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MSI、ノートPCの限界を突破した超弩級ゲーミングノートPCを発売開始
Discovery Channelと共同制作したeスポーツドキュメンタリー番組も公開
2019年8月10日 17:10
- 8月10日発表
エムエスアイコンピュータージャパン(以下、MSI)は8月10日、都内でメディア向け発表会を開催し、同日よりゲーミングノートの新製品3シリーズの販売を開始したことを明らかにした。
MSIといえば、台湾の大手マザーボードベンダーとして以前から知られているが、ここ数年は、特にゲーミング製品に力を入れており、ゲーミングマザーボードやゲーミングノートPC、ゲーミングキーボード、ゲーミングマウス、ゲーミングモニターなど、さまざまな製品を積極的に展開している。特にゲーミングノートPCはハイエンドからエントリーまでラインナップも非常に充実しており、コアなゲーマーからの人気も高い。MSIは、2018年度ゲーミングノートPC国内販売台数No.1を獲得するなど、ゲーミングノートPCベンダーのトップランナーといえる。
今回、MSIが販売を開始した新製品は、「GT76 Titan」「GE65 Raider」「GP65 Leopard」の3シリーズである(GP65のみ2モデル、他は1モデル)。販売開始に際し、報道関係者向けに新製品説明会と体験会が開催された。その様子をレポートしたい。
ウルトラハイエンドの「GT76 Titan」はまさに超弩級のスペック
まず、プロダクトマーケティング担当の新井雅俊氏が、MSIのゲーミングノートPCのラインナップの位置付けを説明した。最上位がGTシリーズで、その下に携帯性重視のGSシリーズとスペック重視のGEシリーズがあり、その下がメインストリームのGPシリーズ、一番下がエントリーモデルのGFシリーズとなる。今回発売された新製品は、最上位のGTシリーズとその下のGEシリーズ、メインストリームのGPシリーズとなる。
GT76 Titanは、MSIのゲーミングノートPCの中でもウルトラハイエンドとなる17.3型液晶搭載モデルである。従来のGTシリーズもハイエンドCPUを搭載していたが、新製品のGT76 Titanでは、より高性能だが発熱も大きい、デスクトップPC向けのハイエンドCPUを搭載してることが最大の特徴だ。
デスクトップPC向けCPUをゲーミングノートPCに搭載するのは、MSI初となる。現時点のインテルのノートPC向けCPUは、最大6コアまでしか存在しないが、GT76 Titanでは、8コアのデスクトップPC向けCPU「Core i9-9900K」(3.6GHz/Turbo 5.0GHz)を採用。ゲーミングノートPCの限界を突破し、ハイエンドデスクトップPCにも負けないパフォーマンスを実現している。
インテルのCPUは、1つのコアで同時に2つのスレッド(プログラムの実行単位)を実行できるHyper-Threadingテクノロジーを搭載しているため、8コアのCore i9-9900Kでは、同時に16ものスレッドを実行できることになる。デバイスマネージャーで見ると、OSからは16コアのCPUとして認識されており、なかなか壮観だ。なお、末尾にKがついているモデルは、倍率が固定されておらず、オーバークロックが可能なので、オーバークロックでさらなる性能を引き出せる。Core i9-9900Kの性能は、第8世代のノートPC向けCPUと比べて、85%も向上しているとのことだ。メモリも32GBと余裕があり、ストレージとしてはNVMe対応の高速SSD 512GBとHDD 1TBという組み合わせと至れり尽くせりだ。
また、これまでのGTシリーズはベゼル幅が広く、筐体も大きかった。GT76 Titanでは、GTシリーズで初めて狭額縁デザインを採用し、見た目の印象もかなりスマートになった。また、冷却システムも進化し、「Cooler Boost Titan」のファンが2基から4基に増えているほか、CPUのヒートスプレッダと直接接触する銅製受熱ベースプレートの表面をCNCを使って滑らかに研磨することで、熱伝導性を高めている。
GPUとしては、NVIDIAの最新アーキテクチャTuring採用モデルの中でも上位のGeForce RTX 2080が搭載されており、3D描画性能も非常に高い。液晶の解像度は4Kだが、最高画質設定でも最新ゲームを快適に遊べるパフォーマンスだ。
