【特別企画】
「学マス」は毎月100話以上のコミュを制作。クオリティと量産を両立する制作の裏側【CEDEC2025】
2025年7月24日 14:49
- 【CEDEC2025】
- 開催期間:7月22日〜7月24日
- 会場:パシフィコ横浜 ノース/オンライン
本日7月24日に最終日を迎えた開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿ではQualiArtsの宇野雅視氏、杉村貴之氏、山城悠太郎氏によるセッション「『学園アイドルマスター』のコミュができるまで 〜制約の中で光る演出術と制作システムの工夫〜」の模様をお届けしていく。
本セッションでは「学園アイドルマスター(学マス)」におけるストーリーパート、いわゆる“コミュ”の制作の裏側を公開。「学マス」ではリリース時点で800話以上のコミュがあり、これらを効率的に、一定の品質を保ち、事故を防止するための制作ワークフローや体制などが語られた。なお、講演の一部には「学園アイドルマスター」のネタバレが含まれる。
毎月100話分以上の縦画面コミュを制作。量産とクオリティのバランスをとる工夫
「学マス」のコミュは、テンポ感とカジュアルさを重視し、より多くの物語を届ける「縦画面コミュ」、核を作り込み、アニメを見ているかのような重厚な読後感のある「横画面コミュ」の2つに分類される。最初に宇野氏より縦画面コミュの工夫が語られた。
縦画面コミュは、プロデューサーであるプレーヤーと担当アイドルの1対1の関係性や成長を描く「親愛度コミュ」のほか、アイドルコミュ、サポートコミュ、イベントコミュなどで使用されている。このような縦画面コミュはリリース時点で約800話、2025年7月時点で2,000話以上実装されており、毎月100話分以上の制作を行なっていることが明らかになった。
非常に多い縦画面コミュの量産とクオリティのバランスを取るため、制作にあたっては2つの工夫がある。1つ目は「効率化」のための工夫で、縦画面コミュでは基本的にカメラを「引き」と「寄り」の2つに固定し使い分けているほか、アイドルの立ち位置も固定することで効率化を行なっている。
2つ目は「物語とアイドルを引き立たせる」ための工夫。効率化することで一定のクオリティは担保できるが、ルールに固執して本来表現できるはずの魅力をこぼしてしまうのは本末転倒になるため、あくまで大切なのは「物語とアイドル」という前提で加減を見ながらプラスアルファの演出を加えていることが明かされた。
リリースまで“あと1年”の時点で制作開始。アニメを見ているような「初星コミュ」
続いては杉村氏より横画面コミュが用いられている「初星コミュ」について語られた。本作は学園モノの「アイドルマスター」とこれまでとは異なる作風となっているため、まずはプレーヤーに「学マス」の中身を知ってもらうために、世界観やキャラクターを身近に感じてもらえるよう入口となるコンテンツとして「初星コミュ」は生まれた。全66話あり、総尺は5時間ほどとなっている。
「初星コミュ」のコンセプトは2つ。1つ目は「アニメのような感覚で見られるストーリー体験」で、どんな層のプレーヤーでも入口として触れやすい形で視聴してもらうため、タップ操作がなくアニメを視聴しているような体感を目標にした。
2つ目は「シナリオの魅力を可能な限り映像化して表現すること」で、制作の工数や手段には一定の制約があるが「いくらシナリオが良くても、映像化で失敗すると退屈な作品になる」ため、続きを見てもらえるように映像演出への工夫を心がけた。その結果、新たなエピソードがリリースされる度、プレーヤーの満足度も高く「アニメみたいで面白い」、「早く次が見たい」といった感想が届いているという。
だが、制作にあたってはいくつかの制約があり、1つ目は「処理負荷の都合上、画面内に同時に描画できる人数はメインキャラモデルで3人まで」、2つ目は「シナリオ上、プロデューサーは登場するが、直接描画はしないこと」、3つ目は「スケジュール工数の都合上、演技モーションのシーンごとの収録はできないこと」などが挙げられた。これらはカメラワークや汎用モーションを工夫することで実装している。
また「初星コミュ」の制作フローも公開。当初はシナリオがフィックスしたあと、絵コンテの制作とMayaによるVコン制作が行われていたが、せっかく作ったVコンはQualiArtsの内製ツール「Uguiss」ではカメラ以外利用できず、二度手間なフローになっていた。
加えて「初星コミュ」は制作の立ち上げが遅く、リリースまであと1年という段階で最初の制作が開始されており、間に合わせるためにもクオリティと量産のバランスをとり、絵コンテとMayaによるVコン制作をなくし、シンプルなフローにしたことが明かされた。
さらに「初星コミュ」の映像演出においては、“伝わる演出”を心がけ、“テンポの良さ”を大切にすることを方針とし、セッションではカメラを活用した表情や性格表現、コメディのテンポ感、話題の視覚化をテーマに、ゲームで使われなかった“ビフォー”と実装された“アフター”の貴重な映像も公開された。
「学マス」は映像再生方式×インタラクティブ方式のハイブリッド
最後に山城氏よりそれぞれのコミュ制作を支えたシステムが紹介された。「学マス」のコミュには大きくわけて、リアルタイムレンダリングでシーク操作ができる動画視聴に近い「映像再生方式」、タップ操作での進行が基本で選択肢によって内容が変化する「インタラクティブ方式」の2つが存在する。
これらは両方ともQualiArtsで開発実績があったが、それぞれを別システムで実装すると開発効率が悪くなるほか、「初星コミュ」の制作チームから「シーク操作可能な映像再生方式で、選択肢による分岐も行いたい」という要望があり、システムを分けるだけでは解決しないという課題があった。
そこで最終方針として「映像再生方式」と「インタラクティブ方式」を1つのシステムで実現。制作環境としては、映像制作に利点の多い「タイムライン方式」を採用し、タイムラインをベースとしたシステムで、待機や分岐といったインタラクティブな挙動を行なえるよう拡張したことが明かされた。
基本的な制作はUnity Editorで実施。セッションでは「スクリプトエディター」や「タイムラインエディター」、「インスペクター」の画面も公開されたほか、タイムライン方式でインタラクティブな挙動を実現する仕組みについても語られた。
セッションではゲーム内で使われなかった映像も公開。8月4日までタイムシフト視聴を実施中
ここまで、CEDEC2025「『学園アイドルマスター』のコミュができるまで 〜制約の中で光る演出術と制作システムの工夫〜」の模様をお届けしてきた。今回のセッションで「学マス」は毎月100話以上という膨大なコミュのクオリティと量産を実現するべく、様々な制約がある中での工夫が明らかになった。
なお、本セッションは一時間にわたって「学園アイドルマスター」のコミュ制作の裏側が語られており、ゲーム内で使われなかった映像も見ることができる。「CEDEC2025」のオンラインパスを購入すると、8月4日10時までタイムシフト視聴も可能なため、気になる方はぜひご覧いただきたい。
□CEDEC 2025「『学園アイドルマスター』のコミュができるまで 〜制約の中で光る演出術と制作システムの工夫〜」のページ
THE IDOLM@STER TM & (C)Bandai Namco Entertainment Inc.











































































































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