勝って勝ち点をイーブンにしたい1戦だ。キャラクターは豪鬼とメナトと、お互いメインキャラクターを選択している。
試合が始まると、ときど選手は跳びや百鬼襲で果敢に攻めるが、Sakoメナトはそのどれも的確に対処しており、ときど豪鬼は中々攻められずにいたような印象だった。1ゲーム目はSako選手に軍配が上がり、このまま「ネモオーロラ」の連勝が続くかと思われた。しかしここで流れを変えられるのがときど選手の強み。2ゲーム目の体力ビハインド状況で虎視眈々とゲージをため、起き攻めに一瞬千撃を決めて見せた。ミスをしていれば負けていたところでこの選択肢をとれるのはさすがときど選手。大将戦はときど選手がそのまま流れをつかんで勝利。試合をイーブンに戻した。
その後も両チームの試合は一進一退で、続く2巡目の先鋒戦は「ネモオーロラ」が、中堅戦は「ときどフレイム」が勝利した。両チーム共に3ポイントを有した状態で迎えた2巡目の大将戦、勝てば2点リードとなる試合だが、ここで相まみえたのがガチくん選手とりゅうせい選手。勢いのある若手りゅうせい選手が、今大会調子のいいガチくん選手にどこまで食い下がれるかが注目の一戦となったが、盤石な立ち回りでこれをガチくん選手が勝利し、「ネモオーロラ」が2点リードの状態で3巡目を迎えることとなった。
優勝の懸かった3巡目、「ときどフレイム」はもう後がない状況だが、ここで彼らが踏ん張りを見せる。先鋒戦の板橋ザンギエフ選手VSガチくん選手の1戦では、板橋ザンギエフ選手が持ち前の勝負強さを発揮してガチくん選手の連勝を止め、さらに続く中堅戦ではりゅうせい選手がネモ選手相手にユリアンミラーマッチを制してみせた。この時点で両チームの点数は5-5の同点、お互いが優勝にリーチをかけた状態で勝負は大将戦に持ち越されることになった。
全てを決する大将戦のカードは、1巡目と同じSako選手VSときど選手となった。肝心なキャラクターだが「ネモオーロラ」はここでときど選手のメインキャラクターである豪鬼をBANしているため、ときど選手はやむを得ずユリアンを選択、対するSako選手はメインキャラクターのメナトを選択している。
キャラクターだけで見れば試合はSako選手の有利に進むかと思いきや、試合が始まるとときどユリアンが怒涛の攻めを見せる。ときど選手はメタリックオーラを積極的に使って、アーマーを付与したタックルやニードロップでSakoメナトに執拗に接近戦を迫っていく。また、Sako選手がVトリガーを発動してもときど選手はそれを全く臆せずに突っ込んでいき、Sako選手はVトリガーを使った攻めを上手く展開できない。Sako選手が攻めあぐねる中、第1ゲームはときど選手に軍配が上がった。
続く2ゲーム目もときど選手の攻めの姿勢は変わらず、開幕からEXヘッドバッドを打ったり至近距離でメタリックオーラを発動したりという暴れっぷり。しかし今度はSako選手も負けておらず、ときど選手の連携に穴を見つけては、針孔に糸を通すように少しづつリターンを取っていく。その中でも特に目を見張ったのは2ゲーム目第3ラウンドの最後の場面。両者ともにVトリガーを発動した状況から、Sako選手がガードしながらビットでエイジスリフレクターを相殺するという高等テクニックを見せ、反撃のコンボでときど選手を仕留めた。
両者一歩も譲らぬまま、続く第3ゲームも混戦になる。第1ラウンドはときど選手が攻め勝ち、第2ラウンドはSako選手がVトリガーを使ってなんとか勝利、試合は第3ラウンドまでもつれ込んだ。勝負を決したのは残り時間40秒の時点、両者ともにゲージを使い果たした丸腰の状態で、Sako選手が画面中央で勝負の中段攻撃「罪人を喰らう顎」を決め、そこからのコンボでときどユリアンの体力を見事に削り切った。
大接戦の末「SFL 2020」優勝チームは「ネモオーロラ」となり、優勝賞金700万円が贈られた。Sako選手は最終戦の勝因を聞かれると「ときど選手の攻めに対し、とにかく冷静に立ち回ることを心がけました。このチームで勝てたことを光栄に思います」と語った。またチームの強みについてはガチくん選手が「お互いに素直なアドバイスを送りあえるようになってからチームとしての力がすごい伸びたと思います。そういう雰囲気づくりをしてくれたネモさんには感謝しています」と語った。
大会の模様は、2月5日までは有料(980円、税別)となっており、2月6日より、YouTube等で無料公開が予定されている。また、大会の最後には「SFL 2021」が開催予定であることが告知された。普段とは違うプロプレーヤーたちの顔が見れる「SFL」、来シーズンも熱い戦いが繰り広げられること間違いなしだ。
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