【特別企画】

初期配置こそ命! 指揮官として勝利を導く「Total Tank Simulator」βテストレポート

史実には登場しなかった夢の兵器も多数登場。ハチャメチャなIfの戦場を作り出してシミュレートせよ!

2020年 発売予定

 第二次世界大戦を舞台にした新作シミュレーションゲームが登場する。ポーランドに本拠地を置くインディーデベロッパーNoobz from Polandが現在開発中の「Total Tank Simulator」だ。

 本作は第二次世界大戦を背景に登場するユニットを駆使して相手を全滅させるシミュレーションゲーム。ゲームタイトルには「Simulator」と入っているが、かなりストラテジー寄りのゲームだ。

 ただストラテジーと言ってもRTS(リアルタイムストラテジー)ともTBS(ターンベースストラテジー)とも異なる。基本的にはバトル開始時に自軍のユニットをすべて配置する、このタイミングは時間制限などはないので相手のユニットを見ながら相性などを見てユニットを配置していく。配置したユニットは基本的にAIがすべてを操作するのが特徴だ。

 想定したとおりに味方が動いているか、弱い部分はないかなど、自分の戦術がバッチリとハマっているかをチェックし、次の戦闘に備えるという流れになる。つまり最初の配置が何より重要になる。

 そのユニットの種類は多くアメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、ソビエト連邦、ドイツの各国から第二次世界大戦に登場した多数の兵器が登場し、すべての国を200種類以上にも登るという。グラフィックスはリアル寄りではなくディフォルメされているが、それぞれの兵器の特徴はきっちりと捉えている。第二次世界大戦に愛がある開発者がいるのだろう。

 今回は発売に先駆けてβテスト版をプレイできたのでそのレポートをお届けしていきたい。今回はあくまでもテスト版ということでプレイできたのはドイツとソビエト連邦のみだったが、この2国だけでも合計すると100種類以上のユニットが登場し、一人用の「キャンペーンモード」やハチャメチャな戦場を作り出せる「サンドボックスモード」などかなり遊べる内容になっていた。

【Total Tank Simulator Coming To Steam 2020 - Announcement Trailer [ESRB]】

多種類のユニットを組み合わせて自分だけの戦術を作る!

 本作はユニットを戦場に配置し、敵軍を撃破するのが基本的なルールだ。他にも時間いっぱい自軍を守り切ったり、ウェーブ状に攻めてくる敵から生き残るような変則的なルールも存在する。細かいルールはどうあれ自分は生き残りつつ、相手のユニットを全滅させればOKだ。

 ユニットにはコストが設定されており、基本的に強力なユニットはコストが高めになっている。バトル開始時に所持しているリソースには限りがあるので、強力なユニットを横並べにして数と戦闘力で押し切ることはできない。ユニットごとの相性やシナジーを考えて戦闘に挑む必要がある。AIは優秀なのでユニットの選択や配置が良ければ良い具合で動いてくれるが、それは敵も同じだ。なかなかに手強いので油断するとあっけなく負けてしまう。

 戦車も歩兵に壊されるし、歩兵は砲兵にまとめて吹き飛ばされるし、砲兵は空爆で焼け野原にされる。もちろん対空兵器もあるが、他の陸上ユニットに狙われるとひとたまりもない。ユニットの相性はもちろん数も重要になる。コストとの加減が非常に難しい。

最初の配置がすべてを決める。相手のユニットを見ながら戦術を考える

 このバトルがなかなかに奥深く面白いのだ。筆者は「相手に歩兵が多いので適当に軽戦車を並べれば勝てるだろう」と甘い考えで適当に並べたところ、敵陣営の後方に配備されていたカノン砲で筆者の戦車群が軒並み吹き飛ばされ、無残にも惨敗してしまった。

 こちらも負けじとカノン砲を並べて、さらに爆撃機も配備して……とやっているとコストがかさんでしまい、前線に配備できるユニットが少なくなり、今度は敵歩兵群に筆者の軽戦車が軒並み破壊されるという結果になってしまった。配備しておいたカノン砲部隊が活躍してくれたおかげでなんとか戦闘には勝利したものの、総合での損害はこちらの方が大きく、改めて本作の難しさと奥深さを感じた次第だ。

事前にユニットごとの特徴を確認することができる。後方からの砲撃は強力で重要なのできっちりと抑えておきたい

 今回はあくまでもテスト版ということでプレイできた陣営は「ドイツ」と「ソビエト連邦」のみだったが、この2国だけでも合計すると100種類以上のユニットが登場する。登場するユニットはまさにオールスターという印象で、一例を挙げるとドイツからは重戦車の「ティーガー1」、急降下爆撃機「スツーカ」、完成することはなかったジェット戦闘機「トリープフリューゲル」、ソビエト連邦からも中戦車「T-34」、ロケット砲「カチューシャ」、はたまたこちらも完成には至らなかった戦車「T-42」などなど、筆者のようなライト第二次世界大戦ファンにも聞き覚えのある魅力的なユニットが多数登場し、これだけでもワクワクする。こういった夢の戦闘が楽しめるのもポイントだ。

