インタビュー

ネクソンの新作MMORPG「聖剣ONLINE」開発者インタビュー

豊富な対戦要素に、ミニゲーム、カード融合など、今後も続々新要素を追加!

11月28日 オープンβテスト開始

12月正式サービス開始予定

 ネクソンは、Windows用タクティカルMMORPG「聖剣ONLINE」のオープンβテストを11月28日より開始した。正式サービスは12月中に予定しており、基本プレイ無料のアイテム課金となる。

 「聖剣ONLINE」は油絵のタッチのようなグラフィックスに特徴があり、その独特なグラフィックスが、かわいらしさと重厚さを合わせ持つ世界観を生み出している。様々な英雄や冒険で出会うモンスターを仲間にできる、シミュレーションRPG方式の戦闘などもユニークな点だ。開発は様々なMMORPGを手掛ける台湾Chinese Gamerで、チャットやギルド、自動移動システムなどMMORPGプレーヤーにとって欲しいと思う機能は実装されている。“手堅さ”もセールスポイントと言えるだろう。

 今回は、Chinese Gamerで本作のプロジェクトマネージャーを務める劉哲魁氏と、技術開発部エンジニアの黄健庭氏に本作ならではの要素と、正式サービスに実装されるコンテンツ、日本独自コンテンツといった話を聞いた。

独特のタッチのグラフィックスが生む世界観、日本向けに「荘園システム」を

Chinese Gamerで本作のプロジェクトマネージャーを務める劉哲魁氏
技術開発部エンジニアの黄健庭氏

 最初に質問したのは、「聖剣ONLINE」の魅力だ。劉氏は本作のセールスポイントとして「美しいグラフィックス」と、「たくさんの英雄とモンスターを仲間にできること」を挙げた。クエストで出会う英雄、戦闘で捕獲したモンスター、非常に多彩なキャラクターを仲間にし、そして育成できる。英雄は世界中の神話に語られる人物や神が登場し、彼等と共に戦うことができる。強い英雄は入手条件も厳しいものになるが、得ると大きなメリットをもたらすという。

 そして日本版にはオープンβテストから「荘園システム」が入っている。これは先行してサービスが始まっている台湾でも実装していないシステムで、いわゆる「農園系ソーシャルゲーム」のように、作物を育て様々な家具を作り、家を飾り立てることが可能になるという。この企画は劉氏の企画にネクソンの要望を取り入れ調整したもので、戦闘以外の楽しさを盛り込むために実現させたという。

 荘園マップは専用のインターフェイスで呼び出すことができ、大きな畑と小さな小屋で構成されている。小屋の前にあるポータルから建物の中に入ることができ、様々な家具を配置し、自分なりの部屋を演出できるという。小屋の外見などは細かく描き込まれており、「聖剣ONLINE」らしいグラフィックスの“味”を活かしたものとなる。今後様々な要素を盛りこんでいくとのことだ。

 荘園は他プレーヤーのところを訪問することができ、友達登録しているプレーヤーであれば虫を捕ってあげたり作物育成に協力できる。時にはモンスターが現われることがあり、戦うことができる。荘園はレベル30以上で持つことができる。

 ちなみに「聖剣ONLINE」はかなりサクサクとレベルが上がるゲームになるという。オープンβテストではレベルキャップがレベル70、正式サービスでレベル100、その後もレベルキャップ開放と同時に新地域を積極的に展開していく予定だ。2年前から運営している台湾ではレベルキャップがレベル400に到達したという。

 「聖剣ONLINE」のグラフィックスは2Dで、特に油絵のような独特のタッチが魅力だ。これは英雄やキャラクターのイラストを著名なイラストレーターであるEvan Lee氏が担当し、彼のタッチに合わせて、モンスター担当、マップ担当といったグラフィッカーがいるがそれぞれの絵を描いている、そこからモンスターデザインのPO-WEN氏が全体を監修し、統一感を出している。

 Evan Lee氏もPO-WEN氏も、日本でもイラスト集を何冊も出す人気イラストレーターだという。台湾では「聖剣ONLINE」のイラスト集も出版されている。他のグラフィッカーもイラストレーターや漫画家として活躍しているとのことだ。

