インタビュー

「Gears of War: Judgment」プロデューサー クリス・ウィン氏インタビュー

霧の中の戦いや、“探知グレネード”などユニークなアイディア満載のシリーズ外伝

【Gears of War: Judgment】

3月21日発売予定

価格:7,140円

 マイクロソフトは、3月21日に発売を予定しているXbox 360用アクションシューティング「Gears of War: Judgment」の開発者を招いたインタビュー・先行体験会を開催した。インタビューでは本作のシニアプロデューサーを務めるEpic Gamesのクリス・ウィン氏に体験プレイで気になった点を質問してみた。

 筆者は「Gears of War: Judgment」を体験して、従来の「GOW」シリーズとはテイストの異なる、様々な新しい要素を盛り込んだ作品だと感じた。3部作で積み重ねたローカストの文化や、COG軍の装備、様々なアイディア……。これらのリソースを活用しながら、より“ゲーム性”を強調した作品になっていると感じた。

 今作はどのような経緯で、約15年前を描くことになったのだろうか。なぜ操作方法を変えたのか? そして「Gears of War: Judgment」はEpic Gamesと、ポーランドのPeople Can Flyとの共同開発である。People Can Flyは「Gears of War」にどのような新しい要素をもたらしたのだろうか?

ゲーム性に特化しアイデアを盛り込んだキャンペーン。お気に入りはボス戦!?

本作のシニアプロデューサーを務めるEpic Gamesのクリス・ウィン氏
今回は体験できなかったが、新武器として「トリップワイヤー クロスボウ」の画像が公開された。機能もまだ不明だが、キャンペーンモードで使うという。どのような状況で使うのか楽しみだ

――まず最初に、「Gears of War: Judgment」が生まれた経緯を聞かせてください。

ウィン氏: 私達Epic Gamesは「Gears of War 3」が終わってから次はどうしようと考えていました。シリーズの完成を振り返ることで、成功と共に、できなかったこともあると反省する部分もありました。さらにファンに恩返しをしたいという気持ちも持っていました。

 これまで語っていない部分として、約15年前、この戦いが始まった「エマージェンス デー」があります。そして登場キャラクター「ベアード」を掘り下げたいと思いました。そこで「Gears of War」3部作から時間をさかのぼり「エマージェンス デー」を描くと共に、ベアードが士官ではなくなってしまうというエピソードを描くことにしたのです。

――発売前ですがこれまでの情報でのファンの反応はどうですか。

ウィン氏: 非常にいいです。Comic-Conなどで出展していますが、ファンは本作を歓迎してくれています。3部作から外れる“外伝”ということで、さらに操作性の変更で、こちらも不安があったのですが、ファンは本作を喜んでくれていると感じています。「期待を超えたものだ」という声ももらっています。

――そうですね、本作を触ってみて気がついたのは武器がメインとサブの2つになり、LBでグレネードを投げるところでした。操作性を変えたのはどうしてでしょうか。

ウィン氏: 他のFPS、TPSとの兼ね合いという所もあります。所持の武器を2つにしたのはマルチプレイでのバランスをとるためです。特にこれまではショットガンの「ナッシャー」を使いこなすというところで実力の差が出ていた部分がありましたが、武器を2つに絞ったことで、ナッシャーに頼りすぎない戦い方ができるようになったと思っています。

―― 改めてストーリーモードでの「審判」と「顛末」の関係性を教えてください。

ウィン氏: 「審判」は「エマージェンス デー」から30日経過した「Gears of War」3部作から言えば14年前の物語です。「顛末」は「Gears of War 3」でのバックストーリーとなります。

――今回「Gears of War 3」の後のストーリーは描けなかった、というところでしょうか。

ウィン氏: 構想としては持っているのですが、「Gears of War 3」でローカストは姿を消してしまうので、ストーリーとして描きにくい。新たな敵の登場となるとかなり大変なものになってしまうので、今回はこういったストーリー構成になりました。

――今回、開発がEpic Gamesだけでなく、People Can Flyも参加していますが、両社の今作でのそれぞれの役割を教えてください。

ウィン氏: People Can Flyを開発に加えたのは新しくフレッシュなアイディアが欲しかったということが大きいです。一緒に考えていく中で「OverRun」モードなどのアイディアが生まれていきました。キャンペーンの中のメカニズムなどもお互いで話して盛り込んでいきました。

 People Can Flyは主にキャンペーンの方を担当しました。Epic Games側のこれまで「Gears of War」の根幹を担当していたスタッフ達はPeople Can Flyに対して作品の基本コンセプトなどを提示していき、シリーズ作にするための監修という役割が強かったです。毎日People Can Flyのコンテンツに対してレビューを行ない、方向性を直すなどの助言をしていきました。

――キャンペーンでは「審判」の最初である博物館から、防御陣地を作ったり、ほとんど周りが見えない空間での戦いなど、盛り込まれているアイディアが非常に多彩だと感じました。

ウィン氏: People Can Flyとは2011年に「バレットストーム」を開発しており、そこからの要素を活かしているところもあります。彼らは様々なチャレンジをする開発者で、シリーズに彼らのそういった挑戦心が欲しかったというところがあります。また、原点である1作目の「Gears of War」を感じさせる部分も盛り込んでいます。

――今回のキャンペーンで特にウィンさんがお気に入りのアイディアはありますか?

