インタビュー
「Lumines Arise」インタビュー。目指したのはパズルゲームを超えた感動体験
感動的なパズルゲームを生み出すためのこだわりや20年の時を経たの原点回帰と革新について聞いた
2025年11月11日 23:00
- 【Lumines Arise】
- 11月11日23時 発売
- 価格:
- 5,400円(スタンダード版)
- 5,900円(デジタルデラックス版)
- 500円(デジタルデラックス版アップグレード)
PSPでの初代発売から約20年。音と光のパズルゲーム「Lumines(「ルミネス)」が、「Lumines Arise」として生まれ変わった。「Rez Infinite」や「Tetris Effect」を手がけたEnhanceが挑むのは、シリーズの原点回帰と、現代のハードウェアが可能にする圧倒的な共感覚体験の融合だ。
開発を率いたのは、プロデューサーの水口哲也氏とディレクターの石原孝士氏。「Tetris Effect」が内面的な癒しの旅だったとすれば、「Lumines Arise」は外側に向かって爆発する高揚感と語る。音楽ライブの最前列にいるかのような興奮と、プレーヤーの操作が音楽を奏でる感覚は「Lumines Arise」ならではだ。そして、新たに導入された「BURSTモード」は、約2年の試行錯誤の末に誕生し、ゲームに新次元の気持ちよさをもたらしている。
単なるパズルゲームの枠を越えた“シナスタジア体験”を目指す2人が語る「Lumines Arise」の本質。11月11日にプレイステーション 5/PlayStation VR2/PC向けに発売となるエンハンスの最新作に込められた、音楽、光、そして希望の物語について伺った。
20年を経た原点回帰。音楽ライブの最前列にいるような体験を目指して
――今日はよろしくお願いします。まず、今作の立ち上げ時に掲げられた一番大きなテーマを教えてください。
石原氏:シリーズ原点に立ち返るということですね。「ルミネス」シリーズはこれまでに複数の作品が発売されていますが、ユーザーさんの中で一番記憶に残ってるのは、「ルミネス」のPSP版ですよね。そこに立ち返って、「ルミネス」を軸にもう1回、エンハンスというチームでできることを考えて、もう一度ゼロから見直し作り直そうという気持ちがありました。
水口氏:PSPの「ルミネス」のローンチが約20年前の2004年、アメリカで2005年の3月でした。その時、「ルミネス」というのが、PSPによって発明されたという感覚が僕の中にあるんです。ソニーの久夛良木さん(久夛良木健氏)が「これは21世紀のウォークマン」という言い方をされたんです。PSPはインタラクティブウォークマンのようなイメージがあって、まだスマホのない時代にゲームを外に持ち出して、ヘッドフォンで音楽を楽しみながら遊べるという意味で、そのイメージが「ルミネス」を顕在化させたという感覚がありますね。
セガで「Rez」というシナスタジア的な(※)、共感覚的な感覚のゲームに取り組み始めたのですが、多くの人に「共感覚的なゲームを楽しんでもらいたい」という思いがありました。そこでPSPに乗せるシナスタジア的なゲームとしては誰でも遊べるのでパズルというジャンルが良いのではないか、ブロックを回す度に効果音が音楽化して、すぐ消えずにタイムラインが来てブロックが消えてまた音が鳴る。その繰り返しが当時のスタッフの中でイメージが膨らんだんですね。
※シナスタジア:日本語で「共感覚」という意味
そこから、僕はエンハンスになる前から石原君と一緒に仕事をしてきて、エンハンスでも「Rez Infinite」の「AREA X」もやりましたし、「Tetris Effect」も一緒にやりました。このタイミングで20年目の「ルミネス」を石原君を中心とするシナスタジアチームに作ってもらいたいという気持ちが強くありました。
「Tetris Effect」は“内面的な宇宙”という感じ、インナージャーニーというか自分の世界に深く潜るイメージで作ったのですが、「ルミネス」には外側に向かうような華やかで楽しいという音楽の側面をどうゲームに落とし込むかというテーマが元々ありました。
今回は、プレイステーション 5という、グラフィックス面で大きく進化していて、サウンドもハプティクスもビジュアルも現時点で最高の水準のハードです。その状況で「ルミネス」を作ったら、音楽に絡めて言うと、音楽ライブや音楽フェスの最前列で、ステージの真ん前でステージを見ているような、体験してるような感覚で今回は進めてはどうか、という会話が制作の最初の頃にありましたね。
――どこまでを残して、どこまでを新しくするか。その基準はどこにありましたか?