特にイラストに独特の雰囲気がある。キャラクターグラフィックスもかわいらしい

正式サービス開始時には、対戦要素がパワーアップ。ミニゲームも

カジュアルな対戦コンテンツ「決闘王」
ミニゲームの「モグラたたき」

 正式サービス以降に実装されるコンテンツとしては、様々な“イベント”がある。「聖剣ONLINE」では様々なイベントが開催される。イベントはスケジュール画面で開催を確認でき、どこからでも参加できる。PvPはイベントの目玉コンテンツで、複数の対戦コンテンツが実装される。黄氏はそれぞれの対戦コンテンツを説明した。

 「英雄の名」はプレーヤーが、英雄と共に参加できるPvPイベント。「聖剣ONLINE」の戦闘システムはシュミレーションRPGタイプで、プレーヤーは複数のユニットに指示を出し戦っていく。「英雄の名」ではプレーヤー1人につき英雄4人を加えた状態で参加できる。参加するとランダムにチーム分けされ、5対5、英雄キャラクターを加えると最大25対25での対戦が楽しめる。

 気軽に楽しむことも、本気で勝つために作戦を練り込むことも可能で、イベントに参加する場合、あらかじめ5人のパーティを組んでおけば、パーティを維持したまま対戦に挑むことができる。1度の対戦が終わってもイベント開催中は次々と連戦することができ、結果に応じてランキングが決定される。上位10名に入ることができれば、賞品をゲットできるという。

 「決闘王」はカジュアルな対戦コンテンツ。こちらは1対1のコンテンツとなる。1人のプレーヤーと所持しているキャラクターの中から3人を選んで参加できるが、対戦方法は次々に出る矢印やアルファベットに合わせ、コマンドを入れるというものになる。英雄の選択によって特別なスキルが発生し、威力が増すという。タイピングゲームのような感触のゲームとなるとのこと。

 この決闘王はベスト8が決定した時点で「トーナメント」として表示され、他のプレーヤーも結果を見ることが可能となる。ナンバー1になったプレーヤーには豪華な賞品が与えられるが、どんな賞品かは現時点では秘密だ。

 この他、「モグラたたき」、「スライム探し」というミニゲームが追加される。こちらは別ウィンドウで遊べる純粋なミニゲームで、どちらもマウスでプレイできる。「スライム探し」はたくさんのスライムが表示されている画面で、提示されたスライムを探すというもの。色やデザインが異なるスライムから、正確に数多くのスライムを探していかなくてはならない。

 また、「即刻救援」というクエストも追加される。こちらは、一定時間中NPCを守りきるクエストで、特別な戦闘フィールドで展開する。台湾ではこの他にも様々なミニゲームが用意されており、こちらも順次追加予定だという。

 台湾版のMMORPGをプレイしていて感じるのは、プレーヤーに対して明確な“導線”を引き、レベルアップの仕方やゲームの基礎をきちんと提示している手法が確立しているな、ということである。一方で「次はこれ、次はこれ」というのをいわれているのに従っていくだけの、「冒険する」という気持ちが薄い印象を受ける。

 劉氏は「聖剣ONLINE」も積極的に便利な機能や、誰でもわかりやすい方向性は取り入れられており、世界を探索したり、自分で道を切り開いていくような、プレーヤー自身が積極的に冒険していくことを推奨するゲームとは、「ターゲット層が異なる」と語った。本作は気軽にゲームをプレイするライトユーザーを対象にしており、手取り足取りゲームの進め方を教えていき、快適な冒険を楽しんでもらいたいとのことだ。

 しかし、「聖剣ONLINE」はシュミレーションRPGの戦闘部分で、コア向け要素も持たせてある。特にインスタンスダンジョンでは難易度による選択肢を設けており、難易度を上げるとモンスターはより強力に、凝ったAIで立ち向かってくるという。もちろん高難易度のダンジョンをクリアすれば報酬も大きい。一方オープンβテストからは「オートバトル」という要素も入り、ライトユーザーはより手軽にモンスターを倒すことが可能になる。

最大25対25での対戦が楽しめる「英雄の名」
カジュアルなものから、本格的な対戦コンテンツまで、多彩な要素が盛りこまれる

今後はさらに日本向けコンテンツに注力。より幅広い楽しさを

劉氏は様々な日本向けコンテンツを企画しているという

 そして今後の予定で、「ギルド戦」、「攻城戦」、「国戦」、「輝く戦役」というコア向け要素が追加される。ギルド戦は3つどもえのバトルができる。3つのギルド用のフィールドがあり、それぞれ1つ緩衝地帯をはさんで隣り合っている。緩衝地帯にはオブジェクトが設置してあり、これを攻撃することでポイントを得ることができる。制限時間内で最もポイントを得たギルドが勝利となる。

