ガンホー、オンラインTPS「トイ・ウォーズ」プレイレポート&インタビュー
韓国産TPSを大胆なカルチャライズでアレンジ!


3月2日よりオープンβテスト開始予定

今春より正式サービス開始予定


 オンラインゲームパブリッシャーのガンホー・オンライン・エンターテイメントでは、同社初となるTPS「トイ・ウォーズ」を今春正式サービス開始予定だ。それに先立ち3月上旬にはオープンβテストが実施される予定で、フィギュアで戦う個性的なゲームがいよいよデビュー間近となっている。

 「トイ・ウォーズ」は韓国SK imediaが開発したオンラインTPS「H.A.V.E online」の国内版という位置づけだが、本作の国内サービスを手がけるガンホーではかわいらしいフィギュアが登場する世界設定を生かし、演出面の強化、有名アニメ作品とのコラボレーションなど非常に大胆なカルチャライズを行なっている。韓国でサービスされているオリジナル版とはベツモノと考えた方が適切という内容だ。

 世界観、ゲーム内容ともに全く新しいものを見せてくれそうな本作について、今回、オープンβテストに向けて準備中のバージョンでテストプレイを行なうことができた。また本作のマーケティングおよびコンテンツを担当するガンホーの波光正俊氏ならびに齋藤和寛氏にインタビューすることもできたので、本稿でお伝えしよう。




■ これはビジュアルノベルかTPSか? ガンホーによる驚きのカルチャライズぶりが光る



 ガンホー本社にて「トイ・ウォーズ」のオープンβテストに向けた開発バージョンをプレイすることができたが、まずその演出面に驚いた。これまでクローズドβテストで公開されてきたバージョンからは大きく変化し、受ける印象もかなり異なったものになっている。

 最大のポイントは、オープニングムービーからゲーム開始までの流れが、美少女系ビジュアルノベルのようなシステムになっていたことだ。アニメ番組のオープニングを思わせるムービー、そして画面を見れば一目瞭然の会話シーン。

 プレーヤーがアカウントを登録してはじめてゲームを起動してみることになるこのシーンでは、「私立日向高校フィギュア部」に属することになるプレーヤーの立ち位置と、各種フィギュアの持ち主である部員たちについて、実力派声優陣によるフルボイスの演技で語られていく。

 もちろん、これは日本向けのカルチャライズの一環として導入された部分だが、それにしても徹底していてビックリすること請け合いだ。自分がなんのジャンルのゲームをやっているのか、ちょっとわからなくなるほど、きちんと作りこまれているのだ。登場キャラクターは勝ち気なヒロイン、天然お嬢様タイプのサブヒロイン、常になにか受信してそうな不思議ちゃんと、ライトノベルのテンプレっぽい感じもするが、それもお約束として面白いところ。


ビジュアルノベル方式のシステムで、登場キャラクターやフィギュアたちの住む風景が語られる。本作がTPSであることを忘れてしまうほどの衝撃だ

いよいよチュートリアルに突入

 TPSをプレイするつもりがビジュアルノベルをやっていた、という特異な状況をしばし体験すると、いよいよTPSパートに突入する。声優・若本規夫氏演ずる「レボルト軍曹」にスパルタ式の命令をうけつつ、本作の基本アクションや各種武器の特性について学べる構成だ。

 登場武器の種類はクローズドβテスト時点と変わらず、1~7番の数字キーでいつでも7種類の武器が使えるという構成。近接武器、マシンガン、ショットガン、バズーカ、ライフル、グレネード、ガトリングと、沢山の武器を使い分けながら戦う、どちらかといえば「DOOM」とか「QUAKE」のようなレガシーなFPSのテイストがあるのが面白い。オープンβテストではいくつかの新武器も登場する予定だというのでお楽しみに。


「レボルト軍曹」のスパルタ指導を受けて、本作に登場する武器をひととおり体験できるチュートリアル。5~10分ほどでクリアできる

購買部でフィギュアをカスタマイズ
パーツの装着部位は非常に多い。キャラ性能に多少の影響が及ぶものもある

 またフィギュアで戦うゲームならではのアバター要素も、オープンβテストから拡充される。新たに実装される「購買部」では、様々なアバターアイテムを購入してフィギュアの着せ替えができるのだ。他のFPS系ゲームに比べて装着部位が異様に多いのが特徴的。3つの素体をベースにカスタマイズすることができ、各3種類ずつ容易された声優ボイスをイメージにあわせて選択することも可能だ。

