【特別企画】
ホンダ・レーシング、“本物のモノコック”を使ったレーシング・シミュレーター筐体「Honda eMS SIM-01」を発売
世界限定10台で価格は1,000万円
2025年11月14日 11:13
- 【Honda eMS SIM-01】
- 価格: 1,000万円(税別)
ホンダ・レーシング(以下、HRC)は、11月11日に東京・中野にあるRed Bull Gaming Sphere Tokyoで、「Honda eMS SIM-01」の発表会を開催した。こちらは、ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿で使われてきたリアルな教習用フォーミュラマシンを使って作られた、レーシング・シミュレーター筐体だ。
ホンダは、車やバイクなど様々な乗り物を提供している総合モビリティカンパニーである。その中でも、グループのレース部門を担当しているのがHRCだ。F1やスーパーフォーミュラのほか、最近はeMS(eモータースポーツ)にも力を入れてきており、幅広いカテゴリーで参戦している。
HRCがeMSに注力しているのは、昨今の情勢も影響している。当たり前だが、モータースポーツが好きでずっと続けていきたいという気持ちはあるものの、その一方で新規のファンを獲得するのが難しいという現実がある。さらに、環境の変化やファンの高齢化などから、人気に陰りが出てくることも考えられる。
そこで、モータースポーツの新しい入り口として力を入れているのがeMSだ。ここで目指しているのは、クルマを操る楽しさや競う楽しさ、見る楽しさを多くの人と共有することである。また、このeMSを通じて多くの友人を作りHRCを知ってもらって好きになってもらい、さらにそれが購入へと繋がっていくことを期待しているのである。
独自のシミュレーターを作りたいという思いを実現
同社では、Honda Racing eMS主催イベントとして、2023年から「グランツーリスモ7」を使った世界大会をオンラインで開催している。こちらは世界70ヵ国、20万人以上を集客するというかなり大規模なイベントに成長してきた。そうした中で、長年夢見てきたのが、オリジナルのシミュレーターを作りたいということであった。しかし、実際に原理証明モデルを作ってみたところ、何か物足りなさがあった。そこで中でもこだわったのが、没入感と迫力感、ホンモノ感という3つの要素である。
ちなみに、HRCでは、同社が監修するレーシングスクールの「ホンダレーシングスクール」も運営している。こちらは、世界で活躍するレーシングライダーやドライバーの育成を目的とした学校だ。校長にはレジェンドドライバーの佐藤琢磨選手や現役F1ドライバーの角田裕毅選手など、第一線で活躍している多数のドライバーを輩出している。
同校ではスクールカーが約20年間使われていたのだが、さすがに古くなったということで新型に変更されることになった。そこで出てきたのが、廃車待ちの状態になった旧車のモノコックであった。このまま捨ててしまうのはもったいないという事から、今回の「Honda eMS SIM-01」が産まれるきっかけとなったのだ。
スクールカーのモノコックを再利用することで、現役で活躍するドライバー達が実際に使用していた本物のマシンに乗り込むことができるという、ほかでは味わえない体験ができる。単純に見た目もリアルだが、さらに臨場感を高めるために音と振動にも力を入れているところもポイントだ。
「Honda eMS SIM-01」のモノコック部分はカーボンで作られており、それを振動させることでリアルな感覚が伝わってくる。スピーカーはコックピットの前後左右に配置されており、6.2chサラウンドのリアルなサウンドを表現。さらに、ロードノイズやウインドノイズなどの低周波の音を出すために、サイドポンツーン部分にサブウーハーが内蔵されており、音がモノコックを破って伝わってくるような作りになっている。
さらに音だけではなく大型振動子を搭載することで、実際にマシンを動かしているかのように体でも体感できるようになっている。ちなみに、この振動に関してはゲームから直接情報を得ているというわけではなく、ゲーム内で流れている音から低い周波数帯から情報を取得して振動へと変換しているという。
イベント出展時などで大人だけではなく子供でも体験できるように、ユーザビリティにも配慮された作りになっている。たとえば、本物のF1などではサイドポンツーンの上に乗ることはできないが、こちらの「Honda eMS SIM-01」では安全と安心を確保するために、あえて乗れるように設計されている。