 これら戦争用のフィールドでは通常プレーヤーキャラクターしか表示されず、敵対プレーヤーをクリックすることで戦闘画面に移行する。戦闘画面では最大7人の英雄を連れた8人のキャラクターを操作する。この時パーティを組んでいれば、5人のプレーヤーで戦闘に参加できる。ギルド戦では最大で40対40の対決が行なわれるのだ。

 「攻城戦」はこの世界に4つある城を奪いあう。他のゲームのように防御側と攻撃側という概念はなく、期間になると城を持っていたギルドも権利を失い、他のギルドと同じように城を攻めていく。城にはギルド戦と同じように「攻撃ポイント」があり、時間内に最もポイントを稼いだギルドが所有できる。城を手に入れると、バフが手に入ったり、城用のインスタンスダンジョンに挑戦できるといったメリットがある。

 「国戦」は、人族と神族が争う大規模バトルとなる。日本版のために開発を進めているコンテンツで、こちらの実装は正式サービスから数ヶ月後くらいになる予定で、現在企画をつめているところだという。勝利によって様々な影響が出る予定で、次の国戦まで勝利側にバフがかかる、宝箱の報酬が変わるほか、攻城戦で城を得ていても、負けた勢力側の城は炎上しているようなイラストになるなど、様々な変化がもたらされる。

 「輝く戦役」は、プレーヤーが自分が所属している勢力の英雄のキャラクターになり、3人の配下を連れ、プレーヤー5人パーティを組み、英雄を加えると20対20での戦いを行なうPvPイベント。変身する英雄はプレーヤーの職業により固定される。騎士は連盟軍の場合はアーサー王、領域軍の場合はオーディーンとなる。こちらはキャラクター、配下共に固定キャラクターとなるため、チェスや将棋のように、純粋に戦略性を問われる対戦となるという。こちらの実装日は未定とのこと。期待して待ちたい。

 日本でのサービス向けのコンテンツである「荘園システム」や、「国戦」は劉氏の企画を元に実現した日本独自のコンテンツだという。プレーヤーキャラクターの星座によって、パーティを組んだときバフがかかるという要素はすでに実装しているが、今後は恋人・結婚システム、さらには子供のシステムも企画しているという。恋人や結婚では専用のインスタンスダンジョンに挑戦でき、子供ができて成長させるとパーティに加えることができる。子供の育成システムも多彩な方向性を考えている。約半年後の実装を予定しているという

 日本独自のコンテンツにはさらに「カードの融合」システムなどもある。モンスターを倒すとカードが入手できる場合があり、これを「モンスター図鑑」にコレクションしていくと様々な恩恵が得られる。図鑑の1ページを埋めるとバフがもらえたりする。このシステムはCBTから用意されているが、「カードの融合」は入手したカードを組み合わせより高レベルのモンスターカードを生み出せるシステム。倒していないモンスターのカードも入手できることができ、自分が欲しいカードを作成することも可能になるという。こちらも今後実装予定だ。

 劉氏はChinese Gamerの作品を、日本で受け入れられるにはどうすべきかを考え、ネクソンとともに様々な企画を出しているという。日本のプレーヤーの興味を考え、気に入ってもらえる要素を実現し、その結果を見て台湾版などにも他国でも実現していく、という方針となっている。劉氏は最初に日本向けタイトルを担当したとき、全くカルチャライズを行なわなかったために成功しなかった経験というがあり、そこから積極的に独自企画を盛り込むようにした。そこからはユーザーの反応もあり、手応えを感じているとのこと。「聖剣ONLINE」でも経験を活かし、積極的に企画を盛り込んでいくという。

 最後にユーザーへのメッセージとして黄氏は「たくさんの日本版ならではの要素を盛りこんでいます。是非お楽しみください」。劉氏は「我々は台湾のメーカーですが、日本市場を大事なものだととらえています。要望はできるだけ対応していきますし、日本のユーザーさんに向けて力を注いでいきます」と語った。

(勝田哲也)