石原氏:ゲームデザインもアートも、サウンドでも絶妙に絡み合って「ルミネス」らしさが作られてるというのは改めて思いましたね。ベースのゲームシステムにある“タイムラインが通っていって、それが音楽的になってゲームが展開していく”というところは絶対変えたくなかったので、そこは守りました。また、ちょっと言語化しにくいのですが、「ルミネス」らしさが、デザインや音楽などでも存在しています。
無理矢理言語化すると、「ルミネス」が出た2004年の時代感というか。そこには当時のトレンドが存在していて、音やグラフィック、匂いのような、当時のトレンドをちゃんと残すことが「ルミネス」らしさじゃないかなと思いました。ですので、現代的な表現の中にその当時を思わせる・匂わせるようなエッセンスとして、ちゃんとクラシカルな「ルミネス」が存在しているような感じはあるかもしれません。
水口氏:色使いとかデザインから、明るさや華やかさ、楽しさで気分が上向くような要素は「ルミネス」にはあると思っています。昔の「ルミネス」はオレンジが基軸だったと思うのですが、今回は紫という、ライブなどでスモークと共に炊かれるような色を軸にしました。これも色々な議論をして、意識的にこういった色使いを今回はしていこうと。前作がオレンジだったとすると、今回はこの紫という色にルミネスのイメージを持っていこうという会話がありましたね。
石原氏:影絵的なものや、キレイなパスのアウトラインなどは受け継いであったり、影絵とかもそうですね、光と影。
水口氏:ルミネスというのは光が語源で、「ルミネス」が発売された時は“音と光の電飾パズル”というキャッチフレーズがついていました。光というのは、「ルミネス」にとってはすごく大事な要素で、このゲームの随所に光が入ってきます。
もちろん、2色のブロックがあり、できるだけ大きなスクエアを作っていく。それが落としてすぐ消えるのではなく、ビートにあわせたタイムラインが来たときに消えるというゲームの基本的なルールは変わりません。
僕が石原君にお願いしていたのは、そのブロックの質感なんですね。流体的なものであれば回転させたときにプルプルと動くでしょうし、ガラスや宝石のような堅いものであれば粉々に砕け散る。それぞれのステージにあわせてどんなブロックが出てくるか、それがどういう風に消えていくのか、ビジュアルエフェクトやサウンドエフェクトがどうなるか。時にはASMR的な気持ち良くなるような音の組み合わせでそれが起きて、音が物理に影響しているような表現があって、その連続が音楽になっていく。それがエンハンスが目指すナラティブ、つまり物語性ですね。ナラティブ性というのを大切にしたい、それは言葉で語る物語ではなく、効果音から始まり、その効果音が音楽化して、共感覚的な全体的な体験になっていく。そこに込めていく物語性なんです。ですので、ブロックはすごく頑張ってもらいました。
感動するパズルゲーム。「Tetris Effect」との違いとブロックへのこだわり
――このゲームでしか味わえない体験というのは、どういったところにありますか?
