AQインタラクティブと東映、「呪怨」プロジェクト2009発表
Wii「恐怖体験 呪怨」を今夏発売

4月15日 開催

会場:六本木 グランドハイアット東京

 

 株式会社AQインタラクティブと東映株式会社は、ホラー作品「呪怨」プロジェクト2009記者発表を、六本木 グランドハイアット東京にて行なった。AQインタラクティブは、Wii「恐怖体験 呪怨」を今夏に発売。東映は「呪怨 白い老女」、「呪怨 黒い少女」の2作品を、新宿バルト9と梅田ブルク7にて6月29日より公開する。

 「呪怨」は、1999年に制作されたホラー作品。ハリウッドでリメイク版が制作されるなど、国内だけでなく海外でも高く評価されており、今回は10周年を記念してシリーズ最新作2タイトルとゲームが同時期にリリースされることとなった。ここでは、Wii「恐怖体験 呪怨」に関する発表から先に触れていく。

 共同記者会見には、Wii「恐怖体験 呪怨」エグゼクティブプロデューサーのビル・リッチ氏と吉原正訓氏が出席。リッチ氏は「Wiiのハード特性として、シンプルな直感的な操作があう。どんなのがいいだろうと考えたとき、Wiiのリモコンを懐中電灯に見立てて、リビングを“オバケ屋敷”にして、ユーザーのみなさんに恐怖を体感してもらえたら、というアイデアが生まれた。そのために色々なホラー映画を見たんですが、考えているゲームには『呪怨』が1番向いているんじゃないか。吉原に『呪怨でゲームを作ったらどうだ?』という話をしたら、吉原と(『呪怨』プロデューサーの)一瀬さんは10年来の知り合いで、清水さんとも飲み友達。これは『呪怨』でいくしかない!」と決めたという。

 続いて吉原氏が、スクリーンを使いながら本作の概要を説明。前述のように、Wiiリモコンを懐中電灯に見立ててプレイ。廃墟、団地跡など、原作をほうふつとさせるおどろおどろしい屋内を、懐中電灯片手にさまよい歩く。世界観については「とある一家の惨劇をオムニバス形式で体験。プレーヤーは各ステージで家族のひとりとなり、さまざまな場所を歩いて恐怖を体験。そこには家族の呪いがあり、最終的にはとある場所に導かれていく」と説明する。ステージ終了後は、プレイ中のWiiリモコンの動きからプレーヤーが感じた恐怖の度合いが判定される。また、シングルプレイだけでなく、他プレーヤーが怖いシカケを操作する肝試し的な遊び方もできる。恐怖演出の監修には、オリジナルビデオで監督を務めた清水崇が監修を手がける。

パッケージ画像(仮)

 清水氏は、ゲーム制作への参加は初になるといい「他のホラーゲームの宣伝コメントをくださいというのはあるんですけど、僕自身がゲーム離れをしているところがあって。もう、ボタンが3つ、4つ以上あるとついていけませんっていう話をしたところ、一瀬さんから『まぁまぁ、ちょっと。10周年だし、どんなのができるか見てよ』といわれてお邪魔したところ、Wiiリモコンをふるだけで動けますし、いたずら機能もついている。本当に、夜道を歩いて廃墟に忍び込むような怖さを楽しめる。実際の廃墟に入ると違法ですけど、これは法律の範囲内で楽しく怖がれるということで『それは面白い!』と思いまして。単純に怖がって楽しめる。それなら僕もからみたい」とコメント。

 今も昔も、ゲームの監修といっても名ばかりというケースは少なくない。だが、清水氏に関してはそういったことはなく、たとえば「伽椰子の動きは、ちょっと違うんじゃないか」、「(あるシーンを指して)これじゃ怖がらないでしょう!?」、「ここは音が違う!」など、「フレーム単位で(吉原氏)」というほど本格的な監修が行なわれており、映画とは違った“世界観に入れる”ゲームになっているという。なお、清水氏から開発側に「人間でできないことを伽椰子にやらせてくれ」と要望が伝えられているという。吉原氏は「(その言葉は)我々のなかで突破口というか“ゲームだから思い切りやっていいんだ”と吹っ切れた部分がある。現在、完成に向けて作りこんでいます」という。個人的には、スクリーンショットの画面左下に表示されている“懐中電灯の電池残量”を示すゲージが気になって仕方がない。もしかすると、切れないよう電池を補充していくことが、ゲームを進めるうえでひとつのポイントになっていくのかもしれない。今夏発売予定で、価格は未定。

