【特別企画】
「空の軌跡FC」が20周年! まさか当時は20年続くとは思っていなかった「軌跡」シリーズ始まりのタイトルを振り返る
2024年6月24日 00:00
- 【英雄伝説 空の軌跡FC】
- 2004年6月24日 発売
2004年6月24日に日本ファルコムからPC向けにリリースされた「英雄伝説 空の軌跡FC」が、本日2024年6月24日で発売20周年を迎えた。
本作は1989年より続く日本ファルコムの人気RPG「英雄伝説」シリーズの第6作となる作品だが、「英雄伝説」シリーズは第1期となる「イセルハーサ編」や、第2期の「ガガーブトリロジー」とは世界設定は異なっている。「英雄伝説」シリーズとしては第3期にあたる「軌跡」シリーズの記念すべき第1作目が、「英雄伝説 空の軌跡FC」だ。
「空の軌跡」シリーズとしては「英雄伝説 空の軌跡FC(ファーストチャプター)」、「英雄伝説 空の軌跡SC(セカンドチャプター)」、「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」の3作から成るが、本稿では第1作目にあたる「英雄伝説 空の軌跡FC」に焦点を当てている。
また本稿では「英雄伝説 空の軌跡FC」及び「軌跡」シリーズのネタバレを取り扱っているので、注意してほしい。
ゼムリア大陸のリベール王国で生きる人々の物語を描いた、原点作
本作は、20年続く超大作「軌跡」シリーズの第1作目となる。
PC版が出た当初は「英雄伝説VI 空の軌跡」というタイトルで発売され、続編へと続くことには触れられていなかったが、2006年に2作目にあたる「英雄伝説 空の軌跡SC」が発売されて以降、PSP版やPS Vita版、PC版も「英雄伝説 空の軌跡FC」に改題した。
舞台となるのは、架空の世界であるゼムリア大陸の中のリベール王国という小さな国だ。「民間人の安全と地域の平和を守る」という「遊撃士(ブレイサー)」が存在し、それを束ねる「遊撃士協会(ブレイサーギルド)」はゼムリア大陸の各国に支部がある。
本作の主人公であるエステル・ブライトは、冒頭で準遊撃士となる。準遊撃士とはようは見習い遊撃士で、そこから修行を積み重ねることによって正遊撃士へと昇格するのである。ちなみに遊撃士にはA級からG級までランクがあるが、非公式にはS級遊撃士が存在し、S級は大陸全土にたった4人しかいない。
エステルはポジティブを絵に描いたような、元気が取り柄な女の子。持ち前の明るさからか周囲からとても愛されており、「太陽の娘」とも呼ばれているほどだ。
父親は、遊撃士のカシウス・ブライト。「軌跡」シリーズのファンならばその名を知っている人も多いと思うが、エステルも「空の軌跡FC」の中では物語終盤までカシウスの詳しい経歴を知ることがなかった。
そしてエステルと共に育ったブライト家の養子ヨシュア・ブライトも、物語の冒頭で準遊撃士となり、エステルと行動を共にする。ヨシュアは冷静沈着で、暴走機関車のようなエステルのフォローに回りがち。
幼少の頃からエステルに深い愛を抱いている。(もちろん家族としての愛情ではなく、異性としての愛情)
一方のエステルはヨシュアのことを弟としてしか見ていなかったが、物語の過程でヨシュアへの愛を自覚していくのだ。
本作は、エステルとヨシュアが愛を育んでいく物語のように見える。しかし、「空の軌跡FC」の終盤で、全ての記憶を取り戻したヨシュアは、エステルに一方的に別れを告げて、姿を消してしまうのだった。
このED、当時はさぞかし驚いた人も多かっただろうと思う。
実は筆者はPC版「空の軌跡SC」が発売される直前に「空の軌跡FC」をプレイしたため、続編があるということは既に知っていてプレイしたのだが、それでもプレイ時は「ここで終わるの!?」という驚愕に包まれたものだ。発売当時にプレイした人たちは続編があるということすら知らず、しかもそこから「空の軌跡SC」まで2年近く待つことになったのだから、相当なしんどさがあったに違いない。(この後、「閃の軌跡」などでも、同じように「ここで終わるんかーい!」というようなEDが登場するのだが……)
