【特別企画】
ピザの時間だ! 異色作「ピザ・タワー」はゲーム部分が奥深かった
ピザ屋オヤジと走る、激速&混沌の敵蹴散らし系ハイスピードアクション
2024年8月30日 14:47
- 【「ピザ・タワー」】
- 8月28日 発売
- 価格:2,160円
先日、8月27日に任天堂が放送したIndie Worldで発表され、とりわけ異彩を放っていたインディータイトルがある。まるで平成初期のペイントソフトによって描かれたようなイラストと、色んな意味で限界に達してしまったような中年オヤジが主人公の「ピザ・タワー」だ。
今作は、Steamにて2023年1月27日に発売されていたPC向けのアクションゲームだが、この度Nintendo Switchでも配信されることになった。なおNintendo Switch版の発売に合わせて、Steam版も日本語に対応した。
Indie Worldでは、さまざまなインディータイトルのラインナップが発表されていたが、ほかと明らかに毛色が異なる「ピザ・タワー」に、妙な興奮を覚えたユーザーもいるのではないだろうか。ということで、配信されたばかりの「ピザ・タワー」Switch版を実際にプレイしてみた。本稿ではそこで得られた感触などをお届けしていきたい。
中年オヤジが超スピードで爆走する横スクロールアクション
今作にストーリーらしいストーリーがあるわけではないが、オープニング映像ではことのあらましがアニメーションで描かれていた。
ある日、ピザ屋の横に突如出現した謎の塔ピザ・タワーから、ピザのモンスターが使者としてピザ屋にやってくる。そこで、ピザ・タワーの攻撃によってピザ屋が破壊される危険を察知した店主ペッピーノは、自分の店を守るためにピザ・タワーへ殴り込みに行く……というもの。
ゲームは基本的に横スクロールのステージを駆け抜けて、捕えられた野菜たちを助けながら、最奥の柱「ピラージョン」を破壊し、制限時間以内にスタート地点まで戻ってくるのが主な流れ。いくつかのステージを攻略すると、ピザ・タワー内でフロアボスとのバトルが待っている。
1つのステージを往復してクリアするまで、だいたい10分かからない程度のボリューム感だ。ステージクリア後はゴールにかかった時間やコンボ数などからスコアが算出されて、クリアランクが決定する。コンプリート癖のあるプレーヤーならば、最高ランクを目指して繰り返し遊べるようになっている。
プレーヤーキャラクター、ペッピーノを含むキャラクターデザインの個性はかなり強烈で、1度でも目にしたらしばらくは記憶に残りそうなビジュアルである。
ゲーム中はそんなペッピーノの顔が画面右上に表示され続け、敵を倒し続けたコンボ数に応じて、表情をコロコロと変化させる。気が抜けたときの表情は冴えない中年オヤジそのものなのだが、ノリに乗っているときはだいぶコワイ。敵なのか味方なのかさえよく分からない、ピザのモンスターも児童の落書きのようで、どことなくキャッチーさの欠けた不気味な見た目。
「ピザ・タワー」は、そうした強烈なキャラクタービジュアルによって展開される、ハイスピードな横スクロールアクションだ。が、このビジュアルであっても、ゲーム自体は実に良く出来ているから馬鹿にできない。
その所感を例えるなら、「ワリオランド」を彷彿とさせるダイナミックなアクションに、クラシックスタイルな「ソニック」シリーズが持つ、横スクロール由来のスピード感をプラスした、と言うべきだろう。ピザ屋の店主とは思えないほど豪快なアクションで敵を蹴散らし、行く手を阻む鉄のブロックさえも、身ひとつでブチ壊してしまうのがなんともぶっ飛んでいる。
走り、跳躍し、転がって、ステージ内をとにかく全力疾走!
