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「RAGE Shadowverse 2019 Autumn GRAND FINALS」優勝は「約束のノノ」選手!激動の決勝戦とイベントを徹底レポート!

9月21日 開催

会場:秋葉原UDX

 CyberZは、Android/iOS/PC用デジタルトレーディングカード「シャドウバース」の大型eスポーツイベント「RAGE Shadowverse 2019 Autumn GRAND FINALS」を秋葉原UDXにて9月21日に開催した。

 今回行なわれた「GRAND FINALS」は7月に2日間に渡って行なわれた「RAGE Shadowverse 2019 Autumn 予選大会」を勝ち抜いた8人のプレーヤーが優勝を目指し、最後の激戦を繰り広げるイベントだ。優勝者には賞金400万円が贈呈され、さらに優勝者と準優勝者には年末に行なわれるその年の世界王者を決める「World Grand Prix」への出場権が与えられる。「シャドウバース」プレーヤーであれば絶対に見逃せない今回のイベント、その激戦と会場の熱狂を振り返っていきたいと思う。

【会場に集まった「シャドウバース」プレイヤーたち】

会場の盛り上がりは過去最高!?プロプレーヤーと交流できるスペースも

 「GRAND FINALS」は予選大会を勝ち抜いた8人のプレーヤーのトーナメント戦を生で観戦できるというのが大きなポイントとなり、ステージでは大スクリーンで選手たちの対戦模様が映し出され、対戦中や対戦の合間には「シャドウバース」のイベントではお馴染みとなりつつある豪華キャスト達がステージを大いに盛り上げてくれた。対戦毎に流れる各選手のPVや会場の演出なども相まって、会場ならではのライブ感と興奮を十分に味わうことができた。

【豪華キャスト達によるステージは集まった全てのプレーヤーを盛り上げた】
進行には霜降り明星の粗品氏とせいや氏、そしてアナウンサーの並木万里奈氏が登場。スピーディーな進行かつ時折挟む小ネタで会場を和ませた
実況解説にはお馴染みの平岩康佑氏と友田一貴氏、まる氏とSOS氏が等が登場。さらに前回のチャンピオンの灰原きょん氏とプロプレーヤーのSurre氏がゲストコメンテーターを務め、これ以上ないほどの豪華キャストとなった。

 また会場ではトーナメント以外の催しも行なわれていた。「シャドウバース」やRAGEの関連グッズを買える物販コーナーや、来場者なら誰でも挑戦できるガチャガチャコーナーなど数多くの催しが行なわれていたが、中でも注目を集めたのが現役のプロチームに所属する選手たちと対戦やトークができる交流コーナーだ。いつも画面で見るようなプロ選手たちが数多く来場しており、どのチームの交流時間でも長蛇の列が常にできるほどの盛り上がりを見せていた。

【物販コーナーやガチャガチャコーナーなどで記念品をゲット】

【現役プロプレーヤーとの交流会は多くの人々が参列した】

「GRAND FINALS」の激戦に触れる前に現環境や背景をおさらいしよう

 続いて本イベントの大目玉である「GRAND FINALS」について触れていこうと思うのだが、その前に軽く現在環境についておさらいしたい。予選大会から約2カ月の間で大きく変化した部分を取り上げるとすれば、「一部カードの修正」と「第13弾アディショナルカード」の追加の2点だろう。これによって予選大会時では多く見受けられていた一部のデッキが環境から姿を消し、代わりに新たなデッキタイプが非常に強力なアーキタイプとして注目を集めるようになったのだ。

 そんな変化の中で現環境で非常に多く使用されているデッキタイプが4つ存在している。一部カードのアッパー修正によって勝ち筋が作りやすくなり頭角を現し始めた「アーティファクトネメシス」、アディショナルカードで追加された「安息の領域」によってさらにその強さに磨きをかけた「エイラビショップ」、盤面コントロール力の高さと終盤のフィニッシュ力に優れている「復讐進化ヴァンパイア」、そして上記のデッキに対して有利を取りながら最強レベルの火力とリソース回復手段を内蔵している「機械ウィッチ」の4つが現環境を支配しているデッキと言える。勿論他にも強力なデッキは数多く存在しているが、今回トーナメントに臨んだ多くの選手がこの4タイプのデッキを使用していた事からもその強さは確実なモノだ。

 この4つのデッキはそれぞれ独立した強さを秘めているが、共通している事として"速攻を仕掛けてそれを相手に返されれば敗北する"というタイプのデッキが存在しない。リソースを意識しながら相手の手を読み、必要な場面に適切なカードをプレイして有利な状況を作っていき、最後は超火力でフィニッシュするというゆっくりと思考を重ねる必要があるデッキが殆どだ。今回のトーナメントではそのような「相手の手札や戦術を意識したプレイ」が非常に多く見受けられ、選手たちによる非常にハイレベルな読み合いが数多く繰り広げられた。もしアーカイブなどで試合を視聴する際には、そんな読み合いにも意識を向けてみてほしい。