石原氏:「Tetris Effect」でもそうだったのですが、シンプルなパズルゲームでありながら、共感覚的な演出が伴って感動的なパズルゲームになるというのは他にないと思っています。パズルを解く楽しさで終わっていたりとか、対戦する刺激を楽しんでる人はいらっしゃると思うのですが、感動して気持ちが動くものって他にあまりないと思っています。
「Tetris Effect」はチルアウトというか、癒しのイメージなのですが、「ルミネス」は楽しさや興奮みたいなものがあって、激しく感情が揺さぶられて、内側から外へこう突き抜けるような。そういう気持ちよさや快感が得られると思っています。
また、ステージ間のトランジションはゲームの間にちょっと目を休ませたりとか、気持ちをリラックスさせて演出を感じ取れるようにしています。VRゴーグルを被りながらパズル何十ステージもこなすって結構しんどいと思うんですよ。そういった意味でも一つ一つ区切ってあるっていうのはVRのためでもありますよね。
水口氏:VRじゃなくてもあのトランジションは楽しいよね。そこは結構頑張ってくれました。
石原氏:演出がライブ的であったり、ミュージックビデオ的なものをアクセントして取り入れていて、フラッシュして画面が切り替わったり、スポットライトが開いて引いていったりとか。そういう演出を楽しむ瞬間でもあって、まるでライブのショーを見ているかのような、そういう仕上がりにもなっています。
――「Tetris Effect」と「Lumines Arise」との違いや、意識された部分について教えてください。
石原氏:まさにブロックだと思っています。テトリスは消す時に列を作るじゃないですか。ですが、「ルミネス」はブロックそのものを消すんです。カチッと固まって、1つの大きなブロックになったものを消すというのは、ブロックが主役であって、ブロックがそのゲームの展開を作り、演出を作り、音楽を生み出す。そういった意味で、「ルミネス」らしい体験や演出というのは、ブロックから起こるという部分にフォーカスしています。そのインパクトがゲームとしての処理負荷の7割をそこに割いているくらい今回はフルパワーでブロックを作りました。
水口氏:そのブロックの手触り感というか。その手触り感が共感覚的に気持ちが良いと思ってもらえたというのは大きかったですね。
「この1つのブロックでゲームができてしまうのでは?」というものを30個ぐらい作っていて、多くのエネルギーを共感覚的な表現に注いでいますね。各ステージ、各ブロックでそれぞれ異なっていて、そこに固有の音が付いてくるので、全てのステージの手触り感が違うし、気分も全然違う。もちろん、音楽も全然違うジャンルになります。
――「Tetris Effect」から「Lumines Arise」に持ってきた要素や橋渡しを担うような内容はどんなものがありますか?
石原氏:意外とそのままスライドしてきたという感じではなくて、ゲームエンジンも違います。「Tetris Effect」はUnreal Engineで作っていて、「Lumines Arise」はUnityで作っているので、技術的な繋がりは意外とありません。ゲーム作りの経験が繋がっているくらいですね。
――Journeyモードは「Tetris Effect」にもあったモードですよね。
石原氏:“Journey”という言葉の通り、繋がりを意識して旅のように目的地を目指す。当時「Tetris Effect」の開発をしていて、そういう意識付けのようなものがすごくいいなと思いました。今までの「ルミネス」は1つ1つのステージが独立した世界で、それを楽しんでいくだけで終わっていました。
ですが、今作では「1つ目のステージがあって、その次はこれ、その次はこれ」というように順番を決めて、前のステージを達成した時の快感や記憶、余韻を残しながら次へ次へと積み上げていく。積み上がっていく体験が旅的で、積み上がっていくことでしか得られない大きな感動が最後に待っているというというのは「Tetris Effect」から引き継いだところですね。
水口氏:最近の僕たちのゲームの特徴としてJourneyというの言葉は必ずついていますね。“旅”と一言で言っても精神的な旅から物理的な旅まで色々あると思うのですが、僕たちは物語性と旅をかけ合わせて、終わった時にプレーヤーにどういう気分になってほしいか、どういうムードに浸ってほしいかということをすごく議論するんです。
石原君からは8つのエリアにはそれぞれの人間の感情を入れたいと提案されたんです。例えば悲しみや、怒りみたいなものも含めてね。喜びや幸せな気持ちなどもありますが、人間はプラスもあればマイナスもある、ポジティブなものもあればネガティブなものもある。それら全てが人間じゃないですか。