ウィン氏: 発見することでストーリーの展開が変わってくる「機密情報」のアイディアはいいと思いますね。そして「審判」のラスボスである「カーン将軍」との戦いはお気に入りです。今は細かくいえませんが、とにかく見てもらいたいですね。「OverRun」モードのアイディアにも感心しました。

格好いいメディックを! 人間同士のバトルはファンの声に応えての実現

ウィン氏は日本で1日だけ休日があり、メディア対応の後、奥さんとどこかに観光に行くという。場所は奥さん任せとのこと
「Gears of War」シリーズ初となる「Free-For-ALL」。今回は人間同士のみだが、ローカスト同士の戦いも楽しそうだ

――では次にマルチプレイに関して質問します。「Survival」モードではクラスで役割や特殊能力が分かれていましたが、各クラスはプレイすることで成長し、様々なカスタマイズが可能になるのでしょうか。

ウィン氏: 最初はそういう方向も考えたのですが、あえて固定としました。キャラクターの成長やパワーアップ要素はありません。いろいろ試したのですが、限られた開発期間で、我々の求める洗練されたクラスの成長要素が見つけられなかった。プレーヤー達は敵を撃退するためどんなクラスの組み合わせで、どう戦っていくかを模索していく。戦略と戦術を研究するゲームモードです。チームとして戦い方を深めていって欲しいですね。おすすめとしては前半はメディックを多めに、後半は攻撃力を高めていく編成がいいと思います。

 OverRunはCOG軍がSurvivalと近い感じで、ローカストはBeastモードと同じ感覚でプレイできます。クラスベースになっているのが新しいところで、マップ内で各クラスはどう戦っていけるかを考えていくのが楽しいと思います。

――今回私達がSurvivalをプレイした時は、常に中心を破壊されて後退する形になりましたが、ウェーブを撃退できれば展開は変わったのでしょうか。

ウィン氏: 実は変わりません。攻められてしまったとき同様、ローカストホール2つを守った後、ジェネレーターを守ることになります。攻めていってローカストが出てくる穴そのものを埋めるといったアイディアもあったのですが、ゲーム性としてあまり面白くできませんでした。

――特にSurvivalモードは追加マップなどDLCでの拡張が楽しみなモードですね。

ウィン氏: Survival、OverRun用の新マップはすでに準備しています。これらの要素は発売後すぐに情報が公開される予定です。

――今回マルチプレイで、スポットグレネードの使い勝手が良く驚きました。敵の進行方向がわかるのでかなり有利に戦えますね。

ウィン氏: その他のモードでも有効ですが、実はOverRunとSurvivalで特に有効なのです。スポットグレネードの範囲にローカストが入ると位置がわかるだけでなく、攻撃によって受けるダメージが増加し、弱体化します。ローカスト側でプレイしているときには注意が必要です。

――キュアグレネードの煙の中にいるキャラクターを撃ったのですが、いくら撃っても回復されてしまい、絶望的な気持ちになりました。

ウィン氏: それでも至近距離でショットガンを当てたり、格闘戦で倒すことができます。キュアグレネードは他のゲームにあるメディッククラスをもっとかっこよくしたいという考えから生まれたクラスなんです。これまでのメディッククラスは対象に直接触らなくてはだめでした。キュアグレネードは離れたところから範囲内の味方を回復できます。

 新武器としてはスナイパーライフルとして活用できる「マルツァ」や、COG軍のマルツァをローカスト側で改造した「ブリーチショット」があります。ブリーチショットは銃床に巨大な刃が追加されており、彼らの知能と凶暴性をプレーヤーに印象づけます。

――「Free-For-ALL」はこれまで「Gears of War」でありそうでなかったゲームモードです。なぜこれまで入れなかったのでしょうか。今回はCOG軍同士が戦うというルールも多く、「Gears of War」で人間同士が戦うという絵はなかなか衝撃的でした。

ウィン氏: 私にもわからない部分ですが(笑)。今回「Free-For-ALL」を入れたのはファンの期待に応えるため、これまでなかったものを入れた、というところもあります。COG軍同士が戦うというのは、これまでのプレイデータからの統計を取って分析した要素でもあるのです。マルチプレイでは、“悪役”であるローカスト側でプレイしたがらないというユーザーも多いのです。このためCOG軍同士のゲームモードを入れました。

――People Can Flyが今後また「Gears of War」のタイトルを手がける、ということはあるでしょうか。また彼らと「Gears of War: Judgment」を作ったことで、Epic Gamesはどのようなよい影響を受けたでしょうか。

ウィン氏: People Can Flyの「Gears of War」フランチャイズのタイトルは、あり得ると思います。今回は彼らの大きな実績となりました。そして私達は彼らとの開発でたくさんのよい影響を受けました。

 私達Epic Gamesは「Gears of War」シリーズではストーリーを中心に考えていました。その為にあえて入れなかった要素などもあり、ユーザーに「ゲームプレイ」という部分で足りないと感じさせてしまった部分がます。「Gears of War: Judgment」はストーリーよりもゲームプレイにフォーカスされており、ゲームプレイに合わせてストーリー部分を変えたと言うこともやっています。この姿勢はPeople Can Flyのものであり、Epic Gamesが学んだ部分です。

――最後に日本のファンにメッセージを。

ウィン氏: 「Gears of War: Judgment」はシリーズの外伝と言うことで、期待と不安を持っている方が多いと思います。しかし今作もこれまで同様高いクオリティをもっており、皆様の期待を超える作品になったと思っています。ぜひ高い期待を持って本作を待ってください。そしてなにより、「Gears of War: Judgment」を楽しんでもらいたいです。

――ありがとうございました。

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(勝田哲也)