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【特別企画】ハードの性能でどれだけ“ドン勝”に迫れるのか?

NVIDIAの新旧人気ビデオカード7機種で「PUBG」徹底検証

 ゲームの勝ち負けはマップや立ち回りを覚えるとか、操作の習熟などで決まる側面が強いが、ことPCゲームに関してはハードが自分のスキルの足を引っ張ることもある。自分のPCで“このゲームは十分動く”と思っていても、実際はハードの性能不足で満足にフレームレートが得られないためにプレーヤーの行動が制限されることもある。自分のスキル不足をPCのせいにするのはあまりオススメできないが、旧世代と現行世代のハードではプレイ感はどれだけ変わってくるのだろうか?

 そこで今回は大人気バトルロイヤル系TPS/FPS「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(以降PUBGと略)」を肴にこの問題を考えてみたい。「PUGB」は長いアーリーアクセス期間を経てようやく正式版リリースとなるゲームだが、このアーリーアクセスの間にシステムもパフォーマンスもかなりテコ入れが入っている。立ち上げ当初ほど重くはなくなったものの、高画質設定で遊ぼうとするとそれなりのマシンパワーが必要になる。

 筆者の経験でいうと、PUBGにおけるマシンパワーの源泉はCPUよりビデオカードの性能である。そこで今回は旧世代の人気ミドルレンジGPUと、最新のハイパワーGPUとの差を知って頂きたいと考えている。

「PUBG」の画質は設定でこれだけ変わる

 ハードでゲームの快適さが変わるとはいえ、普通にPCゲームをプレイしているなら「マシンパワーが足りないなら画質を落とせば良いのでは?」という考えにまず到達するはずだ。だが金を払ってプレイするゲームで、わざわざ低画質で遊ぶ意義は? と筆者は考える。そこで最初にPUBGの画質や解像度設定で見え方がどう変化するのか比べてみよう。遠くまで見通せるのはどの設定か? 全体の質感はどこまで変化するのか? 等をチェックしてみたい。

「PUBG」の画質や解像度などで見た目がどう変化するか比べてみる。画質設定はアンチエイリアスなどの項目ごとに細かく分かれているが、プリセットの5段階の設定で比較する
掲載画像は上から、「1,920x1,080ドット:最も低い」、「1,920x1,080ドット:ウルトラ」、「3,840 x 2,160ドット:最も低い」、「3,840 x 2,160ドット:ウルトラ」のもの。フルHD(1,920x1,080ドット)の最も低い設定だとジャギーがひどく、ジャギーでできた陰なのか? 人の頭なのか? といった点で敵の発見に遅れが生じる可能性がある。4K(3,840 x 2,160ドット)表示やフルHDでもウルトラだと敵と建物の区別がしっかりとつき、見逃しづらくなるだろう

 画質を優先的に上げるのがよいか、解像度を上げるのが良いかは好みによる(筆者は両方上げたい)が、前者は主にビデオカードが、後者はモニターのスペックがボトルネックになる。ビデオカードは交換できても大型の液晶は置けないという場合を考え、今回は「PUBG」における“フルHD&ウルトラ画質”でのパフォーマンスとプレイ感に注目することにしたい。ドン勝率をビデオカードでなんとかブーストできないだろうか?

旧世代GPUでは生き延びることが難しいのか

 非力なGPUで「PUBG」をプレイするデメリットは、画面描画が遅れるため自分の反応も遅れてしまうことだ。次の動画は、PUBG動作に最低限必要なGeForce GTX 660と、現状では最強といえるGeForce GTX 1080 Tiでどの程度画面の滑らかさに差がつくかを試してみたものだ(メモリやマザーなどの検証環境は後述)。前述の通りフルHD&ウルトラ設定なのでGeForce GTX 660にはかなり荷の重い処理だが、あまりにも重すぎて他のプレーヤーに照準し続けることが難しい。