それらテーマを良いバランスで入れたいって言っていたんですよね、それはすごく良いアイデアだと思いました。あるステージをやると少し不安な感情になることがある、だけどその後気分がアガってくる。そういう意味で、色々な感情の旅をするみたいなことも含めて、Journeyがあったのかなと思いますね。
――Journeyモードが「Tetris Effect」から受け継いだ要素なんですね。
水口氏:そうですね。また、僕が好きなアイデアとして、「今の時代に『ルミネス』を作っているので、今の時代の気分を反映させたようなものってやっぱり欲しいですよね」と言われたんです。Hydelicとして活動していて、今作で音楽を作った武藤君(武藤昇氏)が石原君と一緒に世界中を旅してきたんですよね。ミャンマーも回ったし、ギリシャも行ったし。
彼らがこの旅を通じて感じた様々なフィーリングがあります。仏教国なので、例えば鐘の音とか僧の声とか色々な音が聞こえてくるんですよね。その後ミャンマーは内戦になってしまったのですが、戦争が良いとか悪いという前に、祈りのステージを作りたいと言われたんです。それはすごく良いアイデアだなと思って、1つのステージにまとめてもらいました。
あとは、青空とひまわりをモチーフにしている箇所では、このブルースカイと黄色のすごく綺麗なステージがあるんです。後半のラスト前ぐらいかな。そこがすごく好きで、ウクライナで起こってることなどを意識すると、祈りというか、平和って大事だよね、ということが制作陣の祈りとして込められてるというのは、すごく好きなところですね。
石原氏:「ルミネス」の象徴は光と影なんですけど、その影の部分をちょっと強めに描いてみようかなと考えました。「ルミネス」って元々アゲアゲなゲームだったと思いますが、今作では全部上向きのステージではなくて、影の部分を強くすることで、そのコントラストが面白く見えないかなと思っていたんです。陰を強く描かないと光が映えずに飽和していってしまうみたいな。
2年の試行錯誤の末に誕生した固有システム「BURSTモード」と本格的な対戦システム
――Journeyモードの8つのエリアの物語性や演出構造について教えてください。
石原氏:ゴールに至るまでに感情の揺さぶりがあります。タイトル画面に出てくる男性が暗闇の中で立ち上がるところから始まるんですけど、立ち上がった男性が、希望の光みたいなものを求めて旅をしていくみたいな始まりなんですよね。“全ての感情を超えた先に何かがある”。そういう物語になっています。
水口氏:ちょうど、プロジェクトスタートした時もコロナの後なんですよ。だからなんかコロナ後、希望から立ち上がるみたいな感覚は、みんなの心に響くんじゃないかという議論があったんですよね。
石原氏:自分自身のためにも、こういうタイトルを作りたいなという思いはありましたね。
――音楽面も強いこだわりがあると伺いました。
石原氏:歌詞にもこだわって作っていて、日本人はフワッと聞いてしまうかもしれませんが、我々も歌詞を考えて監修して作っています。
水口氏:僕たちのゲームの作り方は普通と順番が異なっていて、比較的最初の頃に音楽のイメージを固めてしまうんです。ものによっては音楽が先にできる場合もあります。それは物語性の設計やも気分の設計も含めて音楽が担う役割が強いと思っているからです。
先に作った音楽を、バラバラにしてそれをプレーヤーが操作する操作音にあてはめていったりするんですね。それによって、プレーヤーがプレイをしているのに、「自分で音楽を演奏している?」という気分になるマジックがそこにあります。それは僕たちのゲームに共通する隠れたレシピみたいなものです。そこに、音楽が持っている気分とかムードによって、色も変わるし光り方が変わったりとか、ビジュアルが変わったりとか。その連携でできるのが1つ1つのステージなんです。
最初は歌詞も仮当てで入れますが、物語性が見えてきたときに「こういう言葉をここに入れたいよね」といったアイデアが出てくる時があります。結果的に、物語性やメッセージ性を歌詞に込められるんです。僕たちが音楽を内製する理由はそこで、ゲームデザインとか、レベルデザインのチューニングに全部関係してきます。サウンドディレクターは手触り感のある音の設計が得意なので、ゲームのコンセプトアートを描いたあとに、サウンドチームと話すという。僕たちのゲームにとってはサウンドは血液みたいなものですね。
――「BURSTモード」は対戦モードで使うために生まれたものなのでしょうか。