 ゲーム面では、オープンβテストより新ゲームモード「サボタージュ」が実装される。これは復活なし・ラウンド式のチームデスマッチだ。また、新マップとして戦争ジオラマを模したマップ「バトルジオラマ」も実装される。

 さらにゲーム面で面白い試みになっているのが、オープンβテストから実装されるゲームパッドへの対応だ。コンシューマーゲーム機でFPSやTPSをプレイするようなスタイルで本作をプレイできるようになるというわけ。筆者が体験したバージョンではスティックによる旋回がきちんとアナログ入力になっていないなど、まだ開発中という匂いが強かったが、公開開始までにきちんと使えるものになるよう、さらに調整が入るようだ。

 また今回、正式サービス時に公開予定のコラボレーションモデル「涼宮ハルヒ(ショートヘアバージョン)」のゲーム内モデルを見せてもらうことができたので、スクリーンショットでちょっとだけご覧に入れよう。アクションフィギュアらしく関節部がきちんと球体になっているあたり、なかなかこだわりが感じられて面白い。


【フィギュアのカスタマイズ】
ゲーム内ポイントを使ってパーツを購入、着せ替えができる。3種類の素体があるので、好みに合わせてえらぼう。いくつかの武器も追加されているようだ


【新マップ「バトルジオラマ」】
地上だけでなく塹壕的な地下の構造もあり、かなり入り組んだ構造になっているマップ。まさにオモチャの世界という感じでよくまとまっている

【コラボレーションモデル「涼宮ハルヒ」】
正式サービス時に提供される予定のコラボレーションモデル。原作やアニメのファンの方は要チェックかも?




■ FPS/TPS全体の盛り上がりを目指す「トイ・ウォーズ」スタッフインタビュー

インタビューに答えてくれた、本作を担当する波光正俊氏(写真右)と齋藤和寛氏(写真左)。本作をFPS/TPS業界全体のパイを広げる作品に成長させたいと語った

───単なるローカライズというより大胆なカルチャライズで、既存のFPSやTPSのファン層以外にも強く訴求しそうな内容ですね。メインターゲットとして新しいユーザー層を開拓しようという意図を感じます。

ガンホー ゲームサービス部ファインディング課 主任 波光正俊氏:そうですね、やはり新規層をターゲットとして捉えています。既存のFPSのユーザー様も大事に考えてはいるんですけれども、今回本作に関しては「1から育てていく」という部分、これまでFPSをプレイしてこられなかったユーザー様にも楽しんでもらえるような内容、環境づくりを目指しています。それを通じて、FPS、TPSというジャンルの盛り上がりにつなげていければと。

───既に相当部分が日本オリジナルな内容になりつつありますが、ゲーム内で登場する武器等についても今後どんどん日本ならではのものが登場すると期待していいんでしょうか?

ガンホー ゲームサービス部ファインディング課 主任 齋藤和寛氏:はい。もう既にかなりの数を計画しておりまして、オープンβテストではまだ入らないんですけれども、サービス開始時には数種類の新規の武器を追加していきたいなと考えています。これはもう、現時点で実装されている武器の方向性に束縛されない形での武器デザインになります。SFチックなものとか、ネタ系の武器ですね。例えばえんぴつのようなもので殴るとか。

───FPSやTPSの初心者の方が多く参加していくゲームになっていくということですが、「上級者と初心者の住み分けをどうするか」という問題は他のタイトルでも度々話題になってきたことです。本作ではどのような施策を考えていますか?

齋藤氏:そうですね、その点については既に企画と開発で協議が進んでいます。本作は2つの層が共存できるゲームにしていきたいと考えているんですよ。要は、慣れてない方々はカジュアルなゲームモードに誘導し、上手な方々はチームデスマッチであったり、競技志向のバランスの方に誘導していく、という形で検討しております。

───そうすると、現時点で実装されているゲームモードはどちらかというとハードコアユーザー向けのものということになりますね。今後カジュアル向けというと、どのようなゲームモードの追加がありえるんでしょうか?