 AQインタラクティブは、発売に先駆けて本作の体験イベントを都内某所にて5月9日に開催する。完全クローズド形式のイベントで、募集は「恐怖体験 呪怨」公式サイトに設置された「恐怖体験 呪怨 公式ブログ」にて行なわれる。募集枠は40組80名、しめきりは5月1日。いち早く恐怖を体感した人は、ぜひ応募してみてはいかがだろうか。


ビル・リッチ氏吉原正訓氏一瀬隆重氏清水崇氏

【スクリーンショット】

(c)東映ビデオ/「呪怨」製作委員会/「呪怨2」製作委員会
(c)2009 AQ INTERACTIVE INC.


■ 「呪怨 白い老女」、「呪怨 黒い少女」

 プロデューサーの一瀬氏は、冒頭で「10年前に清水監督と最初の『呪怨』を作ったときは、まさかこんな立派なホテルで記者会見をやるような作品になるとは思ってもみませんでした。『呪怨』を作り続けて『もういい加減やめろ』という声もありますが、まだまだ怖い『呪怨』を作り続けていきます」とジョークをまじえつつ挨拶。清水氏も、「僕もまさか最初に作った『呪怨』が10年も経っているとは思わず。代表作が『呪怨』のままできてますけど……にも関わらず、こんなに集っていただいてありがとうございます」と、感慨深げな表情を見せる。

 10年前にオリジナルビデオ『呪怨』が制作されたキッカケについて、一瀬氏は「『リング』の脚本を書いた高橋洋さんから清水監督を紹介していただいた。全然別の仕事だったんですけど『実は、こういう短編の映画を作っているんです』と見せてもらったのがキッカケ。ちょうど東映ビデオでホラー作品を作ろうという話があり、清水監督にやってみませんかと声をかけさせてもらい、彼が書いてきたプロットが『呪怨』の原型だった」と説明する。

 今でこそホラー作品のイメージが強い清水氏だが、元々は怖がりで、中学生くらいまではホラー映画も見られなかったといい「たぶん、怖がりだったから、そういうアイデアや発想が生まれたんだと思う」と意外なエピソードを披露。プロデューサーから「君の短編が怖かったんで、一緒にやってみたい。(映画は)怖ければなんでもいいから」という話があり、幼い頃からの“怖がりだった部分”を全部引き出し、煮込んだのが『呪怨』だという。

 怖がりだからこそ生み出せた『呪怨』だが、一瀬氏によれば「ビデオ版はぜんぜん売れなかった」という。だが、売れなかったおかげでレンタル店の回転率が非常に良く、各店でビデオが借りられないという話がテレビなどで話題になり、映画版の成立につながっていったというから驚き。生い立ちからブレイクの足がかりまで、すべてが『呪怨』という作品らしいというべきか。パラドックス、風車の理論、さまざまな表現はあるだろうが、いずれにせよ一筋縄ではない。

 本作が支持される要因について一瀬氏は「一言で、怖い。これは万国共通で、ひたすら怖い映画であったということ。『呪怨』は“呪い”、“怨み”と書きますが、登場人物の悲しい気持ちみたいなものも底辺に流れていて、そういうものが観る人を掴むみたいですね」と説明。清水氏は「よく一瀬さんもおっしゃってるんですけど、何か映画を作るときに『いやぁ、良かったよ』といった、当たり障りのない言い方や感想が、あまり好きじゃなくて。そういう意味では、最初に一瀬さんが『とにかく怖いものであればいいから』といってくれたのが、凄く良かったなと思っているんです。とにかく怖いと誰にでも思わせるものを作ろう、というところに向かえたので、それで生まれ、広がってくれたんだと思う」という。

 ハリウッドでリメイクされた点を踏まえ、米国と国内の制作の違いについて質問されると、一瀬氏は「日本国内でやっている限りでは、だんだん規模が大きくなって、観てないけどタイトルは知っている方が増えてきたときは順調にいってたんですけど。やはりアメリカのシステムやプロデューサーは大変。ただ『とにかく怖い!』という感情を大事にしていれば、他国の方にも通じるだろうという信念があったので、それを貫いてきたところが大きい」とコメント。

