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「MHW:アイスボーン」こだわりの音を肌と耳で感じられる「素晴らしき”ゲーム×シアター”の世界」イベントレポート

1月17日 実施

 ヤマハミュージックジャパンは1月17日、カプコンのプレイステーション 4/PC用ハンティングアクション「モンスターハンターワールド:アイスボーン」(以下「アイスボーン」)のサウンドを、ヤマハの11.2チャンネル最高級ホームシアターによる臨場感豊かなサラウンド環境で楽しめる体験イベント「素晴らしき”ゲーム×シアター”の世界」を会員制サービス「ヤマハミュージックメンバーズ」向けに開催した。

 本イベントはヤマハ銀座スタジオにて行なわれ、「アイスボーン」のサウンドディレクターを務めるカプコンの黒岩若菜氏と、「モンスターハンター:ワールド」のサウンドディレクター、細井秀基氏もゲストとして登壇。ゲストのお2人からは、地面の状態変化による足音ひとつから、「バゼルギウス」や「イヴェルカーナ」などのモンスターたちにまつわるこだわりの音作りについてなど様々な開発秘話が飛び出し、会場に集ったファンらを驚愕させた。

 なお、この日会場に集ったファンの多くは「アイスボーン」プレーヤーだが、自宅にホームシアターを導入しているというのは数名のみで、最高級のホームシアターでプレイする「アイスボーン」にも興味津々といった様子で行なわれた。

左から「アイスボーン」のサウンドディレクターを務めるカプコンの黒岩若菜氏と、「モンスターハンター:ワールド」のサウンドディレクター細井秀基氏、MCを務めたオーディオ&ビジュアルライターの逆木 一さん
【体験イベントの使用機材】
AVプリアンプ:CX-A5200/価格:300,000円(税別)、11chパワーアンプ:MX-A5200/価格:320,000円(税別)
スピーカーシステム:SOAVO Series
4K HDR対応プロジェクター:DLA-V7/価格:1,000,000円(税別、機材協力:JVC KENWOOD)
4K HDR対応150インチスクリーン(機材協力:キクチ科学研究所)

「アイスボーン」をホームシアターで体験!

 会場では、まず龍結晶の地にてバフバロを狩る実機プレイ映像が流された。龍結晶の地といえば、神秘的なクリスタルが連なるエリアからマグマが流れるエリアまで、様々な要素をあわせ持っているが、11.2chの環境でプレイすることで普段はなかなか気づけない細かな環境音を拾うことができたり、マグマの音ひとつでもカメラを回転させることで今自分の視点から見てどこのマグマが爆発したのかを音で体感することができた。

 司会の逆木 一さんから、黒岩氏と細井氏にどのようなこだわりで「アイスボーン」の音作りをしたのかという問いが投げかけられると、黒岩氏と細井氏は「ゲームならではのインタラクティブな要素」についてを強調。インタラクティブな要素というのは、自分が何かをすることで反応が返ってくることで、「アイスボーン」の場合ならば例えばモンスターを狩っている時は戦闘用のBGMが流れるが、その戦闘用BGMも背中に乗った時には変化する。

 また、先程のバフバロの狩りの映像を振り返り、プレーヤーの右視点からバフバロが突っ込んできた場合は音も右側から聞こえるようにする、カメラを回せば音のする場所もそれにあわせて回っていく、落ちてくる岩の音の強弱でプレーヤーがその音の脅威度合いを測れるようにするといった、プレーヤーの各種操作及び距離感が、ゲームならではのインタラクティブ性の象徴だという。

 次に「アイスボーン」の音を作る上で特にこだわった点について尋ねられると、黒岩氏と細井氏は「たくさんありますが」と悩んだ上で、特にこだわった点として「モンスターの個性を大事にするサウンド作り」と、「空間表現」、「環境音」の3点を挙げた。