こう書くと未完の物語ではあるものの、本作の完成度は非常に高い。
確かに「空の軌跡SC」があって完結する物語(「空の軌跡 the 3rd」は後日譚)ではあるが、「空の軌跡FC」だけでも40時間以上(サブクエ込み)をかけて丁寧に語られているストーリーは、王道ながらも熱い展開が次々とやってきて飽きさせることがない。いわゆる元祖少年マンガ的な展開が多く、特にキャラクターに感情移入しがちなプレーヤーほど盛り上がるのは間違いなしだ。
エステル、ヨシュアはもちろんのこと、ふたりの先輩遊撃士として登場する「銀閃」の異名を持つシェラザード・ハーヴェイ、自称詩人のオリビエ・レンハイム、世界的に有名な導力学者ラッセル博士の孫娘ティータ・ラッセル、「重剣」の異名を持つ遊撃士アガット・クロスナー、ジェニス王立学園に通う女学生のクローゼ・リンツ、「不動」の異名を持つA級遊撃士ジン・ヴァセックら、8名の仲間で進めていく物語で、20年の歴史を持つ「軌跡」シリーズの中でやがて関係性が変わっていくキャラクターたちも多く居るのが、シリーズを追っていて楽しいところのひとつだ。
また、筆者の「軌跡」シリーズの中の推しキャラのひとりであるレオンハルト(レーヴェ)など、初出は「空の軌跡FC」、メインに描かれるのは「空の軌跡SC」、というようなサブキャラクターも登場する。
レーヴェについて少々語らせていただくと、リベール王国軍のリシャール大佐の下で王国軍情報部のロランス・ベルガー少尉と名を騙って登場し、アガットと対戦したり、リシャール大佐のクーデターを裏で操ったりと、暗躍。「空の軌跡FC」では2回戦うこととなるが、特に後半戦は最強の強さでもってエステルらを迎え撃つ。
……という、このレーヴェ(ロランス)が、とにかくかっこよく、すぐ敵側のキャラクターに陥落してしまう筆者は、漏れなくレーヴェに落ちてしまうのだった。なお、このレーヴェが本格的にロランスという名を棄て、レーヴェとして活躍するのは「空の軌跡SC」でのこととなる。彼は実は軌跡シリーズにて暗躍する結社「身喰らう蛇」の実行部隊である最高位のエージェント「執行者」で、執行者No.II「剣帝」レオンハルトが、その正体。「空の軌跡」を「FC」、「SC」とプレイしてレーヴェのことを覚えていないというプレーヤーは、いないのではないだろうか。
実際、その人気の高さから「レーヴェ物語」というマンガも連載されていたのであった。しかもこのレーヴェ、なんと20年経った今になってアクリルスタンドなどのグッズが販売。筆者、歓喜。ありがとう、キャラクターグッズに溢れた現代。
□日本ファルコムのマンガ「空の軌跡外伝 レーヴェ物語1」のページ
□コスパの「レオンハルト アクリルスタンド [英雄伝説 空の軌跡]」の商品ページ
導力革命、空の女神、七曜教会など、後の「軌跡」シリーズにもつながる独自の世界が広がる
本作の物語は、エステルが遊撃士として受ける依頼によって進行していく。
いわゆるメインシナリオに関わるメインクエストと、それ以外のサブクエストで構成されており、サブクエストはこなさずともメインストーリーを進めることが可能だが、この先20年以上続くこととなる「軌跡」シリーズの世界観を余さず味わうためには、サブクエストも実質必須のクエストと言えるだろう。
サブクエストの量は非常に豊富で、メインクエストと関係がなさそうに見えつつもメインへの伏線となっているものもあり、プレイしていて非常に楽しいものばかりだった。
本作では、人々の生活は導力器(オーブメント)と呼ばれる機械仕掛けのユニット技術によって支えられている。50年前、導力学者エプスタインは古代の遺物アーティファクトの機構を解明し、大量生産が可能で様々な分野にも応用できる汎用導力器を開発。エプスタイン博士の弟子であるラッセル博士は、リベール王国にオーブメント技術をもたらした。以降、リベール王国はオーブメント開発の最先端の場となっている。導力器は、飛行船をはじめとするさまざまな技術に応用されている。この導力とは、電気のようなものだと思えばわかりやすいだろう。
