インタビュー

「サモンナイト」「ネプテューヌRe;Birth1」を手がける同社を直撃

職人的スタッフが生み出した「サモンナイト」シリーズ

職人的スタッフが生み出した「サモンナイト」シリーズ

―― そうして立ち上げたフェリステラで再開となった6年半ぶりのシリーズ最新作の「サモンナイト5」ですが、木下さんとしてはどのように受け止めていますか?

木下氏: 大分時間が経ってしまっていたというのが大きかったですね。当然、6年の歳月を経て出て行くものですので、ユーザーさんの期待もありますし、進化しなければならない面もあります。どうやっていくのがよいのかというのは現場でも悩んでいたところではありますね。(本編シリーズでは)携帯機ではじめてというところもありましたので、今までできたことができなくなっていることもありました。3Dになってやりにくくなったこともあれば、逆にやりやすくなったこともあります。携帯機の性能的な限界というものは「3」や「4」の移植作業を通して見えていたのですが、それがつかめたのがPSPというハードの末期という……。本来、会社としてはハードの序盤にできているほうがビジネス上いいのでしょうけど。もともと私たちはハードの末期にソフトを出すとよく言われていましたが(笑)。

―― 言われてみればそうですね(笑)。ただ「サモンナイト」のシリーズは、ゲームを見ていても非常にかっちりとした作りをしていて、それは作り手もそうなんだろうなというところを感じさせますよね。

木下氏: 1作目は正直手探りで開発を進めていたように感じます。

―― シリーズが固まったのは「2」のときかな、という印象も確かにありますね。

木下氏: 「2」は物量のコントロールが難しかったですね。結果的に2枚組になってしまいました。ですが「1」のアンケート結果を見て、ユーザーさんがこういうところにはこういう風に感じるのかということがわかって、開発する側としても方向性が見えてきた感はありましたね。最初はどんなユーザー層にどんなキャラクターでいけばいいのかわからない、試行錯誤でやっていましたから。シミュレーションで難易度もどうすべきかわかりませんでしたね。

―― それでも、ほかより1歩抜きんでている印象でした。

森藤氏: 自分としても、シミュレーションRPGが乱立していた時期でもあるので、最初はタカをくくっていたんですよ。とはいえ当時、別の会社だったのですが、研究のために色々と遊んでいたんです。でもこれだけは違うな、という話になりましたね。「サモンナイト」は、これこそアドベンチャーとシミュレーションとRPGの3つが融合したゲームだよねと評価していました。

―― それぞれのボリュームがまたしっかりあるんですよね。キャラクターにも魅力がありました。

【「サモンナイト3」、「サモンナイト4」】
PS2で発売された「サモンナイト3」と「サモンナイト4」のPSP移植版。移植にあたって、より強力な召喚が可能になるサモンアシストやスキルポイント制の導入により、遊びやすくなったほか、新規イベントグラフィックスや戦闘会話などの追加など、既プレイのファンにも嬉しい追加要素を盛り込んでいる。シリーズ最新作「サモンナイト5」に先駆けて2カ月連続で発売され、「サモンナイト」シリーズ復活の旗印となった

【サモンナイト5】
PSPで発売されたシリーズ最新作。バトルが3Dになるほか、アドベンチャーシーンも「Live2D」によりイラストのタッチのまま立体的に動くようになるなど、大幅に3Dグラフィックスが取り入れられている。また、ゲームシステムでは響命覚醒や銘約覚醒による大技や、過去作のキャラを召喚したりできる召喚盟友(サモンクラスタ)などがバトルを盛り上げる

イージーモードは社長の優しさでできている!?

―― 「サモンナイト5」を遊んでいると、相変わらずキャラクターの仕草や言葉遣い、シナリオの運び方にすごく気を遣っていますよね。

木下氏: 「サモンナイト」シリーズは音声収録をしたあとに表情をつけているんですよ。声を聞いてそれに合わせて表情とか芝居を付けているんです。そこはどうしても外せない。声優さんの声を聞いて1番良い表情をチョイスし、より臨場感をアップさせることができるようやっています。

―― プレスコはアニメでも滅多にやらないですよね。

木下氏: 1回やると(クオリティが上がるので)止められないという(笑)。台本だけで作ることも可能ですが、やはり違和感を感じることもあるんです。そのために台本完成後に音声収録して、マスターアップまでの短い期間の中で頑張ってキャラクターに芝居を付けていくことになるんです。

森藤氏: 今開発している「超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth1」もそうですが、キャラクター作りとかも素晴らしいですよ。

―― IFさんは独特のパワーのあるゲームメーカーさんですよね。

木下氏: 「ネプテューヌ」は私も遊んでいたので、お話を頂いたときに、比較的受けやすかったですね。実は私自身は普通のRPGのほうが性にあうんですよね。シミュレーションRPGはスタッフにもよく怒られるんですが、苦手なんです(笑)。

―― 「サモンナイト」の父とも言うべき木下さんが!?

木下氏: イージーモード担当なんです(笑)。テストプレイをしていると、スタッフに、「もっとこっちから回り込んだ方が良いのに」とか、「どうしてそこで突っ込んじゃうんですか」とか言われます。好きなキャラで固めて遊びたくなっちゃうんですけど、スタッフとしては、「デバッグにならないですよ!」とか口を出さずにいられなくなるんですよね。いわゆるシミュレーション好きとは違うプレイスタイルで、どちらかというとキャラ好きのプレイスタイルなんですよ。好きなキャラクターのチームで遊びたいという。なので、ユニットも物理系、魔法系とあるはずなにの妙に偏って魔法系だけになっていたりします。それで苦労していたりもするんですよね。

―― でも、そういうプレイができるというのはRPG好きとしては大事ですよね。特定のメンバーでないとクリアできないというのでは面白くない。

木下氏: 押しつけられるのは苦手なので、好きなメンバーで遊べるようにと考えてしまうんですよね。もちろん、開発スタッフからすれば、色々なキャラクターで楽しんで欲しいというのもあるとは思うんですけどね。

―― その辺の落としどころを見つけて調整していっているわけですね。

木下氏: 「アガレスト戦記 Mariage」でもイージーモード担当でした。私の座っている席の向かいがプランナーなんですけど、机越しに「ごめん。勝てないから柔らかくして」とか「アイテムドロップもうちょっとゆるくして」みたいなお願いをしていたりします(笑)。開発スタッフは知り尽くしているので、あえて初見でプレイして、気づかないところなどを意識するようにしています。

―― なるほど。「サモンナイト」のイージーモードは社長の優しさでできているわけですね(笑)。

木下氏: 他のゲームなら大丈夫なので、シミュレーションに限りですけどね。もっとも、ユーザーさんの意見をお伺いしていると、偏ったメンバーでプレイされる方も多いようなので、こういうことも必要なのかなと。キャラクターのレベルを上げて強くしてから進めていくという人も多いようです。

―― 女性ユーザーが多いという点でも、シミュレーションが不得手という方も多そうですしね。

【超次次元ゲイム ネプテューヌRe;Birth1】
PS3で発売され、ゲームファンには美味しすぎるネタとキャラクターの可愛さで好評を博した、「超次元ゲイム ネプテューヌ」シリーズでは初となるPS Vitaへの移植タイトル。移植といいつつも、シナリオなどを刷新した完全リメイク版となっている。開発に際して、ここでもフェリステラスタッフのこだわりが発揮されている。

(西岡浩二郎)