【新旧ビデオカード FPS比較】
映像の前半はGeForce GTX 660、後半はGeForce GTX 1080 Ti。両者でこれだけ滑らかさが違う。GeForce GTX 660だと動き回る他のプレーヤーに照準を合わせるだけでも辛い。左上のフレームレートカウンターは「Afterburner」の機能を利用して表示させている

 GeForce GTX 660でも静止状態にある敵の背後などこちらが圧倒的優位な状況なら勝ち目はあるが、出会い頭の戦闘で撃ち合って勝つのは難しい。エイムをしようと思っても正しい位置にピタッと動かすのが困難なためだ。

 だがGeForce GTX 1080 TiのようなハイパワーGPUにすれば、出会い頭の戦闘も立ち回りさえ間違わなければぐっと勝ちやすくなる。もちろん緊張でエイムをミスるとか、相手の武器の方が強くて火力負けすることもあるが、ローパワーGPUよりもずっと動きやすい。

 次の動画はGeForce GTX 660とGeForce GTX 1080 Tiにおける戦闘を、GeForce系GPUで利用できる「Shadowplay Highlights(後述)」でいくつか抜き出したものだ。彼我の装備や会敵状況が違うのでこういう動画で比較するのはかなり無理があるかもしれないが、GeForce GTX 660とGeForce GTX 1080 Tiでは格段に違うことがわかって頂けるはずだ。

【GeForce GTX 660プレイ映像】
GeForce GTX 660では出会い頭の戦闘は非常に厳しい。敵がそこにいるとわかっていても、エイムすること自体が難しいからだ
【GeForce GTX 1080 Tiプレイ映像】
GeForce GTX 1080 TiではフルHD&ウルトラ設定でもカク付かないため、出会い頭の戦闘でもかなり勝率が上がる。いくつか射撃を外しているのはご容赦……

ベンチマークでさらに深く検証する

 「PUBG」をローパワーなGPUでプレイするとかなり辛いことがわかったところで、最新ハイパワーGPUと数世代前のミドルレンジGPUでどの程度の差が付くかをベンチマークで検証してみたい。

 今回の検証は、以下の環境で実施した。パワーのあるCore i7-8700Kを使ったのは、CPUボトルネックを回避するためである。「PUBG」自体、それほどCPUパワーの必要はないが、念のため……。

【検証環境】
CPU:Intel Core i7-8700K(3.6GHz、最大4.7GHz)
マザーボード:GIGABYTE Z370 AORUS GAMING 7(Intel Z370)
メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR×2(DDR4-2666で動作、8GB×4)
グラフィック:GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition、GeForce GTX 1080 Founders Edition、GeForce GTX 1070 Ti Founders Edition、GeForce GTX 1070 Founders Edition、MSI GeForce GTX 960 GAMING 4G、GeForce GTX 750 Tiリファレンスカード、ELSA GeForce GTX 660 S.A.C
ストレージ:Intel SSDPEKKW010T7X1(NVMe M.2 SSD、1TB)、Crucial CT1050MX300SSD4/JP(M.2 SATA SSD、1.05TB、データ用)
電源ユニット:Silverstone SF850F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64bit版(Fall Creators Uptade)