石原氏:同時にそこも意識して制作していたという感じですね。マルチプレーヤーの対戦を作るための計画としてあったので、シングルプレイでも共感覚的な演出を高めるためのものであり、マルチプレイではその対戦の面白さを拡張するようなものになるよう、その両方を満たすようなものを初めから考えていました。
「BURSTモード」の導入は、正直かなりしんどかったのですが、最終的にいいものができました。「ルミネス」はゲームとしてでき上がっている、完成しきっているので、シリーズが変わってもゲームデザインは変わっていません。そこに手を加えるため「本当に答えがあるのかな」という思いがありました。ですが、「Tetris Effect」でも、あれだけ完成された「テトリス」というゲームを拡張させたので「やれるんじゃないか?」と、同じように諦めずに2年ぐらいかけて様々なバージョンを作って今の形に落ち着きました。
水口氏:「Tetris Effect」の時の「ZONEモード」が生まれたのも本当に開発の終盤でしたね。ほとんどゲームができていたのですが、「やっぱり何かが足りない」と思って、開発期間を2カ月ほど延長して、チームに頑張ってもらったんですね。
その時に、いくつかアイデアがあったのですが、「これを入れたら面白くなりそうだ」というのが、ようやく最後の最後に生まれて、それが最終的に「ZONEモード」という形で「Tetris Effect」に入りました。そのおかげで未だにプレイを続けるユーザーが居てくださるというのは、「ZONEモード」の存在は結構大きいと思いますね。
「ルミネス」に関しても今までと全く同じでも面白いものが作れるとは思っていました。ただ、「Tetris Effect」の「ZONEモード」とはまた違った、今回の「ルミネス」のテーマである、外側に向かって気分がアガっていくような感覚と、ゲームデザインを考えた時の相性として、この2年間でいくつも試した中で「BURSTモード」というものが今の「ルミネス」に合っていたという感じがしますね。
石原氏:積み上がって、そのまま上に上がっていって、余計なブロックを弾いて、最後に降ってくる。それがカジノっぽいというか、興奮に繋がるというか。「Tetris Effect」は内に内に入っていく感じでしたが、「ルミネス」は興奮と相性が良いと思っています。
――今作では、難易度選択やチュートリアルがあったのは印象的でした。間口の広さは意識されたのでしょうか。
水口氏:どんなゲームでも良いゲームの形っていうのはあると思うんですよね。それは間口が広くて、奥が深いという三角形のような状態。理想は誰でもプレイできるようにしたいし、その奥にも入っていける。上手くなる人というのは奥に行けば行くほど少なくなっていくかもしれませんが、全ての人にその可能性があるという作りにするのが、正解じゃないかなと思っているんですよね。
石原氏:今回、マルチプレーヤーの対戦を本格的に作っているんです。最終的にはユーザーさんにはそこも目指していただきたいと思っています。しっかりと対戦で勝つためにはルミネスを理解する必要がある、腕を磨く必要があるので、そこを下支えして、うまくプレイしていただけるような体験フローを考えましたね。
今までの「ルミネス」にはしっかりとした対戦モードがなくて、ミニモードのような存在でした。そのために、対戦でも活きる「BURST」というシステムをゼロから考えて、それを使ってぶつかりあうシステムになっています。そういう意味で、「Tetris Effect」と同様に対人戦にも適したゲームデザインになっています。
新規・経験者双方への魅力。「時間泥棒」と呼ばれたその理由
――シリーズ経験者にファンの方が多いと思うのですが、経験者向けのアピールポイントについて教えてください。
石原氏:PSPの時の「ルミネス」にはなかった演出的な進化と深みから、あの時は味わえなかった感動があるという点です。過去作に比べると、ステージ1つ1つの作り込みが全く違います。展開をつけて、音楽をつけて、演出をしっかりつけて一つ一つの世界をちゃんと作っている。そういう点では体験の深さが違うと思いますね。
水口氏:やっぱり気持ち良さが高いと思いますね。全体的な解像度が上がって、表現力が上がって、僕たちが目指すシナスタジア表現、共感覚的な体験の解像度が全体的に底上げされているので、そこは圧倒的に違いますね。
PSPでリリースした初代「ルミネス」は新しいゲームメカニズムの提案や、ハンドヘルドの提案でもあったと思うのですが、今回はプレイステーション 5やPCで迫力のあるゲームプレイを楽しんでもらうのが大きいと思いますし、Steam Deckの認証も受けたので、Steam Deckを持ってヘッドフォンを着けてノリノリで遊ぶと気持ち良いと思いますね。
――それでは、新しいユーザー向けにはどうでしょうか?
