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「Horizon: Zero Dawn」のクエストは、“壁に付箋を貼る”方式!?

ストーリー性と自由度をもたらすための、導線を考えるクエスト作成

2月27日~3月3日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 ナラティブとは、ゲームにおいては物語をどう表現するかといったときに使われる。「GDC2017」のナラティブサミットでは、様々なクリエイターがゲームでの物語表現を問いかけていった。「Building Non-linear Narratives in 'Horizon: Zero Dawn'」では、3月2日に発売されるPS4向けオープンワールド・アクションRPG「Horizon: Zero Dawn」の開発者であるLeszek Szczepanski氏が、「Horizon: Zero Dawn」ならではのストーリーテリングの手法を語った。

「Horizon: Zero Dawn」、Guerrilla Games Gameplay ProgrammerのLeszek Szczepanski氏
他のタイトルと比較し、「Horizon: Zero Dawn」のバランスを語る
「Wall of Sticy Notes」は、要素を抜き出し、導線でつなぐ方式だ

 「Horizon: Zero Dawn」はオープンワールド・アクションRPGである。プレーヤーは広大な地域を舞台に冒険を繰り広げていく。この世界は遙か昔に栄えていた文明が崩壊した世界であり、人類は様々な機械生命体にその生活圏を脅かされている。プレーヤーは熟練ハンター「アーロイ」となり、古の遺物や謎に満ちた建造物が点在する世界を旅していくこととなるのだ。

 ゲームではlinear(直線)と、Non-linearのストーリーテリングがある。linearは“一本道”といわれる、自由度の少ない手法だ。対するNon-linear、一本道を避ける手法で、どのように物語を描くかは、特にオープンワールドを舞台にしたゲームでは難しい。プレーヤーを自由に世界を駆け回らせたいが、濃密なストーリーを体験させたい。そのためにどうすればいいか?

 Szczepanski氏は、「クエスト」が鍵となるという。クエストで目的地や目標を提示し、その上でストーリーを語る。クエストを使うことでプレーヤー二ゲームのシステムを基礎から覚えさせ、世界や人の知識を段階的に与え、さらにはストーリークエストや、フリークエストなど、プレーヤーの目的に合わせた目標を設定し、物語を体験させられるのだ。

 RPGにおいてクエストは「段階的」に与えられるものだ。クエストには難易度やレベル制限が設けてあり、報酬も段階的に良くなっていく。プレーヤーはより深く物語を進め、大きな報酬を求めてクエストを受け続けていく。このクエストの提示によって広大な世界を自由に旅することができるオープンワールドの中に、一定の成長の道筋を提示することができるとSzczepanski氏は語った。

 これらの「ルール」を導き出すために、Szczepanski氏は様々なRPGを研究し傾向を調べていったという。自由度の高いシステムと対極にある厳格な成長システム。タイトルはこの2つの極端な方向性にたいして独特の“バランス”を提示している。たとえば「RPG Maker」は究極の自由度の代わりにストーリー性はほとんどなく、「マイト アンド マジックVI」もかなり自由度が高い。ここからストーリー性を強めていくと「ウィッチャー3」、「スカイリム」といったタイトルになっていって、「タイタンクエスト」はかなり厳格になってしまう。

 Szczepanski氏は「Horizon: Zero Dawn」は「スカイリム」よりストーリー性を強めた、厳格さに重点を置いたシステムになったと語った。ただしクエストは複雑にさせすぎず、そしてシステムの説明に終始しない方向性が求められる。ストーリーをきちんと体験させつつ、基本的なストーリーを体験させたいという。

 しっかりしたストーリーの流れとゲームルールを提示したい。しかしやはり物語として体験してほしい。そこであまりにも強制性を感じさせないために開発チームが考えたのが、「Wall of Sticy Notes」だ。これはまさに「付箋が張り付く壁」だという。付箋にはストーリーの重要な要素があり、それらを貼り付けつつ、導線でつないでいく。導線は1つではなく、プレーヤーは進め方でつながりが変わる。クエストには「始まり」と「終わり」が設定されているが、進め方は1つではない。

 例えば「始まり」で村から虫の大群に困っているという依頼を受ける。ここには、「プレーヤーは虫の大群に出会う」、「虫の承殺す」、「虫の承話す」という3つの要素がある。この要素の導線はつなぎ方でプレーヤーの体験が変わる。虫に襲われ、そのまま女王を倒すという流れのほかに、進み方によれば直接女王に合う導線もあり得る。その場合は何らか虫との和解策が見つかるかもしれないし、結局女王を殺してしまうかもしれない。要素を張り出し、導線のつなぎ方を考えることで、自由度を持たせたストーリーテリングが可能になったのだ。このように自由度を持たせる設計にすることで、強制性を緩和できるのではないかとSzczepanski氏は語った。

 ほかにも「魔法使いのアミュレットを探す」という要素に対して、クエストを受けてから探す、という導線以外にも、全く知らずに偶然アミュレットを見つけてしまうという導線も用意する。このように「Horizon: Zero Dawn」は様々な要素をプレーヤーのアクションで導線が変化するようにして、自由度を導入しているとのことだ。

 このシステムにより、特殊な回避策や、トリックを使わなくてもきちんとユーザーに物語を、自由度を持たせて提供することが可能となった。この方式を活用することでものクエストを作成でき、プレーヤー自身も“数集めのクエスト”を作ることが可能となった。しかし、まだ、時間が巻き戻ったように不自然になってしまうクエストもあり、課題はあるという。これらに取り組みつつ、さらにシステムを洗練させたいとSzczepanski氏は語った。

【Building Non-linear Narratives 】
クエストはオープンワールドのゲームにおけるユーザーを導くための重要な要素だ
自由度を持たせて物語を語るのはどうするか?
「Wall of Sticy Notes」を使うことで、様々な導線から目標へ到達することが可能に
まだ課題もあるが、クエストを作成しやすくなった