 例えば渡りの凍て地に登場する「ブラントドス」は頭で雪を掻き分けて凍土の雪の中を泳ぎ回るため、この個性を表現するため除雪機のイメージで音楽や効果音を作成したという。会場では実際にブラントドスの映像が流れ、黒岩氏は「除雪機のエンジン音のようなものを感じてほしい」と解説した。また、水を纏う古龍「ネロミェール」は"魔獣"よりも"野獣"を意識し、水の攻撃をするというところに焦点を当てた結果、実際に水の中にポンプを入れ、その音を収録して加工することでサウンドを作成したのだそうだ。

 空間表現については、森や雪という様々な環境がある「アイスボーン」の世界の中で、その地形にどういう事象が起こった時にどういう反響があるのかをシミュレーションする。実際に会場で紹介された映像では、森から洞窟へとプレーヤーが進んでいく映像と共に、フレームワークで実際に音がどのように響くのかを検証している画面も映し出された。壁の材質によって音の反射率を考え、プレーヤーの位置によってどこから音が出てどこに当たっているかを検証し、数種類の音をミックスしたのが実際にゲームに搭載されている音だという。

 環境音については、「現実世界の日常感を出したくなかった」と黒岩氏。実際、森にいる時の絵をバックに、一般的に森の中で使われるような効果音をあてた時と、「アイスボーン」で実際に使用されている森の効果音を聞き比べたが、確かに「アイスボーン」の森の効果音のほうがこのエリアのどこかに得体の知れない何か(モンスター)が居る、という息遣いを感じる音となっていた。この「非日常感」こそが「アイスボーン」の現実だと語る黒岩氏。環境音へのこだわりを実際に会場で感じてもらうため、洞窟の中にいるプレーヤーの映像を出した。

 洞窟の中にいる時は、開口部から微かに森の環境音が漏れ聞こえてくる。プレーヤーが徐々に洞窟の出口に向かっていくにつれて、前方から森の環境音が入り込んでくるという様を、実演で紹介した。そしてこういった細やかな音へのこだわりを充分に発揮できるのは、ホームシアターこそではないかと黒岩氏も細井氏も口を揃えた。

 ゲームをホームシアターで遊ぶことの意義について問われると、操作性の向上ではないかという黒岩氏。狩りに必要な情報を音で入手できるようになるため、圧倒的に直感的な操作がしやすくなる。会場では、画面に映っていない「楔虫」を音だけで探し出すミニゲーム的な映像が流されたが、実際に「アイスボーン」をプレイしている人ならば楔虫の音が出す「チリチリ……」という微かな音をスピーカーから聞き取れたことと思う。

 今回は11.2chという最高のサラウンド環境だったこともあり、画面に楔虫が見えなくとも「今、左から聞こえた!」と直感的に居場所までも察することができた。これが実際の狩りならば、即座に左に向かってスリンガーを撃てば、楔虫で移動が可能になるわけだ。黒岩氏は、「カエルなどもどこにいるかサラウンドシステムがあればすぐにわかり、モンスターの位置も把握しやすくなる」と語った。

「直感的な操作」を音で感じるため、画面に映っていない楔虫を、音だけで探し出すミニゲーム的な映像が流された

 また、サラウンドシステムを導入することによって低音の表現も大きく変わる。実際に古龍「イヴェルカーナ」の咆哮が会場で流されたが、サブウーファーがある時と無い時の咆哮では、同じ音でも緊迫感がまるで違うことに驚かされた。なお、低音があることによって、モンスターの大きさも表現できているという。ホームシアターがあることによって、より充実した狩り体験が可能になるのだ。

 ここまでの内容を踏まえて、「インタラクティブ性」という点に改めて注目してほしい、と黒岩氏が龍結晶の地で「紅蓮滾るバゼルギウス」の討伐に実機プレイで挑んだ。龍結晶の地は様々なエネルギーが集まっている地のため、何かがうねっているような不気味な音が鳴っているのが特徴。マグマはもちろんのこと、風や雷といった様々な自然現象の不気味なエネルギーを低音で表現しているとのこと。また、龍結晶の地には滝があるため、滝の側でカメラを回転してみると、滝の流れる水音がサラウンドシステムによってぐるぐると回ったり、滝とプレーヤーの距離とで変わる水音の変化なども楽しめた。