齋藤氏:正式サービス開始時の実装を予定しているのですが、「アイテムマッチ」とうものを皮切りに順次追加していきます。地面に落ちているアイテムのバリエーションが豊かになったモードです。それから「魔シン戦」というものを予定しておりまして、他のタイトルで言えば一般的に「ゾンビモード」と呼ばれているものに近いものです。詳しくは乞うご期待という感じです。

波光氏:より「トイ・ウォーズ」らしく、オモチャっぽいような形で展開していく形です。

───なるほど、カジュアル寄りのゲームモードは、いわゆる「非対称ルール」が基本ということのようですね。

波光氏:そうですね。その方向性でいうと、PvE的なものも計画しています。みんなで集まって、巨大なボスのようなものを倒すといったモードも実装していきたいなと。開発のほうとも話は進んでいますので、また今後詳しくお話できる機会も出てくると思います。

───基本的なゲーム内容についていうと、カメラ視点こそTPSになっていますが、まだ本当にTPSらしいアクションは入っていないかなという印象があります。そのあたりは企画チームとして何か考えていますか?

齋藤氏:いわゆるカバーアクション的なものなどですね。実際、TPS視点ですので壁際に立って視点を旋回させることで、FPS視点では本来見えない場所が見えるようになっています。ですので壁に張り付いて隠れても見えちゃうというか、どういう動きをどこまで入れようかというところで開発との協議でも正直悩んでいるところです。「じゃあ匍匐前進はどう?」とか、もっと高く飛べるアクションであるとか、壁を登るアクションなど、「今あるものとは別の機能として実装できるものがいいんじゃない?」という感じで、様々な角度から検証しているところです。

───なるほど。そのあたり開発との関係について、開発担当は韓国SK imediaさんですが、ゲーム内容の企画についてはほぼ日本側が握っているという形なんでしょうか?

齋藤氏:そうですね、本作自体がかなり日本市場に向けた内容になっていると、これは両者認識しているところでして、それゆえに日本からの提案も真剣に聞いてくれるという形になっています。なので今回の、2Dキャラクターであったり、3Dのチュートリアルなど様々な要素がスムーズに実装されてきています。

波光氏:開発チームも、今の内容ではまだまだという認識がありますね。特に韓国のFPS市場は完全にレッドオーシャン化してますので、日本や世界の良い部分を取り入れて競争力を付けたいという意欲があります。これは余談なんですけれども、韓国ではネットカフェでプレイされることが多いのですが、本作をプレイするとちょっと恥ずかしいんですね(笑)。人に見られる場所で美少女と呼ばれるものを着せ替えしたり回転させて眺めたりというのは抵抗があるというのもあって、そのへんの市場の違いというのは感じましたね。

───そこは、日本のネットカフェでも趣味丸出しでプレイするのは辛い部分もあるのではないかと(笑)。しかし逆に考えると、「みんなでやれば怖くない」という論法も成立しそうですね。そういう面では、ガンホーさんはネットカフェとの連携で深い蓄積がありますので、本作でも何か施策を考えているのかなと。

波光氏:はい、ネットカフェは弊社の中でのマーケティング展開という意味において、非常に重要な位置を占めています。今までのFPS系タイトルはネットカフェでローカルのコミュニティを築き上げてきたという経緯もあります。本作は新しい切り口のゲームですけれども、あくまでTPSとして「ゲーセン感覚」とういか、手軽にプレイできる、それを通じてそれぞれのネットカフェでローカルのコミュニティが作られていく、といった動きへの支援は注力していきたいなと考えています。それに連動してガンホー側でもゲーム大会を主催して、継続的にいろんな地方を廻っていくような形で盛り上げつつ、ひとつの目標として全国大会をやるようなイベントの仕掛けを継続してやっていきたいなと思います。

───なるほど。一方で、コンテンツ系のコラボレーションでは「ハルヒ」、「ストライクウィッチーズ」といったものが既に発表されていますけれど、キャラクター市場は新作アニメなどが続々登場して話題の移り変わりが激しいという市場性があります。こちらの面ではどのような方針を考えていますか?