石原氏:新しいユーザーの方にはパズルゲームであることを気にせずに、この雰囲気に惹かれるものがあったら手に取って欲しいですね。もちろんパズルゲームではあるのですが、他のゲームと同等の深みがあるので、とにかく遊んでみてくださいという感じですね。
水口氏:僕たちはパズルゲームにこだわってるっていうわけではなく、ゲームとシナスタジア的な気持ちよさを融合した体験設計をゲームでやりたいと思ったときに、パズルって相性がいいんです。それが「テトリス」であり「ルミネス」なんですね。だからこそ、パズルゲームに興味がないよという人こそが、僕たちにとって一番遊んでもらいたい人ですね。
チュートリアルでルールを覚えてもらったら、徐々に誰でも遊べるようになります。そして、プレイしていると上達していって、最初は聞こえなかった音楽が少しずつ聞こえ始めて、気持ちよさを体感できるような状態になっていく。それが少しずつ積み上がっていくというのが「ルミネス」の良さでもあるんです。
「ルミネスってマラソンみたいだよね、ジョギングみたいだよね」と言う方がいて、「今日は3キロ走れた。次の日はもう200メートル長く走れる。そして何日か経つと4キロ走れるようになる」。ちょっとずつ上手くなる感じを、そう表現される方が多いんです。ちょっとずつ上手くなっていく、昨日よりも今日の方が上手いというのがずっと続いてるみたいなイメージですね。ですので、遊べば遊ぶほど味が変わってく感じというのは僕たちのゲームの特徴かもしれません。1回クリアして終わりになるゲームを作っていません。未だに20年前の「ルミネス」を遊んでる方もいるくらいですからね。
ただ、気をつけてほしいのは、Steam Deckなどで山手線の中でプレイしていると(集中するあまり)気がついたら何周かしてるようなことがあるかもしれません(笑)
石原氏:感覚が緩まってトランス状態になるというか、気持ちがふわっとしちゃうので。
水口氏:そういう意味では大事なミーティングの前や、大事な約束の前にやるのはやめたほうがいいかもしれません。PSP版が出た時に、欧米では“タイムシーフ”、つまり時間泥棒というあだ名がついたんですよね、時間泥棒というのは今作でも変わらないと思います(笑)
――VRモードならではのこだわりについて教えてください。
石原氏:体験として、“ライブ的”というのがあったので、自然とVRモードもハマるだろうなと思っていました。こちらではダイナミックさが出るように、カメラを調整していて通常のプレイ時とカメラ位置が違っているんです。その空間にいる臨場感を大事にするようなチューニングを行なっていました。遊んでいると気づかないかもしれませんが、VRでしか入ってないエフェクトやヘッドセットの振動などもあって、VRならではの体験にしています。
また、PSPで見ていたあの盤面が空間にあるということ自体が味わったことがない不思議な感じだと思います。「Tetris Effect」の時にVRでテトリスをやったときと同じような新鮮さがあるはずです。VRだと“ブロックがそこにある感じ”がしますね、ブロック遊びをしているような感じが増すと思います。
――「HUMANITY」をはじめ、エンハンスのゲームはアーティスティックなスタイルを採用することが多いと思うのですが、その理由について教えてください。
水口氏:理由は特にないですね。アート的だから採用してるというのは全くないです。
「HUMANITY」は最初にデモを見たときにインパクトがすごくて、こんなに大量の人が出てきて、大量の人が物理計算がされていて、「クッキードーザー」のようになっているのを見た時に、これはすごいなと。ウキウキもするし、驚きもあるし、これをどうやったらゲーム化できるかというのをついつい考えてしまいました。それで、1カ月経っても夢に出てきたので、中村勇吾さんに連絡して「これをゲーム化しませんか?」というオファーをしたくらい、アートからは全然入っていないですね。
結果的にアート的に見えるとしたら、中村優吾さんというデザイナーが持つアート性のこだわりとか、デザイン面でのこだわりがゲームにうまく乗ったということだと思います。それを僕はプラスにしか考えてなくて、そこは注文をつけるところではないし、優吾さんの表現を思う存分追求してくださいと。結果的にそうなったというか、結果論ですね。
石原君もそうですが、デザインのアーティストやアートディレクターの方など、強いこだわりを持つ方々はそれぞれのスタイルがあります。僕は純粋にそのアート性がそのまま出れば良いと思いますし、それを操作するようなことは僕自身はあまりしないですね。チームの中から湧き上がってくるものを、そのまま表現する事が多いかな。