【環境で活躍しているデッキがトーナメントでも数多く登場】
紹介した4タイプのデッキはトーナメントの中で数多くの名勝負を生み出した
特に強力な「機械ウィッチ」デッキは初戦でミラー戦になることが多かった

個性豊かな出場選手たち!バックストーリーやキャラクター性が試合を盛り上げる

 さて、まず今回の「GRAND FINALS」を語る上で欠かせないのは各選手たちのキャラクター性だ。というのも、今回の出場者は本当に個性豊かなのだ。史上初となる「GRAND FINALS」へ出場した女性プレーヤー「ぼんち/APG」選手は勿論、攻撃的でなスタイルで速攻を得意とする「アイン」選手や、そのスタイリッシュな佇まいから本RAGEのイケメン枠と呼ばれている「chun」選手、全てが謎に包まれていながらRAGE初代チャンピオンと同じ名を持つ「Ma」選手など、各選手の特徴を上げ始めたらキリがないほどだ。

 そしてそのキャラクター性が絶妙に試合中のプレイと噛み合っているのも見所だ。例を挙げると第1回戦の「アイン」選手と「pazuu」選手は異名が「猛攻ストロング」と「北の鉄壁」と、お互いに相反する異名となっているのだが、この異名通り「アイン」選手は非常に積極的なプレイが見受けられ、「pazuu」選手はそれを受けて流すという場面が多く発生した。試合前に流れる選手紹介PVも相まって選手たちのキャラクター性が試合の中で強く印象に残ったといえる。

選手たちにはそれぞれハイクオリティのPVが用意されており、戦略やキャラクター性を楽しめる
速攻VS粘りに注目した1回戦は両選手ともプレイングがキャラクター性と紐づいている場面が多々見られ、観客を盛り上げた

史上最高レベルの試合展開!決勝戦では会場の盛り上がりも過去類を見ないレベルに……!

 そんな激戦を繰り広げて決勝戦まで勝ち進んだのは「北の鉄壁」こと「pazuu」選手と「尾張の賢人」こと「約束のノノ」選手だ。この2人の選手も非常に濃い個性を持っており、「pazuu」選手は異名通り堅実ながらも着実に相手を追い詰めるスタイルで冷静に勝利をつかみ取ってきた選手であり、対する「約束のノノ」選手は試合中の表情豊かなリアクションに加え、決勝までの試合を全て最初に2セットを取られてからの逆転勝利で勝ち上がってきているという、驚異の粘り強さと集中力、ドラマ性を秘めている選手なのだ。

 そしてこの2人はお互いにデッキ調整を行なった友人関係でもあり、決勝戦で当たりたいと事前に宣言していたプレーヤー同士でもあるのだ。これだけでも非常に強いドラマ性を感じずにはいられない。お互いに使用するデッキは細部は違えどアーキタイプとリーダーは同じ。純粋な実力が勝敗を分ける決勝に相応しい試合が始まった。

友人同士の2人が決勝戦で激突。お互いに負けられない戦いが始まる

 第1バトルではお互いに「機械ウィッチ」を選択。高いポテンシャルと数多くのデッキに対して有利に戦えるこのデッキは初戦を勝利して勢いをつけるのに非常に適したデッキと言える。本トーナメントでも全ての出場者が使用している事からその強さは折り紙付きだ。両者ともに順調な滑り出しでスタートし、このデッキのキーカードである「マシンブックソーサラー」の着地にもお互いに成功。両者共に最高の状態での試合展開となって勝負は拮抗したが、「北の鉄壁」の名に相応しいリソース&盤面コントロールで「pazuu」選手が「約束のノノ」選手を限界ギリギリのところまで追い詰める。だが、もう後が無いというタイミングで「約束のノノ」選手が「機械生命体」をドロー。デッキを一気に回転させ奇跡のドローを連発させると盤面を一気に壊滅させ、見事逆転勝利を収めた。

 「約束のノノ」選手の粘り強さはこれまでの試合で十分に理解していたつもりだったが、会場の誰もが「ここから流石に逆転は無理だろ……」と感じていた場面からの今回の巻き返し劇は、誰もが度肝を抜かされたに違いない。オマケに「約束のノノ」選手は本トーナメントで初の初戦白星となったため、この試合で流れは完全に「約束のノノ」選手に来ていると誰もが感じたことだろう。