フィギュアカスタマイズの楽しさを広げてくれるコンテンツが、世の中には沢山あるはず。その可能性を「トイ・ウォーズ」が模索する

波光氏:タイアップ系アバターについては、「フィギュア☆スターシリーズ」という形でタイアップブランドを作っていきたいなと考えています。海洋堂やリボルテック、figuma、ねんどろいどといった有名ブランドのフィギュア製品のように、タイアップアバターとして隔月に1回づつ発表していこうとしています。第1弾が「ハルヒ」、第2弾が「ストライクウィッチーズ」で、第3弾が……こちらは現在調整中なんですけれども、近々発表できるかなと。はじめのうちはかわいらしいキャラクターのライン、もうひとつは武器を使うという部分で、シューティング的な要素に合致したコンテンツも提供していきたいですね。またフィギュアといっても、アニメコンテンツや漫画コンテンツだけでなく色々なものがありますので、幅を広げていけるようにはしていきたいです。

───逆に、ゲームからフィギュアの世界へというものも。

波光氏:はい、それは当然ありますね。今回の主人公キャラクターとなっている「ナルミ一号機」をはじめ、フィギュア化して販売する、パッケージに付属するですとか。もしくは機会があれば、既存のフィギュアブランドから製品化するといったこともしていきたいですね。ただフィギュアを作るのは時間がかかりますので、そのあたりはユーザー様の反応を見ながら進めていきたいなと考えています。

───ガンホーさんの他のゲームキャラクターとのコラボレーションもありでしょうか?

波光氏:進めていきたいですね。ただいろんなからみもあって難しいものもあるんですけれど(笑)。ガンホーではこれまで色々なタイトルをやってきた中で、非常にかわいいキャラクターというラインがあって、今回の「トイ・ウォーズ」もそのラインに載っていますので、そういったユーザー様からの要望も出てくるかなと思います。本作だけでなく、他のタイトルにもプラスになるようなコラボレーションを是非やっていきたいですよね。

───今回、ガンホーさんとしてはFPS/TPS系のゲームを始めてサービスするということになりましたが、これまで手がけられてきたMMORPG系のコンテンツとここが違うな、という印象はありましたか?

齋藤氏:ええ、ガンホーはこれまでRPGを得意としてきたところがありますので、今回は全く新しいジャンルということで有る意味総力を挙げて、取り組んできた感じです。私もはじめシューティング系は3D酔いしちゃってそれほどやっていなかったんですが、本作のために鍛え上げてそこそこ上手くなりました(笑)。そういう身ですので不安もあったのですが、実は社内にFPS系のツワモノたちが隠れておりまして、そういう人たちを集めて意見を交換したり、頻繁にテストプレイに参加してもらったりと、細かいところまで情報収集に取り組むことで成長してきました。またプロのゲーマーの方たちにもプレイしていただいて足りない部分を補ったりと、そういうことを通じて「トイ・ウォーズ」はこういうものだと、方向性を導き出してきました。

───なるほど。むしろゼロベースからスタートしたからこそ、韓国版と日本版でここまで違う、大胆なカルチャライズに挑戦することができたのかもしれませんね。

齋藤氏:そうですね、それはあると思います。

波光氏:あとやはり、「トイ・ウォーズ」が持つゲーム性というものが、いわゆるミリタリー系のFPSとは全く毛色が違うという部分で、新しいユーザーを獲得できるという充分なチャンスがあると思い注力しています。というのも、FPSのユーザー層を見ていると、タイトル間での移動はあっても総数はあまり変わらないという傾向があるんですね。そういった閉塞感があるなかでも、本作のゲーム性と、かわいらしいキャラクターという特徴が新しいユーザー層を惹きつける武器になると思います。それを通じてFPS、TPS全体を盛り上げていきたいなと、そういう確信を弊社全体で共有しています。

───業界全体を盛り上げることにつながれば素晴らしいですね。最後に本作のオープンβテスト、正式サービスへ向けた意気込みをお願いします。

波光氏:新しくTPSをプレイして頂くユーザー様には最適なタイトルだと思っていますし、業界全体を盛り上げていけるタイトルになれればと期待しています。また「トイ・ウォーズ」というタイトルは、トイの戦いであって、フィギュアだけの戦いではないので、おもちゃ全体での仕掛けを今後考えていきたいと思っています。具体的には例えば、特撮の怪獣に対して、フィギュアたちが集まって戦うだとか、フィギュアだけに囚われずに幅広いユーザー様に関心を持っていただけるようなコンテンツに発展させていければなというふうに思っています。

───おもちゃ愛を刺激するような、遊び心のあるゲームになっていきそうですね。ありがとうございました。


(C)2010 SK-IMEDIA Co.,Ltd./ Gravity Co., Ltd./ GungHo Online Entertainment,Inc.

(2011年 2月 25日)

[Reported by 佐藤カフジ]