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「進めば地獄、進まなければ死」、地獄そのものの戦いを実現する「DOOM」の戦闘思想

3月19日~23日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 「EMBRACING PUSH FORWARD COMBAT IN 'DOOM'」というタイトルで「DOOM」のゲームデザインを語ったのは、id SoftwareのシステムデザイナーKurt Loudy氏と、リードプログラマーのJake Campbell氏。

 ここで取り上げる「DOOM」は、2016年版である。「DOOM」というゲームは元々は1993年に生まれ、FPSというゲームジャンルを作り上げたといっても過言ではない作品である。「DOOM」は様々なハードに移植され、そして続編が作られた。

 2016年版の「DOOM」は1作目が提示した「地獄の戦い」を追求した作品だという。そして過激なまでに「前に出る戦い」を求めた。昨今のFPS、TPSは壁に隠れ、頭を出して来た敵を狙撃するような「隠れて戦う」スタイルが多かった中、とにかく前に出て敵に銃弾をたたき込み、敵を倒すことで体力を回復させるというスタイルを前面に打ち出した。

 その過激な主張、テーマがはっきりしたゲーム性はファンに評価された。今回は両氏が「DOOM」に何を込めていったが語られた。

チェスのように駆け引きを楽しみ、踊るように“流れ”を作って戦おう!

 Loudy氏が「DOOM」に込めた想いは「動き続けなければ死ぬ」という戦いを実現させることだった。敵に攻撃されて減る以上に体力回復アイテムをとって体力を維持し、攻撃はド派手に、敵はむごたらしく倒され、そしてリロードはない。とにかく前に出て、撃ち合う、それを求めるゲームとして本作は生まれた。

 “隠れて撃つ”という方向に進化したFPSに対し、進化の過程で失われたエキサイティングなゲーム性を提示することが、新しいファンを獲得するのではないか? 開発チームはそう考えたという。現在の進化とは違う「DOOM」が持つ魅力を実現させるためにLoudy氏がフォーカスしたのが「スピード感のある移動」、「個性的な悪魔」、「個性的な武器」、「パワフルなプレーヤーキャラクター」だった。

 そういった想いから生まれたのが「DOOM」のプリビズ。悪魔をむごたらしく倒し、襲いかかってくる敵を恐れもせずに立ち向かい、倒す。こういった戦いを実現させよう、というイメージで開発は進められていった。

d SoftwareのシステムデザイナーKurt Loudy氏
初代「DOOM」のエッセンスをどう活かすかは大きなテーマだった
プリビズ映像を作り、コンセプトを固める
前に出て、敵を倒す戦闘を模索する

 戦闘はチェスのように駆け引きを楽しめるようにする。プレーヤーはストーリーを進めながらその駆け引き、動き方を学んでいく。敵の動きに対し的確な武器を使える様にし、そして敵をより気持ちよく殲滅できるようにプレーヤーを導いていく。敵への対処法、この敵にはショットガン、こいつにはロケットというように対応する武器がわかりやすいようにしていく。

 戦いは「ブルースリーの映画」の様に“ファンタジー感”も大事にする。敵は「悪いやつ」であり、倒す爽快感を強調する。敵のモーションは派手にわかりやすく、プレーヤーに認識させ、攻撃を食らって弱ったような描写ははっきりさせる。

 近接攻撃による「グローリーキル」では体力が一気に回復するアイテムが得られるなど明確なリワードを提示する。そして「チェーンソウ」である。「DOOM」のチェーンソウは近接専用に切り替える武器ではなく、「弾丸補給」の手段だ。有限だが圧倒的な攻撃力を持ち、弾丸が足りなくなった状況を一気に回復させる手段なのだ。

 これらの要素を組み合わせ、プレーヤーが踊るように敵を倒していく姿をイメージさせる。次々と現われる敵に対し、ショットガンで撃ち抜き、ロケットで吹っ飛ばし、弱ったら近接攻撃でとどめ。弾薬が足りなくなったらチェーンソウと、プレーヤーが積極的に攻撃を行うことで突破口を開くという、凄絶で爽快な戦いを実現させる。それこそが「DOOM」の戦いなのだとLoudy氏は語った。

ブルー・スリーのような、流れるように敵をいなし、戦う雰囲気を実現
敵に合わせた戦い方を学んでいく

わざと攻撃を散らばらせ、同士討ちもする気持ちよく戦えるAIシステム

 Campbell氏は主に敵のAIによるプレーヤーをエキサイトさせる戦いの演出を語った。id Softwareが手がけた「Rage」では敵が積極的に迫ってきて、プレーヤーは後退しながら敵と戦うという状況も多かった。

 ここでCampbell氏は先ほどのプリビズをもう1度流す。前進し、殲滅する、その戦い方が「DOOM」の求めるものだ。さらに「DOOM」のイメージイラストを提示する。殺到する悪魔をモノともせず悪魔を倒していく戦士、地獄での阿修羅のそのままの戦いが「DOOM」の目指す場所である。

 敵とのやりとりで大事なのが「やられモーション」だ。これをわかりやすくすることでプレーヤーは自分のチャンスを知る。敵が大きくのけぞり、攻撃が止まる。敵がグローリーキルができるほど弱ると身体が光りスタンする。アニメーションではこれがきちんと伝わるようにした。

リードプログラマーのJake Campbell氏
やられモーションで大きな隙を作る

 そして「正確ではない敵」というのも重要だとCampbell氏は語った。敵全てが正確にプレーヤーを追い、正確に攻撃を当ててしまってはゲームにならない。敵は常にプレーヤーに数で勝り、こちらを追い詰めてくるのだ。そこで攻撃を「わざと外させる」ことで敵の攻撃の激しさを演出しつつ、プレーヤーの爽快感をもたらすテクニックを明らかにした。

 プレーヤの位置に対して攻撃を散らばらせるのだ。この攻撃の散らばらせ方も確率分布をさせることででたらめに撃っているのではなく、こちらを狙いつつ、外しているという雰囲気を持たせている。さらに行動にもランダム性を持たせている。同じ方向に動くのではなく、様々な場所に移動していくように設定されているのだ。そして正確さ、攻撃の強さで難易度調整を変えるようにもしている。

攻撃を上手く散らさせる

 さらに「同士討ち」がある。「DOOM」の敵は地獄の悪鬼達だ。主人公を攻撃する意識はあるが、一皮むければすぐに同じ悪魔にすら牙をむく。これはプレーヤーにとって大きなチャンスになるし、悪魔達の凄惨な本性をプレーヤーに知らせる絶好の機会となる。しかもこの悪魔同士の争いは初代「DOOM」でもあった要素なのである。敵のカオスさ、悪魔の本性を見事に感じさせる仕掛けだろう。

 筆者は先日Nintendo Switch版「DOOM」を触ったのだが、そのぎりぎりの戦いを演出するレベルデザインの巧みさ、敵のバランス、何よりも自分が前に出なくてはピンチから脱出できない、攻撃することでしか生き残れないバランスに驚き、魅了された。今回そのバランスが、さらに緻密に計算され、演出されていることが開発者から語られ、感心させられた。

 GDCにくるといつも感心させられるのだが、最新のゲームの技術の高さ、様々な手法や技術で楽しいゲーム体験を実現させている開発者のアプローチは、改めてすごいと感じさせられた。ゲームをプレイしているとき、その後ろで技術者達がどんなアプローチをしているかを考えるのは、ゲームを一層深く楽しめる方法の1つだと思う。

敵の動きにランダム性を持たせる
時に起こる同士討ちは、プレーヤにチャンスをもたらす