 バゼルギウスのコンセプトは爆撃機で、咆哮はサイレンのようなニュアンスで作成したという。バゼルギウスは爆鱗での爆発攻撃をメインに繰り出すモンスターだが、普通の爆発音をいれても面白くないと感じた細井氏は、クルミを割った音を至近距離でマイクで収録して使用し、タイトな爆発音にすることにした。ホームシアターでプレイすると、爆鱗の落ちた場所なども察知しやすく、こだわりの爆発音も迫力満点に響いた。実際にプレイしていた黒岩氏も、ホームシアターの環境ならばバゼルギウスの楽しさが倍増すると語った。

 次は渡りの凍て地にて、古龍イヴェルカーナにチャレンジ。イヴェルカーナは氷の攻撃の音に独特の美しさや繊細感があり、ホームシアターがあればそれらの音を存分に楽しむことができるモンスター。黒岩氏はイヴェルカーナの音は難しかったと、作成当時を振り返った。

イヴェルカーナを際立たせるための響きを何か持たせたかったが、石も金属も違うと試行錯誤した結果、鎖と鎖を擦り合わせた時に鳴る音を主軸にし、氷の音については氷をたくさん積んでそこに石を投げて作り上げたそうだ

 なお、渡りの凍て地に使っている音は実際に2月の岩手で雪の音を録音してきたという秘話も明かされた。足音や木から落ちてくる雪の音など様々な音を収録してきたが、現実の音をそのまま使うと「アイスボーン」の世界観に合わないため、それらを更に加工して「アイスボーン」の世界観に落とし込んでいるという。ちなみに雪が何センチ積もっているかによって足音も変わるようにしていたり、渡りの凍て地の川には氷が混ざっているのではないかということで時折氷の流れる効果音も入れている。こういった細かい音を重ねて再生することによって没入感を増している反面、全部を主張しすぎるとうるさくなるので、引き算も重要であると細井氏。

 この渡りの凍て地の場合、雪に音が吸い込まれることを考慮して全体的に効果音が反響しにくくなっているが、吹雪などの風の音は森よりも近くに感じるようにしているそうだ。また、エリア内にある湖の中にある渦の効果音はサラウンドシステムによって、より効果的に聞こえる様子を実演。渦を覗き込むと渦の低音がアップして離れると引く、氷が軋む音も小さくなったりするというサウンドチームのこだわりも、最高級の音響環境で楽しむことができた。

「アイスボーン」には90種類ほどの地面のバリエーションがあり、それによって足音ひとつも全て変わっているというから驚きだ

ホームシアターの魅力とは

 では実際にホームシアターで得られるゲーム体験とは、どのようなものなのか。

・テレビのスピーカーでは再生は難しい音まで再現
 現在テレビは薄型の傾向にあるが、良いスピーカーほど厚みが必要であり、テレビが薄型化するほど音が犠牲になっているのが現状。ホームシアターならば、より一層いい音で様々なコンテンツが楽しめる。

・立体的な音響効果で映画あゲームの世界の没入
 テレビのスピーカーで再生すると前側の音は再生できるが、立体的な音響は難しい。立体的な音響を表現することで、まるでその場にいるようなリアルな空気感を再現することができる。

・様々なコンテンツにこめられた製作者の想いを体感
 製作者はストーリーや映像だけでなく、サウンドにも想いを込めている。コンテンツの魅力を最大限に感じることができる。