 清水氏は「アメリカ映画って、とにかく『豪華にしろ』といわれるんです。最初のビデオ版『呪怨』が今でも1番怖いといわれるのは、低予算だからだと思うんですよね。身も蓋もない感じにできていて、それは低予算ならではの魅力。ホラーって、やっぱりそういうところがある。お金をかければかけるほど豪華になって怖くなくなる悲しいジャンルなんですけど。1番苦労したのは『豪華にしろ』といわれるのを、どう抑えるか」と説明。このあたり、長年のホラー映画ファンは、おおいに頷ける部分があるのではないだろうか。

 これは余談になるが、英語版「呪怨(The Grudge)」のライセンスは、「死霊のはらわた」や劇場版「スパイダーマン」シリーズなどで知られるサム・ライミ監督が設立した「ゴースト・ハウス・ピクチャーズ(GHP)」が所有しており、質疑応答の際に一部記者からシリーズ最新作やゲームについてGHPと話し合いなどが行なわれたのか? という質問が投げかけられた。清水氏によれば、映画に関しては「日本語で映画を作る権利は渡していない。我々がどんどん作れる。ゲームに関しては彼らも賛成してくれて成立した」と説明が行なわれた。既に完成しているという「The Grudge 3」についても「アメリカはアメリカで、どんどん作っていくみたいですね。続けられるだけ続けていくという意向のようです(清水氏)」とコメント。直接的な関わりについては、GHP側から依頼があれば可能性はあるとしている。

 新作のコンセプトは、ビデオ版『呪怨』の怖さという一瀬氏。AQインタラクティブから「ゲームにしたい」とオファーがあったとき「そうだ、10周年なんだ」と気づき、原点に戻ってもう1度ビデオ版『呪怨』の怖さを作れないか、と思ったという。「ホラーって、やっぱり若い監督の登竜門であるべき」という一瀬氏は「今回は清水監督に監修に回っていただいて、若い監督をデビューさせてもらえれば、というのが大きなキッカケ」と説明。「またやるのか!」と思ったという清水氏だが、他の監督がやると聞いて「新しいものができる、というところから入りたい」と監修から少しずつ入っていったという。

 監督については、志願者から一瀬氏が注目していた人まで「物凄い人数(一瀬氏)」をリストアップし、最終的に5人の監督候補を選出。それぞれ脚本作りをはじめ、最終的に三宅隆太氏と安里麻里氏のふたりに決めたという。清水氏は、三宅氏、安里氏それぞれと親交があり、作品も見ていたので安心して任せられたという。

 「呪怨 白い老女」監督の三宅氏は「これまで観客として『呪怨』を観てくる立場でした。一瀬さん、清水さんらが10年という時間をかけて育んでこられた強固な世界観のあるシリーズに参加することになり、リメイクでも続編でもない『ネオ呪怨』を、どうやったら作ることができるかが最大の課題でした。結果的に、満足できるものに仕上がっていると思います」とコメント。

 「呪怨 黒い少女」監督の安里氏は「小さい頃からホラー映画が大好きな子供でした。そのなかでもファンだった『呪怨』シリーズを自分が撮れるということで、物凄く興奮して現場に挑みました。仕上がりも怖いものになっていると思いますので、ぜひ多くの人にご覧いただければ思います」とコメント。冒頭でも触れたが、両作品とも6月29日より、新宿バルト9と梅田ブルク7にて公開される。ホラー映画が好きな人はもちろん、興味がある方はぜひ劇場まで足を運んでいただきたい。


● 「呪怨 白い老女」

  • 監督・脚本:三宅隆太
  • 原案・監修:清水崇  
  • プロデューサー:一瀬隆重
  • 出演:南明奈、鈴木裕樹、みひろ、中村愛美、福永マリカ、雨宮チエ、星野晶子、鈴木卓爾、ムロツヨシ、宮川一朗太
  • 製作:東映ビデオ CELL
  • 製作プロダクション:オズ


【三宅隆太氏】【南明奈さん】【鈴木裕樹さん】



● 「呪怨 黒い少女」

  • 監督・脚本:安里麻里
  • 原案・監修:清水崇  
  • プロデューサー:一瀬隆重
  • 出演:加護亜依、瀬戸康史、中村ゆり、高樹マリア、松本花奈、中園友乃、次原かな、重山邦輝、松嶋亮太、勝村政信
  • 製作:東映ビデオ CELL
  • 製作プロダクション:オズ


【安里麻里氏】【中村ゆりさん】【瀬戸康史さん】


(C)2009東映ビデオ・CELL


(2009年 4月 15日)

[Reported by 豊臣和孝 ]