夢のオールスターな戦場を作り出してシミュレーションすることができる。史実にも登場した各種兵器が登場するので第二次世界大戦のファンとしては嬉しいところだ

 これらのユニットがぶつかる夢の戦場を作ってシミュレートするだけでも面白い上に、本作のユニークな要素としてプレーヤーが戦場にあるユニットを操作して戦場に介入することが可能なのだ。戦場に出現する味方ユニットはどれでも操作可能なので、歩兵を選べばFPSのようなプレイ感覚になるし、戦車に乗れば戦車アクションゲームのようなプレイ感覚になる。乗り物によってはメインの攻撃手段と運転はAIに任せつつ自分は副武装の機関銃でサポートすることも可能だ。これが戦場の迫力があって面白い。サウンド面では戦車のエンジン音や装甲に銃弾が弾かれる音を最前線で感じることができ、ディフォルメされたビジュアルだが熾烈な戦場にいる感覚を感じられる。

 ただプレーヤーがユニットを操作できるとは言え、無双することは難しい。筆者は戦車に乗って横から奇襲すれば一騎当千で活躍できるのではないかと考えて操作していたのだが、1ユニットの戦車程度では敵の歩兵集団にもやられるという有様だった。この辺りはまさに“シミュレーター”を謳っているだけのシビアなバランスになっている。あくまでも戦闘員の1人になって戦場を1人称視点で体感するという楽しみ方が良さそうだ。

歩兵になって戦うとFPSのような楽しみ方ができるし、戦車に乗って戦うと戦車アクションゲームのように楽しめる。さらに砲兵気分も味わえる

 また、モードは難易度高めでプレーヤーの戦略と戦術が試される「キャンペーン」、自由に敵/味方のユニットを配置し、どうやっても実現しないようなハチャメチャなIfの戦場を作り出せる「サンドボックス」という対象的なモードが楽しめた。

 特に筆者は「サンドボックス」モードを楽しんでプレイしていた。自分なりに考えたリアルな戦場を作り出してシミュレートしたり、コストを無制限にして文字通りに数え切れないほどの重戦車を並べて、こちらもまた数え切れないほどの歩兵を並べて立ち向かってみたりする"Ifの物語"もバカバカしくて笑える。

コストも自由に設定できるのでハチャメチャな戦場を作って遊べるのが「サンドボックスモード」の魅力だ

 「サンドボックス」モードは良い意味で“バカゲー”の匂いを感じるモードだったが、一方の「キャンペーン」モードは骨太なストラテジーゲームという要素が強い。

 こちらは「幕」という単位で区切られており、幕は複数のマップで構成されている。1つの幕の間はリソースは共有されるので、序盤のマップで大量のリソースを使用すると後々のマップで厳しい戦いを迫られるというわけだ。クリアできればリソースを獲得できるが、クリアできずに同じマップをリトライし続けるとジリ貧になっていく。また一定回数リトライを繰り返すと幕全体が失敗となってしまうシビア寄りのバランスになっている。

1つの「幕」はストーリー仕立てになっている
幕の間リソースが共有される。また一定回数以上敗北すると問答無用でゲームオーバーになってしまうのでやりごたえがあるシステムだ

 また「キャンペーン」モードには技術ツリーという概念がある。というのもゲームの最序盤は使用できるユニットの種類に限りがある。マップをクリアした時に得られる「技術ポイント」を使用してユニットをアンロックしていく必要がある。このアンロック次第で戦術も変化するので重要なポイントになる。

 一言で歩兵と言っても種類があるし、ツリーが分岐するものもある。すべての技術をアンロックするのは現実的ではないのでどのルートを開拓していくか、そういった戦略も必要になる。とても初見でクリアできるようなイージーな難易度ではなく、ゲーマー心をくすぐってくれる。

技術ツリーのアンロック順も重要になりそうだ。バランス良く進めるのか、特化させるのか……、じっくりと悩みたい

 総合するとリアルに寄せた作りでユニット同士の相性が大きく影響する部分やシビアなバランス、また一度戦闘が始まるとプレーヤーが大きく介入することができない部分はタイトル通りに確かにシミュレーターなのだが、どんなユニットをどのくらいの数だけどこに配置するか、というのをじっくりと考える必要がある、非常にストラテジー要素が強いゲームでかなり楽しめる印象だ。

 一方で数え切れないほど大量の歩兵と史実には存在しなかった夢の兵器を戦わせるといった良い意味でバカバカしい遊び方も可能で遊びの幅は広い。残念ながら今のところは発売日は「Early 2020」とのことで明言はされていないが、ゲームのベースになる部分は十分に完成しており期待値が高まる作品だ。今後発表されるであろう情報に期待したい。