 ……などの点が挙げられる。

実際に導入の際にどのような機材が必要なのか、それぞれの機材の役割を知っておこう

 ちなみにPS4で実際にホームシアターを導入するには、本体の設定やゲーム側での設定が必要となるので、注意してほしい。

 PS4の設定は、メインメニューで、「設定」→「サウンドとスクリーン」を選択し、「音声出力設定」から「主に使用する出力端子」を選択、接続する機器にあわせて「HDMI出力」または「光デジタル出力」を選択すれば良い。

 また、「アイスボーン」側での設定は「オプション」から「Audio」を選択。サウンドのダイナミックレンジ設定のところをワイドレンジ、ミッドレンジ、ナローレンジから選択する(※この日のイベントではワイドレンジを使用)。なお、ワイドレンジの場合は大きな音と小さな音の音量差が大きく、臨場感のあるサウンドが楽しめる。ミッドレンジは大きな音と小さな音の音量差を適度に保ち、ナローレンジでは大きな音と小さな音の音量差が小さく一定の音の大きさでプレイできる。あまり大きな音を出せない夜などは、ナローレンジにしたほうが聞こえやすい。

ワイドレンジの場合は大きな音と小さな音の音量差が大きく、臨場感のあるサウンドが楽しめる。ミッドレンジは大きな音と小さな音の音量差を適度に保ち、ナローレンジでは大きな音と小さな音の音量差が小さく一定の音の大きさでプレイできる。あまり大きな音を出せない夜などは、ナローレンジにしたほうが聞こえやすい

サラウンド基礎講座

 ホームシアターの魅力に続き、サラウンドについての基礎知識も紹介された。恐らく大半のゲームプレーヤーが「5.1ch」などの単語は耳にしたことがあるのではないかと思うが、実際に5.1chが何を表しているのかを知らないという人は多いのではないだろうか。

2ch:普段耳にしているステレオ方式
5.1ch:いわゆる「サラウンド」の基本的な方式
7.1ch:5.1chに更にスピーカーを2本足した構成
逆木さんのホームシアター実践例その1
逆木さんのホームシアター実践例その2。こちらは4.5畳ほどの部屋だそうだ
カプコンのミックススタジオ。スピーカーは平面に7本、天井に4本で、壁にスピーカーが埋め込まれている

 普段は最上級とも呼べる音の環境下で仕事をしている黒岩氏も細井氏も、ホームシアターでゲームを体験したことに対し「回り込んでいるときの音の移り変わりが自然で、制作環境よりも綺麗に聞こえて驚いた」、「こちらが意識して作った音を更にプラスアルファしてくれている感じがした」と絶賛。なお、そんな黒岩氏と細井氏も、自宅は2.1ch環境にしており、サラウンド感までは体験できなくともサブウーファーから聞こえる音は重要視しているという。サブウーファーは、コンパクトサイズなものもある。5.1chまでは導入できなくとも、サブウーファーを1つ足してみるというプロの案は、大変参考になるところだ。

 この日会場に集ったハンターたちも、多くがホームシアターによるプレイの恩恵というものを感じられたのではないだろうか。なお筆者も日頃、55インチ4Kテレビ+ヤマハの「YAS-108」(※最新モデルは後続機の「YAS-109」)というサウンドバーでゲームをしている。サウンドバーはいわゆる「バーチャルサラウンド」と呼ばれるもので、YAS-108は安価で置き場所にもさほど困らず、非常にお手軽に高音質でゲームを楽しめる。「YAS-10X」シリーズはサブウーファーがないモデルだが、ワイヤレスサブウーファー付属モデル「YAS-209」も人気のモデルだ。一度サラウンド体験をしてしまうとなかった頃には戻れないという甘い罠だが、ホームシアター導入の参考になれば幸いだ。

 「音を肌で感じる」という言葉がまさにぴったりだともいえる、ホームシアターの世界。製作者の音へのこだわりを、ぜひ実際に肌で、そして耳で、感じてみてほしい。

終演後には実際にホームシアター環境で「アイスボーン」を遊ぶことができ、ファンが列を作っていた