GTシリーズでは、従来から、キー1個ずつ色の制御が可能なPre-Key RGB対応のSteelSeriesゲーミングキーボードを搭載しており、多彩なキーボードライティングを実現していたが、GT76 Titanではさらに本体手前側にもストリップ状のLED「Mystic Light」を搭載し、より派手になっている。
液晶は17.3型で、解像度は4K(3,840×2,160ドット)と高く、表現できる色域も広い。ただし、リフレッシュレートは60Hz止まり。サウンドにもこだわっており、ヘッドフォン出力にハイレゾ対応のDACを搭載。本体のスピーカーは、2スピーカー+1ウーファーという構成で、本体からも迫力のあるサウンドが楽しめる。バーチャルサラウンド対応のサウンドユーティリティ「Nahmic」も搭載。LAN機能も大きく強化されており、最大2.4Gbpsでの高速通信が可能なWi-Fi 6に対応。有線LANのチップもKiller Ethernet E2500からKiller Ethernet E3000になり、2.5Gbpsイーサネットに対応した。I/Oポートも充実しており、Thunderbolt 3対応のUSB Type-CやMini DisplayPortなども備えている。
GTシリーズは、ウルトラハイエンド製品であり、消費電力が非常に大きい。そのため、ACアダプターを2つ必要とする。ACアダプターの容量は230Wなので、合計460Wの電源を必要としているわけだ。
なお、GT76 Titanの実勢価格は54万円前後になるとのことで、決して気軽に買える製品ではないが、それだけの価値がある製品といえる。
高性能をよりリーズナブルに実現した「GE65 Raider」
GEシリーズの新モデルGE65 Raiderは、15.6型液晶搭載のハイエンドモデルである。CPUとして、第9世代のCore i7-9750H(2.6GHz/Turbo 4.5GHz)を、GPUとしてGeForce RTX 2070を搭載し、ゲーミングノートPCの中でもトップクラスの性能を誇る。また、リフレッシュレート144Hz対応のフルHD液晶を搭載しているので、FPSゲーマーにもおすすめだ。GE65 Raiderも狭額縁デザインの新筐体を採用しており、一般的な15.6型ゲーミングノートPCと比べて、約11%の小型化を実現。
CPUは6コアのCore i7-9750Hで、16GBメモリと512GB SSDを搭載する。GPUは、最新アーキテクチャTuringを採用したGeForce RTX 2070を搭載している。冷却システムの「Cooler Boost 5」も、ファンブレード(羽根)の数を2枚増やし、底面の吸気口の面積が134%に拡大されたことで、エアフローが10%向上しているとのことだ。キーボードは、Per-Key RGB対応のSteelSeriesゲーミングキーボードを採用。
また、GT76 Titanと同じくWi-Fi 6にも対応しており、最大2.4Gbpsという高速な無線通信が可能だ。スピーカーは、ステレオスピーカーと2基のウーファーという構成で、迫力のあるサウンドが楽しめる。
なお、GE65 Raiderは直販限定モデルとなり、実勢価格は26万円前後になるとのことだ。コストパフォーマンスのゲーミングノートPCといえるだろう。
コストパフォーマンスが魅力のメインストリームモデル「GP65 Leopard」
GP65 Leopardは、MSIのゲーミングノートPCのメインストリームに位置づけられる製品であり、コストパフォーマンスの高さが魅力だ。GP65 Leopardも、今回発売が開始された他のシリーズと同じく、狭額縁設計の新筐体を採用し、キー1個ずつ色を制御できるPer-Key RGB対応のSteelSeriesゲーミングキーボードを採用。
CPUは、第9世代のCore i7-9750H(2.6GHz/Turbo 4.5GHz)を搭載し、メモリは16GBと、基本性能は高い。なお、GP65 Leopardは、直販専用モデル「GP65-9SE-067JP」と店頭モデル「GP65-9SD-066JP」の2モデルがあり、搭載GPUやストレージが異なる。直販専用モデルは、GPUとしてGeForce RTX 2060を、ストレージとして512GB SSDを搭載しているのに対し、店頭モデルは、GPUとしてGeForce GTX 1660 Tiを、ストレージとして256GB SSDと1TB HDDを搭載している。