【第1バトル:勝敗を分けた瞬間】
絶対絶命の状態から「機械生命体」を引き当て、そこからの大量ドローで除去、盤面形成、リーサル準備の全てを行ない見事逆転勝

 続いて行なわれた第2バトルは最初から意外な展開でスタートした。「約束のノノ」選手が「エイラビショップ」を選択したのに対して、「pazuu」選手は「復讐進化ヴァンパイア」を選択。これには会場や実況にも思わずどよめきが起こった。なぜなら通常の試合展開であれば「機械ウィッチ」のミラー戦が行なわれた後、負けた側のプレーヤーは次の試合も「機械ウィッチ」を使用する事が多いのだ。これは「機械ウィッチ」が他のデッキに対して非常に有利に立ち振る舞える強力なデッキであるため、何よりもまず1勝が欲しい第2バトルでは思わず手が伸びてしまうからだ。このタイミングであえて「機械ウィッチ」を使用しないというのは非常に勇気の必要な選択であると言える。

 だが「pazuu」選手のこの決断は試合を大きく分ける判断となる。「機械ウィッチ」をもう使用できない相手が次に使用するデッキを「エイラビショップ」と読み、有利に立ち回れる「復讐進化ヴァンパイア」をこのタイミングでぶつける事で、有利なデッキ対面をさせながら自分の「機械ウィッチ」を温存する事ができるのだ。結果的にこの有利対面を活かし、相手の隙を突いて「pazuu」選手が勝利を収める展開となった。そして第3バトルでは温存していた「機械ウィッチ」を相手の「復讐進化ヴァンパイア」に対面させることに成功。相性的に非常に有利な対面で「機械ウィッチ」のパワーを存分に発揮し、第3バトルも勝利して流れを一気に掴み返したのだ。

 「pazuu」選手のこの采配は、相性を考えて使用するデッキを取捨選択するというのもBO5の醍醐味を活かした素晴らしい作戦だと言える。この連勝から今度は「pazuu」選手に流れが向いてきたと誰もが感じた。

【第2&第3バトル:勝敗を分けた瞬間】
常識を破りあえて連続で「機械ウィッチ」を使用せず、有利なデッキ対面を作り上げて2連勝をもぎ取り流れは「pazuu」選手に流れ始める

 が、ここで会場では再びどよめきが起こる。第4バトル「pazuu」選手は最後に残った「エイラビショップ」を確定で使用する事になるのだが、「約束のノノ」選手はそれに対して有利に戦えるはずの「復讐進化ヴァンパイア」を使用せず、あえて自分も「エイラビショップ」を選択したのだ。つまり「エイラビショップ」のミラー戦である。1敗も許されないこのタイミングで有利対面を選ばず、先に勝負所となるミラー戦を行なおうとする「約束のノノ」選手のメンタル力は尋常ではないと言える。だが、追い詰められた時の「約束のノノ」選手はやはり別格の強さを発揮した。

 試合はお互いにキーカードである「清純なる祈り エイラ」を引くことに成功するが、「約束のノノ」選手は3ターン目までベストな動きができず不穏な空気が流れる。一方「pazuu」選手は順調に盤面を揃えながら「清純なる祈り エイラ」の進化にも成功。優勝まで一気に王手をかける展開に。だが動けない中でも序盤に「安息の領域」をプレイし、身を削りながら自分の盤面を守った「約束のノノ」選手の作戦が成功し、一気に形勢逆転。最後は相手のリソースを見極めて一気に攻め込む事で逆転勝利を収めた。「約束のノノ」選手の底力は本当に計り知れないと思わず感じてしまう試合内容だったと言える。両者一歩も譲らない激戦は最終バトルまで持ち込む形となった。

【第4バトル:勝敗を分けた瞬間】
有利な「復讐進化ヴァンパイア」からではなく、こちらもあえて「エイラビショップ」のミラー戦から行なう「約束のノノ」選手の作戦。彼の精神力と粘りの強さには度肝を抜かされてばかりだ

 最終バトルは最後に相応しい超激戦を繰り広げる展開となった。第4バトルで流れを再び取り戻し、有利な対面を作り上げた「約束のノノ」選手は勢いに乗るように序盤から順調な立ち上がりで相手を追い詰めるが、対する「pazuu」選手はキーカードである「清純なる祈り エイラ」を引く事ができない。加えて「約束のノノ」選手のデッキは「堕落の漆黒 アザゼル」などを使ってゆっくり戦い最後に「至高神・ゼウス」などのフィニッシャーを決めれば良いため、長丁場になればなるほど「pazuu」選手にとって辛い状況が続く。

 だが、流石決勝戦まで残るプレーヤー。ギリギリのタイミングで「清純なる祈り エイラ」を引く事に成功し、それまでに貯め込んだ回復手段を用いて一気に盤面を強化し形勢を逆転する。と思いきや今度は「約束のノノ」選手が除去手段として最強の能力を秘めている「カラミティ・ブリンガー」を引き込み盤面をリセット。これまでに無いほどのシーソーゲームをお互いに繰り広げ、勝敗がどちらに転んでもおかしくないギリギリの状況が常に続く。