石原氏:制作スタッフにアート作品が好きなメンバーは多く、そういったものに関心を向けているというのはあると思います。具象的というよりも広く抽象的にメッセージや雰囲気を伝えているテイストの方が好きで、それをうまく活用して作品を作ったり、メッセージをさらに強化したり見せたりして、多くの人にそれを届けるみたいなところは魅力には思っていますね。「自然とそう思っちゃう」とも言えるかもしれません。
水口氏:俗に言う“ザ・ゲーム”という表現はうちからはあんまり出てこないですよね。それは在籍しているメンバーの特性かなと思います。
石原氏:「Rez」から始まった流れかなと思いますね。それに惹かれたメンバーが集まったから、自然とそういったクリエイティブに変わっていったと思います。
水口氏:昔、「Rez」を作っていたときに同時に作っていたのが「スペースチャンネル5」だったんです。全然違うじゃないですか。全然違うんだけど、僕の中ではほとんど同じなんですよね。
ほとんど同じっていうのは、見てるポイントが多分ちょっと違うと思うのですが、音楽をゲームの体験に練り込んでいくという作品を作るという意味では同じところに立っているんですが、向いてる方向がちょっと違うんですよね。
それらの仕立て方というのも、「スペースチャンネル5」的なゲームデザインにあったデザインが存在していて。踊って、戦って、ドンドン増えるというのをイメージしたときに、「デザインするとしたらこっちじゃない?」というのが紆余曲折あって、あのスタイルなんですね。最初はすごくシリアスなスペースオデッセイな感じだったんですよ。モデルの女の子が出てきて、すべてが雑誌の切り抜きのようにクールな感じだったのですが、「それじゃつまらないよね。思いっきりコメディにした方がいいんじゃないか、コミカルだけど真面目に」というか。あの時の気分や色の感じがあったのですが、結果的に音楽もジャズっぽいテーマにするけど、みんなで盛り上がっていくようなものになったわけです。
一方で、全然アートスタイルが違う「Rez」も同時に作っているわけです。「Rez」で言ってることがあるとすれば、最初から「なるべくデザインするな」ということですね。それは「最初からディテールを書き込まないでくれ、最初は本当に丸とか四角とか三角とかのシンプルな形だけでいいから」って。ゲームデザインの最初、0から1を生むところをやり続けたんです。
つまり、すごくシンプルなオブジェクトが飛んでいて、それを撃ったときに効果音がなる。それが音楽にあわせてクオンタイズされる、つまり音楽の譜面のようになっていく構造でシューティングゲームを作ると、きっと気持ち良いはずだよね、そして実際に気持ち良かったんです。ただ、それだけでゲームが完成するかというと何かが足りなくて、今日の話で言うと「Lumines Arise」でいうところの「BURSTモード」のようなものですね。
「やってる行為自体は気持ちがいいんだけど、どっかで飽きてきちゃうよね」とか「気持ちが揺らがないよね」っていう瞬間があって。「じゃあ特別なキューブを置いて、そのキューブを8回打ったらワープするっていうのをたくさん置いてみようか?」ってやってみたんですね。そうすると、演奏してる感じと、DJがトラックを変えていくような感じが融合して、ゲームが動き始めたんですよ。
そこから初めてデザインが始まるんです。ただ、そこにいろんなデザインを具体的につけ始めると、今度は音のイメージを超えてなんか暴走しちゃうというか。「だから、なるべくミニマムに抑えてくれ」みたいな会話がありました。僕はそういうお願いはするのですが、線画としてレトロな感じのようなあのスタイルを選んだのは当時のアートディレクターです。僕が言っていたお願いは「なるべくディテールを描かないでくれ」というだけです。そこから、シンプルな線画とかパーティクルが生まれてきてという感じですね。
「ああいうのが大好きなんですね」と誤解されることがあるのですが、スタートは「体験をどうする?」という話なんです。その体験を設計する上で、「スタイルはこうあるべきだよね」となっていくことの方が多いと思います。
石原氏:引き算した後というか。情報がパンパンに入っていると、音楽や柔らかい演出入る余地がないんですよね。そういった意味でシンプル目であまり具象的じゃない方が、隙間がある方が入っていきやすいやり方なんですよね。
水口氏:それが、多分共感覚的な体験設計には一番合ってると思いますね。
石原氏:体験を意識した最適なデザインを選んでるというイメージですね。
――「デイヴ・ザ・ダイバー」とのコラボレーションの経緯について教えてください。