液晶の解像度はフルHDで、リフレッシュレートは144Hzと高速であり、FPSゲーマーでも満足できるだろう。また、冷却システムは、上位モデルの「GE65 Raider」と同じ「Cooler Boost 5」を採用しており、メインストリームモデルでも重要な部分には手を抜かないという姿勢がよくわかる。
LAN回りはさすがにハイエンドモデルと同じというわけではなく、無線LANはWi-Fi 5対応、有線LANは1Gbps対応となっているが、実勢価格は両モデルとも20万円前後とのことで、コストパフォーマンスは高い。
オーバークロックの実演も行われる
新製品の紹介後、オーバークロックの実演が行なわれた。末尾がKのCPUを搭載するGT76 Titanは、CPUのオーバークロック。GE65 RaiderとGP65 Leopard(デモで使われていたのはRTX 2060搭載モデル)はGPUのオーバークロックが行なわれた。
オーバークロックには、プリインストールされているMSI製のツール「Dragon Center 2.0」を利用する。なお、GT76 TitanのCPUオーバークロックについては、インテルのチューニングツールも導入して、CPUのコア電圧をわずかに下げていた。電圧を下げることで発熱が減るため、このほうが安定して動作するとのことだ(単に高いクロックで動作させるには、電圧を上げたほうが有利なのだが、TurboBoostは温度が上がると、クロックが上がらなくなるので、電圧を下げたほうが有利となることもある)。GT76 Titanの標準状態のCINEBENCH R20の数値は4,881であったが、全コアを5GHzで動作するように設定すると、数値は5103まで向上した。なお、CPUのオーバークロックのデモ時は、Cooler Boostの設定をフルパワーにしたため、ファンの音がかなりうるさくなったが、通常設定ならそこまでファンの回転数が上がることはほとんどない。
GE65 Raiderでは、3DMarkのTime Spyを使ってオーバークロックの検証を行なった。ノーマル(左)のスコアは7717だったが、GPUをオーバークロック(右)することでスコアは8,218まで向上した。GP65 Leopard(RTX 2060搭載モデル)も、同様にTime Spyを使ってオーバークロックの検証を行った。ノーマル(左)のスコアは6,478だったが、GPUをオーバークロック(右)することでスコアは6,902まで向上した。
このように、3モデルともオーバークロックでさらにパフォーマンスが向上する。ただし、MSIとしては、オーバークロックを推奨しているわけではなく、オーバークロックしても問題なく動作するほどの高い冷却性能を持つ冷却システムを搭載しているということをアピールする意図で、オーバークロックのデモを行ったとのことだ。オーバークロックしても問題がないのなら、通常設定なら大きな余裕があるわけだ。冷却性能が高く、長時間のプレイでも安心して使えることが、MSIのゲーミングノートPCの魅力の一つなのだ。
MSIがDiscovery Channelと共同で制作したeスポーツのドキュメンタリーが公開
新製品の説明とデモの後、MSIがDiscovery Channelと共同で制作したディスカバリーチャンネルの番組「eスポーツ:新たな王者の誕生」の鑑賞会が行なわれた。この番組は、世界最大のeスポーツ大会「ESL One」の舞台裏に密着したドキュメンタリーであり、ESLを支えるスタッフや出場選手が多数登場する。
「ESL One」では、併催イベントとしてMSIが主催するMGA(MSI Gaming Arena)が行なわれているが、番組の後半ではMGAおよび、多くのeスポーツ選手がMSIのゲーミング製品を愛用していることにスポットライトがあてられており、MSIのゲーミング製品担当者も登場し、ゲーミング製品への想いが語られた。
全部で50分という、しっかりしたドキュメンタリーであり、MSIがeスポーツに強くコミットしており、ゲーミング製品ベンダーのトップブランドとして、今後もeスポーツ選手に支持される製品を出していきたいというはっきりとした意志が感じられる内容であった。
なお、MSIとDiscovery Channelは、eスポーツ関連以外でも協業しており、ビジネス向けノートPC「PS63 Modern」を共同開発したという経緯がある。