 そして最終局面。「pazuu」選手は最強のフィニッシャーである「ヘヴンリーイージス」を盤面に呼び出すことに成功。除去が不可能なカードが登場し、もう後が無い状況の中「約束のノノ」選手の手札に握られているのは2枚の「至高神・ゼウス」のカード。試合中に進化した回数だけランダムに自身を強化するこのカードは非常に強力ながらもランダム性が高く、時に興奮と熱狂を、時に笑いと絶望をプレーヤーに与えてきた今環境を代表するカードの1枚だ。「行くのか……!?」と会場の誰もが胸を躍らせ、ついには観客が耐えきれず「ゼウス」コールが始まるほどの熱狂が会場に巻き起こる。観客のコールに答えるように、「約束のノノ」選手はゼウスを盤面に降臨させる……!

 ……が、駄目。これには会場どころか両選手も驚きを隠せない。というのも本トーナメントの数々の戦いで何度もフィニッシャーとして活躍している「至高神・ゼウス」だが、疾走が付与されなかったのはこの試合が初なのだ。勝負を決めきれなかった隙を突いて「pazuu」選手も再び戦線を取り戻し、「安息の領域」を使用し守りを固める。「北の鉄壁」に相応しい素晴らしい引きとプレイだ。お互いにあと1点が足りないという手札と盤面が続き、最終局面の激戦はさらに続くことに。手札に残る最後の「至高神・ゼウス」をギリギリまで耐えて鹿回数を増やして使おうとする「約束のノノ」選手。相手の盤面を削りながらリソースを増やしジリジリと相手を追い詰める「pazuu」選手。

 限界ギリギリの勝負は一瞬の隙を突いて確実な勝利手段を得た「約束のノノ」選手が見事勝利を収めた。決勝戦ファイナルバトルに相応しい、どちらが勝ってもおかしくない最高の激戦だったと言えるだろう。

最後までランダム性に頼らない確実な勝利方法を思考し続けた「約束のノノ」選手が見事勝利。最高の激戦を制して優勝トロフィーをその手に掴んだ

逆転劇の連続で見事優勝した「約束のノノ」選手にインタビュー

 そして今回見事優勝に輝いた「約束のノノ」選手に対するインタビューでは、彼が魅せた驚異の集中力と「シャドウバース」の魅力について語ってくれた。

――今回の「GRAND FINALS」ではどのような戦いになると予想していましたか?

約束のノノ選手:今の環境を占めているデッキはどのデッキもゆっくり色々考えて戦うデッキが多いため、長期戦が勃発するだろうなと予想していました。

――今回全ての試合をフルセットで戦い抜き見事な逆転をしていましたが、この脅威の思考力は趣味で行なっている将棋から得たモノでしょうか?

約束のノノ選手:仕事でも趣味でも考える事が大好きなので、その影響が大きいと感じています。今の環境が色々考えながらプレイするゆっくりネチネチしたタイプのデッキが多いので自分の戦い方と環境がマッチしていました。

――デッキチョイスについて、最近頭角を現している「ネメシス」を使用しなかった理由などはありますか?

約束のノノ選手:実はネメシスは1番練習していたデッキだったのですが、他の環境デッキに対して有利が取りづらいと感じたので今回は使用を見送りました。

――直近に控えている次のRAGEについて一言お願いします

約束のノノ選手:新パックも出る事もあって環境は大きく変化するとは思いますが、運営の方も環境デザインに力を入れていると思うので非常に見ごたえのある内容になると思います

――最後に、「シャドウバース」の魅力とは何でしょうか?

約束のノノ選手:自分が納得できるデッキと戦略で色々な方と競い合えるところです。カードやUIも綺麗なのでそこもとても魅力です!

――本日はありがとうございました。優勝おめでとうございます!

史上最高の盛り上がりを見せた「RAGE Shadowverse 2019 Autumn GRAND FINALS」

 今回のRAGEは試合の内容も非常にハイレベル、かつ選手のキャラクター性も強く出ており、見ていて非常に楽しめる今後のeスポーツの在り方を示してくれたようなイベントになったと感じている。eスポーツのトーナメントシーンで興奮を抑えられず観客が会場でコールを始めるのは日本ではあまり見られない状態であり、そんな興奮と熱狂を届けてくれた選手には大きな拍手を送りたい。今回の試合の様子は「OPENREC.tv」にて視聴する事ができるので気になる人は是非視聴してみてほしい。

 今回の盛り上がりを見るに、次の「RAGE Shadowverse 2019 Winter」も大いに期待できる。日本のeスポーツ文化を引っ張るこのイベントを引き続き追いかけていきたい。