 今回準備したビデオカードも紹介しておこう。

【今回取り上げるビデオカード】
GeForce GTX 660はPUBGの最低動作要件に挙げられているGPUだ。今回はELSA製「GeForce GTX 660 S.A.C」を準備。静音性の高いクーラーを装備したモデルだが、クロックはリファレンス仕様だ
第1世代Maxwellを採用したGeForce GTX 750 Tiは補助電源なしで動作することもあって、非常に人気の高かったGPUだ。今回は一般に市販されていない、OCなしのリファレンスデザインのカードを調達した
第2世代Maxwellは今でも現役で使っているユーザーも多いGPUだが、その中でも人気の高かったGeForce GTX 960も調達。リファレンス仕様が手に入らなかったので、MSI製「GeForce GTX 960 GAMING 4G」をリファレンス仕様にクロックを下げてテストした
現行GPUの中で、「PUBG」をウルトラ設定で会敵にプレイするためにはGeForce GTX 1070以上が欲しいところ。今回はFounders Editionを準備
先日発売が開始されたばかりのGeForce GTX 1070 TiはGeForce GTX 1080よりもわずかにピーク性能が劣る点を除けば、ほぼGeForce GTX 1080といってよいGPU。今回は米国NVIDIA直販でのみ入手可能なFounders Editionを使用した
Pascal世代のハイエンドとして売れまくったGeForce GTX 1080もFounders Editionを用意。日本国内ではGeForce GTX 1070 TiよりもGeForce GTX 1080の方が安く売られていることもある
GeForce GTX 1080 TiはシングルGPUとしては現在最速のモデル。「PUBG」のみならず、あらゆるPCゲームを快適に遊びたいなら、少々値は張るがGeForce GTX 1080 Tiを狙いたいところ。これもFounders Editionでテストした
【「PUBG」のVRAM使用量を知る】
フルHD&ウルトラ設定時のVRAM使用量を「HWiNFO64」でチェック。プレーヤーの置かれた状況により誤差はあるが、だいたい5.5GB前後が使われる。つまりGeForce GTX 960クラスの旧世代ミドルレンジGPUではVRAMが足らないのだ
ウルトラ画質で解像度を4Kまで上げると、VRAM使用量は6GBをゆうに超え、7GB近くに達することもある。VRAMは8GBあればまあ安心といったところだろう

 今回の検証では「Fraps」を利用して「PUBG」のフレームレートをチェックした。とはいえ、プレイ中のフレームレートはその時々の状況に大きく左右される(周囲のプレーヤーや地形等)ため、比較的安定したシチュエーションでの計測が必要だ。プレーヤーが最初に集合する島で数十秒自由に動ける時間があるが、その時一定のコース(地上→地下道→地上)を移動した時のフレームレートは比較的安定しており、かつ実プレイ時のフレームレートにそう遠くないものが得られる。

 そこで各GPUとも3回ずつ計測し、平均フレームレートが真ん中の回の数値を採用した。計測に必要な時間は50秒程度なので、自キャラが動けるようになった時にプレイ開始まで40秒を切っていたらやり直し、また天候が雨や霧の時もやり直し、というレギュレーションを設けた(正直なところ2度とやりたくない条件だ)。

 画質は前述の通り“ウルトラ”とし、解像度はフルHD/WQHD/4Kの3通りとした。解像度別のフレームレートの違いを見てみよう。

【「PUBG」1,920×1,080ドット時のフレームレート】

 GeForce GTX 960のようなミドルレンジでもウルトラ設定でなんとか動けるが、マトモにエイミングができる状態ではない。GeForce GTX 1070以上なら平均60fpsが十分期待できるが、GeForce GTX 1070、GeForce GTX 1070 Ti、そしてGeForce GTX 1080には大きな格差がある印象だ。高リフレッシュレートのゲーミング液晶の性能をフルに活かすにはGeForce GTX 1080 Tiが欲しくなるだろう。

【「PUBG」2,560×1,440ドット時のフレームレート】

 WQHD(2,560×1,440ドット)になると旧世代ミドルレンジGPUでは移動自体も辛くなる。平均fpsで見るとGeForce GTX 1080 Tiから1070に向けて綺麗な差がついている。GeForce GTX 1070とGeForce GTX 1070 Tiの最低fpsが思い切り低くなっているのはPUBGでよく見られる“キャラが増えるとカクつく”現象に引っかかったためと思われる。

【「PUBG」3,840×2,160ドット時のフレームレート】

 一応4K環境でも計測してみた。前掲の通りPUBGは4Kまで解像度を上げると、遠方の視認性が格段に進歩するためぜひ挑戦してみたいところだが、ウルトラ設定&4KだとGeForce GTX 1080 Tiでもかなり厳しい。このレベルの重さになると、GeForce GTX 960より下の旧世代ミドルレンジGPUでは同じ時間でも想定したコースを完走できない事の方が多い。重すぎて方向転換が上手くいかないため移動するスピードも遅くなってしまうからだ。