そして「軌跡」シリーズの世界観では、どのシリーズでも共通して戦術オーブメントと呼ばれる導力機械の一種を使用してバトルを行なう。(シリーズによって、戦術オーブメントの種類や機能は異なる。「空の軌跡FC」では懐中時計型だった)
オーブメントの内部にあるスロットに七曜石で作られたクオーツを組み込む事で、身体強化や導力魔法(アーツ)の使用を可能にするのだ。
七耀石には地・水・火・風・時・空・幻の7つの属性があり、属性の組み合わせで攻撃・回復・補助のアーツが変化する。キャラクターによって属性の得手不得手があるものの、このクオーツの組み合わせによって戦術の幅がとても広がるのが特徴だ。例えばエステルは属性縛りがないので、回復特化キャラクターにしたり、アーツ重視キャラクターにしたり、Sクラフトを活かすキャラクターにしたり……といったことができるようになる。他のパーティキャラクターは、ヨシュアは属性が時、シェラザードは風、アガットは火、……など属性的な特徴はあるが、攻撃特化型のヨシュアにしてみたり、魔法に特化したシェラザードにしたり……実に様々なことができるようになっており、非常に戦術性の高いバトルを楽しむことができるようになっている。
この「空の軌跡FC」でのバトルを後発の「軌跡」シリーズでは様々な形で進化させていっているが、ある意味いちばんシンプルで、それでいて奥深い「空の軌跡FC」の戦術オーブメントが一番好きだというプレーヤーもいるほどなのだ。
他にも、「空の女神(エイドス)」と呼ばれる存在がゼムリア大陸で信仰の対象となっており、空の女神の教えを大陸に説いている「七曜教会」が存在する。これらも後の「軌跡」シリーズで、重要な役割を果たす。
様々な用語や世界観が登場するが、「空の軌跡FC」は「軌跡」シリーズとしては導入にあたるので、これらの世界観にすんなりと入っていける作りになっているのだ。
もしもまだ「軌跡」シリーズに触れたことがない人には、ぜひプレイしてみてほしい一作である。20年続き、いまだ完結していないという「軌跡」シリーズに足を踏み入れることをためらう人もいると思うが、筆者は「空の軌跡FC」はとても面白いRPGの一本だと感じている。(確かに物語は「空の軌跡SC」へと続いてしまう、未完の作品ではあるのだが……)
リベールという小国が、ゼムリア大陸でどのような立ち位置なのかを知っていくのも楽しい。
「空の軌跡FC」で登場した個性的なキャラクターたちは、20年経った今でも最新作の「軌跡」シリーズに登場することがあるが、新規キャラクターたちの中に混ざってもまったく見劣りすることのない魅力に溢れている。
さらにBGMへの力の入れ方は、さすが日本ファルコムといったところ。「銀の意志」や「星の在処」など、今でもファンからの評価が非常に高い名曲がそろっている。
ちなみに現在「空の軌跡」シリーズをプレイする場合、フルボイスで遊びやすさも増しているPS Vita版の「空の軌跡FC Evolution」が一番オススメなのだが、PS Vita本体が既に生産終了しているのが悩ましいところである。また「空の軌跡FC Evolution」は開発がキャラアニのため、今後移植されるかがあやしい。PS Vita本体を持っている人は、ぜひ今のうちに「空の軌跡FC Evolution」をプレイしてほしいところだ。
今年の9月26日には、「軌跡」シリーズ20周年記念作品「界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-」も発売されるとあって、まだまだ「軌跡」シリーズから目が離せそうもない。
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