「Honda eMS SIM-01」のサイズは、概ね畳4畳分のスペースだ。マシン本体のほか、フロントウイングやサイドポンツーン、タイヤなどのユニットに加えて、ハンドルやペダルのユニットも最初から付属している。ただし、モニターとゲーム機に関しては付属していない。代わりに、自分の好みに合わせてPCやコンソールなどの機材を選ぶことが可能だ。
気になる価格は1,000万円(税別)で、世界限定10台のみ販売。販売以外にレンタルも用意されている。さらに、有料オプションで好みのカラーリングにすることも可能だ。
ストレートを走る感覚がリアル! レーシングドライバーの小出俊選手がデモ走行を披露
ひと通り、「Honda eMS SIM-01」に関する発表が終わった後で、ゲストとしてレーシングドライバーの小出俊選手が登壇した。スーパーフォーミュラやSUPER GT GT500など、リアルなレーシングドライバーとしてだけではなく、eMSでも活躍している小出選手。とくにeMSのいいところは、リアルと同じような動きが練習できるところで、そこがほかのスポーツにはない部分だという。
小出選手はスクール時代に、「Honda eMS SIM-01」の元になったマシンにも乗ってきた。それぞれのマシンは同じ作りではあるが微妙な個体差があり、クセが異なっている。そのため抽選でマシンが選べるようになっていたのだが、基本的には全員が全てのマシンに乗るようになっていたという。つまり、今回「Honda eMS SIM-01」で使われているモノコックは、小出俊選手のほか佐藤琢磨選手や角田裕毅選手など、名だたるドライバー達が実際に乗ってきたものが使われているのである。
今回の発表会では、実際に小出選手が「Honda eMS SIM-01」に乗り込み、PS5版の「グランツーリスモ7」を使用して、鈴鹿サーキットのコースを走りながら自らコーナーの特徴などを解説するというデモ走行も行われた。小出選手は、自宅を含めてこれまでプレイしてきた「グランツーリスモ7」の中でも、この「Honda eMS SIM-01」が一番没入感が高かったと太鼓判を押していた。
中でも一番の違いを感じた部分が、やはり音響と振動だという。音響は、実写に乗り込んでいるときと同じような感覚で耳に聞こえてくる。しかし、なによりも従来までのシミュレーターと一線を画しているのが、振動の部分だ。たとえば、タイヤが縁石に乗ったときに振動が伝わってくるようなものはこれまでもあったが、この「Honda eMS SIM-01」では路面のギャップを拾って振動し、ストレートで走っているときの感触もリアルに伝わってくる。
小出選手によるデモ走行のあと、実際にこの「Honda eMS SIM-01」を体験させてもらったのだが、まずはマシンに乗り込むときの窮屈さに驚かされた。そのままだと足を滑り込ませるスペースがないので、ハンドルを捻って隙間を開けながら、片足ずつ入れて行かないと乗り込むことはできない。しかし、両脚を入れると体がすっぽりとマシンの中に包まれるような状態になる。これぞ、ホンモノのマシンだと感じさせられた部分でもあった。
実際に乗ってみると、音ももちろんリアルだが、車を走らせているときに臨場感を高めてくれたのがやはり振動である。
振動自体はハンドルだけではなく、マシンの挙動に合わせ、微妙ながらも体全体に伝わってくるため、ゲームをプレイしているというよりも実際の車を運転しているかのような気分になる。そのためスピードが出てくると、少々怖く感じてしまったほどである。シミュレーターはリアルなほどいいが、これなら実写と同じような体験ができるというのも納得の仕上がりである。
さすがに色々含めて1,000万円以上かかってしまうこともあり、なかなか個人で購入するのは難しい価格帯だ。だが、実際に体験してみると他ではなかなか味わうことができないリアルなレースの感覚が味わえるようになっているのは間違いない。今後の予定などについて現時点ではアナウンスはされていないが、機会があればぜひとも「Honda eMS SIM-01」の素晴らしさを体験してみてほしい。
















































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