広報担当者:パブリッシングチームの方で、PlayStationファミリーといえば「アストロボット」でしょう、という経緯でコラボ先が決まっていきました。そうなると「Steamはどうする?」という話になって、「Lumines Arise」と相性が良いゲームはあるかな、というところから、うちのスタッフの1人が「デイブ・ザ・ダイバー」が大好きで、そこから、パブリッシャーのミントロケットさんに話を聞いてみることになりました。
そこで、ミントロケットのCEOを務めるファン・ジェホ氏が「ルミネス」の大ファンで「PSPですごくプレイしていたのでとても嬉しいです、ぜひ」とトントン拍子で進みました。ゲームとしては異なるジャンルなのですが、お互いに良い相乗効果が生まれるんじゃないかということで、スムーズに話が進みました。
石原氏:今作では、アバターに手と足が生えることでキャラクター化したんです。それによってコラボレーションできたというのはあると思います。そういう形のアバターになったおかげで、アストロボットもちょうどこのぐらいのサイズ感ですし、「『デイヴ・ザ・ダイバー』のデイヴも入れられるんじゃない?」みたいな話ですね。
――最後に、意気込みやファンに伝えたいことをお願いします。
石原氏:「Tetris Effect」を遊んだ方はより自然に「Lumines Arise」に入っていける気がしています。同じメンバーが作っているという理由もあるのですが、安心して手に取っていただければと思います。「ルミネス」シリーズとしては最高の「ルミネス」に仕上がっていますので、ぜひ楽しんでください。
水口氏:「これがエンハンスの最新作です。今のエンハンスの最新でできることを楽しんでください」という感じですね。エンハンスの代表としては僕らが信じている、共感覚的な体験の気持ちよさというのを、今回この「Lumines Arise」でまた新しい形にでき上がったので、石原君が言うように「Tetris Effect」が楽しかったと感じた方は、多分「Lumines Arise」を「Tetris Effect」と違う角度で見てくれると思いますね。
例えば、1人で自分自身とじっくりと向き合いたいという気分の時と、大勢の人と空間と時間を共有したいという気分の時とか「気分的に今日はアガっていきたいな」とか、「寝る前はやっぱりテトリスかな、起きたらルミネスかな」みたいに選んで遊んでみてほしいですね。
石原氏:大作のゲームとゲームの合間にちょっとプレイするというのもいいですね。大型タイトルと大型タイトルを遊ぶ前に「Lumines Arise」でちょっとブレイクして行くというのはオススメですね(笑)。
――本日はありがとうございました!
(C) Enhance Experience Inc. 2025 (C) Resonair / BANDAI / BNEI. All rights reserved.



















































![【Amazon.co.jp限定】映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち 数量限定豪華版Blu-ray ≪とかいを映すうるうるアイズぬいぐるみセット付き≫(メーカー特典あり:子ザメちゃんのふわふわキーホルダー付き)(Amazon限定版特典:オリジナルブランケット付き)(購入特典:オリジナルアクリルキーホルダー付き) [Blu-ray] 製品画像:1位](https://m.media-amazon.com/images/I/51p1HeqKVsL._SL160_.jpg)
![【メーカー特典あり】READING HIGH 『ONE 〜The last of 新選組〜』(メーカー特典:キャストビジュアルB4ポスター付)(完全生産限定版) [Blu-ray] 製品画像:5位](https://m.media-amazon.com/images/I/31ZhOfq+4yL._SL160_.jpg)
![ラブライブ!スーパースター!! ファンディスク ~北海道はDEKKAIDOW!~[Blu-ray] 製品画像:6位](https://m.media-amazon.com/images/I/519pWvbQQ2L._SL160_.jpg)

![【Amazon.co.jp限定】Ensemble Starsl!Cast Live Starry Symphony - Superbloom - BOX盤 (クリアポスター(Day2絵柄)付) [Blu-ray] 製品画像:8位](https://m.media-amazon.com/images/I/31by3MxRI5L._SL160_.jpg)