ぜひ「PUBG」で活用したい“Shadowplay Highlights”

 ところで、最新のGeForceで「PUBG」を遊ぶなら、ぜひ活用したいのが“Shadowplay Highlights”だ。これを利用すれば「PUBG」で敵を倒した、倒されたシーンだけを動画に残してくれる。ゲームプレイ中ずっと録画し続けて後からベストシーンを手動で切り出すことをしなくても、システムが自動的に残してくれるのだ。華麗なショットを決めた、ドン勝を決めた、あるいは無念の死を遂げた瞬間を効率良く残すことができる。これを直接YouTube等に流すのもよいし、自分でさらに楽しく編集するのもよい。GeForceを使って「PUBG」を楽しむなら、ぜひとも活用して欲しい機能だ。

 ちなみにハイライト1本の長さはデフォルトで35秒(30秒程度前から保存~キルやデスの後で停止)、ダブルキル(以上)やキル直後に自分が倒される等の複合ハイライトの場合は状況に応じて延長されることもある。

 このハイライト機能を使う上でのコツは2つ。まず1つめはハイライトはゲームが始まってから有効化してもダメということ。「PLAY」のボタンを押す前に設定を確認しておこう。つめはハイライトの動画はユーザーフォルダ内の隠しフォルダ(c:¥Users¥ユーザ名¥AppData¥Local¥Temp¥Highlights¥Roaming)に記録され、プレイ終了時に残したいハイライトを選択する。選択したハイライトのみがユーザフォルダの“ビデオ”フォルダに移される仕組みだ。ただこのインターフェイスが少々わかりにくく、往々にして“保存したつもりが保存されてない”ことがある。デフォルトの保存先をわかりやすい場所(例えばD:ドライブとか)にしておくと、そういうミスをしても取り出しやすくなる。

Shadowplay Highlightsを機能を使うには、「PUBG」の画質設定→「ハイライト自動キャプチャ」と開き、「NVIDIA Shadowplay Highlights」を選択した後「OK」をクリック
すると図のような確認メッセージが出るので「はい」を選択すれば、以降画質設定でハイライト機能をオフにするまで有効になる。このメッセージは「PUBG」の画面上に出る場合と、「PUBG」の裏(デスクトップ)に出る場合があるので良く見ておこう
1ゲーム終了後ロビーに戻ると、そのセッションで記録されたハイライトシーンの一覧が表示される。右上の「ギャラリーに保存」をクリックすれば、“選択された”クリップがビデオフォルダに移動する。ここで簡単なカット編集やFacebookかYouTubeに投稿することも可能だ
ハイライトのテンポラリフォルダはShareの設定(Alt-Zで呼び出せる)で変更できる。デフォルトはユーザーフォルダ内の不可視フォルダだが、アクセスしやすいフォルダに変えておくと良い。フルHD&デフォルトの画質だとハイライト1本で220GB(以上)になるため、容量も増やしておくとよい。この容量を超えたら古いものから順次削除される

「PUBG」でドン勝率を上げたければGeForce GTX 1070以上を!

 動画検証は筆者のスキルのなさも相まってやや隙の多い検証だったが、Frapsを利用したフレームレート測定では、旧世代ミドルレンジGPUと最新GPUの圧倒的な差が見て取れた。まだ「PUBG」はフレームレートが安定しない欠点はあるものの、GeForce GTX 1070以上のGPUであればフルHD&ウルトラ設定で快適に遊ぶことが可能だと示された。GeForce GTX 1080 Tiで暫くプレイした筆者がドン勝できたか……という問いはさておき、勝ちを追求するにはそれなりのハードが必要ということが分かって頂ければ幸いだ。

【ドン勝までもうすぐ!?】
GeForce GTX 1080 Tiを使ってもドン勝できなかったとはいえ、トップ10に残る率は格段に上がった……と思いたい