ペッピーノの基本アクションは「つかみダッシュ」「マッハダッシュ」「壁ダッシュ」と、いずれもダッシュである。これらに加えて特定の動作中にスティック下入力でダイブしたり、転がったり、スーパージャンプしたりと、アクション操作の派生がいくつか存在している。
中でもプレイ中に一番使用頻度が高そうなのはマッハダッシュだろう。マッハダッシュは横向きに高速移動するものだが、移動ルート上の敵をそのまま吹き飛ばすことができて、ゲームの爽快感に貢献している。
ただし、便利だからといって多用していると、それが罠にもなっている。中にはフォークの先端をこちらに向けて歩いている敵がいたりして、これに正面から衝突してしまうとコンボが途中で途切れてしまう。コンボは、当然スコアに影響してくる。よって高ランクでのクリアを目指すためには、敵に対して効果的な攻撃手段を選択する必要が出てくるのだ。
マッハダッシュ以外の攻撃手段といえば、敵を掴んで投げる、ジャンプからのボディプレスで潰すといった方法などがある。これらを使えば、正面から倒しづらい敵も安全に処理できるだろう。
だが、柱を破壊してスタート地点に戻る際は制限時間のことを考えても、スピード感が特に重要視される。敵を無視するのはアリだが、高ランクを狙うとなると、先ほどのアクションを思うように繰り出しつつ、敵を華麗に撃破していく精密な操作が求められるわけだ。
ペッピーノを使いこなすまでの慣れは結構大変で、マッハダッシュを制御しきれずそのまま壁に激突してしまったり、壁ダッシュを中断したいのに、また壁ダッシュで壁を登り始めてしまったりはプレイ中ザラである。サクッと倒したい道中のザコ敵も、ちょっとした凡ミスで倒しそびれる場合が多々ある。
しかしユニークなのは、ステージ中の落下死や敵からの攻撃を受けても、ゲームオーバーにはならないという点。そもそも、ライフポイントのような概念が存在しない。
敵から攻撃されればコンボが途切れ、落下死すればその手前からのやり直しが効く。なので、最初のうちはとにかく強引なプレイでも、クリアだけを集中して目指すことができる。その代わり、制限時間を超えるとピザのモンスターが追いかけてきて、接触した瞬間にゲームオーバーとなる。
ペッピーノは天井の低い通路を転がって進み、壁ダッシュで届かない空中の足場はスーパージャンプで到達する。ブロックによって塞がれた壁もマッハダッシュでぶっ壊し、柱までの歩み……というか“走り”を止めることはない。
こうした動作は比較的シームレスに繋がり、ペッピーノの操作レスポンスもかなりスピーディ。ゆえに先ほど紹介した通り、プレーヤーが彼をコントロールし切るのは中々に難しい。思い描いた進行ルートを小気味良く進むというのは、おそらく1回のプレイだけで実現するのも困難だと思う。
ステージ内の隠しルートの存在と、クリア時のランクを考慮しても、繰り返しのゲームプレイで腕を磨く前提の設計になっているのは確かだ。ステージは進むたびに難易度が向上し、ペッピーノを使いこなす技量も相応のモノが要求されてくる。
つまり今作をクリアするつもりならば、アドレナリン全開のピザ屋のオヤジとシンクロ率を高めなければならない。そのためにはある程度ステージ数をこなして、プレーヤー自身の練度を上げる必要がありそうだ。
こんな見た目でもゲーム部分の奥深さはピカイチ
どのアクションでもペッピーノの表情は秀逸で、とにかくコミカル一辺倒。また、ペイントソフトによって描かれたような、線画イラストがヌルヌルとアニメーションするのも、よく考えたら珍しい見せ方だし、どのようにして制作されているのかかなり興味深いところだ。ちなみにオープニング映像や、柱破壊後のステージ逆走パートで流れている楽曲は、無駄にカッコいい。
正直、ピザ屋であることがどのようにゲームに関連しているのかと問われたら、プレイをしていてもまったくもってわからない。遊べば遊ぶほど、シュールで混沌とした作風というのを実感せざるを得ない。
それでも、豪胆過ぎるアクションから求められる操作の精密性のギャップや、素早く、的確にステージ内を疾走していく奥深さは、横スクロールアクションゲームが好きなプレーヤーなら楽しめること請け合いだ。
ほかでは見られない、ピザ屋の驚異的な奮闘ぶりをその目に焼き付けることになるだろう。
(C) Tour De Pizza Inc